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着物を29年着続けた先に見えた逸品「本場結城紬」 vol.1 【イッピン着物#1】

さあ〜、スタートしました「イッピン着物」!!
そこで今回は、ボクがいちばん好きな「男着物の結城紬」。その中でも、29年間着物を着続けた先にある「男着物の逸品」をご紹介させていただきます。商品名は、チト長いけど「本場結城紬/地機/杢糸(もくいと)/男着物/一尺一寸五分幅」です。

今回は、男着物のイッピン「結城紬」の理解を深めるためのもの。野球で言えば、試合前のキャッチボールのような感じです。
ご一緒に、まずは「織の最高峰・結城紬」の知識を広げていきましょう!


「本場結城紬」には、高機(たかはた)と、地機(じばた)が存在

そこで、まず知っておいて欲しいことが一つあります。
結城紬」には、織りの方法が二通りあるということです。
一つは、高機(たかはた)で織られた結城紬と、地機(じばた)で織られた結城紬です。織りの技法は違えども、いずれも「本場結城紬」と称されています。

正直、「『高機』と『地機/じばた』は、織の技法が天と地ほどの違いがあるのに、双方『本場結城紬』と言うのだろう?」と思ったりしたこともありました。



【本場結城紬】のしこ名は、「結城」! 

私たちが見聞きしている「結城紬」は、「重要無形文化財指定」の「本場結城紬」のことです。それを普通に「結城」と呼んでいます。普段の会話の中で、「本場結城紬」とか「本結城」とかは、言いません。

悲しいかな、「本物」もあれば、「まがい物」もある世の中です。「着物のアイテムの中で、「なんちゃって」がいちばん多いのは『結城紬』」です。裏を返せば、類似品が多く、「結城」の名前を拝借したくなるのは、結城紬が「いちばん良い着物」であるということも言えます。

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「なんちゃって結城」に手を染めた!

ボクは、「高機」も「地機」も、「縮結城/ちぢみゆうき」も着まわしていますが、地機の着心地の良さは、他の追随を許しません。思わず着ているのを忘れるほどです。
と言いながら、普段には、「高機」を着たりしています。30代の頃は、ゴワゴワの「なんちゃって結城」で、ヒザのところが白くなってきたことも。着れなくなったので、早々に処分した苦い経験があります!

また、「お客様のタンスに眠る結城の8割は、類似品だろう。」と京都の問屋さんが、怖いことをおっしゃったこともあります。消費者の目がうんぬんではなく、どれだけ、消費者を惑わし販売し続けたたのでしょう!!
小売店のボクも、ある京都の問屋さんに騙され続けて、着物を買いまくった時代もあります。

梅干しやレモンを口にほうばって歩んだ人生のおかげで、「今」があります!


「結城」は、ワンチームでモノ作り

作られている場所ですが、商品が「結城紬」と言うだけあって、茨城県の結城地方で織られています。東京から約100km。車で1時間半の場所で、あたり一面、田んぼが広がっています。
東京から近いので都会かと思いきや、思った以上に田舎でした。僕は、熊本県民なので、その風土に愛着がわきました。というか、風光明媚な土地で、嬉しかったです!

結城紬は、ワンチームでものづくりをします。織る人だけの名前が出たりすることはありません。それぞれの技術のプロ集団が、それぞれの分野で、最高級品を作り出していくのです。
つまり、みんなで作る最高傑作が、「結城紬」なのです。


3つの工程が、神業・神レベル。

製作工程のでは、特に大事なのはこの3つです。
「糸つむぎ」「絣(かすり)くくり」「地機(じばた)織り」の技術です。その工程のほとんどが、もちろん手作業。ほんとうに気の遠くなるような仕事、まさに神レベルです。

また感動的なのが、「地機」という最も原始的な織り方です。1000年以上も続いている織り方を、今もなお継承しているのは、本当に奇跡としか言いようがありません。

僕は、2回目に結城を尋ねた時、3泊4日で地機の織体験をしました。タテ糸を腰と左足で交互に張りながら織るので、最終日は左足がパンパン。足を引きずりながら、現場を後にした思い出が強烈に残っています。

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        写真は、1998.10.31。今から約25年前です。

「糸」、「染」、「織」のこだわりについて。

■使用している「糸」は、「手つむぎ糸」?
真綿(まわた)を広げ、人の手だけでつむぐ、手つむぎ糸を使用しています。原材料となる繭(まゆ)は国産。福島県産のものです。糸の引き方は、無撚糸(むねんし)と言います。撚り(より)をかけずに糸を引くのも特徴の一つです。

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     真綿を手でひいているところ。2015年6月撮影/現地にて。


結城には、カミさんとだったり、織体験だったり、社員研修だったり、別注だったりと5回訪れたものの、「真綿かけ」の仕事は、目にしていません。
「真綿かけ」とは、小指ほどの大きさの繭(まゆ)を手で手のひら二つ分ぶらいの長方形に広げる作業のこと。その場所は、福島の保原というところで、結城よりはるかに北で、時期も合わなかったからです。しかし、この手仕事は一度、目にしたいと思っています。


ヨコ糸には、杢糸(もくいと)を
使っています。杢糸(もくいと)とは、2本の糸を絡めて一本のヨコ糸としていることです。昔は、手仕事で杢糸作りをしていたそうですが、ここ数十年は「縮結城(ちぢみゆうき)」に使う半電動の機械で、よりよりゆっくりかけています。(^_-)-☆


■「染」は、化学染料?
今回の染めは、タテ糸が紫色、ヨコ糸に黒っぽい紫の色で染めてもらいました。もちろん、こちらから色もリクエストしています。

染めは、「化学染料」を用います。「えーー、結城は高価なのに、か、化学染料?」とお思いでしょう。僕もそう思っていましたが、その訳もまたお話しさせてください。

京都で染めると、「引染め」や「たき染め」ですが、結城の染は、「たたき染め」です。本当に上手になさいます。染をなさる方は、織の仕事も分かるそうです。ゆえに、織り子さんのことを考え考え、染をするそうです。
「次の人の仕事のことを考えて、自分の仕事を全うする。」生き方にも通じますし、染の最高峰、安田工房の方も同じようなことをおっしゃっていました。

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      ボクの「たたき染め」は、魚釣り、それとも剣道?




■織りは、地機(じばた)?
織りは「地機」。現在「地機」で織られているのは、茨城県の「結城紬」と、新潟県の「越後上布」だけです。志村ふくみ氏のような「重要無形文化財保持者」の作品でも「高機」で織ってあります。中には、「織機/しょっき」≒機械で織られている保持者の方もいらっしゃいます。
それぐらい、地機というのは、大変な仕事なのです。

それから、織る前の仕事の一つに「筬通し(おさとおし)」があります。この仕事を通して、着物が織れるようにするタテ糸の数は1500本以上になります。何と、この着物に1500本の手で引いた糸が入っているのです。

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ここまで、お付き合いくださりありがとうございます。


着物用語が出てきてややこしいことがあったかと思いますが、この結城紬の「織」が分かると、織物の全てがわかるようになります。
着物を愛する方、これから着物デビューする方の目が肥え、詳しくなっていただきたいのです。そうすると、無駄買いをしたり、数年後に本当のことが分かって後悔することがなくなるからです。


次回「その②」では、いよいよ「男着物の逸品・3大特徴」という内容でお話させていただきます。
このことを知ることで、着物に興味が出て、先人の匠の技が分かり、着る喜びが一段とアップすることでしょう!

着物が大好きな皆さん、ぜひお愉しみにお待ちください。

最後まで、読んでくださって本当にありがとうございました。
他のnoteも、ぜひ見てください。

きものサロン和の國 代表/茨木國夫 090-3600-9495


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