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「袖なし羽織」or「陣羽織」。愛用歴30年で、『肩衣(かたぎぬ)』と名前が決まりました!

「袖なし羽織」のネーミングに迷い?

ボクは毎日着物生活30年目。「洋服の所有枚数は、ゼロ枚」というチト変わり者です。そんなボクですが、着物(長着)の上には「袖なし羽織」を愛用し続けています。愛用歴は約30年。いちばん最初は、羽織の両袖を外して着たのが始まりでした。ゆえに「きもの宣言」の一年後から、その魅力にどっぷりと浸かっています。

しかしながら、「『袖なし羽織』を何と呼んだら良いか?」 ボクにとって大きな関心ごとでした。着ていて安心なのに、ネーミングが気になり続け、あまりお客様にオススメしていませんでした。

ついに、「袖なし羽織・肩衣(かたぎぬ)」という名称に決めました!!! 今日はそのことについてお話しさせて頂きます。

「袖なし羽織・愛用歴30年」での思い。

袖なし愛用歴は30年ほどになります。しかしながら、個人的に、「(袖が)ナシより、アリの方がいい」と「袖なし羽織」と言う名称に何か微妙な違和感を感じていました。

10年以上前からは、ボクの名前の一字をとり「国モン羽織」と呼んでいました。ゆえに和裁士さんや数名のお客様とは共通言語がありましたが、この名称も、自分で命名したものの、しっくりきていませんでした。

この羽織のことを「陣羽織」と言ったりしますが、自分自身を守ってくれるような羽織なので、「戦国時代、戦の陣中で殿様が着る格好いい羽織」とは、ちょっとボク的に印象が違っていました。。。

今一度、「袖なし」のネーミングについて考える!

還暦も過ぎ、これから「男の着物」の啓蒙活動を本格的にやっていこうと思っています。そうなると、「袖なし羽織」は必須アイテムです。この一枚を羽織るだけで、ボクを、そして着物姿を守られている安心感は、半端ありません。
「この良さを広げていきたい!」と思い、この羽織のネーミングを今一度、考えてみました。


「カジュアル・ロング・ベスト」  横文字で?
「ラク羽織」  楽に着れて楽しい羽織?
・「和おーる」  羽織ると和でつつむイメージ?
「令和羽織」  令和に生まれた新しい感覚の羽織?
しかし、審査委員長?のカミさんや、スタッフのダメ出し続きです。。。


「袖なし羽織・『和玄(わげん)』」と命名か?

袖なし羽織「和玄」」は?
これには、にっこり。納得!?
しかし、「玄」を元気の「元」だったり、「源」だったり、、、 
袖なし羽織「和元」、袖なし羽織「和源」と紙に書いたりしました。 

袖なし羽織「和気」?
袖なし羽織「和音」? 
袖なし羽織「中和」?  うーーーーん。

「やっぱり、とりあえず、これで行こう!」
「袖なし羽織『和玄』で!!」

「和」は、「仲良くする」「やわらぎ」などの意味。古来より大切にし続けたもので、心が落ち着き、温かいものを感じます。
「玄」は、「奥深い」「ひけらかさない」などの意味。分かる人には分かるという深いお守り?みたいなイメージがあります。

「わげん」って、段々心に染みてきました。新潟には、熊本地震の際に支援してくださった「和gen」さんという着物屋さんがあります。
やっぱり、本当にいい名前です!!

ぐぐっていたら、心もググッと!!

嬉しくなって動画撮影し、4月6日YouTubeの動画にアップしました。
翌日の夜、noteにもそのことを投稿しようと思ってググっていたら、日本大百科全書(ニッポニカ)に下記のように記されていました。

「袖なし」とは、
袖のつかない上半身衣の総称であるが、和装の場合は、袖なし羽織をさし、表衣の上に着用する袖のつかない衣服をいう。羽織系は折衿(おりえり)、半纏(はんてん)系は立衿である。手の動作が楽で、防寒用として羽織下に用い、老人は羽織のかわりにこれを着用する。布地は、滑りがよく軽い絹織物、化繊織物、綿織物などを用いる。充填(じゅうてん)材は木綿、真綿などである。

近年は襠(まち)をつけたものと、袖ぐりをえぐったものとがあり、形態は自由で、キルティングのものや、裏に毛皮をつけたものなどもある。古くは肩衣(かたぎぬ)、手なしといい、庶民の衣服であった。室町時代に羽織の初期の形として羅紗(らしゃ)でつくった陣羽織ができ、下級武士や庶民の間で袖なし羽織として着用された。これが、その後、武士の間では陣羽織、庶民の間では陣兵(甚兵衛)羽織となった。
            日本大百科全書(ニッポニカ)より引用


飛び込んできたのは、「肩衣(かたぎぬ)」と言う名称です。

袖なしのことを、「古くは肩衣(かたぎぬ)、といい庶民の衣服であった。」
この表現、とっても好きです。
特に、庶民の…というところが、たまりません。

「かたぎぬ」とは、「肩」の「衣」と書きます。実際に肩に当ててみると温かくもあるし、とても大事なような気がしました。
この「袖なし羽織」一枚で、守ってくれる安心感があり、ボクが描いているイメージとも合います。

加えて、「肩衣(かたぎぬ)」という言葉を歴史に学べることも、とても有難く思います。着物は1000年以上の歴史があり、先人が使っていた言葉をリバイバルできるのも、誠に嬉しいものです。

「肩衣(かたぎぬ)」の文字を眺めていたら、謡曲の「羽衣(はごろも)」が頭をよぎりましたが、改めて「袖なし羽織・肩衣(かたぎぬ)」って、いい名称だと思います。
ぐぐっていたお陰で、心もググッと来た感じです!!

「袖なし羽織・肩衣(かたぎぬ)」で、再出発!

「袖なし羽織・和玄」との思いが一転。カミさんとスタッフ(麻由子さん )に相談したら、「肩衣(かたぎぬ)は良いかも。」 と。

「袖なし羽織・肩衣(かたぎぬ)」と言えば、「袖なし・袖なし」と言っているようなものなので、ほんの少し微妙な気がしますが、いつの日か「肩衣(かたぎぬ)」という言葉が文化となり、着物(長着)の上に羽織る袖がないタイプを、「肩衣」と呼ぶことが当たり前の文化となる日を願っています。

「自分で着て、本当にいいな〜と思うものを伝えていきたい!」と常々思っていましたが、「ちゃんとした名前が決まっていないこと」ただ、それだけで、ずっと控えてしまっていたので、申し訳なく思いますが、これで、皆様に自信を持っておすすめできます。
ノドに詰まっていた魚の骨が取れた状態と言いましょうか。。。とっても嬉しいし、心が晴れやかです。

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「袖なし羽織・肩衣」で、安心感を手に入れる!

「袖なし羽織・肩衣(かたぎぬ)」”に袖を通していると、これまで「格好いい!」とも言われたりしますが、僕自身は、ずっと「袖なし羽織」で、
「着物姿の不安」を「安心感」に変えていた。
とも言えます。

具体的には、現代社会の中で、着物姿は目立ちすぎるので、着物と帯の目立つ姿を、守り、包み込んでくれていたものだなーと改めて思っています。

また、着物と帯姿では心もとなく、一枚「袖なし」を羽織ることで、着物姿に、着物・角帯・袖なしという「調和の美」を取り入れようとしていたのかもしれません。


ぜひ、日本文化とともにある 「袖なし羽織・肩衣(かたぎぬ)」を、着物の上に気軽に羽織って、楽しんでいただけたらと思います。
そうすると、自分自身が「着物というか? 日本というか? ご先祖様というか? 何かに守られている安心感」みたいなものを感じることができます。

まさに、温故知新。「袖なし羽織・肩衣(かたぎぬ)」をどうぞよろしくお願いいたします!


きものサロン和の國 代表 茨木國夫 
電話 090-3600-9495



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