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肉屋の日常シリーズ

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#アブノーマル

肉屋の日常 第五巻

   肉屋の日常  第五巻                      時に、2018年8月30日、午前十一時。  中出は、例によって、上野の事務所にいた。その中で珍しく、彼は、席を立っていた。他でもない、マキの到着を待っていたのだ。指定した時刻から、30秒が過ぎただけだが、居たたまれなかった。かといって、遅れてくる旨の連絡はない。彼が右手首の腕時計を見やると、一分が過ぎつつあった。その時、インターホンが鳴った。応答もせずに、ドアに寄って、のぞき窓を覗くと、汗にまみれたマ

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肉屋の日常 ~柔肉専科~ 第三巻

肉屋の日常  第三巻          10 猛暑が続く八月。その六日。  コンクリートジャングルの東京は、外出する気分になる場所ではなかった。だからなのか、不精な中出知男は、今日も、朝十時を過ぎたにも関わらず、ウィークリーマンションの一室で、冷房を効かせるだけ効かせながら、万年床ならぬ万年ベッドでごろ寝していた。風量少なく、室温だけ下げて、二十一度にしていた。Tシャツとトランクス姿で、寝そべって、スマホを耳に当てながら、A4ノートパソコンでネットサー

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肉屋の日常 第一巻

        肉屋の日常 ~柔肉専科~                          新井琉時     はじめに。序にかえて タイトルをご覧になった瞬間、察しのいい読者なら、いかな代物になるかは、おわかりであろう。そう、拙稿に登場する「肉屋」が扱うのは、家畜ないし家禽の肉ではない。概ね白い、女の肉だ。なので、いわゆるフェミニストの方々に、拙稿をお読みいただくことは、勧めない。ただしこの「肉屋」は、女衒とは違う。どう「捌く」か

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肉屋の日常 第二巻

   肉屋の日常               第二巻            7  中出知男は、上野の、あるワンルームマンションにいた。といっても、上野駅からは遠く、むしろ、地下鉄の入谷が近いくらいだった。本日面接に来る、アサミには、メールでその旨伝えていた。  「事務所」としていた九階建てマンションの、六階の一室だが、オートロック、などはない。彼が借りている部屋にたどり着くには、エレベーターに乗って、六階で降りたところで、右に出てから、二件目の角部屋に、六〇九、とある。そ

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