夏祭りの騒がしさが好きだ。 人やお囃子の声が響き、さくりさくりと砂利が笑う。 空を見上げれば提灯の光が舞い踊り、やがて大きな花が咲く。 目が眩みそうなこの日を私は毎年楽しみにしていた。 今日は駄菓子屋も一層賑やかで、お兄ちゃんはバタバタと楽しそうに駆け回る。 そんな兄を横目に私は緑色の浴衣に袖を通し、髪を結わいて簪を差す。 何か屋台で買ってきてと言われ、迷ったが折角ならと浴衣で行くことにしたのだ。 鏡で最終確認をして、そっと自室の戸を開ければいつもの面々が誉めてくれて、ふわ
蛇「そういえば、アンさんって今何歳?」 ア「作られてからはもう300年くらいになるでしょうか」 猫「さんっ...」 佐「流石に桁が違うなぁ」 ア「アンドロイドですから」 鬼「アンドロイドなのに飲食出来るのが素敵よねぇ」 ア「...そうですね。そこは先生に感謝しています」 ア「そういう黒鬼さんも100歳は超えていますよね?」 鬼「そうねぇ~。鬼になってからは150年くらいかしら?」 猫「もう世界が...違う......」 佐「はは、俺らには到底分からない世界だよな」 ア「私に
─お、いらっしゃい。 良い時間に来たね、お客さんが貸し切り状態だ。 ゆっくりしていってよ。 え、何で鬼灯がぶら下がっているのかって? ウチはたまーに夜まで開けてるんだけど、その日は目印として提灯をぶら下げてるんだよ。 だから今日は夜までやってるよってこと。 なんで夜まで営業する日があるんだって? うーん。......そうだな、他のお客さんもまだ来ないだろうし、ちょっと長話になるけどいいかな? ─ん、じゃあ、ラムネでも飲みながら話そうか。 先ずはそうだな~。夜に開く理由
幼い頃、人と話すのが苦手だった。 今思えば当然の事だったのだと、天井まで伸びる本棚を見て思う。 動物学者である父の書斎は、いつも本に溢れていた。 しかも父は興味の持った事はとことん調べあげる性格で、動物についての本は勿論のこと、植物学、言語学、色彩学...。その他様々な本がここに集められていた。 そのどれもが手に馴染んでいるということに苦笑を洩らしつつ、懐かしい光景を浮かべる。 幼い頃から大学院で学ぶような本を読み耽っていた俺と話が合う子どもなど、居る筈もなかったのだ。
とある鬼の村に、鬼の子がおりました。 鬼の子は、早くに親を失くしたからなのか、それとも何かの因果なのか。 感情といったものを知りませんでした。 泣くことも笑うこともせず、ただ静かな子を皆は気味悪がり、鬼の子はいつもひとりでした。 「鬼の涙はどんな病や傷も治すらしい!」 燃えるような夕焼けの日に、どこから聞いたのかそんな噂を聞き付けた盗賊たちに、殴られ蹴られ角が片方折れたとしても、ついぞ涙は流れませんでした。 とある日、森の奥でナニカに出会いました。 「おや、見つかって