見出し画像

Product On Shelf Story l EP. 14

GamexPait  長く置いたらおいしくなるもの
2021年4月25日公開

ポッドキャストで配信している、Gameplayとお料理の専門家による話です。
音声のみ配信を、日本語にして文字起しをしました。
今回教えてくださるのは、Paitさん(Mr. Kanat Naktanomsub นายฆนัท นาคถนอมทรัพย์ )

P:今日は興味深いテーマですね。身近にあるのに見逃しがちなもの。それは!

G:腐っているのに美味しいもの。え、腐ったものなんか食べないよ、って思っている人もいますよね。でも、私たちはほぼ毎日毎食、腐ったものを食べているんです。でも、この“腐っている”、は、美味しいんです。そして身体に悪影響はありません。
タイの食べ物にも、“腐っている”けど美味しいものはいっぱいあります。

P:一番よく知られていて、毎食口にしているだろうなと思うものは、ナムプラー(魚醤)ですね。それから醤油。微生物によって発酵して、新しい味が生まれたものです。タイでの発酵食品の歴史について簡単に説明しますね。

P:歴史的に見ると、3千年ほど前と思われる古代遺跡から、人の埋葬跡が見つかっています。ナコンラチャシマー県(コラート)にあるんですが。人の骨のそばに、雷魚の骨が見つかっています。恐らく死者の食べ物として一緒に埋葬されたと考えられています。これは、推測ですが、プラーラー(ปลาร้า 小魚を塩漬けして発酵させた調味料)ではないかとされています。プラーラーは東北部だけでなく、タイ全国で食べられていますね。プラーラーも、腐って美味しいものの代表的なものです。でも、これは推測で、生の魚をそのまま入れたのかもしれませんが。

(2:12)
G:アジア地域以外、アメリカやヨーロッパにも、“腐って”美味しい食べ物はあります。チーズ、ヨーグルトなんかですね。他にどんなものがあるでしょうか。

P:思いつくものがあります。ヨーロッパでは、ナンプラーは食べないですね。けれど、それはここ100年くらいのことで、実は食べていたんですよ。1,000年も前のローマ時代から。ガルムいうもので、海の魚を塩につけて水分を出し、水分も魚も食べていました。これって、ナンプラーでしょ。魚を発酵させて別の味をだした食物は、東洋にも西洋にも見られます。

G:プラーラーって、アンチョビに似ていますよね。

P:そうそう。他にも、魚に塩をして発酵させたものがスカンジナビアの国々で食べられていますね。シュールストレミングなんかは、すごく匂いが強いものですね。

G:プラーラーは、タイ人だけが食べているものではないです。フィリピンではバングンと呼ばれています。ベトナムではマム、マレーシアではペカサム、インドネシアではバカセン

P:カンボジアではプラーホックです。タイ語のプラーラーは、このプラーホックから来たんだと思うんですよね。プラホックプラホックプラホック、パラー(プラーラー)。。
他にも、プラーデーク(ปลาแดก)。これはラオス語で、プラーラーのことですが、デークは食べるとか詰めるという意味なので、魚を壷に詰めて塩を混ぜるような意味でしょうね。
あと、ウアという言葉。サイウア知ってる?ウアも、詰めるという意味。まとめて腸(サイ)に詰めるってとことね。

G:サイウアというなら、サイクロークイサーンを思い浮かべます。これも、腐って美味しい発酵食品ですよね。

P:酸味が出ますねぇ。

G:ネームもね。

P:ああ、そうですね。別の味が出ますね。

(4:58)
G:他には、カノムジーンがあります。タイ人はみんな好きですね。米粉また発酵した米粉で作られたものがありますよね。発酵させてつくるというのは、

P:文化ですね

G:そうです、文化、知恵ですね。食べ物に価値を与える。保存が利き、もっと美味しくなります。粉を発酵させるというのは、米粉をやわらかくして、傷みにくくします。生の米粉だと、大きく、色は白いです。粘りは少ない。発酵させるほうが価値が生まれるように思いますね。

P:価値というのは、さらに美味しくなるということでもあります。粉の発酵といえば、カノムジーンの他に、パートンコーがあります。ヤワラート(中華街)にミシュランの星のパートンコー屋さんがあります。

G:今から行きます?

P:え、行く?撮影が終わったらね。笑 
すごい行列ですよ。あの店では、粉の発酵した匂いがします。揚げてもまだ発酵した匂いが残っています。発酵した匂いのあるカノムジーン、パートンコー、とても美味しく感じます。微生物が旨みを生み出すんですね。科学的に計測すると、世界で一番旨みの多い食品は、パルメザンチーズです。イタリアのね。チーズも発酵食品ですね。

G:旨みって、化学調味料と思っている人多いですが、違いますよ。いろんなものから生まれるんですよ。

(7:09)
P:他にも身近に発酵食品はたくさんあります。たとえば、ガピ(กะปิ:小エビを発酵させたペースト)。

G:あ、待ってください。パートンコーの話なんですけど、アンモニアを使っている店がありませんか?

P:ああ、匂いね。発酵させているように見せるためにね。発酵させたら、その過程でアンモニアが発生しますからね。本当は発酵の過程を省いているのに。
ガピの話の前に。パンを作るときに発酵させるのに使うのは、イーストですね。最近では、サワードゥを使ったものが人気です。酸っぱいパンができます。この間できた、ミシュラン二つ星の店ですけど、店が開く前から酵母を作っていたんですよ。自家製イーストです。酵母、イーストは温度によっても場所によっても味が全く変わります。ヨーロッパの100年続くパン屋では、ずっと同じイーストを使っています。大切にされているんですよ。

G:腐っているほど、かっこいい。美味しい。

P:値段もお高い。笑

(8:41)
G:ヨーロッパ、タイの他には、韓国もありますね。キムチ、白菜のお漬物。タイ人も最近では大好きです。僕も大好きです。韓国料理店に行ったら、いっぱい食べます。

P:作り方ですが、白菜に塩をして日に干します。韓国は気温がちょうどいいので、ちょうどよく発酵して酸味が出ます。良い微生物が生まれて、悪い微生物を駆逐するんですね。

G:人間の腸内と同じですよね。良い菌と悪い菌が住んでいる。良い菌が増えると、

P:お通じが良くなりますね。腸が健康になります。発酵食品は、体に良い微生物が増え、悪い菌をやっつけるんです。

(10:03)
G:いろんなお漬物、タイでも良く食べますよね。P’Paitは好きですか?

P:好きですよ。

G:さっぱりしますよね。

P:都会では、日本料理店なんかでよく漬物が出ますね。でも、北部では、地元の漬物がたくさんあります。中国南部、雲南地方由来のものですね。よく食べられているのはパックシアン(ผักเสี้ยน)。茎が長くて、甘酸っぱいの。

G:筍漬けもあります。

P:日本や韓国から来た漬物が取り上げられますが、中国からもたくさん入ってきています。中国料理として、知らないうちに子供のときから食べている人も多いんです。豚足煮込みにも漬物がついているでしょう?なので、日本や韓国の漬物が入ってきたときに、抵抗なく受け入れられたんです。

G:にんにくの漬物とか。僕、好きなんです。

(11:52)
G:北部といえば思いつくのは、ジンナオ(จิ้นเน่า)です。作り方を見たことがありますが、肉に塩をして、バナナの葉で包んで袋に入れて、吊るしておきます。そして腐らせる(発酵させる)。出来上がったら、蒸して、タレにつけて食べます。

P:チェンマイのメーチェム地区が有名ですね。
なぜこんなふうにするようになったのか。昔は豚や水牛を賭殺すると、まずは傷みやすい内蔵や血を食べました。血はラープに混ぜたり、内臓は茹でて。でも肉の部分は大きいですから、冷蔵庫のない昔は傷まないうちに食べきるのは大変でした。なので保存食にしました。中部地方なら、日に干して干し肉にしましたが、北はそんなに暑くなく日差しも強くないので、保存食の作り方が違ったんでしょうね。昔、ビニール袋がなかったときは、バナナの葉で肉を包みましたが、きっちりと包まなければなりませんでした。ハエなんかが肉に卵を産んでしまわないように。ビニールができてからは、まずビニールで包むので、衛生的に良くなりました。

G:ハエも入らないし、悪い菌も繁殖しません。

(* จิ้นเน่า で画像検索してみてください)

(13:45)
G:ジンナオの話から、生ハムも思い出します。

P:Dry aired (Air dried) の製品が流行っていますね。乾燥発酵熟成させたものです。肉を適当な大きさに切って、部屋に吊るします。部屋には冷風が送られている。肉には塩をします。微生物がゆっくりと肉を溶かしてやわらかくします。そして、チーズなどに似た特別な香りも生まれます。

G:腐れば腐るほどおいしく、腐れば腐るほどお値段も高くなりますね。熟成させる期間が長くなるほどお値段も高くなります。

P:ハムについて。イタリアだとパルマハム。スペインはイベリコハムが有名です。イベリコ豚を使ったものですね。作り方は、肉に塩をして冷風で乾燥させます。肉の中の微生物が働いて美味しくします。肉の表面は塩で守られ、悪いバクテリアから守ります。塩はゆっくりと肉に浸透します。そして良い香りが生まれます。

(15:43)
P:アジアにもありますよ。たとえば、中国の雲南ハム。フカヒレスープや魚の浮き袋のスープの美味しさは、素材というよりスープにあります。数種類の肉とともに雲南ハムを使ってスープを作ると香り高くおいしくなります。キーになるのは、雲南ハムです。これを入れないと美味しくない。

G:発酵肉を作るのに、化学調味料を使って作る番組を見たことがあります。塩を使って作るのと工程は同じで、味がどうなるか、というものですが、とても美味しいと言っていました。肉がすごく柔らかくなると言っていました。

P:最近の研究では、化学調味料はそんなに体に悪いものではないという結果がでていますね。化学調味料は、結局塩の一種なんです。化学調味料はMono sodium(単ナトリウム)のことですが、sodium(ナトリウム)は塩のことで、結局は塩を食べているのと同じことです。塩を多く摂ると、身体は水を欲します。同じことで、化学調味料を多く摂れば、水を欲します。化学調味料は料理の世界を破壊したと言われますが、最近では塩と同じだと言われています。なので、ハムを作るときに使うこともあるでしょう。

G:僕は中華レストランに行くのが好きなんですけど、多分たくさん化学調味料を使っています。僕はアンチ化学調味料ではないんです。シェフなのに化学調味料を使うなんて、と言われますし、僕も自分では使いません。でも食べるのは好き。

P:高級な中華レストランに行っても、使っていますよね。彼らは香港調味料と呼んでいるものですけど、肉を漬け込んだりするのに少し使っています。中華料理の世界ではアンチではないですね。

(17:58)
G:腐っていて、美味しいもの。腐っているものを敵視しないでください。長く置けば置くほど美味しくなります。みなさん、Topsスーパーでぜひ発酵食品を探してみてください。

P:ハムもたくさんの種類を置いていますよ。僕もよく買いに行きます。漬物類も多いですね。

G:プラーラーもきちんとパッケージされて使いやすいものがたくさんありますよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?