【感想】ジャグリング・ユニット・フラトレス「プラネタリウムと望遠鏡」
はじめましての方へ。
【こちら】を読んで納得してから読んでくださいませ。
■公演情報
団体名:ジャグリング・ユニット・フラトレス
タイトル:プラネタリウムと望遠鏡
日時場所:2014.12.20-21 芸術創造館
■はじめに
感想だけ書くと僕としては最高に好みでした。ストーリーはわかりやすいものの奥が深くて役者陣のキャラ作りがとても良く出来ていて素敵でした。
周囲を固めるジャグラー勢も個性的で安定感があって、何より演出がとても革新的で、終わった瞬間これはやられたなと素直に思いました。
その上で以下には帰宅途中に思ったことをいろいろ書きました。
■ジャグリング×演劇ということ
ジャグリングの舞台はこの1~2年で格段に増えてきている。有料公演、無料公演、有志公演、サークル公演。作られる形や雰囲気は違えど、その多くはいくつかのジャグリングのルーティンを演劇的要素を取り入れることで繋いでいき、1時間程度の公演を作るものであった。そして、ここでの「演劇的要素」とは、無声劇もしくは舞台の進行役のみが喋りストーリーの中で演者を紹介することで話を進めていくというものが多い印象であった。
フラトレスはジャグリングと演劇の融合のために、これらとは違った形のアプローチを取っている。例えば本公演のフライヤにこんな記載がある。
『近年ジャグリングの舞台は音楽を流し、言葉を使用しないものが多くなってきています。しかし、言葉すらも音の流れ(=音楽)として使うことができるのではないでしょうか』(抜粋)
つまり、ジャグリングと演劇のパートを区別するのではなく、劇中の台詞すらもジャグリングを行うための「音」と捉えることで、ジャグリングと演劇の境目を曖昧になるという狙いが見られる。
近年のジャグリングの舞台が『ジャグリングの舞台を成立させるために演劇を取り入れる』のだとすると、フラトレスは『演劇を成立させた上で、更に面白くする為にジャグリングをどう組み込むか』ということを意識した団体であると感じた。
■演劇にジャグリングを組み込む
ストーリーの中にジャグリングを組み込もうとすると必ずと言っていいほど引っかかる違和感が2つある。
1.ジャグリング道具が舞台上に存在することへの違和感。
2.何故その瞬間ジャグリングをするのかという違和感。
ジャグリング道具や演技が、それを繋ぐストーリーに対して明らかに異質であるが故に上記の違和感は生まれる。
この点に関して、フラトレスは小演劇の下地があるからこそ出来る回答を用意していた。特定のキャラクターを演じるのはメインの3人のみで、それ以外のキャストは主人公の回想中の人や星といった、言ってみればストーリーの進行を補助する役割を全員で行っていた。
そして彼らは基本的にジャグリング道具を持っており、主人公の独白や対話にあわせて、複数人でのジャグリングを披露する。ただし、このジャグリングはあくまで会話の流れにあわせた視覚的な面白さを提供するための舞台演出としてのジャグリングであり、決して会話の邪魔をしない。要所要所でスパイスとして加えられるだけである。
これによる効果は2つある。
A.演劇を視覚的に面白くすること。
B.常に舞台上にジャグリング道具が存在していることで、
観客の意識から道具が存在することへの違和感が消えるということ。
Aについては他の小演劇でも見ることが出来るが、Bの効果についてはとても新しいものと感じられた。さらに、個人の演技についても複数人のジャグリングをしている状況が『普通の状態』として観客に刷り込まれているため変な違和感を感じることが無く見ることが出来た。
※もちろん、ルーティンと話がスムーズに繋がるような、繊細な演出がつけられた上だからである。
台詞を音としてジャグリングが繰り広げられる。まさにフラトレスがうたっている演劇×ジャグリングの形があった。
■ジャグリング×演劇である必要性
フラトレスは本公演でジャグリング×演劇の可能性を広げた。では、演劇の中にジャグリングを取り入れる必要性はあるのか。演劇だけではダメなのか。
この疑問に対しては、主人公が星との対話をするシーンの中でジャグリングをする必要があるとはっきりと感じた。
このシーンは、星空にしか興味がなかった主人公が星と心を通わそうと対話するのだが、途中で星が消え、唐突に自身の孤独に気付かされる。
その星との対話をペアのハットジャグリングで示している。
(※わかりやすさのためにシーン説明の細部は割愛してます)
対話の痕跡をハットという道具であらわすことで、星が消えた後手元に残った痕跡と、故に気付かされる主人公の孤独というシーンが強く表現されていた。
この対話を言語で行った場合、本来話すことの出来ない星と言語を交わす事に違和感がでるし、踊った場合消えた後のインパクトが減る。ジャグリングをすることで、よりシーンが際立っていると感じた。
■最後に
ストーリーについては、これを小劇場系の演劇としてみるなら飛び抜けてぶっ飛んでると言うことはなく、お手本のように綺麗に違和感なくまとめたなという印象だが、ジャグリング道具の使用や途中にルーティンを挟むといった制限があることを踏まえると、相当な構成力の高さを感じた。
数箇所、主人公2人の会話の時に間がちょっと短いかなと感じるところがあったが、全体を通してウィットの利いた演出やシリアスなシーンとのギャップ、台詞回しやテンポまで含めても相当完成度が高かった。
個人個人の演技に関しても、ストーリーや雰囲気に沿った演出や曲選択によりとても見やすかったし、何よりみんなうまかった。
次回以降どうなっていくのかとても楽しみにしています。
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初回なので頑張って書いてしまった感じがしますが、続けることを目標にゆるく頑張ろうと思います。
あと、レビューと書きながらなんか考察っぽくなってしまったな、と思いつつまぁいいか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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