【感想】アイサ・ホクソン『death of pole dancer』

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■公演情報

コンセプト・振付・ダンス:アイサ・ホクソン  
タイトル:death of pole dancer
日時場所:2015/2/8-9 KAAT神奈川芸術劇場 小スタジオ

■全体の流れ

TPAMディレクション公演。
演技時間30分程度ながら、今年最初の衝撃。

初めのシーンでは演者が使用するポールを持ってきてゆっくり組み立てていく。とても丁寧に。棒に自分の命を預けるわけだからひとつひとつの動作が念入りだし緊張感が伝わってくる。
(演出的には自分が知らない物が分解されていてそれが少しずつ組まれていくことの面白さを認識できた。)

次に、演者は組み上がったポールに対して全力で力をかけて引っ張る。何度も何度も。これも先程同様手を抜いて緩い状態でショーをすることは即死に繋がる。そんな緊張感が伝わってきた。

少しポールダンスを行ったあと、最後のシーンでは演者は高い位置で逆さになった体勢でかたまった後ゆっくり降りてくる。もとい落ちてくる。しばらくして地面まで落ち、そこで動かなくなる。見守る観客と動かない演者の膠着が十数秒続いた後客電がつく。しかし観客も演者も動かないまま数十秒が経過。その後観客の一部が拍手を始め、拍手は全体に広がり、観客が立ち上がり去ることで公演は終わりを迎えた。

■公演はいつ終わるか

最後のシーンがとても興味深かった。客電がついた時点で観客のほとんどは公演が終わりだと思っただろう。そして演者が立ち上がり礼、拍手と続く展開を期待していた。

しかしタイトルの通りポールダンサーは死んでいる。
決して起き上がらず公演は終わらない。

観客は演出から3つの選択を迫られるる。
・そのまま見続けるか
・拍手をするか
・そのまま立ち去るか

演者が永久に起き上がらないと察した観客は自然と拍手をした。

一番面白かったのは、拍手が起こった瞬間明らかに会場の空気が軽くなり観客が一斉に立ち上がったことだ。本来拍手とは演者へ賞賛を込めて行われるものだ。今回それが欠けていたとは思わない。しかし本公演においてはそれ以上に観客が「公演を終わらせるために拍手をした」ように見えた。それは即ち死んだダンサーと観客との張り詰めた空気の中での膠着状態を終わらせるための拍手ではないか。
もちろんその行動は演出によって強いられていたものではあるが。

終演後観客は席を立ちホールから退出をはじめる。円形フラットの舞台上では変わらず演者が死んでいるが、観客である大衆は気にもとめずに帰っていく。

公演とはいえ、その光景はとても不気味に映った。

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