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書きなぐりのーと

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いわゆるエッセイみたいな雑文です。思いついたこと、気になっていること、昔から考えていること、あったこと、なかったこと、「どうでも話だけど誰かに聞いてほしい話」を書きなぐってます。
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#日常

北新地の話

真っ昼間の北新地を歩くのが好きだ。 北新地というのは、大阪キタの高級クラブやスナックがひしめきあう歓楽街だ。いや、もはや今となっては「だった」、と過去形を用いるべきか。 大昔はそれこそ“座っただけでウン万円”という店がごろごろしていたらしいが、20年ほど前からは普通のバーや回転寿司の店なんかもできて、だいぶ敷居が低くなった。 とはいうものの今でもそういう高級店は健在らしく、夕暮れ時になると着物姿のママさんや、半径3メートルを香水の匂いで支配しているおねーさんなんかがゾロゾ

キャップを落としたおねえさんの話

7月の終わりごろに、京都まで打ち合わせに出向いた帰りのこと。 ちょうど帰宅ラッシュの時間帯で、京都駅の大阪方面行きホームは、百合子に怒られそうなぐらい「密」だった。おまけにほぼ無風状態で、サウナのような湿気と熱気。 この混み具合では座って大阪まで帰るのは無理だろうなあと、げんなりしながら、ぼくは新快速待ちの列に並んでいた。 斜め前に立っていたスーツ姿の女性が、バッグからペットボトルを取り出して、キャップを捻った。と、手が滑ったのか、キャップは彼女の手からポロっと落ちてしま