「投資の王国」とかいうチャンネルが酷すぎる5

前にネタにしたこれ

の続きかもしれない話

長期金利と株の益利回りを比較する愚行

前回までの動画では短期金利と益利回りを比較していましたが、なぜか今回の動画からは長期金利と比較するらしいです。なんで急に変更したのかさっぱりわかりませんが、前はなんで短期金利と比較してたんでしょうか?変えるなら説明して欲しいですね。

今回は前回より意味不明なことに株式の益利回り(=PERの逆数)と長期国債の利回りを比較しています。なんでこんなことを平気でするのか完全に意味不明です。益利回りというのは単純に1年で稼ぐ利益の割合ですから10年物の国債の利回りと比較なんてできるわけがありません。

もっと簡単な場合を考えるとわかりやすいです。動画の前半で利回りが高いという理由で短期債をおすすめしているところを例に考えてみましょう。

いわく、短期債が高利回りなので魅力的なのだそうですが、本当にそうでしょうか?例えば利回り5%の1年債と4.5%の10年債の比較を本当に利回りで見るのが正しいのでしょうか?考えてみましょう。

米国債はドル建てではほぼ無リスク資産ですが、話を単純化するために完全に無リスク資産だと思って考えてみましょう。このとき、1年債が5%で10年債が4.5%というのがありえるか分かりますか?

答えは簡単で、市場でほぼ無リスクの米国債がこの利回りで取引されているわけですから、当然ありえるというのが答えになります。では、なんでこの数字が正当化されているのでしょうか。

これも話はとても簡単で10年債をこれから1年保有しておくと5%の利益が得られるからです。こんなの当たり前です。そうでなかったら誰も長期債なんて買いません。なんで5%なんだ4.5%っていうのは嘘なのかというと、もちろんそうではありません。4.5%というのは10年間の平均の利回りです。最初の1年が5%で高くても何の不思議もないわけです。単に残りの9年間の利回りが4.5%より低いというだけです。

さて、どこで無リスクという仮定を使ったのでしょうか?それは、10年債をこれから1年保有して5%でない利回りが発生すると、経済的におかしな事態が起きることです。ようするに利回りが低い方をショートして高い方をロングすればいくらでも稼げます。無リスク資産を同じ期間所持した場合は同じ利回りを受け取らないとおかしいのです。

次に、無リスクという仮定を外しましょう。長期国債にはリスクがあり、リスクプレミアムを受け取れますので、現実には4.5%という数字はそのプレミアム分を上乗せした値になっているはずです。一方で、短期債にはほとんどリスクプレミアムはないですから、数字通りの利益しか得られません。ようするに長期債のほうが期待リターンが高いわけです。5%と4.5%という利回りの数字を比較して短期債のほうが魅力的だというのが、いかに馬鹿げた話かというのがわかったかと思います。

そもそも、短期債というのは投資目的で買うものではありません。投資と投機の区別として、リスクプレミアムを貰えるものが投資であって、貰えないものは投機であるという考えがあります。この考えでいくと、短期債は投資として買うものではないわけです。投資目的で債券を買いたいなら、断然長期債になるわけです。

さて、最初の問題である、益利回りと長期債利回りを比較するのがいかに愚かなことか考えてみましょう。益利回りというのは企業の1年の利益を基に計算しているわけですから、とりあえず株を1年保持した場合の期待利回りに何か影響を与える数字でしょう。これを長期債の利回りと比較することを考えましょう。長期債を1年保持するとどうなるでしょうか?上に書いたように長期債がもたらす期待利回りは元の利回りは全く関係なく、ほぼ短期債の利回りになることがわかっています。すなわち、比較しようとしている長期債利回りはいくつでも関係ないわけで、まだ益利回りと短期債利回りの比較のほうがましだったということが分かります。そして、益利回りが短期債利回りを下回っているということは、株の益利回りと期待利回りは全く関係ない数字だということも分かるわけです。

合わせて見たい。その2で取り上げた動画

こいつはあまりの酷さに前にノーコメントで記事を書いた動画なのだが、上の話なんかよりはるかにひどい内容だからオススメ。

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