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ま軍記 第三話「EPS撮影会@浅草周辺」

大将まちだの士気と共に、ま軍はその勢力を拡大させていった。
はとま、カルメン、ヲンノジ、本宮、他にも様々な人を巻き込みながら、まちだはLoveCherishの現場を駆け続けた。
ライブでのパフォーマンスを見て、また特典会でメンバーのパーソナリティに触れ、ま軍の面々はLoveCherishに引き込まれていった。
そして遂に、あの日が来る。

8月のある日、まちだが言った。
「『EPS撮影会』というものがあるらしい。50分で1万円」
「撮影会?でも、まちだ君、撮影とかしない人じゃん」
「撮影しなくてもいいらしい」
「じゃあ撮影会じゃなくない?何それ?」
撮影会は、アイドルを撮影するためのイベント。
ただ、撮影しなくとも、アイドルとコミュニケーションをとることができる。
初めて知った新鮮な文化だった。

撮影会の1週間前、まちだは予約サイトを見ていた。
撮影会の予約が始まったが、志田千鶴さんのEPS撮影会が1枠だけ埋まっていない。
何度、更新しても「志田千鶴 売切れ」の文字が出てこない。
いや、始めから悩んでなどいなかった。
夜中、酒の量が増えた頃、まちだは静かに予約を完了した。
「完売」
その文字を見て安堵を覚えた。
それと同時に、今まで経験したことのない恐怖に襲われることになった。

恐怖に襲われたまちだは混乱の渦中にいた。
「ハロプロに換算すると556,400円…LoveCherishは良心的!」
完売させた次の日に、まちだからそう送られてきた。
ハロプロの個別お話会は7秒1300円、50分お話できる今回のイベントに換算すると、およそ55万円超になるということらしい。
かなりの焦りが見て取れた。

運命の8月27日、初めてのEPS撮影会は一瞬のうちに終わったという。
浅草の喫茶店で50分、浴衣の志田千鶴さんとお話をした後のまちだは嘘のように晴れ晴れとしていた。
「最高だった!!マジかよ!!マジで最高だ!!」
「沼の一番底に沈んでしまった…ただ居心地がとても良い」
「もう何もかもが赤く染まってしまった。紅だ」
「普通に良い子で銀河で一番好きな顔だったら、それはこうなってしまう…」
彼は幸せの絶頂にいた。

「ゆめちゃんのEPSへ行けよ」
その日以降、まちだは会うたびにEPSの話をするようになった。
兎丸ゆめさんはとても人気があり、撮影会の枠はすぐに完売してしまう人だった。
関ヶ原で出会った先人に助言を請い、やっと1枠予約することができた。
「まちだ君はどうだった?」
「3枠とった」
ま軍の総大将は流石である。

私は江ノ島に因縁がある。4年ほど前から毎年、必ず訪れている。
そんな地が初めてのEPS撮影会の舞台となった。
ひどく緊張していて、兎丸さんと話した内容はあまり覚えていない。
これだけはしたかった質問をして、その答えを聞いて、ずっと追いかけていかねばと思ったのは覚えている。

大将はというと、最初の1枠で水族館に行った後、連枠に挑んでいた。
つまり、通常1枠あたり50分のところ、2枠続けてとることにより50✕2+10の110分となる大技である。
仲見世通りでの食べ歩きを終えたまちだは生き生きとしていた。
自分が最も活躍できる戦場を遂に見つけたようだった。

まちだは宣言した。

「EPSはすべてに優先する」

これから何が起こるのかも知らずに。

第四話「大将の死」へ続く



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