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ま軍記 第四話「総大将の死」

かなり多くの人に「読みました」と言われ、嬉しい反面、内心びびってます。
フィクションかつ内輪ネタとしてご覧いただけるとありがたいです。



「遅くにごめん。EPSには行けなくなった」
2度目のEPSを翌日に控えた金曜日の朝、午前4時25分に、そのメッセージは届いた。
あまりにも不穏な言葉に、私は、何かとんでもないことが起こったのだと直感した。

まちだ君には嫁がいる。
いわゆる「俺の嫁」、ではない。
民法第739条の届出による婚姻の結果、配偶関係を締結した配偶者である。
10年ほど前、彼の挙式・披露宴に私も参列した。

「嫁と離婚寸前というか、99%そうなりそう」
出張先の北海道から、まちだ君はそう連絡してきた。
詳しく聞くと、家に数百枚のチェキが入ったチェキ帳を置いていたのを見られ、何とか説得しかけた矢先に、Twitterも嫁さんにバレてしまったらしい。

7月に志田千鶴さんと出会ってから、まちだ君はライブに通い、チェキを撮り、Twitterで「おやつる!」「おはつる!」と毎日言い続けた。
その全てをまちだの嫁は知ってしまったのだ。

「”おやつる”じゃなかった、”おやつるなさい”でしたね」
まちだ君の嫁は、まちだ君との話し合いの最後にそう言い残した。
言葉の端々から嫁の底知れぬ怒りを感じ、もう、まちだ君は二度とLoveCherishを見ることはできないのではないか、と私は思った。
栄華の絶頂にいた、ま軍の総大将。その命はここに潰えた。

翌日のEPS撮影会、そこにまちだ君の姿は無かった。
貴重なEPSの一枠を使って、私は兎丸さんにまちだ君の身に起こったことを全て話した。
まちだ君の推し遍歴、嫁に隠していたこと、今回バレたこと、以前にも離婚危機があったことなど全て。

ま軍の危機的状況を見かねてか、EPSの舞台となった吉祥寺へ彼も駆け付けた。
まちだ君と私の20年来の知り合い、中島である。
私は中島と笑うしかなかった。「あいつは馬鹿だ」と。
なぜか吉祥寺にいたヤマダさんも一緒に、笑って笑って飲んで、まちだ君を弔った。

まちだ君は嫁と話し合いを続けたが、それは平行線を辿った。
まちだ君の嫁は、自分の夫が「地下アイドル」の現場に通い、特典会に参加することに耐えられなかった。
それは一生を誓った嫁としてごくごく自然な感覚だろうと思う。
さらに、まちだ君は嘘をついていた。いや、つき続けていた。
仕事で遅くなると言っては大塚の定期ライブに通い、ファンミーティングだと言い張ってEPS撮影会に参加していた。
まちだ君の傍若無人な振る舞いに、当然、溝は埋まることはなかった。

代償は必ず払わなければならない。
翌週の金曜日、こんな連絡が来た。
「(本名)、色々と迷惑をかけて申し訳ない、もう別れると思う。
式にも来てくれたのにごめんなさい。
色々と落ち着いたら飲んでください。」
まちだ君は遂に離婚届を書いた。

栄華の絶頂にいた、ま軍の総大将。
その命はここに潰えた。
そして、ま軍は大きな変化を迎えることになる。

一応、完。


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