ワープ

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「出力もった?カメラもった?入稿データいれた?」
「もちました!いれました!」

僕らは相も変わらず、師走を駆け抜けていて、毎日があっというまにすぎていくのに、もう12月が始まってから1年ぐらい経ったような気さえする。

今だってバタバタしすぎて、現場へ出るために会社を離れる時間はとっくにすぎている。

たくさんの荷物と上着をひっつかんで上司と2人やっと乗ったエレベーターで息を整えた。

ビルの車寄せにはタクシーを待つ行列ができていてげんなりする。忙しなくコンシェルジュたちが支払いをするタクシーのドアをあけ、新しいタクシーを迎え、次々にお客を捌いている。

「メリークリスマス!」

その中に1人混ざったサンタクロースが、私に飴を2つくれた。

思いがけないプレゼントに少し肩の力が抜けた。

「飴もらっちゃいました。」
ふふふ、と笑うその人も、昨日の晩にはサンタクロースだったに違いない。

「すごい、見て、ワープしてるみたいやな…。」
車窓に流れるように見えるイルミネーションで青色に光る木々と、その隙間に流れてゆくたくさんの人々は本当に昔テレビで見た、タイムワープのようだった。

文字通りに、心を亡くしそうな毎日の中でも、そんな風に思える心の余裕がある人間に私もなりたいと思った。



次の日、何に余裕を持ったのか、集合時間に目を覚まし、今年1番に自己嫌悪に陥ったので人生は中々甘くない。


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