帰国枠算数のレベル感

 帰国枠算数の入試過去問は、一般にはあまり出回らないことも多く、「どのくらいの難易度なの?」とか、「小学校の算数がきちんとできていれば特別な対策は必要ないの?」などの疑問を持たれる方が多くいらっしゃいます。
 または、「予習シリーズの5年生までやっておけば大丈夫?」とか、「予習シリーズの練習問題はやらなくていいの?」といった”予習シリーズどこまでやっておけばいい”系の質問も大変多いです。
 帰国生・海外生専門塾にて10年以上算数を指導し、学校別直前対策の模擬問題作成、また、その授業も担当していたプロが、これらの質問にお答えします。

①どれくらいの難易度なの?

大まかに答えると、、、
純粋に算数の問題の難易度としては、大体どの学校も一般の問題よりも1ランク下がるといった感じです。

 これに当てはまらない学校を挙げてみると、例えば、慶応湘南藤沢は算国について一般と帰国は同じ問題ですし、都市大等々力は説明会で、”帰国の問題も一般と同レベルで作成しています”と言っています。確かに都市大等々力は、大問1の計算は明らかに一般の方が難しいですが、大問2以降は難易度に差がありません。

 また、1ランクどころか一般に比べて算数の問題の難易度が大きく下がるところとしては、攻玉社、成蹊、白百合学園、広尾学園(AG)、開智日本橋学園などがあります。もちろん簡単に合格できるというわけではありません。これらの学校は国語算数が簡単な代わりに、高い英語力が必要とされるので、日本人学校出身者には難しい(ほぼ無理)入試となります。

②帰国枠算数のレベル分け

  主な学校について、純粋に算数の問題の難しさでS・A・B・Cの4段階にレベル分けすると、最高難度のSに入るのが、
S:聖光学院、渋谷教育学園渋谷、海城
 同じレベルに入れましたが、聖光学院と海城にも差があって、両校受ける子が過去問練習していると、明らかに得点に差がつきます。聖光学院の過去問では、4割くらいしか取れないけれど、海城の過去問では6割取れるといったように、子どもたちに聞くと聖光学院の方が全然難しいと答えます。
 渋々については、英国算の3教科で受験する場合は完全に英語勝負なので、算数は2~3割取れればいいのですが、問題自体の難易度は相当なものです。国算作文で受験する場合は、御三家レベルの力がないと難しいです。

 次に、Aレベルに入るのが、
A:市川、慶応湘南藤沢、東京都市大附属、逗子開成、洗足学園、立教池袋
 聖光学院と海城同様に、このAレベルの中でも差はあります。”この中では”、洗足学園の問題は易しいので、B方式の入試で合格するためには高得点が必要です。
 慶応湘南藤沢は、最近の算数の問題は易化傾向で、かつてより難問が少なくなっています。
 立教池袋については、帰国の過去問は一切非公表で、全く手に入りません。過去の受験した生徒からの情報をもとに、私は直前対策模擬問題を作成しておりました。その模擬問題の得点率と入試の合否、生徒からの感想をもとに推測すると、一般の過去問でしっかり対策をとっておいた方がよいです。問題形式は、大問10こ、一つの大問に小問が2こという一般と同じ形式です。

次に、Bレベルに入るのが、
B:学習院、学習院女子、攻玉社、頌栄、高輪、田園調布、東京都市大等々力、大妻、共立女子、サレジアン国際、芝国際、三田国際(ISC)、湘南白百合桐光など
 このレベルが一番ボリュームゾーンです。
 学習院は、帰国の過去問が非公表で手に入りませんので、こちらも立教池袋同様、学校説明会や過去の受験した生徒からの情報をもとに、私は直前対策模擬問題を作成しておりました。大問5つ構成で、大問3~5は記述式であることと、立体図形が出題されないというのがポイントです。
 三田国際(ISC)も試験問題は回収されてしまうので、問題を直接見ることはできないのですが、受験した子たちの感想からレベル感を割り出しています。計50分で国語と算数を実施するので、単純に割ると算数の時間は25分です。どちらの科目から行うかは受験生の自由で、得意な科目から手を付けて、難しい問題はすぐに飛ばすのが良いです。算数の最後の一問は思考力系の問題のようです。
 都市大等々力は、問題の難易度が上がってきているので、Aに入れるか少し迷いました。

最後、Cレベルに入るのが、
C:成蹊、白百合、東京女学館、広尾(AG)、開智日本橋、聖学院、文化学園杉並、京華など
 成蹊は英語勝負で、といっても英語もそこまで難しいわけではないですが、算数については半分もとれれば十分です。一昨年には、受験算数をほとんどやってない子が合格しました。その子は、おそらく本番の算数は3割程度だったと思われます。
 白百合は大問1が計算8問もあり、しかもけっこう複雑です。”Cレベルの学校の中では”、一番難しく、Bに入れるか迷いました。
 広尾は英語での出題で、ほぼ基礎問題です。計算問題の中に、□が二つあるトリッキーな逆算が出ます。この問題をまともに解こうとすると、けっこう大変な方程式の計算になってしまい、時間をロスします。広尾のこの問題は、答えが小さい整数になるので、当てはめていって解く方法もありです。

③小学校の算数がきちんとできていれば特別な対策は必要ないの?

 これは上記Cレベルの学校であっても、小学校で習う算数だけでは対応できません。
 Cレベルの学校群では、東京女学館、聖学院、文化学園杉並などは、帰国生入試の過去問をHP上で公開しておりますので、ご覧になってみてください。小学校の算数だけでは、40%も解けないであろうと思われます。

④予習シリーズ系の質問

・5年生のテキストまでやっておけば大丈夫?
・予習シリーズの練習問題はやらなくていい?
 これらの質問にはまとめてお答えしますと、、、
 まずS・Aレベルの学校を志望するのであれば、4-5年のテキストでは練習問題まで行い、6年下巻のテキストは難関校対策を使用し、つまり、一般生と同じくらいがっつり算数をやっておく必要があります。入試実戦問題集なども夏あたりから行っていき、力をつけていかなければなりません。
 
 Bレベルの学校を第一に据えるのであれば、4‐5年のテキストでは、基本問題までしっかり行って、練習問題は全部でないにしても1、2問解いておきましょう。もちろん、算数が得意で余裕があれば練習問題も全部解くに越したことはありません。また、5年生のテキストまででは力が不足します。6年のテキストを行うことで総合的に復習していく必要がありますが、6年上は発展問題やステップアップ演習は難しいので、重要問題チェックを確実に解く練習をするのが効果的です。6年下巻は有名校対策で十分です。

 Cレベルの学校であれば、4-5年のテキストは基本問題まで解いておけばよいでしょう。6年上のテキストは、重要問題チェックのみ繰り返し行っておけばよいです。基礎問題を確実に解けるようにしておくことです。計算力はしっかり鍛えておきましょう。

⑤まとめ

 以上、帰国枠算数のレベル感をお伝えしてきました。
 年度による難易度の差や、問題傾向も異なりますから、もしかしたらお子様によっては、上記レベル分けの難易度の差を感じないかもしれません。別レベルに分類した学校でも同じくらいの難易度と感じることもあるかもしれません。
 当然のことですが、目指す学校によって対策は異なり、併願する学校によっては必要とされる算数のレベルも様々に変わってきます。
 6年の夏や秋に志望校が変わる、または、なかなか決まらないということもよくありますから、できれば、最低限+αの準備を心がけておくとよいでしょう。



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