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「木の上の軍隊」と松下洸平さん:2016年版感想

1、衛星劇場松下洸平特集2020

「ベイジルタウンの女神」上演記念としてCS放送・衛星劇場が、2020年8月、9月に「衛星劇場松下洸平特集2020」を企画し、松下洸平さんの出演舞台等を6本とスペシャルインタビューを一挙放映してくれた。スカーレット以降にファンになった者には超絶嬉しい企画だった。
「木の上の軍隊」は、2016年版が2020年8月14日に放映された。
この作品を演じるために洸平さんがどのような努力をしてきたのか。背景を知るとより深く作品を観ることができるのではないかと考え、私は当時の様子を調べ、放映日に合わせて、感想とともにTwitterにアップした。それを元にここにまとめ直して記します。
作品に関連するインスタグラムやインタビュー記事、公式動画などは多数あり、厳選してリンクを貼りますのでぜひご覧ください。
特に、洸平さん自身の言葉が素晴らしいので、インスタは文章もお読みくださいね(*^^)v

★衛星劇場松下洸平特集2020ラインナップ
素晴らしい企画でした。最近ファンになった人たちのためにも定期的に企画・放映してほしいです!

・短編映画「ラララ・ランドリー」(若手映画作家育成プロジェクト2012年)
・音楽劇「リタルダンド」(2011年)
・舞台「ヴィラ・グランデ青山~返り討ちの日曜日~」(2011年)
・こまつ座「木の上の軍隊」(2016年版)
・Cube20th,presents音楽劇「魔都夜曲」(2017年)
・舞台「~崩壊シリーズ~『リメンバーミー』」(2017年)
・スペシャルインタビュー1,2

2、こまつ座「木の上の軍隊」概要

演出:栗山民也
作:蓬莱竜太
原案:井上ひさし
出演:
[2016年、2019年]新兵:松下洸平/上官:山西惇/語る女:普天間かおり/有働皆美(ヴィオラ)
[2013年の初演は、藤原竜也、山西惇、片平なぎさ]
上演期間:2013年4月~6月
     2016年:11月10日~27日
     2019年:5月11日~7月22日

3、こまつ座「木の上の軍隊」と洸平さん

こまつ座 「戦後“命”の三部作」のうち、「木の上の軍隊」「母と暮らせば」の2つの作品を洸平さんは演じた。これはすごいことで、こまつ座と演出家・栗山民也さんが全幅の信頼を寄せる素晴らしい俳優だという証拠である。

‬「‪木の上の軍隊」は2013年が初演。当時のキャストは藤原竜也さんと山西惇さん。‪これを洸平さんは客席で観ていて、夢中になったそうだ。‬
‪栗山さんは、洸平さんが2011年のスリルミー初演のときからお世話になり、舞台俳優としての洸平さんを育てた恩人。「木の上」の再演が決まるころ、洸平さんは栗山さんに会うたびに「木の上、頼むぞ」と言われていたそう。
再演は2016年11月で、情報解禁は約1年前の‬‪2015年12月11日。新兵役として出演することを洸平さんは早く皆に伝えたかったし、反響も大きく、自分にとって転機になるだろうと思っていた。‬‪初演が藤原竜也さんだということへのプレッシャーを感じることもなく、いつものように真摯に役に向き合い取り組んでいった。

「木の上」の告知を終え年が明けて、2016年の洸平さんも多忙でスケジュールはぎっしり。主なものをいくつか挙げてみると…

3月6日、バースデーイベント‬「おたんじょうびかい」
‪4月8日~5月3日、舞台「崩壊シリーズ〜九条丸家の殺人事件」
洸平さんにとって初のがっつりコメディー作品で、難しいけれど楽しんで演じていたようだ。
平行して4月末から「ラディアント・ベイビー」の稽古が始まる。
‪6月6日、舞台「ラディアント・ベイビー」開幕‬
6月11日のマチネで、洸平さんは舞台出演300回目だった。

こうした舞台の他に、YouTubeに「‬Beautiful」「恋の病」「青」と、オリジナル曲を次々とアップ。‬「いきものがかり」の「ラストシーン」PVに出演したのも2016年だ。

‪「ラディアント・ベイビー」に関しては、洸平さんがカルロスという役に合わせて体作りをしてバキバキの筋肉をつけたこと、主演で親友の柿澤勇人さんの怪我で大阪公演が中止になったことなど話題は多いので、いつか別の機会に‬…

さて、ラディアントが6月末に終了。
‪7月には「木の上」のチラシが出来上がった。‪「いつかこまつ座に出て、チラシに自分の絵が載ったら嬉しいな」と洸平さんはずっと思っていたそう。
‪8月には山西惇さんとの対談など宣伝の仕事が始まった‬。

そして9月はじめ、洸平さんは沖縄の伊江島に行った。こまつ座代表の井上麻矢さんと一緒に。‬
‪新兵のモデルになった人の息子さんに会うこと、当時の話を聴くこと、あのガジュマルの木を見ること…等が目的。
キャストが伊江島に行ったのは初めてで、洸平さんの仕事への真摯な姿勢がうかがえる。
洸平さんは、ガジュマルの木に登り、新兵と上官に思いを馳せ、沖縄戦について考え、泣いた。「俳優として、舞台の力を借りて戦争のことを伝えていくことは出来るのではないか」と考えたそうです。

★インスタ掲載日は2019年ですが、この写真は2016年に沖縄に行ったときのものです ↓

‬★こまつ座代表の井上麻矢さんとの対談‬。沖縄に行ったときのエピソードがあります ↓

9月の終わりに台本が届き、二人芝居なので膨大な量のセリフで、台本と格闘する日々。‬
‪並行して単発テレビの台本もあり、12月に開催決定したライブの準備も抱えていた。‬

‪10月に入り、初演の新兵を演じた藤原竜也さんに会えたと喜んでいる!一緒に写真も撮ってもらっていて、洸平さんはこの頃、既に髪を剃って坊主頭。当時は坊主に照れがあるのか帽子をかぶった姿️が多い(2019年に新兵を演じたときは、坊主頭の写真もたくさんインスタにアップしています)。‬
‪そして10月11日、稽古スタート。数日後には既に全身筋肉痛と…‬
‪2時間近くずっと木の上、さらに登り降りも。心身ともに悲鳴を上げつつ体のメンテナンスをしながら稽古を続ける。‬

‪★当時のインタビューでその苦労や覚悟を語っている。語り口はいつものように穏やかだが、語る内容はすさまじい。
上演後は体のどこかが痛い。今日はうまくいったとか、少しでも余裕や緩みが出たらこの作品は絶対に失敗する。常に舞台の上では極限状態でいたい。精神的な安らぎのようなものは今は感じないようにしている……等々 ↓

11月5日洸平さんはデビュー8周年。‪そして11月10日に初日を迎えた。

「木の上」はキャストにはハードな演目なのに、アフターイベントがいろいろあった。洸平さんが伊江島で撮った写真を配ったりトークショーもあった。
KsRoom イベント「木の下の住人集会」なんてものもあり、洸平さんとチェキでツーショット撮影会もあったそう…!!! うらやましい️…(*´-`)

‪‬‪休演日にも、次の舞台である「リメンバーミー」のポスター撮影があるなど、洸平さんは休みなし‬。
‪そして11月27日の千秋楽まで駆け抜けた。
洸平さんにとって得難い経験となったようで、「この作品は終わらない。またいつか新兵をやる」といった思いを抱いたそうだが、その予言は当たる。
‪こまつ座とのお付き合いが始まり、洸平さんは2018年に「母と暮せば」に出演し、複数の演劇賞を受賞したのだ。

‪‪そして、2019年5月から「木の上の軍隊」が同じ顔触れで再度上演された。「再演でなく新しい作品になった」と洸平さんは語っている。一番大きなことは、こまつ座の悲願だった沖縄公演の実現だろう。初演から6年、2019年6月26日に叶い、ニュースにもなった。

2019年の「木の上」公演中に、洸平さんは舞台出演500回目を迎えた。
洸平さんは衛星劇場のインタビューで、「木の上の軍隊」を「役者としての転機だった」と語っていた。
これまでで一番ハード。全部出し切った。自分の限界を知り、だからこそ、その先に何があるのだろう、と思ったと……

「その先」の洸平さんの活躍を、私たち今見ている。これからも見続けたい。

4、「木の上の軍隊」(2016年版)感想(ネタバレなし)

戦争を描いているのだけど、人間を描いているのだと思った。
戦争は人間が起こすものだから、ある意味当然なのかもしれない。
息をつくこともできない人間ドラマだった。多くの人が観るべき良作。

舞台には新兵と上官、語り部、ビオラ奏者の4人だけ。
そしてガジュマルの木が、まるで主役のように舞台中央にそびえ立つ。
俳優を信じ切らなければ上演出来ない演目だと思った。

シリアスなのに、それでもクスリと笑う場面が多々あるのは、さすが井上ひさしさんのスピリットだ。

洸平さんのインタビューによると、演出の栗山民也さんは、新兵の無垢さにこだわったそうだ。
無垢さに上官はイラつく。しかし、その無垢さに実は救われてもいた。認めたくはなかったのだろうけれど。

新兵は無垢であり、最後まで信じることをやめなかった。そこにある種の神性を私は感じた。

‪極限状態の人間の心情…‬
‪人は鬼である、と。‬

‪追い詰められたときに本当の人間性がわかると私は常々思っていて、そこでブレない人を信用する。‬

‪新兵はブレなかった。‬

‪洸平さんがその新兵を全身全霊で演じていた。‬
‪絶望と悲しみを瞳にたたえながら弱々しく笑う、その笑みには神々しさすら感じた。‬

「守られているものに怯え
 怯えながらすがり
 すがりながら憎み
 憎みながら信じる」

架空の話ではない。真実の物語。
昔の戦争の話では片付けられない。現代にも通じる物語だ。

私は「『戦争を知らない子供たち』を知らない子どもたち」で、戦争については子どもの頃に学校でさんざん教えられてきた世代。だが、実は戦争ものは苦手で、戦争に関する映画もあまり観ない。
そんな私でも、「木の上の軍隊」は多くの人に観てもらいたいと思った。「母と暮せば」とともに。
「木の上の軍隊」の2013年版はNHKBSで過去に放映しているけれど、そして「母と暮せば」は2021年7月から再演されるけれど、両作品とも地上波でも放映してほしい。

5、メイキング・新兵!!

2019年の「木の上の軍隊」のときは、洸平さんは当時の様子をK's Room ブログではなくほぼインスタグラムに書いてるので、誰でも見ることができます。
頭を坊主にする時、新兵のメイクシーンなど動画あり!
他にもいろいろステキです  \(*ˊᗜˋ*)/♡ ↓



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