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音楽劇「夜来香ラプソディ」観劇記~2022年春に上演する気概~

1,はじめに

極上のThe エンターテインメントショー!
舞台と会場、音楽が一体となり多幸感に包まれた。
cube 25th presents音楽劇「夜来香ラプソディ」。この作品を2022年春のいま上演する気概を感じた。未知の新型ウイルスによる世界同時多発テロ的なコロナ禍が3年目に突入、さらにはロシアがウクライナに侵攻するという危機感と閉塞感のなか、心から笑って泣ける舞台を皆が待っていた。
劇中繰り返し語られる音楽の力について、音楽が持つ意味について。コロナ禍で痛めつけられていた舞台人たちのアンチテーゼにも感じられた。エンタメは人が生きていくために必要だ。それを最高の形で知らしめてくれたと思う。多くの人に観てほしい良質な作品。

※以下、ネタバレだらけです。
※3月12日の初日と18日に観劇した内容で書き、27日の東京千穐楽で細かい点を確認したので内容を修正、カテコの様子なども加筆しました。
※4月16日の長岡の大千穐楽のカテコの様子なども加筆しました。

2,オープニングから感動の仕掛け

この舞台はいつ始まっているのだろう。まず、そこからだ。

シアターコクーン。劇場に入ると昭和の古い歌が流れている。服部良一さんが手がけた歌なのだろう。私でも知っている歌が何曲かあり、一気に心を当時に運んでくれる。
客席で幕が上がるのを待っていると、会場がなにやら物々しい雰囲気となった。
憲兵だ!何人もの憲兵が観客席の通路をカッカッカッと歩いてくる。そして観客を監視するかのように直立した。
私は初日の席がセンター通路前の端だったので、すぐ目の前に憲兵が(正確には憲兵役の若い俳優さんが)立ち、いきなり緊張した。まだ服部さんの歌は流れている。観客席の照明もついたままだ。
と、開演のブザーが会場に鳴り響いた。固唾をのんで見守っていると、赤い緞帳の前に服部良一役の松下洸平さんがタクトを持って1人でふわりと現れた。スポットライトを浴びている。
洸平さんがタクトをサッと振ると、迫力ある音量で演奏が始まった。数人の踊り子が入って来て舞う。演奏は前奏だけで一旦ストップし踊り子も退場。会場からの拍手を浴びて洸平さんは話し出した。

「こんな大変なご時勢に本当に本当にありがとうございます。ほとんど不可能だと言われたコンサートができて…異様な状況のなかでここに足を運ぶことを選んでくださった皆様に感謝の気持ちでいっぱいです」

私たち観客に向けて洸平さんは語りかけた。私は早くも涙ぐんでしまった。開演してすぐ、5秒くらいに感じられた。

洸平さんは再び私たち会場の観客の方を見てタクトを振る。
白洲迅さんと木下晴香さんが舞台に入ってきて歌い出した。
すると赤い緞帳が上がった。舞台には階段が設置されていて憲兵が立っていた。メインキャストが次々入ってきて勢ぞろい。オリジナルソングの「希望の音」をキャスト全員で歌い始めた。ここまで一気だ。
観客席の照明はいつの間にか消えていた。

そこでようやく私は理解する。
これは舞台「夜来香ラプソディ」と、その中で繰り広げられる「夜来香幻想曲コンサート」が入れ子構造になって行われているということに。そこから心は終戦直前の上海に持っていかれた。私はコクーンで観劇しているが、そこは同時に上海グランドシアターで、不可能だったはずのコンサートの聴衆になっていた。
舞台上にある赤い緞帳とコクーンの赤い緞帳と二重に見えるシーンもあった。まさに入れ子構造。
舞台の最後まで拍手を我慢しなくてよい。素晴らしい歌を聞いたらその場ですぐに拍手してよい。私は夢中になって拍手していた。

服部がこのコンサート開催までの苦労を語るかたちで物語がスタートした。
どこからが「夜来香ラプソディ」の舞台で、どこまでが「夜来香幻想曲コンサート」なのか、不思議な感覚を味わいながら、しかしキャストたちの圧倒的な歌唱力に引き込まれていった。

3,あらすじ

物語は、服部良一(松下洸平)と黎錦光(れいきんこう・白洲迅)、李香蘭(りこうらん・木下晴香)の3人の友情とコンサート開催にまつわる苦難を縦軸に、李香蘭と幼なじみのリュバ(仙名彩世)の運命の再会、山家(やまが・山内圭哉)と川島芳子(壮一帆)の悲恋、山家と長谷部(山西惇)の心の交流などを横軸として描かれる。史実を基にしたフィクションだ。そして舞台が入れ子構造になっていて、コンサートの楽曲が随所で歌われ見事な音楽劇に仕上がっていた。

ときは終戦直前の上海。だが、そこに居るほとんどの人が終戦間近だということは知らない。
服部良一は20歳でジャズと出会い、日本で「別れのブルース」など多くのヒット曲を生み出している作曲家だった。しかし戦争が始まり自由な音楽活動ができないでいた。そんな服部が日本から上海に陸軍報道班員として呼ばれたのは、山家少佐のある思惑のためだった。

服部は上海の共同租界地のクラブ「ラ・クンパルシータ」で「夜来香(イエライシャン)」を作曲した黎錦光と中国の国民的歌手の李香蘭に出会う。
音楽への熱い思いをともに抱いている3人は友情を深める。3人で街に繰り出して手をひらひらと上に挙げる同じポーズでビールを飲むシーンは、戦時下での束の間の心の開放として象徴的だった。お忍びで来ていた香蘭だったが自由を感じたくて顔を隠していたスカーフをサッとはずす。これは、洸平さんが稽古している最中に提案したことだそう。

山家は、服部に西洋風のコンサートを開催するよう命令した。
黎も香蘭も大喜びだが服部は浮かない表情。「音楽を文化工作のための道具として利用している。中国の不満を和らげるためのまやかしだ」と言って反対する。服部には、「音楽は、今を必死に生きようとする人の希望のためにあるべきだ」という信念があったからだ。

しかし黎は言う。「租界地の外は悲惨な世界なんだ!」と。コンサートを開催することで少しでも人々の希望になればという気持ちが黎にはあった。
山家は、「日本は戦争に負ける。中国人の日本人への憎しみがあふれ出る」と衝撃的なことを皆に伝えたうえで、8年前に戦争で死にかけたときに、服部が作った「別れのブルース」を何度も聴いたり歌ったりして自身の支えとしていたことを告白し、「音楽には希望がある。奇跡を起こせる。だからコンサートをやる」と断じた。
すると香蘭も叫んだ。「私は、戦争が作り出した道具なんです!」と、実は日本人であることを明かすのだ。そして、「でも癒される人がいるなら喜んで道具になります」と歌への思いを語る。これは香蘭の生き方の決意表明にも聞こえた。

そうした話を聴き、服部は考えを改める。中国人として日本の侵略に苦しんでいる黎や香蘭とも違う、戦死しかけたわけでもない自らを省みて、「自分は安全な場所から嫌だと言っていただけだ」と恥じるのだ。そして、コンサート開催に向けて黎、香蘭とともに夢を膨らませた。
ここまでが1幕。

休憩をはさんで2幕の始まりは、やはり憲兵が会場通路に立ち、コンサート会場となり、歌とダンスが華やかに繰り広げられた。
そして物語はコンサート開催までの苦労話に戻る。

服部、黎、香蘭の3人で話し合う。
コンサートのタイトルは「夜来香ラプソディ」としたい。しかしラプソディは敵国語で使えないから「夜来香幻想曲」と書いて我々はこっそり「夜来香ラプソディ」と読むことにしよう。
最後の曲は「夜来香」がいい。中国人の黎が書いた曲を日本人の服部が敵国アメリカのジャズ風にアレンジする。ジョージ・ガーシュウィンのラプソディインブルー風に。それを歌うのは中国の歌姫、李香蘭…と3人ではしゃぐのだ。

しかし、租界地の外ではこのコンサートは歓迎されていなかった。
香蘭の顔を描いたポスターは破られたり大きく×マークを書かれたりひどい有り様。また香蘭は日本映画に出演したことを中国人に責められ苦しんでいた。
さらに黎は実は中国共産党員で、コンサート中に日本人を襲撃するための協力をしろと迫られていた。香蘭の命も狙われていた。
こうしたことを知った服部は、また考えを変え、コンサートは中止しようと言い出す。命を狙われてまで歌う必要などない、と。黎と香蘭が心配だったからだ。
しかし香蘭は歌うという決意を変えなかった。
主催を指示した山家少佐が失脚し日本に帰国させられることが決まり、中国の裏社会を押さえることができなくなったが、男装の麗人・川島芳子が代わりにマフィアと話をつけた。
その際、香蘭は「このコンサートで引退する。引退コンサートだとわかれば中国人のお客さんもたくさん来てくれるだろうから」ともくろみ、自分の人生をかけることをいとわなかった。

黎が共産党員に脅されていることを知り、どうしたら黎を救えるのか苦悩する服部を助けたのは、「音楽がそんなにいいか?」とコンサートに否定的だった軍人の長谷部だった。長谷部は実は、8年前の戦禍で「別れのブルース」を山家とともに歌った相手であった。
そして皆の思いが結実し、不可能だと言われた「夜来香幻想曲コンサート」は上海グランドシアターで開催された。

黎を脅し、コンサート襲撃を計画していた首謀者・ロシア人のリュバ(仙名彩世)は、実は香蘭の幼なじみで音楽の楽しさを教えた人物だった。リュバは香蘭だけは救いたくてこっそり会いに行きコンサートには出るなと言ったりする。しかし、歌う香蘭を撃つことはできずに日本軍に捕まってしまう。コンサートの後、連行される前に長谷部の取り計らいで李香蘭とリュバは涙の再会を果たすことができた。
そして戦争は日本の敗北で終わった。

4,ラストシーンも二重構造

「夜来香幻想曲コンサート」は華々しく幕を降ろし、会場も拍手喝采。これで舞台も終わりなのか?コンサートを成功裏に収めたところで終演?と一瞬思った。
しかしまだ舞台は続いた。

ピアノの前で笑い合う服部と黎。戦争に負けた国と勝った国の2人が終戦を祝い友情を確かめ合っていた。
戦後の厳しい現実が待ち受けている史実を知っている私たちからすると、2人の笑顔ははかない夢物語に見えるかもしれないが、個人の友情に国家の戦争など関係ない、ということがよくわかるシーンになっていた。
その2人の背後で、香蘭が祖国日本に旅立っていく様子も描かれていた(史実では、香蘭は中国に捕らえられたがリュバの尽力で日本人だと証明され、日本に帰国したのは終戦翌年の1946年である)。

音楽を愛し軍歌が嫌いな日本人作曲家の服部良一、中国人で共産党員の作曲家だが服部を尊敬している黎錦光、日本人だが中国人だと偽って中国の国民的歌手となった李香蘭。
国籍も背景も思想もまったく異なる3人が、音楽という共通項で結ばれ、その友情は戦禍を超えて続き、戦後に3人は再会を果たしたという史実がある。この感動的な史実に勝るものはない。舞台がハッピーエンドを迎えるのは当然なのだ。

★1981年、3人が日本で再会したときの様子が記されています


5,感想:演出と音楽の素晴らしさ

本来、舞台とは、ステージ上だけではなく、ときにはステージから降りて観客席の通路等も使って躍動感あふれるものとする演目も多い。
それが、コロナ禍で観客との一定の距離を取ることを余儀なくされてしまった。しかし「夜来香ラプソディ」は、安全にステージと観客席を一体化する方策を練っていた。

冒頭と2幕最初に観客席に現れる憲兵。入れ子構造にして観客がコンサートの聴衆だという設定にしたこと。
そして、2幕途中で山家が静かに観客席の間を歩いてきたときには息を飲んだ。山家が上海を去るシーンが観客席の通路を使って描かれた。それを見送るステージ上の川島芳子の悲痛な表情。2人とも言葉は一言も発さない。観客の間を歩いていても言葉を発しないので飛沫の心配もない。感染対策をしながら、会場全体を大きく使った演出は見事だった。言葉がないからこその2人の表情が印象的で目に焼き付いた。
こうした演出から、この演目は、前列よりも後方で観客席も含めた全体を観た方が圧倒的に楽しめると感じた。

舞台装置も豪華。中国と日本、欧州も混ざってエキゾチック。まさに魔都、上海を表現していた。

音楽劇と銘打っているのでなんといっても音楽は主役。
歌と演奏も素晴らしかった。李香蘭役の木下さんの伸びやかな歌声はずっと聴いていたいほどだったし、服部役の洸平さんと「夜来香」をデュエットするシーンは感涙もの。
他の女性メインキャストは宝塚歌劇団出身者で、歌も踊りも見事。チャイナドレスを着こなして脚も美しい。舞台上の大階段を降りながら歌うさまは宝塚のステージを彷彿とさせた。
なかでも、リュバを演じた仙名彩世さんは、他の役でも何度も出て歌っていた。冒頭、上海の雑踏でキセルを吸う女(パンフレットには売春婦と書いてある)。澄んだ高音が会場いっぱいに響き渡り、心をわしづかみにされた。
また、香蘭の回想シーンで、若い頃のリュバとして香蘭とともに「赤いサラファン」を歌う。
さらには夜来香コンサートで上海の歌姫、白光(ばいくぁん)として「バイバイ上海」を歌う。
八面六臂の活躍ぶりで、美しい歌声に私はすっかり魅了されてしまった。

男性陣も、上山竜治さんや山内さんら美しい歌声を披露してくれる人が多く、舞台が華やかになっていた。
cubeを挙げての演目なので、若手俳優も大勢出て歌い踊っていた。

さらに、「魔都夜曲」に続きこの舞台でも生バンドが登場。舞台が始まる前から、服部良一さんのBGMに紛れてバンドのチューニング音が聴こえてきて臨場感にあふれていた。生演奏の迫力は言うまでもなかった。贅沢な舞台だった。

私の胸に沸き起こった感動は、会場の拍手や手拍子が上演中ひっきりなしだったことも大いに影響している。それは、何度も書いているように入れ子構造になっているため、コンサートの観客として一曲歌い終えるごとに存分に拍手をして構わないからだった。
心から楽しいと感じたし、日ごろのストレスも発散できた気がする。最後列でも2階席でもいいから、何度でも観に来たい。この場に居たい、上海グランドシアターに身を置いて体感したい、と感じた。

6,おわりに:明確なメッセージ

音楽はいつだって僕らのそばにある。
どんなときでも芸術を求める気持ちは止められない。
音楽で戦争は止められないが、何かを止める力はある。
音楽は未来への希望の布石。

 ――劇中繰り返される音楽の力を信じるメッセージ。
続くコロナ禍と不穏な世界情勢のなかで、私はこの確かなメッセージをしっかりと受け取った。

 コンサートを開催するかどうかで服部の思いは二転三転するが、彼の苦悩はいまの時代にエンタメを主催する側の苦悩そのものである。音楽や演劇で人々に希望を与えたい。しかし開催することで観客やキャスト、スタッフらを危険にさらすことはできない。コロナ感染の恐怖とぴたりと重なるのだ。
それでも。どんな状況下でも、音楽を愛する気持ちは止められないし、音楽は人々を癒す力を持っている。
エンタメは不要不急ではない。人々が希望を持って生きていくために必要なものなのだという力強いメッセージ。
まさにいま聴きたい言葉だった。

音楽劇「夜来香ラプソディ」はcube創立25周年記念として上演された。20周年記念で音楽劇「魔都夜曲」を上演しているが、同じく戦時下の上海が舞台になっている。
主演の松下洸平さんは「魔都夜曲」で服部良一をモデルにした人物の役を演じているし、壮一帆さんも今回と同じ川島芳子を演じていて、李香蘭を「よこちゃん」と本作と同じように呼んでいる。山西惇さんは軍人を演じている。そうした連続性も感じながら楽しむことができる。
「魔都夜曲」を上演したあと、5年後の演目としてcubeが「夜来香ラプソディ」に決定したのはいつだったのか。パンフレットを見るとアイデア自体は黎錦光から日本に連絡があったエピソードを知ったときからあったそうだが、詳細はわからない。
しかし、2年前に世界中を襲ったコロナ禍で、cubeも中止を余儀なくされた舞台が多くあった。開催するのか、中止するのか。感染者か濃厚接触者が1人でも出たらしばらく休演となるし、「明日上演できるかどうかわからない」という緊張感が続いた2年間だった。そしてコロナ禍は3年目に突入している。

冒頭の服部の「こんな大変なご時勢に…」との言葉は、同時にコロナ禍に来場した私たちをねぎらう言葉でもあった。
「ここに来られなかった音楽を愛する人に届けたい」との香蘭の言葉も、コロナ禍で観劇を諦めた人へのメッセージとして胸に迫ってきた。
このような時代にこの演目を上演する奇跡。いや、これはcubeの気概、心意気なのかと感じ、私は心から応援したくなったし、感謝の気持ちでいっぱいになった。

7,雑観

〇座長・松下洸平さんの魅力

音楽を愛し、音楽の力を信じ、友情に熱い服部良一さんは、洸平さんにぴったりの役だと感じた。
指揮棒を振るのは初めての経験でかなり練習したらしいが、タクトの先まで神経が通っているかのような繊細な動き、タクトをふるときのスッと息を飲む感じ、演奏や歌をいざなう優しい手の動き・・・見事だった。
歌も歌い、ピアノも弾き、ファンが期待していたことを全部ステージでやってくれて本当に嬉しかった。
燕尾服、軍服、スーツと何度も着替えて登場してくれたのも素敵だった。

1幕が降りるとき、服部はコンサート開催までの苦難を見据えるかのようにキリっと前を見つめる。洸平さんのその表情がたまらなく色っぽかった。
他にも、コンサート開催をめぐって苦悩するときや黎を心配して泣く表情(本当に涙がこぼれていた)。奥の椅子に座っているときの何気ない仕草までがやけに色っぽくてドキドキした。

今や「飛ぶ鳥を落とす勢い」と評される洸平さんは、cubeの看板を背負う俳優となった。4月から始まる連続ドラマの収録も同時にしていて、さらに上演中に新曲「KISS」のリリースもあり、忙しさは半端ないはずだが、この多幸感あふれる舞台だからきっと乗り越えられるだろう。

〇カーテンコールと観客

初日のカーテンコールは3回。3回目から完全スタンディングオベーション。キャストは全員ニコニコと幸せそうで、座長の洸平さんも堂々とした笑顔だった。
キャストが多いので2列で挨拶して途中で前後入れ替わるのだが、洸平さんたちが後列に移動したときに白洲さんと木下さんに笑顔で話しかけておられ、座長らしさを感じた。
3階席までまんべんなく観客を観て拍手でねぎらうのもいつもの洸平さん。
舞台「カメレオンズ・リップ」のときは、カテコでも笑顔がほとんどなくてキリっとした表情が続いた。初座長の緊張感からというよりも、ストーリーの深刻さと重さがそうさせたのではないかと思う。大千穐楽ではやっと笑顔だったが。
「夜来香ラプソディ」は、カテコでキャストもバンドメンバーも全員ニコニコの笑顔。それを観ているだけで私も幸せな気持ちになる。洸平さんも初日から笑顔がはじけていて安心した。

初日は招待客も多かったようで、服部良一さんのお孫さんたちも来られていたとのこと。パンフレットには、洸平さんと2人のお孫さんとの対談も載っている。
洸平さんはいつも役作りをじっくりし、関係者に話を聴いたり現地に行ってみたりと真摯に役と向き合っている。ご家族の話を聴けたことは本当に嬉しく、そして背筋が伸びる思いだったことだろう。

この時代を知っている人は観たいと思う内容だからか、観客席は年配の男性の姿も目立った。
私の親は早逝してしまっているが、生きていたら両親に見せてあげたかったなと心から思った。

★お孫さんのおひとりのTwitterとnoteです。初日と別日にも観劇されたそうです ↓

〇3月18日は・・・

舞台は生ものでどんどん成熟してゆく。
「夜来香ラプソディ」は、初日からかなりまとまっていたが、それでも18日の方が全体的に流れがよく、より余裕を感じた。
洸平さんが演じる服部良一さんは喜怒哀楽が激しく初日はオーバーアクション気味に感じた演出もあったが、1週間後の18日はより自然になっていた。快活で情熱的、友情に厚く友のために悩み涙する…苦悩がしっかりと演じられ、だからこそはじけた笑顔がより際立った。
苦悩しているときの色気がすさまじく、ここまでの色気は不要では?とたじろぐほどだったのは蛇足である。
18日の観客はノリがよくて、最初のカテコではけるときから会場全体が手拍子となった。カテコも3回で、2回目で半数くらいがスタオベ。3回目で完全スタオベだった。

〇レイ・・・

洸平さんが白洲さんに向かって劇中、何度も「レイ…」と呼びかけます。ときに親しみをこめて、ときに切なそうに。これには反応してしまいます。
洸平ファンが大好きなミュージカル(そして観ることがなかなか叶わない伝説の舞台)「スリルミー」で、洸平さんが演じるのがまさに「レイ」と呼ばれる役柄。「彼」から「レイ」と何度も呼ばれるわけです。舞台は観ていなくても舞台音源CDが発売されているので、小西遼生さんが「レイ」と呼ぶ声を聴くことは可能です。
レイと呼ばれるのは洸平さんの方なのにな…と初日は軽く混乱しながら洸平さんが発する「レイ…」にうっとりとしておりました・・・

8,東京千穐楽の様子(3月27日)

キャスト・スタッフ大所帯のカンパニーだが、コロナ感染者を一人も出さずに東京の全20公演を無事に終えることができた。
上山さんは楽日ということではしゃいでいたのだろう、「サンタルチア」のとき、最後の「サンターーーーーーーーーーーー」で引っ張って観客をあおり、会場からは拍手喝采とともに爆笑がおこっていた。
観客はリピーターも多かったのだろう。劇中、拍手も手拍子もスムーズに沸き起こり、ノリが良かった。

カーテンコールは4回だった。東京公演の終盤は4回の日が多かったと聞いていたので、千穐楽の今日は5回以上あるだろうと思っていたのだが、会場のアナウンスが入って終了となってしまったのが少し残念だった。

カテコでは、初回から洸平さんは「ありがとうございます」と一言挨拶。
3回目で完全スタンディングオベーション。
4回目に出てきたとき、座長挨拶をした。ところが…

第一声が「だぃっ…あっ…!」(大千穐楽と言いかけたw)。
洸平さんは自らちょい太を暴露するかのように大笑いで、「今日は東京の千穐楽ですね。大千穐楽は長岡です」と。これには会場も大爆笑と拍手。
山内さんから「だっあって言ってたやん」と即ツッコミ。

洸平さんはニコニコ笑いながら、以下のような挨拶。(以下、抜粋)

「本当にありがとうございました。東京で20公演やり遂げました。2022年の今聴きたい言葉が沢山あり自分でも励まされました。どんな状況でも芸術は止められないです。お客さんも感染対策をしっかりやって来てくださったからこそ今日まで完走できました…」

…と、コロナ禍にも触れながら感謝の気持ちを流暢に話していたと思ったら突然、「なんか話しますぅ?」と白洲さんにふった。
これがあまりにも突然の無茶ぶりだったので、会場はまた大爆笑。白洲さんは戸惑いつつも笑いながら前に進み堂々と挨拶。「皆さんからいただいた力を地方に届けたいと思います」
木下さんにも洸平さんはふり、「夜来香は他の舞台と違って…お客さんは夜来香ラプソディのお客様であると同時に夜来香音楽会のお客様でもあって。会場と一体となることがてきて楽しかったです」と。

さらに洸平座長は、「これから名古屋大阪長岡と届けたいと思います!」と。地名の順番などを間違えずに言えたことにホッとして聴いていたのも束の間。「皆さんも親戚の方とかにですね、ぜひ勧めていただいて…」とニコニコ。
すると山内さんがまたも「親戚の方て!そんな売れてへんの?」と即ツッコミ(チケットは完売ですw)。
するとめげない洸平座長は山内さんにも「なんか話しますぅ?」とニコニコと声かけ。
山内さんは苦笑しながら「係の人がこれ片づけないといけないから皆さんサッと帰るようにね」と。

洸平座長が「服部さんの言葉を借りると、このようなご時勢に本当にありがとうございました」と最後に閉めくくって、全員が舞台から退場した。

退場するときは毎回、洸平さんと白洲さん木下さんが舞台下手に残って3人でお互いの背中にしっかりと手を回して挨拶。仲良しな感じで見ていて微笑ましかった。出てくるときは、元気よく走ったり飛び跳ねたり元気いっぱいだった。

4回目のカテコ挨拶の後も会場の手拍子は勢いよく続いていたけれど、規制退場を促す会場のアナウンスが即座に入り手拍子は止まってしまった。会場の雰囲気は温まっていて5回でも6回でもカテコが続きそうな勢いだったので残念。山内さんの言葉もあって遠慮した観客が多かったこともあるだろうし、キャストやバンドメンバーが大人数なので舞台上でかなり密で、感染リスクや今後も地方公演に行くことを考えると仕方がなかったとも思う。
大千穐楽に向けて、5回目以降のカテコはメインキャストにするとか3人だけにするとか、打ち合わせをしておいてくださいね、と思いました(*^^)v

9,長岡大千穐楽の様子(4月16日)

東京千穐楽の後、名古屋、大阪と周り、新潟県長岡市へ。
長岡はcubeの社長の地元ということで縁があり、昨年の舞台「カメレオンズ・リップ」の大千穐楽も長岡で開催された。舞台は東京を皮切りに地方公演が大千穐楽となることが多いので、日帰り圏の長岡での開催は関東勢には嬉しいところ。

長岡市立劇場は1300人収容(両端は見えにくいと判断されたのだろう、空席にしてあった)。東京のシアターコクーンが約700人、名古屋が約1000人、大阪が約800人という収容人数だったので、長岡が一番大きい劇場である。チケットは完売だったので、キャストがステージから見る満員の客席の風景は壮観だっただろう。

全27公演すべて無事に幕が開いたのは、コロナ禍ということでは奇跡に近い。もちろんキャストや関係者の多大な努力の賜物だが、強運を引き寄せるのも力なので、やはり素晴らしいカンパニーだったのだろう。
座長の洸平さんをはじめ、キャストもスタッフも各地公演の間には他の仕事が入っている人が多く他の現場に行く。そこで感染リスクも高まる。大阪公演は特に、昨年の洸平さんの主演舞台「カメレオンズ・リップ」がコロナ禍で中止となっていたので、今回公演はどうか無事に開幕してほしいと私も祈るような気持ちだった。結果、5公演すべて行われ、全公演のカーテンコールで座長挨拶があったとのこと。本当に良かった。
1回きりの名古屋公演も座長挨拶があったとのこと。

さて、長岡での大千穐楽。
4月10日の大阪千穐楽から5日空けての公演。会場には、初めてこの演目を観る人と、東京公演などからのリピーターと両者いたが、会場のノリもよく拍手や手拍子が冒頭からスムーズに沸き起こっていた。

終盤の、山内さんが観客席通路を静かに歩いてくるシーンでは、観客から拍手が沸き起こった。私が東京で観た3公演ともそういうことはなかったので驚いた。拍手を受けて山内さんは驚いておられたかもしれないが、山内さんの登場は前方の客席からは見えなくて気付きにくいので、拍手が上がったことで観客が振り返ることができ、良かったなあと感じた。

カーテンコールは4回だった。
皆さんニコニコ、多幸感あふれる時間だった。
洸平座長は目立ったちょい太はなかったけど、ついさっきまでキリリと服部さんを演じていたのが嘘のようにリラックスして、ひたすら可愛いかった。

カテコ初回から洸平座長は「ありがとうございます」と一言挨拶。
2回目で完全スタンディングオベーション!
3回目に全員で登場したときに座長挨拶をした。(以下、抜粋)

 「本日は夜来香ラプソディの大千穐楽ありがとうございました。3月12日から東京で始まって無事に1つも欠けることなく全ての公演を完走できました。長岡という地に来れたこと、ありがとうございます」
ここまで真面目にちゃんと言えた!と思ったら・・・

「今日でぜーんぶ終わりっということで・・・」
と、突然ふにゃっと笑いながら

 すると山内さんが「くだけた言い方やなぁ」と即ツッコミ。

 洸平座長はまったくめげずにニコニコしながら「皆さんにも挨拶をね」と木下さんにふる。

木下さん
「なんというか、感慨深いです・・・」と、しっとりと李香蘭みたく話していたと思ったら
「ありがとーーーーっ!」と最後に大声で叫んだ!

 山内さんが思わずずっこけ
「いくつやねん? 23かーw (若いな~という感じで)」

 洸平座長は気にせずニコニコを続け
「ではもうすぐ30歳の・・・」と、白洲 さんにふる。

白洲さん「楽しかったーーー!」と大声で
洸平座長「可愛いー」と反応
白洲さん「さびしーーー!」とさらに大声で!

 白洲さんは、「黎錦光さんや李香蘭さん、服部良一さんたちが見守ってくれていたのだと思います」等、真面目な挨拶もきちんとされたが、洸平さんと2人のいちゃいちゃが可愛いかった。

 再び洸平座長の挨拶
「本当に素晴らしいカンパニーでした。皆さんに出会うことができて・・・」(ここまで普通の声)

 「本当によかったーーー!」と、大声で!

 さらに
「バンドメンバーや裏で支えてくださっている多くのスタッフにも拍手をお願いします」と、いつものように自ら拍手をあちこちに向けて。

 「cube25周年ということで、僕らcubeなんですけど・・・(山内さんと木下さんが違うため)2人ともcubeみたいなもんということでいいですか」

 (みたいなもんて、と山内さん即ツッコミ)

 「20周年で魔都夜曲をやって5年を経て真ん中に立たせてもらって感謝してます」と、ここも真面目にキメたが

「このカンパニーが好き過ぎて・・・出会うんじゃなかった!こんなさみしい思いするなら!」
・・・と乙女のようなことを突然♡(*^^)v♡♡

 「微妙な気持ちになるわw」と山内さん。

 最後はいつも通り、「このようなご時勢のなか・・・」と謝意。

 舞台からはけるとき、下手に3人で残り、洸平さんが白洲さん木下さんの背中にしっかり手を回して深々と挨拶。

 拍手はもちろん続いたので、4回目。全員出てきて拍手が止まり、何かを期待する雰囲気が。

すると洸平座長はごにょごにょと小さな声で
「え? なんかしゃべった方がいいですかぁ?」
会場はドッと笑いと拍手が起こった。
「ここバラさないといけないからね」
洸平座長はそう言ってニコッと笑い、皆が舞台からはけて3人だけ残ってまた挨拶した。
白洲さんと木下さんの2人に押し出され、1人だけ舞台の中央寄りに少し戻って、深々とお辞儀して終了。
上海グランドシアターは今度こそ本当に終演した。
皆さんがとにかく楽しそうで幸せそうで終わるのが残念そうで、cube25周年でこのカンパニーでやって良かったね!と思った。
私も終わるのが寂しくて、(4回も観たのに)なんでもっと観に来なかったんだろうなどと涙ぐむ始末だった。

★cube 25th presents音楽劇「夜来香ラプソディ」概要

演出:河原雅彦
音楽:本間昭光
作:入江おろぱ
キャスト:
松下洸平 白洲迅 木下晴香
壮一帆 上山竜治 夢咲ねね 仙名彩世
前田悟 森下じんせい 川原田樹 神谷直樹 吉岡麻由子
遠藤令 松崎莉沙 岩崎大 長南洸生 村上貴亮 木村風太
川崎愛香里 川原琴響
山内圭哉 山西惇

上演時間:175分(休憩20分含む)
上演日程
東京:シアターコクーン3月12日~3月27日
名古屋:日本特殊陶業市民会館4月3日
大阪:サンケイホールブリーゼ4月7日~4月10日
長岡:長岡市立劇場4月16日

 

★観劇日

3月12日、18日、27日(東京千穐楽)、4月16日(長岡・大千穐楽)


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