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スリルミー2021記録~伝説の初演ペア観劇から奇跡の配信まで~

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1、はじめに:私とスリルミー

スリルミーとの出会いは松下洸平さんがきっかけだった。洸平さんのファンになったときは既にスリルミー2018年公演は終了していて、過去のブログを読むなかで、2011年のスリルミー日本初演のことを知ったのだ。
日本初演の出演者は、田代万里生さん(私)×新納慎也さん(彼)と、松下洸平さん(私)×柿澤勇人さん(彼)。洸平さんは2011年3月12日、東日本大震災の翌日にあったオーディションで私役を得た。日本語の資料がないなか、演出家の栗山民也さんと初演に抜擢された田代さん、新納さん、ピアノ演奏の朴勝哲さんらでいちから作り上げていったそうだ。新納さんのインタビューによると、脚本は日本語には訳されたが、相槌ひとつ取っても「ああ」と言うのか「うん」と言うのかで印象は随分変わってくるので、稽古をするなかで修正を重ねて作り上げたそうだ。
上演されると、当日券で行列ができるほどの人気が出て、その後も再演を繰り返す人気作品となった。たくさんのファンイベントもあって、キャスト、スタッフとともに盛り上げていた。イベントの様子などファン垂涎の過去の動画もたくさん残っている。公式Twitterアカウントも、「ミスターめがね」と名乗っていてとても人間的で楽しい。
スリルミーは中毒性があるとよく言われる。一度観たらまた観たくなる。すべてのペアを観たくなる。再演もまた観たくなる・・・
そして、スリルミーは世界各国で上演されているが、熱心なファンは海外にも観に行ってブログ等を残しており、それらを読むのも本当に楽しかった。

世界で大人気のスリルミーは、著作権の関係でDVDにはなっていないが、2014年の公演がライブ音源CDとして発売されていて、松下洸平×小西遼生ペアのCDを私は2019年に購入。以後、カーステレオにCDは入れっぱなしとなり、ほぼ毎日のように通勤時に車の中でスリルミーを聴く日々が始まった。台詞も間もピアノのタッチもほぼ暗唱するほどに聴き込んでいた。早く生の舞台を観たいと切望していた。
それから約1年。コロナで中止される舞台も相次ぐ事態となっていた2020年11月2日に、スリルミーが2021年4月に再演されると発表があった。なんとしてもチケットを取る、生の舞台で観る、と私は決意した。

2、スリルミー2021:コロナ禍の悲しみを奇跡に転じて

スリルミー2021は、2011年初演の田代万里生×新納慎也ペア、2018年参加の成河×福士誠治ペア、オーディションで決まり初参加の松岡広大×山崎大輝ペアの3組。
私はさっそくホリプロ会員となり(無料)、チケットを申し込んだ。当たるかどうかは別として、できれば3ペアすべて観たかったけれど、4月には他に観劇予定の作品もあり、悩んだ結果、2ペアを複数回申し込んだ。チケット取りは評判通りに大変だったが、抽選で田代×新納ペアが2回当選した。うち1回はホリプロ会員限定公演だった。成河×福士ペアも今期限りかもしれないと考えどうしても観たかったので、補助席開放チケットを先着で募集したときに執念で1回分取った。
この3回が私のスリルミー2021になる予定で、4月末で終わるはずだった。
しかし、コロナのせいでいろいろなことが起こった。

4月25日から緊急事態宣言が発令され、この日から東京公演は中止となった(続く大阪公演も中止)。
私は24日と25日のチケットを取っていたので、明暗が分かれた。
24日の田代×新納ペアはギリギリセーフで観劇でき、25日の成河×福士ペアは幻となった。
24日で、私のスリルミー2021は終わったはずだった。
ところが、である。嬉しい誤算、予想外の出来事がその後続いたのだ。
まず、公演中止で意気消沈していたら、4月26日(つまり公演中止の翌日)に、「特別トークショーライブ配信」の決定がインフォメーションされた。5月1日(土)午後12時から45分間。翌日までのアーカイブつき。
このスピード感!さすがホリプロ、慣れている! と感動した。もちろん視聴チケットはすぐに購入して観た。まったくゴールド感のない私のゴールデンウイークのささやかな楽しみとなった。

このイベントの発案者は田代万里生さん。せっかくシアターウエストを押さえてあるのだからファンに対して何かできないか、と企画したそう。さすがです・・・ヽ(;▽;)ノ
トークショーは、3ペアのキャストがシアターウエストに椅子を並べて登壇していた。しかし、発案者の万里生さんは、他の出演舞台のキャストに体調不良者が出たため、万里生さんは検査もして大丈夫だったのだけど、大事をとって別室でワイプ出演となった。5人はステージ衣装のスーツのままだったけれど、万里生さんはスリルミーTシャツを着ていて可愛かった。
コロナ感染予防のため、各ペア同士が一緒に稽古することも顔を合わせることもなかったそうで、これは全員が一堂に集まる良い機会ともなったようだった。万里生さんと新納さんが10年前の初演時のことを問われていて、初演時の稽古の数日後に栗山さんの演出はほぼ完成されていて、それが今日まで続いている、ぶれがない、といったことを話していた。
新納さんと成河さんが若者ペアをからかったりしながらたくさん話し、福士さんが落ち着いて話をまとめたり実質的な進行役のような感じ。万里生さんは今も元の事件のことも含めて勉強し続けているそうで、スリルミー愛を感じた。
楽しそうな6人のトークを聴き、あぁもうこれで思い残すことはない、私のスリルミー2021は今度こそ終わったと思った。

ところが…である。
5月16日。スリルミーの舞台公演の配信が発表されたのだ。5月29日、30日の2日間にわたり、3ペアの配信がなされることになった。外国の作品で著作権が厳しくDVD化はもちろん配信も不可能だとずっと言われていた。まさに奇跡の配信だった。コロナ禍でずっと苦しく悲しい思いをしてきたが、この配信は、コロナ禍が転じた奇跡だと思った。

さらに、5月29日から6月13日まで、75分もの特別映像(アーカイブあり)も配信された。各ペアの対談とスタッフによるバックステージツアー、5月1日のトークショーのダイジェストという豪華な内容だった。

私がこれを書いているのはすべてを観た後だ。そして特別映像はまだ配信中である。
舞台本編の配信は、舞台を観損ねた成河×福士ペアだけにしようと思っていたのに、この機会だからと松岡×山崎ペアも申し込み、田代×新納ペアは舞台で2回も観たからいいだろうと思っていたのに、2ペアを観たらやはりまた観たくなって結局購入した。5月1日のトークショーを観たから特別映像配信はいいか、と思っていたのに、3ペアの配信上演を観てしまうと、たまらなくなって特別配信も購入してしまった。
・・・つまり、これがスリルミーの中毒性なのだろう。
スリルミー初心者ながらも、私もすっかり中毒症状が出てしまった。

スリルミーは多くの優れた劇評等が既にあるので私が書く意味が見出せなかったのだが、私自身がスリルミー中毒になった以上、今後の再演時も必ず観るだろうから、私の初スリルの感想は残しておきたかった。
そして何よりも、コロナ禍で起こった奇跡の配信のことを抜きにスリルミー2021は語れないと思ったので、その記録を残すことも目的とした。

配信のおかげで私は3ペアコンプリートすることができた。不可能だった配信という奇跡を起こしてくれたホリプロはじめ関係者の皆様に心から感謝しています。

3、初スリルミー感想:田代×新納ペア

4月9日(金)。私の初スリル体験は伝説の初演ペア。ピアノは篠塚祐伴さん。
真っ暗な舞台。セット2階の上手にピアニストが登場し、聴きなれたプレリュードが鳴った瞬間、ゾワッとして、スリルミーの世界に引き込まれた。そして「私」の登場。あとは100分間一気だった。
田代×新納ペアは、24日の舞台と配信も観ているので、以下は3回分観たうえでの感想である。

CDを暗唱するほど聴き込んでいたので内容を知っているような気になっていたけれど、そうではなかった。CDで得た知識は些細なもの。生で観るキャスト2人とピアノは圧倒的で、舞台を観て初めていろいろなことがわかった。CDを初めて聴いたとき、事件の残酷さにギョッとしたのだけれど、舞台で観るとそれほどでもなかった。もちろん少年殺しはむごいし許されないことであるが、その凶行に至ってしまった理由がわかるようにきちんと演じられているからだと思う。

万里生さんの私は本当に愛らしかった。彼を一途に思う気持ちが痛いほど伝わってきた。加えて圧倒的な歌唱力!
いつも冷たくされるから、後ろから抱きしめられたりキスされたりたまに彼に優しく触れられると、ハッと驚いた次の瞬間、陶酔の表情になる。そして自分からも抱きしめ返そうと腕を伸ばしたら手を振り払われてしまい、心底悲しそうな悔しそうな表情になる。とにかく表情がくるくる変わり、すねたり喜んだり一喜一憂。全身から彼への「好き」があふれている。万里生私は恋する19歳の青年だった。
配信では、53歳の万里生私が冒頭の回想シーンから涙を流している表情がアップで見えて心が震えた。こんなにも彼のことが好きだったのか、と思い知らされ、私ももらい泣きした。劇中、万里生私は何度も涙を流し、止めた。涙を自在に操っていた。

血の契約書を交わした2人だけれど、キスの代償が放火、体を許したから殺人というのは、あまりにも分が合わないように感じる。が、それは恋する者には愚問なのだろう。私が欲しかったのはキスであり抱擁であり、つまりは彼の心も体も自分のものにしたかった。だから、「好き」が「狂気の愛」に変わっていった。
監獄という閉じられた場所で99年間、つまり死ぬまで一緒に生きられるならば、それは私にとってどれほど魅惑的に思えただろう。2人で一緒に死ねるのであればそれも喜びだった。彼が死んだら、他の人に彼を取られなくてすむ。永遠に彼を自分のものにできるのだから。そこにたどり着くまでの手段はきっと何でもよかったのだ。そして子どもが犠牲になった。彼がそれを望んだから。
他の恋愛を経験したことがない世間知らずで視野が狭い若者の狂気、と言ってしまえばそれまでのことなのだが、こんな風に刹那的に生きている瞬間というのは、昔の自分の心をのぞいてみると心当たりがある人は結構いるのではないかと思う。
ただし、「誰かを独り占めしたいと思うこと」と、「そのために何か決定的なこと、犯罪を実行すること」との間には、とてつもなく大きな隔たりがある。普通は、思うだけで踏み留まるのだ。

では、私が踏み留まれなかったのはなぜか。「禁じられた森」の奥へ分け入ってしまったのはなぜなのか。
私は本当には彼を止められなかったわけではないと思う。私が彼を裏切り、森に誘い込んだ。動機は、彼とともに生きてゆくためだ。
そして、そこに説得力を持たせるために、彼の全演技がかかっている。

最初にスリルミーを観たとき、私役のほうが彼役よりも遥かに難しそうに感じた。舞台上で観客の目の前で一瞬で現在と過去、53歳と19歳を何度も切り替えて演じる。感情をどう切り替えているのだろうと思った。しかも、歌も両方の年齢で歌い分ける。相当の演技力と歌唱力が要求される役だと思った。
しかし、何度も観るうちに、彼役の難しさもわかるようになった。
新納さんがインタビューで話していたが、彼役はすべて私の回想の中で現れている存在。舞台上であれ、実在はしない。狂気の愛に囚われた私の回想のなかに現れる彼は、それだけの魅力を発する人でなければならない。そして、私を狂わせ、犯罪への道を転がり落ちてゆくだけの悪魔的な吸引力を持っている人。そういった意味で「超人」である必要があった(ニーチェのいう超人ではなく)。

そんな彼を、新納さんは完璧に演じていた。たたずまいから危険な悪の香りと色気が発していたし、万里生私に有無を言わせない強引さがある。確かに、「みんな君に夢中」になるわけだ。その説得力がある魅力だった。
何よりもさすがの演技力だと感じたのは、新納彼がずるい弱さを垣間見せるところだ。逮捕されてからのことだけではなく、血の契約書を私が破ろうとしたときに本気で焦っている新納彼の様子に、ずるさと弱さ、そして無自覚だろうが万里生私に甘えていることがわかる。
万里生私と新納彼の2人の関係は、私が彼に一方的に恋焦がれているのではなく、共依存関係であることを感じさせるのだ。共依存関係だからこそ、踏み留まることなく、2人手に手を取って禁じられた森の奥へ進み、線を踏み越え、戻れなくなってしまったのだ。

3ペアそれぞれにキャッチコピーがついているが、この2人は「究極の愛。」
愛を一番強く感じたペアだった。ゆがんだ愛なのだけれど。
かよわく見えた万里生私がラストで、「君を僕のものにするためだ」と満足そうに微笑む。
強気だった新納彼はすべてを察し絶望の淵で泣く。
立場が逆転した瞬間だった。
弱そうで強い私。
強そうで弱い彼。
究極の愛でつながる離れられない2人、共犯者。
スリルミーが世界中で人気の理由が少しだけわかった気がした。
伝説の初演ペアと上演前から話題になっていたけれど、奇跡の初演ペアだと私は思った。

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4、突然、東京千穐楽になってしまった日の様子:田代×新納ペア

4月22日(木)の夜、緊急事態宣言が25日(日)からまた東京などに出る、しかも今回は劇場も閉まる可能性が大きい、という報が飛び込んできた。私は24日(土)に2回目の田代×新納ペアを、25日(日)に成河×福士ペアを観る予定。しかも26日(月)にも別の舞台(カメレオンズ・リップ東京千穐楽)を観る予定の観劇週間だったので、宣言の規制内容と劇場の動きを注視していた。
4月24日、今年2回目のシアターウエストに行った。ホリプロ会員限定公演で、座席は2階上手。客席全体がよく見えたのだが、今日で東京公演は打ち切られる、東京千穐楽になる、とおそらく皆わかっていたのだろう。始まる前から恐ろしく会場は静まりかえり緊張感が伝わってきた。その客席の緊張感は、後日開催されたトークショーで新納さんらが言及していたほどだ。満員の座席。全員がマスクをして普段より息苦しさを感じているなか、咳ひとつないような緊迫した空間・・・
その緊張感がピークに達する頃、ピアニストの朴勝哲さんが登場した。そしてあのプレリュードが会場に響いた途端、私の涙がこぼれた。朴さんのピアノを生で聴くのは初めてだけど、毎日のようにCDで聴いていたあの音だった。やっと聴けたなぁ、しかも伝説の初演ペアの回に聴けて良かったという感動と安堵感が私を満たした。
突然、東京千穐楽になってしまった万里生さんと新納さんのスリルミーが始まった。

終演。カーテンコールはなんと6回もあった。
1回目、朴さんも舞台に降りてきて3人で挨拶。
2回目でほぼ全員スタンディングオベーション。
3回目は完全にスタンディングオベーション。いつもならここで終了のときが多いのだろうけど、今日は拍手が鳴りやまない。
4回目、万里生さんと新納さんが生の声で「ありがとうございました」と客席に向かって言ってくれた。まだ拍手は続く。
5回目、万里生さんが退場時に後ろ手を振ったのでこれで本当に終了なのだろうと思ったのだけど、それでも拍手は鳴りやまなかった。まさか6回目の登場なんてことがあるのかな?と思ったが、ホリプロ会員限定公演なのでお客さんも慣れているというか阿吽の呼吸なのだろうなと感じつつ私も必死で拍手をしていた。
すると、6回目の登場。万里生さんと新納さんは舞台でしっかり抱き合った。拍手はさらに大きくなった。2人は退場のときも手をつないだまま・・・✧(  ु•⌄• )◞◟( •⌄• ू )✧
これで本当に終了だった。
9日に観たときのカーテンコールは4回だった。6回というのは私は他の作品でも経験がなく、キャストと観客の熱量を感じた。
今日の公演が期せずして東京千穐楽になってしまう。それがわかってしまっていたからこそのキャストと観客の一体感だったのだろう。万里生さんも新納さんも笑っていた。泣いていなかったのが私は嬉しかった。本当は公演中止は悔しかっただろう。泣きたい思いもあったのかもしれないが、私たち観客のあの興奮を前にして、自然と笑みがこぼれたのではないかと思う。私たちの思いは伝わっているのだな、と思った瞬間だった。
偶然にもこの日のチケットを取れてよかったと心から感謝した。この日は、3ペアの公演がある日だったので、残りの2ペアも同じような感慨を抱いて演じたのだろうと感じた。

★急遽、東京千穐楽となってしまった日のことを綴った新納慎也さんと田代万里生さんのブログ。泣けます( ´•̥ו̥` ) ↓

★田代万里生さんのブログには、スリルミー愛にあふれる超可愛い写真もたくさん♡ 他のページもぜひ見てください(。•ᴗ•。)♡ ↓

5、成河×福士ペア感想(配信視聴)

いろいろな意味で怪演ペアだった。
成河さんも福士誠治さんも好きな俳優で他の作品の演技の印象が強く残っているのだけど、スリルミーの2人は率直に言って怖かった。私も彼もサイコパス的なペアだった。
成河私は、冒頭に登場したときから、「彼と一緒にいたかった」という言葉に尽きる、まさに狂気の塊だった。
福士彼は、冷たい色気を全身から放っていて青い炎のイメージ。自己愛が強く、悲しいことに私への愛は感じられなかったのだ。

同じ演出家でも演者によって作品の雰囲気が変わるのは当然のことで、だから全ペア観たくなってしまうのだけど、スリルミーの栗山さんの演出は10年前の初演時の数日間でほぼ完成しそのまま続いているという。そのため、たとえばキャストの雰囲気や歌い方などで各ペアの個性が出て多少の印象が異なっても、物語の解釈が大きく変わるわけではないと思っていた。聴き続けていた松下洸平×小西遼生ペアのCDと、田代万里生×新納慎也ペア、そして今回の若手、松岡広大×山崎大輝ペアも、同じ楽曲、同じ台詞、同じテイストだった。

しかし、である。
成河×福士ペアは違ったのだ。アドリブが多用されていて、スリルミーをこう演じるのか、と本当に驚いた。
たとえば成河私は、1オクターブ上の旋律で歌っている箇所があったり、動きも大きかったりした。
たとえば福士彼は、子どもを誘うシーンで、元々の台詞の合間に相槌をたくさん入れたり車のハンドルを回す独自の動きを入れたりしていた。
なにより驚愕したのは、成河私が、「計画 The Plan」の歌詞で、「きみは容疑者」という部分を、「きみは罪人」と言ったことだ・・・!
確かに容疑者という言葉には私もずっと引っかかっていた。彼が殺したのであれば、それを知っている私からすれば、彼は容疑者ではなく罪を犯した人、つまり罪人だからだ。しかし取り調べ中は「容疑者」と世間からは呼ばれるわけなので、そう訳しているのかなと思っていた。
それが、成河私はずばり「罪人」と言ったのである。
ドキッとした。

気になって仕方がなくなった私は、原著の英語の歌詞はどうなっているのだろうと調べるところまでいってしまった・・・(中毒症状のひとつだと考える)。すると、英語の歌詞は、容疑者でも罪人でもなくもっと抽象的だった。そして、他の部分の歌詞も台詞も、かなり意訳されているということがわかった。そもそも、原著では実名だったものが「私」「彼」と極限まで固有の情報をそぎ落としてシンプルに仕上げてあるのだから、意訳なのは当然なのであるが。

2011年の初演から「容疑者」と訳され歌われ続けてきた部分を、成河私は「罪人」と断じて歌ったのだ。
インタビューで語ったりパンフレットにも書いてあるが、成河さんは2018年に私役を演じるとき、既に完成されているスリルミーという世界に「反抗」し、台詞の改定案を出したりしたそうだ。それを栗山さんが面白がってくれたそうで、ほんの一部だが採用され、2人のアドリブのようなものが入った独自の世界観のスリルミーが出来上がったのだろう。
このペアのキャッチコピーは「さあ、何を知りたい。」と挑発的なものだ。審理官に対する冒頭の私の台詞だが、私たち観客に対して言っているようにも感じる。
成河×福士ペアのインタビューによると、栗山さんは2人に、スリルミーは「資本主義の病」を描いていると述べたそうだ。「究極の愛」とは対極となるような言葉だが、光を当てると影ができるように、人間の闇の部分にフォーカスしたペアのありようとして表現したのかもしれない。さらに、私と彼の関係性について、異なる世界観を持っている2人といった意味も込めて「太宰治と芥川龍之介みたい」と言ったそうだ。歴代のペアとは異色、独特であるのは明らかだ。そして、今回のスリルミーに再オファーがあったということは、栗山さんがこのペアのありようを認めたということに他ならない。

福士さんは、これまでは再演される作品に出たことがなかったそうで、私役が2018年と同じ成河さんならば、ということで今回のオファーを受けたそう。こうした経緯もふまえこのペアにさらなる再演はないかもしれないと私は思っているので、配信を視聴できて本当に良かった。
・・・が、やはり生の舞台でこのペアも観たかった。2人のサイコパス的な怖さを劇場のあの空間で、五感で感じてみたかった。

6、松岡×山崎ペア感想(配信視聴)

オーディションで選ばれた2人。久々の若手ペアだ。こうやって若手俳優にも受け継いでいくのが良いなあと感じた。松下洸平×柿澤勇人ペアが若手の頃に初演に参加できたのは素晴らしい経験だったのだろう。

他の2ペアがあまりにもベテランで完成されているので、逆に気負いはなかったのか?若い2人はどのような心持ちで演じるのだろう? などと思いながら観たのだが、私の想像を遥かに超えて2人とも上手かった。
松岡私は、彼への思いでもだえる感じがリアルだったし、54歳との早変わりも見事だった。
山崎彼は、クールさが狂気に転じる感じがよい。そして滑舌が素晴らしく良かった。
2人の身長差と、目がくりっとして可愛らしい松岡私を山崎彼がドSで振り回す感じは、松下洸平×小西遼生ペア、松下洸平×柿澤勇人ペアを彷彿とさせた。
インタビュー等を見ると、2人ともとても勉強熱心だとわかった。次の再演時も続投して、スリルミーを足掛かりに飛躍していってほしいと感じた若く青く勢いのあるペアだった。

7、おわりに

東京芸術劇場シアターウエストは素晴らしい。舞台が客席から近い。迫力がすごい。私は初回、後列センターだったがよく見えた。2人が接近している場面ではオペラグラスを使うと表情がアップで観られた。前列だと、2人が目の前過ぎて息ができなくなるのでは、と思うほど・・・
一方で、舞台美術はシンプルだ。黒を基調とし、格闘技のリングのようだ。そこで、キャスト2人とピアニストの、まさに格闘技のような100分間が繰り広げられる。スリルミーにおけるピアニストの重要性は自明で、3人目のキャストと言われる所以だ。
そして4人目のキャストが、すぐそばにいる観客なのだ。

19歳の2人の心情。強すぎる自己愛は育ちの問題からくるものなのか。私はどの時点で彼を裏切ろうと決意したのか。54歳私の本当の心情は・・・等、分析したくなる要素はてんこ盛りだ。だからこそ世界中で人気があり再演を繰り返しているのだろう。
松下洸平さんをきっかけに好きになったスリルミーだが、今は作品自体が大好きだ。私も中毒者だ。
日本での再演は必ずまたある。そのときのキャストの顔ぶれも、栗山さんと俳優陣のスケジュール調整を考えるとおそらく既に決まっているのだろう。
次のスリルミーはどんなペアがどんな私と彼のスリルをみせてくれるのか。
これを書き終え、アップしたときに、私のスリルミー2021は本当に終わる。もう思い残すことはない。次の再演の日を静かに待つこととしよう。

★2年後の2024年は、スリルミーの元となった事件から99年!再演があると信じてます(。•ᴗ-) օҡ ↓

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★観劇日
2021年4月9日、4月24日:田代万里生×新納慎也ペア(東京芸術劇場シアターウエスト)
※4月25日(成河×福士誠治ペア)はコロナ緊急事態宣言により公演中止
5月1日~2日:キャスト6人による特別トークショー(ライブ配信)
5月29日:松岡広大×山崎大輝ペア(配信)、成河×福士誠治ペア(配信)
5月30日:田代万里生×新納慎也ペア(配信)
5月29日~6月13日:特別映像(配信)

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松下洸平さんが大好き❤ 演劇、ドラマ、ライブなどの感想・解説記事が中心です。元新聞記者。現在は国家資格専門職で、文章は趣味で書いてます。普段はTwitterでつぶやいてます🙂