狭間の世代


 いやあ・・・やらかしましたね。
 パワハラは愛の鞭。セクハラと不倫は芸の肥し。訴えれば「覚悟が足りない」「志が低い」やら「女性側の落ち度と人格攻撃」。最後は大御所が出てきて「反省しているので! 私は許したから! ファンの皆も許してやって!」と言ってくれる「今、令和ですけど?!」な業界でここまでバッサリ切られたのは、やはり金銭トラブルが駄目押しだったんでしょうねえ。
  
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 こちらではまだ触れていなかったかと思いますが、私は三十年近く前の学生時代は演劇をやっていて、声優志望でした。
  
 昨今は声優が顔出しでテレビに出たりコンサートで歌って踊るなんて当たり前の様になっていますが、中村氏はその男性声優のアイドル化のはしりのような五人組の一人だった方です。『鎧伝サムライトルーパー』というアニメが女性を中心に人気を集め、その人気の対象がキャラクターの声を当てている声優さん達本人にも向かった結果“NG5”というユニットが結成されて、その人気過熱ぶりはニュース番組でも取り上げられ特集も組まれていました。なので、私自身はそのアニメのファンではなかったのですが、この声優さんの事もうっすらと覚えていたのです。

 「うっすらと」なんですよね・・・
 ご当人のファンには申し訳ないのですが、数人以上居るグループ等では当たり前の様に人気やそれに伴う露出に格差が出てくるものなので・・・。
 そしてまた、ブームの後は数人以上居るグループ等では当たり前の様に人気やそれに伴う業界内での立ち位置や評価に格差が出てくるものです。
 ただ、その後私は声優の道を諦めてアニメからも少し遠ざかっていました。戻って(?)来たのは数年前です。なので、この中村氏のその後の業界内での実績もネット上から拾った情報位しかありません。
 
 長いブランクの後のアニメや声優界隈を見渡してみて驚いた事は多々有りますが、NG5絡みに限定すれば、佐々木望氏の「東京大学法学部卒業」でしたねえ。英検一級に全国通訳案内士の資格まで取得済みと知って、何というか、次元が違う人っているんだなあ、、、と。

 別に主演張るだけが声優の価値でも無いです。脇で輝くベテランも作品には必要ですし。もっと言ってしまえば、声優で成功しなかったとしても、それで人生失敗でも無いです。

 問題は、殆どの人が何時までも主演を張り続けていられる訳でもない業界で、脇で残れるように芸も磨くでもなく、さっさと見切りを付けて他の業界に行くでもなく、他の収入源を確保するでもなく、昔の栄光にしがみついて他人を巻き込んでトラブルを起こす事なんですよね。
 せめて本人だけで自滅して欲しいです。
 今回は事務所に無断で(という事務所側の説明)で立ち上げた私塾を舞台に、声優志望の若い人達を巻き込んでいるようですし。
 このNG5の後には“ヴァイス・クロイツ”という、メンバー4人中3人がベテランとして今なお第一線で活躍中という驚異的なユニットも作られていますが、こちらの残る一人の方も、講師業をやって生徒さんと問題起こしていましたね・・・

 加齢他の要因で一線級ではなくなった人が次にやる事として、“講師”は手っ取り早いのだと思います。「ローリスク・ハイリターンで生徒を必ずプロにしなければならないという義務も無い。気楽で美味しいビジネス」と、某大御所声優も言っていましたしね。上記の人達よりもう少し若い、アラフィフ位の男性声優だと、個人事務所を立ち上げてから付属養成所も作るという流れもありますね。
 誰もが前述の佐々木氏の様に四十過ぎてからの勉強で一般入試で泣く子も黙る東大に一発合格したり、本業以外でもプロレベルの知識や技術を身に付けて国家資格も取得出来る訳でもないので、ある程度の実績と人脈も築いて声優業界に骨を埋める腹も括れた四十~五十で独立して事務所を立ち上げて当面はプレイングマネジャーとしてやっていくというのは、四十半ば時点で第一線に残れた人達にとっては今のところ最適解とも言えるのかも知れません。

 問題は、こんな風にして立ち上げられた事務所やその付属養成所に行く事が声優志望者にとって最適解かどうか。その全てを否定はしませんが、悪い面での昭和脳なままの代表や主催者の元へは行かないよう、志望者本人もしっかり見極めて欲しいところですが、これが難しいんですよね。。


 二十年後位には今以上にあぶれているであろう彼らの中から、第二第三の中村氏とその被害者が出ない事を願います。

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