見出し画像

「プロンプト・エンジニアリング」でクリエイティブをスピードアップ

文章を自動生成できるChatGPTや文章から画像を生成するStable Diffusion 2の登場でクリエイターやビジネスの仕事は無くなっていくだろうか?

そうではありません。ChatGPTやStable Diffusionは人工知能であり、人間が作成したプログラムです。そのため、彼ら自身はクリエイティブな作品を生み出すことはできません。

しかし、このようなツールは、クリエイターが創作プロセスを加速するためのツールとして活用されることがあります。例えば、ChatGPTを使用することで、作家が文章や会話を生成する際に、様々なアイデアを提示してくれることで、クリエイターがより豊富な表現をすることができるようになります。

したがって、ChatGPTやStable Diffusionの登場により、クリエイターの仕事は無くなることはありません。ただし、クリエイターはこれらのツールを使いこなすことで、より豊富な表現をすることができるようになると考えられます。

ChatGPTによる返答

上記はChatGPTに対して「ChatGPTやStable Diffusionの登場でクリエイターの仕事は無くなりますか?」と質問した際の返答です。

確かに、ChatGPTやStable Diffusionがクリエイターを完全に置き換えることはないでしょう。むしろ、これらのAIをツールとして上手に使いこなせることでクリエイターはより豊かなコンテンツを作り出せる可能性があります。AIに言われて納得しているのも不思議な感じではありますが、おっしゃる通りです。

もちろん、AIに尋ねれば何でもかんでもこちらの思惑通りに創造的な作業をこなしてくれるわけでもありません。なぜなら、AIはこちらの性格や背景や意図を知る由もなく、我々人間の方から積極的に意図を伝える必要があるからです。そのために、プロンプト・エンジニアリングと呼ばれる作業が必須になります。

本記事ではプロンプト・エンジニアリングについて考察していきます。

AIによる自動生成が簡単に上手くいくとも限らない

何かを創造する初期の過程でアイデアが出てこないことはよくあります。そんな時に、アイデアをAIからもらうことで刺激を受けれるのは利点であり、無料で使えるのならなおさらです。

しかし、AIに絵を描かせようとしてなかなか上手く説明できず生成された画像を見てガッカリなんてことはよくあります。割と細かく指定しないといけないし、自分の想いをAIが理解できるように言葉を選ぶ作業が必要です。いわば、人間の言葉をAI語に翻訳しているかのような感覚さえあります。

AIの問いかけが的確でないと、こちらが全く想像してない画像が生成されます。

プロンプト「森で踊る犬と猫の漫画のイメージ」

自分の想像に反するのが良いアイデアを産むこともあるでしょう。しかし、目的を持ってAIを利用する際には、こちらの意図がAIの創造過程に反映するように仕向けたいものです。その上で、さらに想像を超えてくると嬉しいし、AIを使う醍醐味になります。

よって、入力する文章についてよく考える必要があります。

プロンプト・エンジニアリングとは?

AIに対して入力する文章のことをプロンプト(Prompt)と呼びます。AIは、プロンプトを元に出力を生成しますが、すでに述べたようにこれがなかなか上手くいかない。良く考えて練った質問をしないと意図した成果が出ません。

そのためプロンプト・エンジニアリング(Prompt Engineering)という言葉がよく聞かれるようになりました。文字通り、AIに入力するプロンプトを作成する作業のことを指し、AIを利用してクリエイティブなタスクやビジネスプロセスを加速させたい人にとっては欠かせないものになるでしょう。

実際、この記事を書きながらChatGPTに何度か質問を変えながら意見を伺っており、まるで共同執筆をしているかのような気分にさえなっています。楽しくさえ感じます。

ただし、プロンプト・エンジニアリングと呼ぶだけあって、意図的に質問の内容を選ぶ必要があります。Google検索のようにキーワードを並べてフィルターをかけるのとは異なります。

Google検索との違い

自然言語生成モデルのChatGPTとの会話は、Google検索などから情報を得るのとは全く違う感覚です。検索によってキーワードに関連する情報を引き出すのと、自分の質問に対した回答を直接の会話のように得られるのとは大きな差があります。

まず、Google検索ではキーワードを選びます。それは、関連記事が引っかかりそうな言葉の羅列によるフィルターをかけていく作業です。その上で、検索結果として表示された情報を一つ一つ吟味し、自分で情報を抽出する作業が必要です。

その一方、ChatGPTでは質問を投げかけると、すでにまとめられた情報を返してくれるので、情報取得のスピードアップになりそうです。しかし、そこには落とし穴があります。

ChatGPTは自信満々に事実に反した知識の解説をすることがしばしばあります。よって、ChatGPTから得た専門知識を無条件で信じることはできません。人間の手作業による情報の選定は現状のところ必要となります。そのためにGoogle検索を使うなどの確認作業はまだまだ省けません。だったら初めからGoogle検索を使った方が良さそうです。

端的に言うと、ChatGPTはGoogle検索の代わりにはなりません。

あやしい回答

むしろ、ChatGPTでは知識の取得を目的にするよりも、自分が持っている知識や意見を表現するヒントを得るような使い方の方が合っています。この記事の最初に載せた文章もある程度こちらが期待しているような返答を自動生成するように考えてプロンプトを入力しました。

では、どのようにChatGPTに対してプロンプト・エンジニアリングを行えば良いのでしょうか。

ChatGPTとプロンプト・エンジニアリング

ChatGPTでは、AIに入力するプロンプトをどのようにするかによって、生成される文章の内容が大きく異なります。そのため、慎重にプロンプトを選定しAIが人間が望むように振る舞うよう、ある意味、誘導する必要があります。

面白い例をあげると、ChatGPTをまるでLinux端末であるかのように振る舞わせることもできます。

これはChatGPTをOSのように動作させている人がいたので、真似してやってみたものです。こんなことをしても面白いだけで役に立ちそうもありませんが、ChatGPTをどう誘導すればこちらの意図したような文章や返答をするようになるのか、つまりChatGPTに対してのプロンプト・エンジニアリングのやり方の参考にはなります。

ChatGPTは会話型なので会話を続けて補足の質問や条件を加えることができます。一連の応答から必要な条件だけをまとめて上記のようなプロンプトにまとめるといったことが可能で、これは会話型AIならではのプロンプト・エンジニアリングになります。

また、自分が書いた文章についてどう思うかをChatGPTに尋ねることもできます。それによって自分の文章をさらに簡潔に書き直したりといった使い方も可能です。

まとめると、ChatGPTに対するプロンプト・エンジニアリングは会話を通したフィードバックを重ねてプロンプトを修正したり、補足を加えていきながら自分が意図したように文章を生み出す作業であると言えるでしょう。ある程度気に入った文章ができたら、人間が最終的な調整をすることになります。

もちろん、たくさんの人が多くの事例をTwitterなどで発表しているを参考にしながら自分なりのプロンプト・エンジニアリングを進化させると良いでしょう。

以下の記事にも、良い例と悪い例があるので参考にしてみてください。

次に文章から自動に画像生成をするAIであるStable Diffusionに対するプロンプト・エンジニアリングを見ていきましょう。

Stable Diffusionとプロンプト・エンジニアリング

Stable Diffusionは自然言語を通して画像を生成しますが、入力する質問をどのようにするかによって、生成される内容が大きく異なります。そのため、Stable Diffusionに対するプロンプトエンジニアリングでも、我々人間が望むような画像をAIが生成するために、慎重に質問を選定することが求められます。

Twitterにたくさん例があるので、それらを参考にすることを勧めます。ただし、プロンプトを公開していない場合もあるので、自分で想像して同じような画像ができるかどうか考えるのも良い訓練になるでしょう。

以下の記事でも良い例と悪い例があるので参考にしてください。

Stable Diffusionに関してはコツとしてよく言われるのは、「かなり具体的に絵の内容を伝えること」です。また、Stable Diffusionはランダム性があるので同じプロンプトに対して画像生成を繰り返すと全く異なる画像を生成できます。何度か繰り返して気に入ったものを選ぶのも一考でしょう。

ただし、再現性を考えるとあるプロンプトに対して毎回同じ画像を生成するように指示できた方が便利です。これはシードと呼ばれるパラメータに毎回同じ数字を指定することで可能となります。下記の記事に詳しく書いてあるので興味がある方は一読を勧めます。

よって、Stable Diffusionではプロンプトを工夫するとともに、同じプロンプトでランダムな画像生成を繰り返すか、異なるシードを指定して画像を生成するなどして実験することが重要になります。

上手くいった例はおそらく何度もトライ&エラーを繰り返した末の結果であり、我々は素晴らしき偶然を目の当たりにしているだけかもしれません。

プロンプト「a photo of an astronaut riding a horse on mars」

しかし、その偶然は人間によるヒラメキ💡があるからこそ生まれるものであり、人間の努力の結果でもあります。

まとめ

今後ともAIとプロンプト・エンジニアリングは同時に進化していくでしょう。Twitterなどでさまざまな事例が報告されているのを参考にしたりしてプロンプト・エンジニアリングの腕を磨く参考にするのは有用です。

プロンプト・エンジニアリングを通して意図した文章や画像の自動生成ができる。まるで魔法の杖のように、利用次第では素晴らしい結果を生み出せる物凄いツールが登場したわけです。原始人が初めて火を利用することを学んだ時のように間違いや危険もあるでしょう。しかし、人類全体としては良いものが淘汰されて前進していくのみです。

話が大きくなりましたが、控えめにいっても、人類は日常的にAIとどう付き合っていくかを考える必要のある時代の始まりに来ています。

未来を想像してみます。AIが人間の個人の性格や情報をプライバシーを外部に露呈することなく把握している世界。それはまるで家族や友達のような関係。そうなるとプロンプト・エンジニアリングは日常の付き合いの上で養われていくものになり、自然な会話だけで十分にある。AIを説得する必要はない。旅行のアイデアや料理のメニュー、勉強の方法など日常的なこともAIと相談する時代になる。

なんて時代はまだ先のことでしょうけど、ChatGPTに言ってみたら、こんな返事が来ました。

未来を想像することは難しいですが、AIが人間の個人の性格や情報をプライバシーを外部に露呈することなく把握している世界では、AIと人間の関係はより親密で自然になる可能性があります。AIが人間の個人情報を把握している場合、プロンプト・エンジニアリングやその他のテクニックを使用する必要がなくなるかもしれません。また、AIを説得する必要もなくなるかもしれません。そのため、日常的なことであっても、AIと相談することができるようになるかもしれません。しかし、AIシステムが個人の情報を把握している場合には、適切なプライバシー保護が行われるようにすることが重要であるということは変わりません。

ChatGPTによる返答

現代に話を戻すと、クリエイターやビジネスはプロンプト・エンジニアリングを通してアイデアを膨らませるなどして創造的プロセスのスピードアップがますます可能となります。

よって、人間による作業のある部分はAIで置き換わるとしても、人間によるAIの利用はますます増えるので、人間の作業が全てAIに置き換わることはないでしょう。

少なくとも、シンギュラリティがやってきて人間が完全に置き換え可能になるまでは。

ここから先は

0字

キカベン・読み放題

¥1,000 / 月
初月無料
このメンバーシップの詳細

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?