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可愛い服が好きなあなたへ

家族で買い物に出かけた。ここ数年、人混みがとても苦手になってしまって、さっさと用事を済ませて帰ることが多いのだけど、今日は調子が良くて、すこし寄り道をした。普段よらない子供服屋さんに。

もうすぐ4才になる息子が「可愛い〜!!」と高い声を挙げて、いくつか洋服を手に取る。鮮やかな子供服にこちらもワクワクして、何か一着くらい買おうかなという気持ちになってきた。

ふとみると、息子が一つの服の前で立ち止まっていた。白いフリルのついた、水色のワンピース。

「これが欲しい。」

他のものはどう?と、思わず聞いてしまう。本人が好きなものを着たらいいと思っていたし、実際に今日もハートとピカチュウのクリームイエローのトレーナーと、花柄のスパッツを着ている。フリフリのTシャツとか、キュロットみたいなパンツだったら買うのになと思って、悲しくなる。性別には囚われて欲しくないと思いつつも、やっぱり気にしてしまうのかと。

店員さんに試着はどうですか?と声をかけてもらって、ワンピースと息子と一緒に試着室に入った。息子はいそいそとトレーナーを脱ぐ。ワンピースを着た息子は、すごく嬉しそうでニコニコしていた。一緒に来ていた夫に見せると、可愛いよと言ってくれた。横を通る他の子供が、チラリとこちらをみた気がした。気にしすぎと思いながら、後でまた来ようと店を後にする。

他のお店に行って、他の可愛い洋服を見せても、息子はどこか上の空だった。「あのワンピースが欲しい。」と譲らなかった。とにかくあのお店に戻ろうとする息子を追いかけて、お店の端にあるソファに座って話をしてみることにした。

「ワンピースはね、保育園には着ていけないの。」
「うん。」
「それからね、男の子はあんまり着ないから、もしかすると不思議だなぁって思う人がいるかもしれないよ。」
「・・・」
「保育園で毎日着れる、他の可愛いお洋服を探してみない?」
「うん。」

なんて伝えたらいいか、わからなかった。何も気にせず買ってあげたらいいのにと思う気持ちがあるのに、買えない自分がいた。結局息子は、スヌーピーのゆったりしたTシャツを選んだ。彼にとっては、フリルのついたワンピースも、スヌーピーのTシャツも、どちらも可愛くて着たい洋服で、それ以上の意味合いはない。スヌーピーのTシャツを、しっかり抱える息子にをみながら、好きな洋服を、好きなだけ着たらいいよと言える僕になりたいなと、静かに思った。


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