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「ぼくら」はKawaiiの下闘う──インターネット時代の文化と差別の在り方について

Is KAWAII a slur?

本日のTwitterでは、トレンドに「差別用語」「kawaii」という2単語が入っている。
発端は、「よろず〜ニュース」というサイトが取り上げた、TikTok上の動画から始まった言葉の問題についてだ。

黒色人種に属する女性(以下、Aさんとする)が、TikTok上に「アニメキャラのコスプレをして「kawaii」という文を添えた動画」をアップしたところから話は始まる。

以下、簡単な時系列。一部削除されたコンテンツもあるため、詳しい日付がわからないものもあるのはごめん。

AさんがTikTokにアニメキャラのコスプレをして「kawaii」という文を添えた動画をアップする

他のユーザーから、
「You mustn't use the word KAWAII.(お前がカワイイという言葉を使ってはいけない)」
「You are NOT Asian!(アジア人でもないくせに)」
「KAWAII is a slur.(カワイイは差別だ)」
というコメントが来る

荒らしによってAさんのアカウントが凍結する

10月1日に原宿系モデルやYouTuberとして活動されている紅林大空さんがIGTV(インスタに1分以上の動画を投稿できるもの)やYouTube shortsなどに"Is KAWAII a slur?"というタイトルの動画を投稿する

紅林さんのインタビューがよろず〜ニュースに掲載、トレンド入り←イマココ

紅林さんの動画はこちらです。

なぜKAWAIIが差別だと書かれたのか

ここで、なぜAさんの動画のコメントに「KAWAIIは差別だ」と書かれたのか少し考察してみたいと思います。
正直「その神経がわからん!」なので、僕も上手く説明できるか分かりませんので読み飛ばしてもらって大丈夫です。
ぼくは2つの意図を想定しています。

まず、「KAWAIIという文化が日本発祥のものであるから」という意図。
「KAWAIIという文化の原型を守りたいから」ということで非難をした可能性もなくはないですが、日本のKAWAII文化愛好家はむしろ外国人のKAWAII愛好家を歓迎する傾向が強いのでよほどの過激派でなければありえないとは思います。(というかそう信じたいというお気持ちもある)
そもそもKAWAIIという文化が日本人(というよりアジア人と言った方がいいかもしれない)の作った文化なので、「アジア人より格上の黒色人種がアジア人の作ったものをパクるのは差別!」なんていう阿呆なことを言ってる人がいる可能性があります。

次に、KAWAIIが日本の文化であることを殴り棒にしてAさんの「黒色人種」という属性やAさん個人を誹謗中傷したかったという意図。
これは後述する持論にも関わってきます。
社会科の授業なんかではだいたい1度は勉強したことがあると思いますが、黒色人種は差別され続けてきた歴史があります。
そして未だに白人至上主義を掲げる人は消えた訳ではありません。
そう考えると、白人至上主義的な思想を持った人が黒色人種を叩きたいがためにKAWAIIを利用したこともありえなくはないかなと。
また、Aさん個人が気に入らないという理由で「KAWAIIは差別」などという難癖をつけた可能性も考えられます。

インターネット時代の差別は、差別という軽い言葉にしていいのかという違和感

この問題でふと気がついたんですが、現在のインターネットやスマートフォンが普及した時代において、「差別」と呼ばれるものは「差別」というなんとなくぼんやりした言葉で片付けていいのか?と。

今はスマートフォンと電波とメアドさえあれば、どんな人でも発信者になれる、云わば「人類総発信者時代」なんですよね。

今回は「黒色人種」「KAWAII愛好家」という属性に属するAさんに対してアンチコメが送られたり通報されたりしたわけですが、そもそも、これらは「Aさんに対して送られたもの」なんですよね。

それは狭い意味で「Aさんへの誹謗中傷」とも取れるし、広く見れば「KAWAII愛好家それぞれの個人への誹謗中傷」でもあると思うんです。
その「それぞれの個人への誹謗中傷」を、「差別」っていうぼやけた一言で片付けるのはもう無理かなぁって。
「差をつけて扱うこと」や、「区別すること」という意味の「差別」と今回の例は違うと思うんです。

むしろ、問題はポリコレなどではない。
「人が嫌がることはしない」という、常識的、倫理的なことです。



KAWAIIは世界の共通語であり、誰でも使っていい

では、今回取り上げられた「KAWAII文化」について少し解説しつつ、ぼくが1番言いたいことを書いていきます。
今回取り上げられた件に関わることで言えば、Aさんの「KAWAII」は日本で言う「萌え」に近いのではないかと思います。
Aさんの動画を確認できていないので、どういったキャラクターのコスプレをしていたかなどは分かりませんが、アニメのコスプレという情報が正しければそういう見方でOKかと。

そして、よろず〜ニュースのサムネなどで取り上げられている「KAWAII」は、日本で言う「原宿系」に近いです。
例えば、ロリィタ、ゴスロリ、フェアリー系、ゆめかわいい、パンク、サイバーなどなど。
紅林さんのファッションなどはいわゆる「デコラ」主体(シノラーの進化系みたいなかんじ)。

どちらも、日本で生まれた文化ですね。
そして、そもそも「かわいい」とは日本語の形容詞で、愛おしさや趣き深さを表す単語なのです。
一般的に大人も「かわいい」を使い始めたのはサンリオが有名になった1970年代以降と言われています。

しかし、近年の「KAWAII文化」、特に原宿系などに近い文化は、海外での発展が凄まじくなっています。
例えば中国では、ロリィタやサイバーなどのファッションブランドが増えており、日本でも輸入して着用する愛好家が出ていたりしています。
ぼくもKAWAII愛好家の1人ですが、日本でこういったKAWAII服や小物を探すより、海外から取り寄せた方が数もバリエーションも豊富なことがあり驚きます。
そういった意味でも、もはや「KAWAII」は世界の共通語であり、どんな属性であろうと誰でも使っていいものであるとぼくは考えます。

KAWAII愛好家に人種や性別、年齢などの関係はない

たくさんの愛好家がTwitterやTikTokなどで発言している通り、愛好家はそういった、「ほかの愛好家の属性」を気にしていません。
むしろ、KAWAII文化を含め、日本の文化というものは「ほかの属性」が関わることに対してとても寛容なものというのが自然な解釈でしょう。

「まれびと」という言葉をご存知でしょうか。
古い言葉で、外部からの来訪者のことを指します。
外国人や旅行者などのまれびとを、日本人は「異界からの神」だと考えもてなしたという話もあります。

ある意味、KAWAIIを含めた日本の文化は、この「まれびと信仰」を強く受けているものではないかと。
そして、そもそも日本の文化は海外からの影響を受けて成り立っていることも多いのです。

インターネット時代の文化の在り方

インターネットには国境がありません。
そして、現在の様々なサブカルチャーは、世界と時をシームレスに繋いでいます。
だからこそ、「KAWAIIは差別ではない」と言いたい。

例えば、現在の日本のシティポップブームは「Vaporwave」や「future funk」と呼ばれる2010年代にアンダーグラウンドで人気だった音楽ジャンルを通じて、メジャーな流行になったのです。
Vaporwaveやfuture funkと呼ばれるシティポップをリミックスした音楽ジャンルを作り出し、日本で埋もれていた昭和のポップスを発掘したのは、紛れもなく海外のネットユーザー達です。
つまり、現在のシティポップブームはある種「海外からの逆輸入である」と言えます。

こういった前例を含めて、インターネット時代の文化は
「生まれた国や年齢、性別などに関係なく愛好家がいていい」し、
むしろ「他のユーザーとも積極的に対等に接することによって、日本人だけでは有り得なかった新しい形を産み、発展させることが出来る」
と捉えています。

もう一度言います。「誰でも愛好家になっていいのです」。

まとめ

ぼくらは、どんな属性でも関係なく、同じ「KAWAII文化愛好家」です。
共に闘いましょう。いや、闘わなくてもいいのかもしれない。
KAWAIIは美学であり信念です。それを貫き通せる「ぼくら」は強い。
日本には「カワイイは正義」という言葉があります。
「ぼくら」の正義を「ぼくら」なりの形で表していけばいいのです。

世界なんて、ちょっとしたはずみでどんどん変わるから。








愚痴
禁書房問題でSpank!さんを叩きまくってた人たちがこの問題についてわかった気になってどうこう言わないで欲しいな。これに関しては流石に。どうせ当事者じゃないんだから。

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