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飲食業界は、変わるべきか?考えたこと。

2年間続けたお菓子屋さんを退職し、
ここ最近は人生のモラトリアム期間と称して
ずいぶんゆっくりとした生活を送っている。

"考える時間"が増え、インプットの機会も増え、
そんな中で社員時代からずっと考えていたことがようやくまとまってきたので、書きたいと思う。


今の飲食業界は、あらゆる課題を抱えている、とよく言われる。

人手不足、長時間労働、低賃金、離職率の高さ、、、、

まず、そもそもこの課題を課題と見るかどうか、というところから、私は悩んだ。
一見課題以外の何者でもないような言葉を並べたし、私自身前まではこれらが課題だと信じこんだ上で、物事を考えていた。

ではなぜ悩んだのか。

それは、とあるオーナーシェフ(パティシエ)とお話する機会があり、そこでおっしゃっていたことになるほど、と思ったからである。

ケーキ屋さんってのは、お店を出すのも続けるのも、めちゃくちゃ大変なんだよ。それを1から学ぼうってなったら、やっぱり現場で働くのが1番早い。
(自分が働いた)店のことを全部、わかるようになって、初めて自分の好きなようにお店を出せる力がつく。そのためには、時間だとかお金だとか、そんなもんはまだ気にしなくていい。
それは自分への投資だから。
お店出す時にはどうせお金は借りなきゃいけないし、数100万貯めたところで何にもならん。
今多く働いた分は人生をかけて取り返すぐらいの気持ちでやらないと、この業界ではやっていけない。


ああ、そうかと思った。

当事者である現場の人間の、大半がこういう考えを持っているから、飲食業界の実態については、話題に登りにくいのだ。

オフィスワーカーが労働基準法に違反することに敏感なのは、それが当然の権利だと思っているからだし、
教員や養護教諭などの働きすぎ問題については、親や社会からの関心が強いためによく取り上げられる。

しかしシェフやパティシエ、あるいは美容師なんかもそうかもしれないが、そういった技術職は、当事者が声をあげない限り、まず問題にならないのだ。

(※最近は働き方改革によって、かなり厳しくなってきているようだが、小さな店舗まで含めればまだまだ改善されたとは言い難い。)

そして、当事者がそれで良いと思っているのであれば、そもそも問題とする必要があるのか、という話になる。

それで、私もしばらく悩んでいたのだが、
単純に、時代が "それで良い" とならなくなってきているのではないかとも思う。

私も含め、これからの世代の考え方の傾向として、
辛いことをただ我慢するのではなく、
辛いことを辛くなくすために努力する

というふうになってきているのでは、と感じる。

飲食業界も例外にはならない。

幼い頃から、かなりのスピード感で便利になっていく世の中を見てきた私たちだ。
遠い将来好きなことをするため、今は耐える、という価値感はもう古くなるだろう。

第一、その考えで今必死で覚えた技術は、自分がこの先店を出せる程になるまでには機械が補ってしまうかもしれない、という恐怖もある。

周りの同世代の元同僚を見ていても、辛くないよう生きやすいところで生きよう、と飲食から離れる子も多かった。
現場で頑張っている人からすればそれは"逃げ"だと叩かれる風潮が根強いのだが、
私はそうは思わないし、離れてしまう環境を作ってしまっている私たちに問題がある気がする。

しかしこのまま今後余程の強い意志をもった人しか業界に残らなくなってくれば、人手不足はますます深刻化する。


じゃあ、どうなれば良いか。

以下は私なりの現時点での考えだ。

まず、そもそも日本は店舗数が多すぎるのではないか、と思い立った。
海外と比べても、日本の飲食店の始めやすさは異常らしい。
それに加え、先程も述べたように
飲食業での成功=出店+繁盛
的なイメージは強い。

つまり、店舗数は増える。

店舗数が増えれば全体としての業務(=必要な労働力)も増えるし、お客さんも分散する。

お客さんが分散すれば、充分な稼ぎを得られず、精神論で従業員に頑張らせてしまうお店も増える。

余裕がない現場が多く生まれ、厨房では長い下積みの期間が必須となる。
忙しくて余裕のない状況は、人間関係の諍いも生みやすい。

人が辞める。将来自分で店を出したい人が残る。

店舗数が増える。


このループが生まれているのが現状である。

しかし、ひとつだけ敢えて書かなかったことがある。
"将来自分で店を出したい人が残る"
とあるが、実は他にも残る人は存在する。

"世渡り上手で、人間関係を作るのがうまく、かつ純粋に従業員として働くことに楽しみや充実感を見い出せる人"

である。

私は、こうはなれなくて、現場で働いていた時にもすごく羨ましく思っていた存在であるのだが、、
まさに飲食業を救うのはこういった人の存在だと思う。

そして、いかにそういう人を増やせるか、というところだと。

どんなところでも上手くやれる人というのは一定数いるものだが、
そういう人でなくても、職場の雰囲気作りによっては、いま、働くこと、そのものに楽しみや充実感を持ってもらえる事はできると思う。

飲食業界から人が流出しないため
いま必要なのは、

いつかなれる飲食店経営者への魅力、ではなく
飲食店で働くことそのものへの魅力

ではないか。

そして、そういった魅力を感じて残る人が増えてくれば、社会と自然に淘汰されて徐々に店舗数も減ってくるだろうし、
何より働く人の満足度が高くなっていく、良い循環に入っていけるのでは、と思った。

筆者は22歳。
まだまだ勉強不足な部分も、考え切れていない部分もたくさんあるだろうし、
もしかしたらもう既に言われていることなのかもしれない。

そして何より、
じゃあ、私はどうしたらいいのか
という問いにまだ答えられないでいる。


…なので、ここまで読んで下さった方がいらっしゃれば、ぜひ色々なご意見ください!

この文章がなにかのきっかけになることを願っています。


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