永遠を探せ

 ようやく図書館が開いたので少しずつ永遠を探し始めた。特に括りの無いいくつかの語源辞典で永遠を引いたが、何も書いてはいなかった。死ぬほど分厚い語源辞典にも、永遠のことは一行たりとも書いていない。みんな永遠に興味ないのか?あんなにポップソングでも頻出するのに。
 久遠だとか、永久(とわ)の出自を辿るのは、ある程度見通しがつく。久遠は仏教用語だし、永久(とわ)は古語辞典を引けば出てくるわけだから、とりあえず古い言葉だということは分かる。だが永遠はなんにもない。あれだけ聖典や哲学書の訳に頻出し、テレビの中のスターが「永遠を~♪」と歌っても、永遠のことはなんにもわからない。久遠と永久の字面を見るに、永遠の誕生にこの二つが関わっていそうなのはなんとなくわかっても、ちょろっと調べた程度では永遠の在り処はわからない。君は一体何者なんだ?
 永遠、えいえん、という時、それは久遠でも永久でもない。ましてeternityとも違う。必ず永遠が永遠たる所以が、どこかにぼんやりとでもあるはずだ。
 ブレイクは「Eternity in an hour」(無垢の予兆)と言った。犀星は「すこしのあとも残さない素早い奴だ」(はる)と言った。ブレイクがしているのはeternityの話で、犀星のしているのは永遠の話だ。この間にある限りなく相似の差異について考えてみないことには、永遠のことはわからない。永遠のはじまりに追いつかなくてはならない。
 犀星が永遠という言葉を使っているのだから、少なくとも永遠は明治か大正のあたりにはあったのだし、やはり訳語が怪しいと僕は思う。長い(或いは存在しない)時間についての言葉なら、日本には昔から仏教の言葉があったはずだ。なら仏教の言葉で言い表すことの出来ない、西洋の永遠を表すレトリックが必要になったと想像するのは、悪くないと思う。今度は訳語を漁るのがいいね。
 誰か僕に永遠をください。

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