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WOOD SHOCKについて、木材メーカーさんにお話しを聞きました

今回、インタビューにご協力頂いたのは、太田ベニヤ株式会社、木型事業部課長の藤井さんです。

太田ベニヤ株式会社 藤井さん(インタビュー:2022年2月24日)

① ウッドショックの背景

碓井「本日はよろしくお願いします。日頃から㈱ノダのベニヤ板に対するワガママを聞いてもらっている上に、このような唐突なお願いにも快く対応していただき、感謝しております」

藤井(敬称略)「いえいえ、とんでもないです。写真もガンガン撮っちゃってください」

碓井「ありがとうございます。では早速ですが、そもそもウッドショックは何がきっかけで起こったのかというところから教えて下さい。アメリカで高まっている新築住宅需要やDIYの人気が原因で、というのは聞いたことあるんですが、それだけでここまでなるのかなと……やはり新型コロナウイルスの影響が大きいのでしょうか?」

藤井「もともとカナダで発生していた害虫被害に加え、コロナ禍で労働者が減り伐採が思うようにいかず、製材工場の稼働率が下がり家を建てる木材が減ってしまいました。そして、アメリカや中国では、莫大な財政出動と歴史的な住宅ローンの低金利政策が取られた結果、市民がリモートワークのために、郊外に新しく住宅を購入するようになり世界的に需要バランスが崩れ十分な量の輸入材が入ってこなくなったんですね。それとコンテナ不足です。コロナ禍により住宅で過ごす時間が環境になったことから、ネットショッピングの利用などが増え流通が圧迫されました。それによりコンテナ不足が起き、木材が運べない状況が出来上がってしまいました。スエズ運河で発生した大型コンテナ船の座礁事故の影響に、さらに追い打ちをかけてしまっている格好ですね。他にも、ロックダウンの影響もありますが……概ね碓井様のコメントが正解です」

碓井「そう言えば去年の今頃、中国の工場が一ヶ月以上止まったっておっしゃられてましたね」

藤井「去年の2~3月頃ですね。それと、さっきコンテナ船と言いましたけど、コンテナ自体の不足によりかりに100個詰めるのに、50個しか確保できない、でもケツは決まってるから出港しないといけない! となると輸送費を一枚あたりの販売価格に乗せざるを得ないという。ただでさえ輸送費もあがってますから尚更」

碓井「ダブルパンチどころじゃないですね。となると、今のお話を聞いていてざっくりウッドショックの原因となったのは、だいたいそのへんの事情ということになるんですかね」

藤井「わかりやすくいうと、アメリカや中国の住宅需要、コンテナ船不足、東南アジアを始めとする各地の木材工場のロックダウンによる工場の生産性の低下などが原因と言えますね。加えていうと、インドネシアあたりの東南アジアはこれから雨季に入りますから、そうなると現地の工場の稼働にもろに影響するので、それでまた供給不足や価格の高騰につながる可能性があります。発展途上国で、林業もまだまだ人力作業でやっている企業も多く雨季に入るとますます工程に遅れが出てくるのは避けられない状況だと思われます」

碓井「ほえぇ」


業界紙や関連する記事はどれも厳しい内容が並ぶ

② 値上がりの影響と、抜型業界

碓井「では、ウッドショックになって以降、今でも現在進行系で値上がりしてるよっていう話になるんですか? 5年前10年前と比べてどうですか?」

藤井「もう、すごい値段にはなってますよ」

碓井「100円のものが200円になってる、300円になってるとか?」

藤井「いやぁ、正直値段はあってないようなものですね。もちろん、ものにはよるんですけど、この商品を仕入れたいってなったら、例えばメーカーからは、その都度『現時点だったらこれだけの在庫あるから、今ならこの値段ですよ、でも次はわかりませんよ』みたいな、そういう感じですかね」

碓井「値札のないお寿司屋さんみたいな」

藤井「例えば、ノダさんのとこでいうと、カバ板は年間契約で仕入れているんですが、次に契約するときには1.6倍の価格を提示されてます。こうなってくると、ノダさんにとってもうちにとっても、正直もうメリットなくなってくるので。今ある在庫分でもう売り切れ御免で、それ以降は自社で貼り合わせて対応しようかなと。その方が人件費云々加味してもまだなんとかなるので」

碓井「ありがとうございます。カバ以外の板も似たようなものですか?」

藤井「カバはわかりやすい方ですけど、他でいうとシナベニヤ。これは天然木なので、そもそも伐採規制があるんですね。だから、今世界で木材が不足しているからどんどん伐採していこうっていうのができない。むしろ、年々厳しくなってますから」

碓井「それは何のための規制なんですか?」

藤井「いろんな要因はありますが、一般的に環境問題ですね。これはコロナ云々じゃなく、森林破壊とか違法伐採とか、地球環境問題として以前から問題になっていた為に各国枠組みを設けているんですね」

碓井「取れる上限が決まってるから、どうしても需要と供給のバランスが崩れて価格が高騰する、と」

藤井「そうです。シナに関しては今後もどんどん量が減っていきますよ」

碓井「そうなると当然、値上げせざるを得ないですもんね」

藤井「はい、事実、去年うちからの販売価格を全面的に改定させてもらって」

碓井「種類にもよりますけど、たしか数%~20%くらい上がりましたもんね」

藤井「本当、ご迷惑おかけして……」

碓井「いえいえ(笑)でも実際、一番打撃を受けてる業界っていうと、どこになるんでしょうか?」

藤井「やっぱり建築関係ですね。どこもカツカツだと思います。代替品で凌いだり、地方の木材メーカーさんに融通利いてもらって、はるばる取りに走ったり。それに建築業界の場合は、材料を勝手に変えることができないんでね。建築士とかの許可が必要なんで、変更手続きでも時間かかるし。代替品は使えません、でも材料ありません、で、施工がストップするところも多いみたいですよ。かと言って、すでに販売してしまった価格を今更変えることもなかなか出来なので、じゃあその負担はどこが被るのって話になってきます」

碓井「すごい怖いことになってますね……ちなみにその場合はどこが割りを食うんでしょう……」

藤井「いやぁ、その案件に係る会社同士の力関係なんかにもよるんでしょうけど、工務店さんなんかは厳しいんじゃないかな。もちろんお客さんにも状況を説明して一部負担してもらったりして」

碓井「ちなみに、少なくともノダではそういう、例えば太田さんから板が入らない、なんてことはないじゃないですか。それは何でなんですか?」

藤井「正直、抜型に使う板は“抜型業界用”に誂えているものになるので、こんな状況ですけど向こう何ヶ月分かの材料は常に確保しているんですね」

碓井「建材の合板とは全く別物として存在しているということですか?」

藤井「はい、全く違います。一般建築で使われる合板にはJAS規格というがあって、よく使われるのが3×6サイズの9mm、12mm、15mm……」

碓井「あれ、でも抜型もサブロクの12mm、15mmはよく使いますけど、同じ規格のものとして使うわけにはいかないんですか? 太田さんの建材部門の人から、抜型用のストックから木材分けてくれ~なんてことにはならない?」

藤井「それがねぇ、もう製造方法、工程、品質、全部違いすぎて合わないんですよ」

碓井「合わない。あ、価格が?」

藤井「はい、抜型用の合板ってすごく良い合板なので(笑)ちょっとでも木の節があったり、あと空洞とか反りとか厚みとか、板ごとのバラツキとか、非常に厳しいじゃないですか」

碓井「確かに、レーザー加工の設定に関係してたり、刃先レベルの調整のしやすさとか、いわゆる“いい木型”かどうか、が板の質に直結していますね。板の中に空洞があると、レーザーで燃えてそこだけ溝幅が広かったり、寸法精度の厳しい案件であれば、最悪丸々板を切り直す必要が出てきます」

藤井「そう、だからやっぱり作るのには手間暇かかるんですよ。厚みにしても、仮に18mm厚の合板は、4mm+10mm+4mmで作ることが多いのですが、仕入先にはかなり厳しく厚みなどの精度の指示を出しております。それを日本で張り合わせる前にガーッとサンダーかけて厚みを均一にして、中芯材の10mmは反りを防止するスリット加工して、そこからようやく貼り合わせ加工の工程に入ります。建材用の合板はここまでしないですからね」

碓井「すみません、そんなに良い合板を作っていただいているとはつゆ知らず足蹴にしてしまって(苦笑)」

藤井「いえいえ(笑)でもまぁ、そういうわけで抜型用の合板が建材に回ってしまうことは価格的な面でもないと思われます」

碓井「ウッドショックと騒がれる中、その多くを占めているのが建築業界で、僕らもベニヤ板を多用する業界ではありますけど、ちょっと違うところにいる、みたいな状況なんですね。同じ合板といえど、交わることのない2つの世界が存在している、みたいな」

藤井「そうですね。上流で完全に別れているので。木材自体は値段が元に戻ることはすぐにはないし、今後も上がる傾向にあるのは同じだけども、建築業界みたいに供給不足に陥って立ち行かなくなるっていうのは、弊社の抜型合板ではすぐには起こらないです。但しロシアとウクライナ紛争や中国のロックダウンなどの景況で、今後の販売先等に関しては慎重に進めていかないといけません」

碓井「心強いお言葉ありがとうございます」


暗い内容ながらも、ネガティブさは微塵も感じない

③ 今後について

碓井「まぁ、ウッドショックに関してはいい話はないんでしょうけど、太田ベニヤさんの展望としては、どうでしょう」

藤井「やはり供給面ですね。既存の可愛がって頂いているお客様に対して商品のショートだけは避けないといけないので、会社あげて頑張っております(笑) 価格が上がるのも怖いですけど、ものが無いのが一番怖いですから」

碓井「その点、今は多少回復傾向にあると」

藤井「どうにかこうにか(笑) 価格は別ですよ(笑) これはもう歯止めが効かない感じがしてます」

碓井「では極端な話、仕入先が3倍の値段をいってきたら、その値段で買うしかないんですよね? そして太田さんが吸収されるか、販売価格に転嫁するか」

藤井「その2択しかないですよね。ここまで商品が不足してきましたら、商品確保も大変です。まだ、在庫数に多少余裕のある商品に変更して頂いたりメーカー規格品などは入手が困難になっておりますので、弊社で合板を製造する商材等も出てきております。

碓井「それなら、日本の木材をもっと使おうみたいなことにはならないんですか? 国土の6割が森林と言われてますけども」

藤井「一部そういう動きはありますけど、面積が小さいですからね。ウッドショックの需要の穴埋めで切っちゃえってどんどん伐採していくと、数年後がちょっと心配かなと。あとは日本の林業とか取り巻く環境とか、規制とか」

碓井「森林面積でいうと、ロシアもウッドショック関連のニュースをみていると時々目にするんですが」

藤井「皆さんもご存じのように凄い状況になってしまいましたね。ロシアなどで伐採できる木材に関しては不透明なところが正直です」

碓井「直接、ロシアから合板を輸入することは考えてないんですか?」

藤井「昨今、上記の質問は厳しいでしょう。国政の問題なども出てくると思われますし」

碓井「状況が状況ですからね」

藤井「繰り返しにはなりますが、ものがないっていうのは避けないといけませんから、安定供給という面でいうと、植林木のオールポプラ。ノダさんでも使っていただいていますが、レーザーの抜け云々とか反りとか、品質面でも殆どクレームはないです」

碓井「太田さんの企業努力で、ノダがメインで使用しているラインナップは安泰だということですね」

藤井「はい。頑張ってやってますので、これからもよろしくお願いします」

碓井「こちらこそです。今日はお時間割いていただきありがとうございました」


終始笑顔で対応していただき、ありがとうございました

太田ベニヤ株式会社   https://www.ota-gr.co.jp/  
[ 本社 ]
〒556-0022 大阪市浪速区桜川1丁目7番3
TEL:06-6561-6665 / FAX:06-6561-7457


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