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導かれるままに|47キャラバン#25@沖縄

はじめまして。ポケットマルシェの木学です。

ポケマル代表の高橋(社員はみんな、博之さんと呼んでいます。以下、いつものように呼ばせてください)が全国47都道府県を行脚し生産者さんを訪ねる47キャラバン。25番目の訪問地の沖縄に同行した際の様子をレポートします。

はじめに

REIWA47キャラバン とは?
東日本大震災をきっかけに、食のつくり手を特集した情報誌と食べものがセットで届く「食べる通信」、農家・漁師さんから直接食材を買えるオンラインマルシェ「ポケットマルシェ」を立ち上げた高橋博之さんが、47都道府県を行脚します。
3.11から10年という節目に、講演会や参加者との対話を通じ、気候変動の問題や食、命、幸せについて考えを深めながら、「生産者と消費者が直接つながり合う世界」の未来を探ります。REIWA47キャラバンの詳細はこちら

数ある都道府県から沖縄を選んだ理由は、小学校の低学年の数年間を親の仕事の関係で沖縄で過ごし、第2の故郷と思える程、思いいれがある場所だからだ。自分が知っている沖縄はごく一部、同行して更に沖縄を近くに感じたいと思い、立候補した。運よく他の立候補者がいなく、入社2ヶ月で、最愛の地、沖縄に行けることになったのだ。

サンキューファームでの出会い

訪れたのは、自然栽培でれんこんを栽培してるサンキューファームだ。名前の由来はThank youと思いきや昭和39年にオーナーの宮城優(まさる)さんが生まれたからとのこと。(ちょっとお茶目な感じが垣間見え、場も和み^_^) 農場は、沖縄県の宜野湾市大山地域に位置し、琉球王朝時代から稲作が行われる位の水が豊かな場所だった。

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(写真左から宮城さん、筆者、博之さん)宮城さんが、何故、自然栽培をするようになったか語ってくれた。先祖代々、畑だったこの土地は、宮城さんが子供の頃は、虫や鳥など生き物が沢山いたそう。しかし東京で働いて島に戻った時には、生き物の姿がいなくなっていた。ある日、農作業中に、風上で農薬を撒いてしまい、自分も気持ちが悪くなってしまった。農薬は、農の薬で良いものだと思っていたが、これはオカシイと身をもって感じた。それから木村秋則さん等、自然栽培について自分で調べ試行錯誤をし、4年ぐらいして軌道に乗り始めたという。それから自然栽培をずっと続けている。
何度か「もうダメだ、畑を続けられない」と思うことがあったそう。その度に不思議な力で導かれているかのように、乗り越えてきた。田芋(ターム)の栽培がダメになりかけた時も、誰かがレンコンを持って来てくれて、レンコン栽培に変わっていった。今はレンコンの栽培だけでなく、家族向けにれんこん堀や泥んこ体験を提供している。
そして、今、そのサンキューファームがさらに進化しようとしている。より本格的な体験農園施設として設備を強化し、こども食堂への食材提供などができるように、クラウドファンディングでサンキューこども農園プロジェクトを立ち上げた。2021年1月の最終日には、目標の111%の222万円、233人からの支援が集まった。多くの人のサンキューファームへの熱い期待が伺える。

サンキューファームで話を聞いた後、昼食に向かった。地元の人で賑わっているタコライスのお店では、代表の博之さんと今回の47キャラバン沖縄を運営してくれた学生の比嘉聖斗さんが熱く語っていた。沖縄の貧困の話、私達からは見えない裏の沖縄の話だ。この議題はあとの講演でも熱く語られることになる。(写真左が比嘉さん)

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昼食の後は博之さんの講演の為に那覇に戻った。本当はサンキューファームで行われる予定だったのだが、雨予報で急遽、那覇の貸しスペースへ。青空の下、広々したサンキューファームで聞きたかったが、それは次回、サンキューファームに行く時の楽しみとしてしてとっておこう。

白熱する沖縄キャラバン

場所を移しての博之さんの講演。博之さんのコアのメッセージは変わらないが、毎回、原稿なしで一本勝負の講演が、47キャラバンの魅力の1つだ。

講演の中で語られた。戦後の貧しい時代は、そこから脱却するため、効率性、同一性が必要とされてきた。一方、自然の中では同一な物はない。人間にとって自然は、食べ物を与えてくれる恵みでもあり、自然災害のような脅威にもなる。そもそも、自然と人間は不可分である。だが今は断絶されている。人間の機械化が進み、頭の目(理性、合理性、科学)ばかりが発達し、体の中にある心の目は使われず、見えなくなってきた。

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そんな現代でも自然を相手に日々過ごしている人達がいる。農家、漁師、畜産農家、猟師、といった一次産業に携わる人達だ。2020年の夏、海水温の上昇で養殖の魚が大量死したと知らせてくれた漁師がいた。近年、温暖化の影響で海水温が上昇し正にその脅威にさらされたのだ。狂暴化する台風や北上する病害虫の被害、生産者たちは自然と向き合い、警告を発してくれている。

だからこそ、生産者と消費者は繋がらなくてはならない。自然は変動しているので、同一化とは真逆のブレが常に生じる。生産者が知られていない一次産業のプロセスを語ることで、消費者はそのブレを許容し、むしろ、唯一無二の価値として見出していくことが出来るのだ。博之さんの唱える脱人間中心主義の話は、気候変動や地域の活性化等、様々な現代が抱える問題と繋がっている。そんなことが熱く語られた後、そのまま白熱の質疑応答へとうつっていった。

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質疑応答の中で印象に残っているのは、参加者の1人が言った「人間が自然と一体で不可分なことは、沖縄の人にとっては当たり前のことだから、博之さんの話は響かないんじゃないかなぁ」という言葉だった。沖縄にはギジムナーというガジュマルの妖精がいて、その存在が、沖縄では普通に語られるという。自然の化身が人間の生活の中に溶け込んでいる。まさに不可分な状態だ。筆者も実は、子供の頃、キジムナーに会ったと話していた記憶がある。自分にとって、博之さんが語る言葉が、衝撃的ではなく、ごく自然に感じるのは、そのせいなのかもしれない。

また、沖縄の貧困問題や、沖縄への若者の熱い想いも知ることができた。上述の比嘉さんが語った「補助金にズブズブに浸かるのではなく、ハワイでも内地でもない、沖縄を作りたい」という想いは、自分にとっても熱く共感するところだった。


繋がる懇親会

講演会の後の懇親会は、美味しい泡盛を頂きながら、講演会では話しきれなかった話をして新たな繋がりが生まれた。質疑応答で沖縄の貧困問題を語ってくれた堀川愛さん。東京から子供を連れて移り住み、沖縄の子供の貧困問題に直面し、全国に先駆けて調査を行い地域と一緒に取り組んできた。愛さんの話で印象に残っていることがある。学者さん達は、証拠をだせって言うけど、数字的な証拠をだすのには凄く時間がかかる。でも、明らかに取組みの中で子供達が前向きに成長していっているケースに幾つも立ち会ってきたと。分かる、私もデータを扱う仕事をしているので、データで検証することがよくある。でも、データが説明しきれるのはごく一部なのだ。でもデータを待っていたら、必要な行動に直ぐにうつせない。データは必要だが、それ以上に必要なのは、行動へと突き動かす信念なのだ。愛さんの話しから熱い信念を感じ、改めてそのことを再認識できた。この後、愛さんは博之さんの主催する車座にも参加し語ってくれている。(写真奥が堀川愛さん)

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もう1人の面白い出会いだったのが竹本進之介さんだ。農業経営アドバイザー、琉球泡盛海外輸出PJにて事務局代表等、様々な肩書をもつ。サンキューこども農園PJを推進するメンバであると同時に、沖縄県産米で泡盛を作ろうと奔走し、島に存在する水田へ足を運んでいるという。顔が見える人の生産物を原料とし、顔が見える人が製造するお酒はポケマルの世界観そのものだ。いつか、ポケマルで竹本さんが奔走した泡盛が買える日がくるのが楽しみだ。(写真左が竹本さん)

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おわりに

この沖縄キャラバンに参加して思った。私がポケマルに入社したのも、沖縄キャラバンで色々な人と出会ったのも、見えない力が導いてくれたのではないかと。宮城さんのレンコン畑のように。
20年程前、大学生の頃、循環型社会の静脈部分(物が生産されるまでを心臓の動脈とすると、使用し終えた後の行動、Repair、Reduce、Reuse、Recycyle最終的にはゴミとして廃棄し熱利用等を静脈と捉え循環するという考え方)で働きたいと思っていた。企業が動脈部分で、マーケティングを行い、物を生産するように、消費者1人1人が、どう静脈活動を行うか考えて行動する日がくる、そこに関わる仕事をしたいと。しかし、そこへの到着の仕方が分からなかった。分からないなりに、もがき、考え、その時点での、よりよい道を選んできた。一見、全く自分の嗜好性と異なる業界で働いたこともあったが、その中で、見つけた自分が持っていなかった視点、経験は、自分の中の武器となっている。
環境問題、温暖化に興味を持ったのは、小学校6年生の時、30年程前のこと。もし、あの時、グレタ・トゥンベリさんのように、何か行動が出来ていれば、世の中は、もっと変わっていただろう。でも、自分は残念ながらグレタさんではなかった。お世辞にも優秀と言えない自分が出来たことは、あまりにも小さい。でも、それで良いのだ。歩みの遅い自分を受け入れ、出来ることを少しづつ積上げながら生きていくしかないのだ。
人生の折り返し地点で、ポケマルに出会えたのは単なる偶然ではないだろう。高校2年の時、進路選択で悩み、農業大学も幾つか見学しに行った。でも最終的には、政治・社会学という道を選んだ。一度、離れた農業に近いところで働くことができるなんて、想像もできなかった。見えない力に導かれつつ、ポケマルで自分のなすべきことを果たしていきたい。


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