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2023年声優曲kieru的BAEST10


■はじめに

個人用メモ。これは2023年の声優曲の記憶を保存しておくメモです。
①~⑩は発売順で並べました。
個人的な記憶と深く結びついた楽曲については、
記録として言語化しておくことが重要であると考えています。

■2023年声優曲kieru的BAEST10

①JUMP IN/めぐみん (CV: 高橋李依) & ゆんゆん (CV: 豊崎愛生)
②Steppin' Up Life!/ミタマ (CV.鬼頭明里)
③Ordinary/早見沙織
④Jump Into the New World/Liella!
⑤この指止まれ/峯田茉優
⑥Midnight Doubt/鳳凰寺 紅葉(CV:瀬戸麻沙美)
⑦最愛よ君に届け/月のテンペスト
⑧恋心 ああ無情/赤崎こころ (CV:豊崎愛生), 奥山すみれ (CV:夏川椎菜), kana (CV:田中あいみ), 小美山 愛 (CV:寿 美菜子) & 鈴村 優 (CV:麻倉もも)
⑨空色ミサンガ/伊藤美来
⑩OMAJINAI/寿美菜子

①JUMP IN/めぐみん (CV: 高橋李依) & ゆんゆん (CV: 豊崎愛生)

発売日:2023/04/26
作詞:YeYe
作曲:YeYe
編曲:TiMT
(TVアニメ『この素晴らしい世界に爆焔を!』のエンディングテーマ)

高橋李依&豊崎愛生の極上チル曲。
豊崎愛生さんのこの手の柔らかい歌唱表現が極上で。キャラクターソングでありながらも豊崎愛生さんのソロアーティスト活動に近いテイストの楽曲だな!というのが第一印象。で、その豊崎さんの得手の歌唱領域に加わってきた高橋李依というようなイメージを想起した。
高橋李依ソロアーティストは熱心に追っているわけではないが、例えば「共感されなくてもいいじゃない」などはとてもスピード感のある楽曲で、高橋李依の声の良さを表現しているのに適した楽曲だと感じていた。だが、ミドルテンポな曲が得意というイメージはりえりーにはなかった、というのが正直な感想。で、ミドルテンポな楽曲をある種の得手としている豊崎さんとの組み合わせが個人的には新鮮だった。
TVアニメ「この素晴らしい世界に爆焔を!」は、めぐみん&ゆんゆんの学生時代の友情の話でもあるため、アニメEDに複数声優楽曲をこの二人で担当される、というのはまぁ相当に良い。
作詞・作曲のYeYeさんを調べたところ、豊崎さんが好きそうな女性シンガーソングライター!!という感じはする。
このすば楽曲と豊崎さんの音楽活動には以下のような関連性がある。
第一期のED「ちいさな冒険者」(アクア(CV:雨宮天)、めぐみん(CV:高橋李依)、ダクネス(CV:茅野愛衣))の作詞・作曲・編曲したハンバート ハンバートの佐藤良成は、その後、豊崎愛生のソロ活動の楽曲「ランドネ」を楽曲提供している。牧歌的な佐藤良成の楽曲は、豊崎さんのキャンプ趣味と相まって、それが「ランドネ」で表現されている。こうしたことから豊崎さんの趣味に合わせると良い効果が生まれるのではないか?とこのすばスタッフも思ったのではないだろうか。そんな妄想さえできてしまう。
本楽曲「JUMP IN」は相当にチルアウトの曲で、どこか牧歌的な優しが感じられる。
最小限の音の中に電子音を混ぜながら、ウィスパーな豊崎さんの声と凛としたりえりーのシャープな歌声が混ざり合っていく。サビの「勇気を出す、勇気を出す」の連続性も非常に心地よい。その上、一番のサビ終わりの「Ha~」を二人で合唱しているパートも相当に気持ちが良い。
目をつぶりながら、何も考えずにぼーっと聴いていると幸せな気分になれる楽曲。

TVアニメ『この素晴らしい世界に爆焔を!』 ノンクレジットED

②Steppin' Up Life!/ミタマ (CV.鬼頭明里)

発売日:2023/04/26
作詞:Grace Tone, Funk Uchino
作曲:Funk Uchino, Toshiya Hosokawa, SILLY TEMBA
編曲:Toshiya Hosokawa, SILLY TEMBA)
(TVアニメ『神無き世界のカミサマ活動』EDテーマ)

鬼頭明里のHIP-HOP調キャラクターソング。絶品。
HIP-HOPを鬼頭明里が歌唱するとこんなにも気持ちいのだろうか、ということに触れられる。
ラップパートもサビ部分も最高に気持ちが良い。
鬼頭明里の性格なテンポ感覚と確かな歌唱表現が存分に味わえる上、気持ちがアップしていき、楽曲を聴いているとだんだんと楽しくなっていくという不可思議な楽曲。
また『神無き世界のカミサマ活動』は彼女が主演のTVアニメであり、アニメ内でも神様として大暴れ&大活躍する。アニメ内では相当にコミカルな芝居を魅せてくれて、視聴者を抱腹絶倒させるくらいキレを感じることができる。一方、このED曲ではテクニカルな歌唱表現を魅せて、アニメキャラとのギャップも伝わってくる。
特にサビ部分の

Why,why,why,why,why,not?
ただ君と居たいもっと 楽しんじゃえおーっと!
派手にコケて have a good time

がすげぇ楽しい。
そして「have a good time」が「ハンバーグタイム」に空耳する。
”美味しいもん食べて笑っていたい”という歌詞もあるので、Wミーニング的に歌唱したのだろう。
そういう洒落も聴いていた声優HIP-HOP楽曲、無限に元気が出るよね。

作詞作曲編曲者を担当したアーティストたちは、株式会社サウンドグラフィックスに所属する音楽アーティスト集団の方々らしい。声優業界への楽曲提供はそんなになさそうだが、サウンドグラフィックス全体としては韓国アイドルや日本のアイドルなどにもいくつか楽曲提供している。それでも例えば、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会ユニットR3BIRTHの「Vroom Vroom」「バブルオーバー!」「Feel Alive」などもサウンドグラフィックス所属アーティストによる楽曲。
声優がキャラクターソングで自身の音楽活動とは異なるジャンルのが曲を歌唱するのが大好き声オタの意見としては、まさにこうした異色の音楽アーティスト集団が声優に楽曲提供していくことは喜ばしいことでもある。そしてこのSteppin' Up Life!と鬼頭明里の歌唱表現は見事にマッチしていた。
K-POPやHIP-HOPなどの流行が声優業界にも波及していくのだとしたら、今後も要注目のアーティスト集団なのかもしれない。

TVアニメ『神無き世界のカミサマ活動』ノンクレジットED

③Ordinary/早見沙織

発売日:2023/05/24
作詞:早見沙織
作曲:Tomggg
編曲:Tomggg
(3rdアルバム「白と花束」収録)

早見沙織×Tomgggによる至高の光。
2023年、早見沙織の音楽活動は【孤独や生きづらさを感じる人の心に寄り添い、光となる音楽を届ける】をテーマにしてきた。そんなテーマを冠したアルバムが「白と花束」である。その1曲目に収録されているのが「Ordinary」である。
Ordinary=普通。語源は1400年頃、ordinarie「規則的で、通常の順序や配列に従い、規制されたシーケンスや配列に適合する」という意味で、古フランス語の ordinarie「普通の、通常の」から直接派生したもの、とのこと。
孤独や生きづらさを感じる人にとって普通とはなにか?の答えをこの楽曲では提示してくれる。

君が生きて笑えることが
僕にとって何よりも嬉しくて
外の世界 眩しく感じても
特別じゃなくていい
器用じゃなくていい
何気ない日常を重ねていく

このサビの中で"普通"という言葉を使わずに、普通を提示してくれているのである。

前奏でTomggg特有の優しいテンポからはだんだんと朝を迎えるかのように始まる。
朝のはじまり、何気ない日常を重ねていくこと、生きていることはままならないけど。
でも”君が生きて笑えることが僕にとって何よりも嬉しくて”と改めて、サビで繰り返し、繰り返しに歌唱していく。早見沙織の強いテーマ性をこの繰り返しで感じることができる。
孤独や生きづらさを感じる人の心に対する寄り添い方が非常に優しく、早見沙織の歌唱表現とTomgggの包み込むような楽曲が聴く人たちにとっては、光となる音楽になっているのだろう。確かにそう感じることができる早見沙織2023年の中で渾身の1曲だと感じられた。
私は2023年に開催された「HAYAMI SAORI Tour 2023 "白と花束"」の石川公演・福岡公演・東京公演に参加した。個人的には、このライブツアーのセットリストでは、この曲が第一曲目に流れることを期待していた面もあった。だが「Ordinary」はアンコールの最初の曲に歌唱された。
「白と花束」アルバムの最後の曲「はじまりの歌」が本編ラストで、そこからのアンコールで「Ordinary」を歌唱することで、何度でもこのアルバムをリピートして聴いてほしい、という早見沙織の思いが反映されていた、とのこと。それは何度も何度も普通の日常を繰り返してほしい、そういう日常が続いてほしい、という早見沙織の願いであるとも感じられた。
そして早見沙織にとって早見沙織の音楽に触れる人たちが「君が生きて笑えることが僕にとって何よりも嬉しくて」と何度も優しく語りかけてくれるのである。それは生きる光/希望にもなる。

Ordinary

④Jump Into the New World/Liella!

発売日:2023/08/02
作詞:宮嶋淳子
作曲:水野谷怜
編曲:河合泰志
(Liella!ユニットミニアルバム「Jump Into the New World」収録)

11人の新生Liella!体制の新たなるNextStageとなる1曲。

個人的にすごく衝撃を受けたし、Liella!がNextStage/New Worldに飛び込んでいくぞ!という意志を感じる1曲であると感じた。楽曲のテイストでいえば「ノンフィクション!!」っぽいオシャレでゴージャスな感じではある。けれども、当時は「WE WILL!!」とか「ビタミンSUMMER!」などがLiella!の代名詞曲であると感じていた。
なので、このオシャレでゴージャスで、ある種の洗練が感じられる楽曲よりも、もっと元気で明るく、ポップな曲調でアイドル楽曲を歌っていくのかとなんとなく想像していた。
だが「Jump Into the New World」はまるで違った。
どちらかといえば落ち着きがあり、楽曲と歌唱表現を深く聴かせるような楽曲に仕上がっていたと思えた。そして楽曲に楽しい未来を予期させるような期待感を非常に感じる。
それがまさに11人体制になった新生Liella!の目指すべき姿なのだろう、ということを強烈に感じることができた。そんな楽曲のテイストでも歌詞自体は、背中を押すような応援ソングになっている。
変わっていくことを恐れずに、ネガティブもポジティブに変えて、飛び込め!New World!
という気持ちが伝わっている。
新体制のLiella!たちは、楽しむ準備はできているよ!変わっていくよ!次のステージに!
では君は???
一緒に行こうよ!未来に!次のステージ!新しい世界に!
そうしたメッセージ性が強く伝わる。
こうしたラブライブらしい君と一緒に!というテーマを描くと同時に、未来の目指すべき方向を指し示されたような楽曲だった。
作詞はLiella!の楽曲を数々と書いてきた宮嶋淳子。「未来予報ハレルヤ!」「常夏☆サンシャイン」「ノンフィクション!!」「ビタミンSUMMER!」などなど。Liella!の成長を知り尽くしていると言っても過言ではない。
水野谷怜は「Second Sparkle」などの編曲を担当したり、やはりLiella!の成長を見守ってきた作家。
Arte Refact所属の河合泰志はLiella!の楽曲を担当したのは初っぽい。ただし各声優楽曲の編曲は担当してきたし、例えばRun Girls, Run!の「ドリーミング☆チャンネル!」「ルミナンスプリンセス」などの編曲を担当している。Arte Refactらしいアイドル&EDM調の楽曲である。
この作家3人にLiella!の未来は託されていたのだろう。
それが花をひらき、ファンたちも巻き込んだ極上の応援ソングになっている。

Liella!「Jump Into the New World」リリックビデオ

⑤この指止まれ/峯田茉優

発売日:2023/08/02
作詞:峯田茉優
作曲:峯田茉優
編曲:WEART
(ミニアルバム「WHO ARE ME?」収録曲)

峯田茉優の歌手活動が気になった本人作詞・作曲楽曲。
峯田茉優さんが歌手活動をしていることは正直、知らなかった。
私が知ったキッカケは「ファイルーズあいの愛・ルーズ・Fight! 第81回 2023年08月29日放送【ゲスト:峯田茉優】」の回を聴いてである。そこで峯田茉優さんの楽曲に触れた。
最初に聴いたアルバム表題曲「WHO ARE ME?」がかなり衝撃的で。それも相まって、峯田茉優さんのアルバムが気になり「WHO ARE ME?」を聴き始めた。ラジオのゲストに登場して、楽曲を流すというのはすげぇ重要な文化であるな、というのは改めて思ったりした。
「WHO ARE ME?」は峯田茉優さんの代名詞的な楽曲であるが、ボカロ曲調っぽい中にロックなテイストを組み合わせていて。ファイルーズあいも「うちら、ボカロ世代の楽曲じゃん!マジでこの世の人に全員聴いてほしい」と大絶賛していていた。峯田さんもボカロで育ち、強い女性像を象徴したミニアルバムを作りたいという目的があったらしい。
それを音楽家集団WEARTにお願いして、このアルバムが制作された、というのがこのアルバム誕生の背景。
で、その中で唯一、作詞作曲している楽曲が「この指止まれ」である。この楽曲は元々、峯田さんがボカロで楽曲を作ろうと思っていて温めていたものが元となっている。そんなトークをラジオ内でしていたら、ファイちゃんが「この曲も聴きたい!」とオーダーして、ラジオ内でも流れる事になった。
そしてこの楽曲の前奏を聴いて、私はすごく笑顔になってしまった。
この前奏のリズムやテンポが、B'zの「BE THERE」にめちゃくちゃ似ていた。
これを自分で作曲したの!?みたいな衝撃が、なんか個人的には新鮮だった。
聴けば聴くほどに「この指止まれ」が「BE THERE」にしか聴こえなくなり、それがすごく個人的に快感になった。まぁそれだけではなく、峯田さんのアンニュイな歌い方や歌詞も秀逸で。
1メロの歌詞から

聞かせてくれ 言い訳ってやつを
嘘に耳済ませ 何も感じないけど

から始まる上、サビに繋がる。

この指とまれ 掴めない約束
知らない感情は無いに等しいと
撫でて、騙して、自分を護った
答えから目を背けるように

放つ呪文は薬か毒か
「騙されんなよ冗談じゃん(笑)」

みたいな歌詞も秀逸で。
全体的に、歌詞も音楽も非常にロックテイストに仕上がっている。
峯田さんの趣味が十分に発揮している難しそうな楽曲ではあるが、歌唱表現は丁寧で非常に聴きやすい。
「WHO ARE ME?」のアルバム全体も良い仕上がりになっているし、個人的には2023年一番の掘り出し物という感じがした。また、クリエーター集団WEARTは芝崎典子ミニアルバム「てん、てん、てん」(全曲作詞・作編曲)も担当していたりする。声優ファンたちはこういうところも抑えながら、声優たちの音楽活動を応援しているのだろう。

⑥Midnight Doubt/鳳凰寺 紅葉(CV:瀬戸麻沙美)

発売日:2023/08/02
作詞:こだまさおり
作曲:馬瀬みさき
編曲:馬瀬みさき
(TVアニメ『女神のカフェテラス』Inserted Song By Akane Hououji - EP)

瀬戸麻沙美ロックシンガー役キャラクターソング。傑作。
瀬戸麻沙美の歌唱表現の高さとクリアな歌声に酔いしれる。
『女神のカフェテラス』は瀬尾公治原作漫画のハーレムラブコメ。『涼風』『君のいる町』『風夏』と続いて『女神のカフェテラス』がアニメ化してきた。特に『風夏』ではOP主題歌「Climber's High!/沼倉愛美」で声優歌唱楽曲を漫画家自身が作詞をするほどの熱の入れよう。そして『風夏』はいわゆるバンドをテーマにしている。そうしたところから派生して『女神のカフェテラス』での瀬戸麻沙美の役どころはずばりバンドマン。鳳凰寺 紅葉(ほうおうじ あかね)/CV瀬戸麻沙美は、普段はガールズバンドで音楽活動を行い、ヴォーカル兼ギタリストをしている。
アニメ本編の5話、ライブシーンで瀬戸麻沙美キャラクターソング「My Standard」が流れた。その楽曲が収録されているキャラクターソングアルバムが「TVアニメ『女神のカフェテラス』Inserted Song By Akane Hououji」である。アニメ内劇中声優キャラクターソング大好き人間のため、このアルバムもすごく楽しみにしていた。アニメ終了後(2023年6月)、時間が経過して同年8月にリリース。
ミニアルバムには3曲で構成されており、その全てが全て作詞:こだまさおり、作曲・編曲:馬瀬みさきが担当している。

1.My Standard
2.雨のHide-and-Seek
3.Midnight Doubt

瀬戸麻沙美×マーベラス×こだまさおり×馬瀬みさき。
この組み合わせは「おもいきりトロピカル!」(キュアサマー(ファイルーズあい)・キュアコーラル(花守ゆみり)・キュアパパイア(石川由依)・キュアフラミンゴ(瀬戸麻沙美)・キュアラメール(日高里菜))である。瀬戸麻沙美もラジオでトロピカルージュプリキュアでお世話になったから、もう安心で!と発言していた。
勿論、女神のカフェテラスはガールズロックバンドのキャラソンのため、「おもいきりトロピカル!」とは曲調もリズムも異なる。しかし、瀬戸麻沙美ちゃんの声のトーンや得意な歌唱表現はこの曲を元にイメージして制作されたことは容易である。
鳳凰寺紅葉は、ミステリアスなキャラで掴みどころがない。クールに見えて、デレデレとするところもあり。いわゆるクーデレの部類だけれど、そうしたクールなキャラがガールズバンドで熱唱する姿もまた素敵だよね、と。で、このクールキャラとして活かされるのが、瀬戸麻沙美の伸びる歌声。ハスキーさもありつつ、安定感のあるリズム。特に英語の発音の歌詞とかが非常に美しい。
そして、このアルバムの中でも個人的にお気に入りなのが「Midnight Doubt」だった。
そもそも前奏のリズムとドラムスがTVアニメ『呪術廻戦』第1期OPの「廻廻奇譚/Eve」にめちゃ似ていて、笑った。瀬戸麻沙美ちゃん主演アニメだし。そうした妙な奇跡でまずは1つ楽しい要素があった。
で、キレのある歌詞たち。小気味良いギターサウンド。心地の良いベース音。そして安定感のあるドラムスに電子音。絶対に生バンドでライブで映える楽曲でしょ!という確信を持てるくらいに気持ちが良い。
そしてサビのMidnight Doubt!という瀬戸麻沙美の発声の良さ。
間奏からの落ちサビまでの超絶バンドサウンドも相当にバンド映えしている。安定感のあるドラムスのリズムから、激エモベース奏法がめちゃイカしている。
「My Standard」はどちらかといえば、ギターサウンドが気持ちの良いようなストレートなロック楽曲で。一方「Midnight Doubt」はベース音の曲調に力をいれたようなことを意識しているのだろう。どちらもすごく瀬戸麻沙美の歌声が映えるのだけれど、個人的には「Midnight Doubt」の方により良い刺激を得た。
2023年は『女神のカフェテラス』を含め、『青春ブタ野郎』シリーズの劇場版、『呪術廻戦』『盾の勇者の成り上がり』『ブルバスター』『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』などメインヒロインを演じながら、『私の百合はお仕事です!』『帰還者の魔法は特別です』『アンダーニンジャ』『ゴブリンスレイヤーII』などの光る脇役も多かった。飛躍の年と言っても良い。
そうした声優の最も勢いのある時期の声優ロックキャラクターソングが私の心に刺さらないわけがない。
これからの瀬戸麻沙美ちゃんのお芝居&キャラクターソング活動に一層期待できることを感じることができたりもする。

『女神のカフェテラス』Inserted Song By Akane Hououji クロスフェード試聴動画

⑦最愛よ君に届け/月のテンペスト

発売日:2023/09/07
作詞:利根川貴之
作曲:利根川貴之、坂和也
編曲:坂和也 & Wicky.Recordings

バラバラになる月のテンペストの状況を激しく歌唱した痺れる楽曲。
ゲーム『IDOLY PRIDE』メインストーリー BIG4編が兎に角、激熱なのである。
特に、ゲーム内アイドルユニット月のテンペストの状況や衝動を激しく歌唱したこの楽曲が本当に何度聴いても涙が流れそうになる。そして歌唱する際のライブパーフォーマンスも秀逸で、すべてが物語のストーリーになぞらえているため、ゲーム内シナリオへを知っているからこそ、涙が自然に溢れていく、という仕上がりを魅せている。

ゲーム内シナリオをざっくり解説する。
月のテンペストは星見プロダクションに所属する5人組のアイドルユニット。
声優はミュージックレイン3期生の5人がキャラクターを担当している。
以下がそのメンバーである。
長瀬琴乃(CV:橘美來)
伊吹渚(CV:夏目ここな)
白石沙季(CV:宮沢小春)
成宮すず(CV:相川奏多)
早坂芽衣(CV:日向もか)

長瀬琴乃が月のテンペストのセンター/リーダーであり、本作のメインヒロインの1人である。
月のテンペストは様々なライバルのアイドルとアイドルランキングを競う中で、中々に苦しい戦いをして、伸び悩んでいた。ライバルチームのサニーピースの5人は急成長を遂げて、アイドルのBIG4(いわゆる四天王的な称号)に加わり、躍進している。そうした事情もあり、リーダーの長瀬琴乃はずっと今の”勝てない”状況に苦しみを感じていたのである。
そして、長瀬琴乃が下した決断はアイドルユニット月のテンペストからの脱退である。4人に甘えることなく、1人でアイドルとしての自信を持ったパーフォーマンスをしたい、という感情が彼女にそのような決断をさせたのである。残されることになった4人もまた、月のテンペストを続けるのか、解散するのかを決断していくことになる……。こうしたストーリーが展開される中での新曲が「最愛よ君に届け」である。
ライブの初披露は、
2023年7月15日(土)LAWSON presents IDOLY PRIDE VENUS PARTY The First Day1「Special Summer」@幕張イベントホール
である。
そのライブの中でも、月のテンペストから脱退する長瀬琴乃と残る4人という対比でパフォーマンスしてた。
センターにいる長瀬琴乃に4人が背を向けるようにしながら、一番を歌唱したり。そもそも長瀬琴乃のソロパートがないというような楽曲構成も相当にストーリーとマッチしている。加えて、2番の途中で、幕張メッセイベンホールの段差の高いステージから、階段を下りて中央のステージに降りてくるところの演出も激熱だった。左右の2つの階段でステージが構成されており、左の階段からは長瀬琴乃役の橘美來が1人だけで降りてきて、右の階段から残る4人で降りてくる。こうした演出で、1人と4人がそれぞれの道を選んだ、というのを表現していた。さらにその演出の前の”君の存在にわたしはきっと憧れてる~”と歌唱した後、白石沙季役の宮沢小春が別れを惜しむようにして橘美來に視線を向ける演出も相当に良かった。
そしてラストの落ちサビ前からの落ちサビの歌詞が傑作で。

伊吹渚(CV:夏目ここな):
”どれほどの愛があれば夢を手にいられるの?”
成宮すず(CV:相川奏多):
”誰が決めるの?わからないでしょう?それは自分で決めて~”
伊吹渚(CV:夏目ここな):
”他の誰かじゃ駄目なこともわかっているから胸が痛いんだ”
成宮すず(CV:相川奏多):
”それでも決めた 甘えてた駄目だから~”
全員:
”激しさの中、嵐の中 突き進む挫けぬ意志を持って
私自身で違う魅力と正しさを見つけるよ
負けられないよ 前を向くよ
強くなるために必要だと 教えてくれた 気づかせてくれたんだ
最愛よ君に届け”

長瀬琴乃と伊吹渚は共に幼馴染で。伊吹渚は親友である琴乃を支えたい思いから、アイドルを志したという設定。最も近くにいた伊吹渚と長瀬琴乃というカップリングはシナリオ上で鉄板。「最愛よ君に届け」はある種、伊吹渚から長瀬琴乃への離別とメッセージであるとも読み取れる。だからこそ、落ちサビのソロを伊吹渚役の夏目ここなが歌唱する。4人の月ストメンバーの代表として。そういう図が歌詞のパート割りとパフォーマンスから十分に伝わってくるのである。ここまで文脈を含んだ歌唱パフォーマンスをみたのが個人的には衝撃的で。ゲームシナリオとライブ演出が最高にマッチした2023年の声優楽曲を代表する1曲であったと思えた。
また、”激しさの中、嵐の中 突き進む”という歌詞が、月/突き進む×テンペスト/嵐にかけた歌詞になっている点も相当にでき上がっていると感じた。
声優×キャラクター×コンテンツ×生のライブパフォーマンス×楽曲。
その全てが1つの物語を紡いでいたことをライブで体感した。
ちなみに、このライブの模様は月のテンペスト『Question』〈完全生産限定盤〉のBlu-rayに映像収録されている。

作詞:利根川貴之×作曲の坂和也は、月のテンペストの楽曲担当である。
「Daytime Moon」「The One and Only」「恋と花火」「月下儚美」「クリスマスには君と」「表と裏」。全ての月スト楽曲を担当している。それ以外にも「Pray for you/星見プロダクション」などを担当しており、IDOLY PRIDEを熟知している。数年間の楽曲提供活動の末、1つの到達点がこの「最愛よ君に届け」だと私には思えた

⑧恋心 ああ無情/赤崎こころ (CV:豊崎愛生), 奥山すみれ (CV:夏川椎菜), kana (CV:田中あいみ), 小美山 愛 (CV:寿 美菜子) & 鈴村 優 (CV:麻倉もも)

発売日:2023/09/08
作詞:利根川貴之
作曲:中島靖雄
編曲:中島靖雄

非センターメンバーたちが集まったあぁ無情なアイドル楽曲。
まずコンセプトがすげぇ面白い。
本楽曲も「⑦最愛よ君に届け/月のテンペスト」に引き続き、ゲーム『IDOLY PRIDE』からの特殊ユニットによる楽曲。歌唱するキャラクターたちは『IDOLY PRIDE』内のユニットにおけるセンターではないキャラクターたち。逆にセンターたちで歌唱する楽曲「それを人は“青春”と呼んだ/長瀬琴乃(CV:橘美來)、川咲さくら(CV:菅野真衣)、天動瑠依(CV:雨宮 天)、神崎莉央(CV:戸松 遥)」(作詞・作曲・編曲 : HoneyWorks)や2周年記念楽曲「友達だよ、いつの日も/長瀬琴乃(CV:橘 美來)、川咲さくら(CV:菅野真衣)、天動瑠依(CV:雨宮 天)、神崎莉央(CV:戸松 遥)、fran(CV:Lynn)」(作詞・作曲・編曲:清竜人)などがあった。
世の中、センターたちが集合して歌唱する楽曲やライブイベントシーンは多くあれど、非センターメンバーに焦点を当てた曲は珍しいはず。
LizNoirのセンターは神崎莉央(CV:戸松 遥)。そしてセンターにはなれない赤崎こころ (CV:豊崎愛生)と小美山 愛 (CV:寿 美菜子)が選出されている。
TRINITYAiLEのセンターは天動瑠依(CV:雨宮 天)。そこからは奥山すみれ (CV:夏川椎菜)と鈴村 優 (CV:麻倉もも)が選出されている。
IIIX(スリーエックス)のセンターはfran(CV:Lynn)であり、毒舌担当のkana (CV:田中あいみ)が選出された。
どれもゲームシナリオ内でも、センターとしての格はないキャラクターであり、後輩キャラクターであったり、センターから一歩引いた立ち位置の個性強めのキャラクターであったりするのが、彼女らの役どころである。
そしてこの「恋心 ああ無情」はモーニング娘。の楽曲をイメージして制作された、ということを豊崎さんが語っていた記憶もある。
いわゆる負けヒロインみたいな立ち位置の彼女ら=いつもは引っ込み思案な性格な女の子が、がセンター/クラスのモテる女子たちとのギャップに苦しみながら「こっちを向いてよ」「振り向いてよ!」という心を歌に込められているのだろう。健気で泣かせる歌である上、それを「恋心 ああ無情」と歌唱しているのもなんとも言えない哀愁がある。
なので、歌詞も秀逸である。
Aメロからしてもっと愛してよアピールがすごい。

”愛してよもっと愛してよ どうなのもっと愛してよ”
”愛してよもっと愛してよ どうなのもっとそれだけじゃ足りないの”

”こっちを向いてほしいの””控えめにみえるだけのマリオネット””どうにもこうにもならない 主役じゃないし””大人の事情なんて知らないわ””駆け引き上手とかできない”
”どんなにどんなに君を好きになるほど 遠くに感じちゃうの””ねぇはっきりしてよ恋心、ああ無情 レ・ミゼラブル”
”名もなき花じゃない 私は私らしい 知ってほしい””世界を振り向かせたいわ””変われ!世界!”
”あまりにも切ない 恋心 ああ無情”

などなど。哀愁が漂う歌詞のオンパレード。
もう”世界を振り向かせたい”から世界のほうが”変わってくれ”と頼んでいるレヴェルである。こういう乙女心と非センターキャラの心情をシンクロさせて制作されているため、妙に親近感が湧いてくるようにも思える
曲調もちょっとコミカル&アイドル電波ソングっぽい雰囲気で。電子音多めでテンポも早く、目まぐるしくソロパートが変わっていき、サビで畳み掛ける形に仕上がっている。中毒性も抜群で、妙に気に入ってしまって、何度もリピートしたくなる。
作曲の利根川貴之は「⑦最愛よ君に届け/月のテンペスト」と同じく、IDOLY PRIDEの楽曲巧者であり、中島靖雄もいくつかのIDOLY PRIDE楽曲に関わっている。そもそもこのコンポーザーたちは様々なアイドルに楽曲提供をしている。Wicky.Recordingsという音楽プロデューサー/作家チームを結成しており「でんぱ組.inc」や「妄想キャリブレーション」(2019年に活動終了)などのディアステージユニットなどの楽曲も提供していた。まぁつまり電波的で中毒性のある楽曲を制作してきた集団である。
そうした熟練の電波曲巧者たちによる「恋心 ああ無情」がこんなにも中毒性のある楽曲になるのは、さもありなん、という感じではある。

⑨空色ミサンガ/伊藤美来

発売日:2023/10/11
作詞:今井亮太郎
作曲:今井亮太郎
編曲:今井亮太郎
(TVアニメ『星屑テレパス』オープニング・テーマの「点と線」収録曲)

ブラジル音楽のリズムを完璧に歌唱する成長した伊藤美来が最高。
みんな大好き「点と線」というのも、まぁわかる。けれども、個人的には「点と線」に収録されていた「空色ミサンガ」のヴォサノバ・サンバ調の楽曲にぐっと心を掴まされた。そして伊藤美来の歌唱表現の巧みさに圧倒された。
歌詞も秀逸。北と南、秋と春、空と月、冬と夏、夜と昼などなどの対比のワードチョイスが鮮やか。

”キミが見ているのはサザンクロス 私はカシオペア どうにも描けない距離”
”秋のプリズムの中に春の陽射し感じたら”
”今見あげている この深い空は同じだから 小さな奇跡はパスポート 月まで踊ろう”
”冬のクリスタルの中に夏の渚感じたら”
”もしも夜の静寂の中に 昼のリズムを感じたら”

こうした時間的、空間的な距離がある中でも、恋しい気持ちは変わらずにあり、恋した二人にとってはそれは些細なこと/trivialになるよ、というテーマの楽曲だろう。実にブラジル音楽のリズムらしい情熱的な歌詞である。
ラストのサビでも”時も言葉も 距離さえも トリビアルになる”と歌唱している上、”小さな奇跡はパスポート 月まで踊ろう”という楽天的で陽気な歌詞もまたすごく楽曲のリズムにマッチしている。
個人的には、リズムも独特で、歌唱表現の難易度も高い楽曲であると想っている。また、歌詞にはポルトガル語が多用されて、”Saudades de Voce”(I miss you)や”Quero cantar muito obrigada”I want to sing,thank you very much)なども歌唱している。
こんな高難易度楽曲を鮮やかに、感情を込めて、そして伊藤美来らしい透き通ったクリアな歌唱で歌うのである。伊藤美来といえば、個人的にはブラスバンド調の「Shocking Blue」「No.6」などがお気に入りだった。ただ「Plunderer」や「青100色」などの楽曲もアニメタイップを貰ったりしていたが、中々私にはリーチしていなかった。そんな中で突然「空色ミサンガ」のようなテクニカルな楽曲が飛び出してきた。
このチャレンジングな姿勢と、成熟しつつある歌唱表現に改めて、伊藤美来の音楽に惚れ直してしまったのである。

作詞・作曲・編曲を担当しているのは、今井亮太郎。本人のHPのプロフィールには以下のような記載がある。

BossaNova、Sambaのピアニスト・オルガン奏者・鍵盤ハーモニカ奏者・作曲家・編曲家・プロデューサー。神奈川県平塚市出身。
ブラジル音楽専門のピアニスト・オルガン奏者として、日本各地のイベントやライブ、レコーディングに参加。テレビやラジオにも多数出演中。
リオデジャネイロで学んだブラジル音楽をベースに、地元である湘南の明るく自由な空気を掛け合わせて独自のスタイルを築き上げており、ブラジルのトップミュージシャンからの評価も高い。ピアノを楽しく鳴らしながら観衆の心をあたたかくつつみ込むピースフルな演奏が人気を博している。

http://ryotaroimai.com/profile

本物のブラジル音楽を専門としたコンポーザーであり、このような実績から、この歌詞のワードセンスとヴォサノバ・サンバ調のリズムもプロの御業であることがわかった。サザンクロス/南十字星は南半球の目印となる星座であり、カシオペアは北半球の目印となる星座である。この南半球と北半球の距離はまさに”どうにも描けない距離”である。こうした地球規模の距離を歌詞が書けるのはまさにブラジルで音楽を学んだ今井亮太郎らしさが光るという感じもする。
日本コロムビアからアルバムを発売していることもあり、コロンビア所属アーティストの伊藤美来に楽曲提供することになったのだろう。日本コロムビアのコンポーザー層の厚さでこうした楽曲が世に出てきたことに感謝したい。
そしてその独特のリズムの楽曲を華麗に歌唱する伊藤美来の成長を体感できる1曲であると感じた。

空色ミサンガ

⑩OMAJINAI/寿美菜子

発売日:2023/10/25
作詞:クボタカイ
作曲:クボタカイ,Taro Ishida
編曲:Taro Ishida
(1stEP「Curious」収録曲)

寿美菜子ラップ楽曲。O・MA・JI・NA・I!!
悪態をついたり、毒づく寿美菜子って中々に新鮮味があるよね!というのが正直な感想。
渡英から帰国して、12thシングル「save my world」(2019年1月発売)から約5年ぶりのリリースしたのが1stEP「Curious」(キュリオス)。Curiousとは好奇心旺盛という意味。語源について。「curious」は、ラテン語の「cura」と「-osus」が語源である。「cura」は「気配り」や「関心」、「-osus」は「多い」を意味する。また、「kweis(注意する)」も語源の一つとなっている。
まさに寿美菜子を表現する、ぴったりな言葉である。気配りもできる上に、関心事も多く、色々なことに注意をはらいながら、アクティブに人生を楽しむ姿。好奇心が前のめりになった結果、ふらっと海外旅行へでかけたり、渡英したり、渡英後にyou tubeチャンネルを開設したり。また「Curious」に収録されている楽曲のうち、6曲中5曲を自らが作詞している。

アルバムのラインナップは以下の通り。
1 唇にWasp    /作詞:寿 美菜子  作曲・編曲:山本玲史
2 Sense of Wonder /作詞:寿 美菜子  作曲・編曲:ひびね。
3 DIVE INTO    /作詞:寿 美菜子  作曲・編曲:金崎真士
4 OMAJINAI    /作詞:クボタカイ 作曲 : クボタカイ, Taro Ishida 編曲 : Taro Ishida
5 Chilling out  /作詞:寿 美菜子  作曲・編曲:山崎真吾
6 Golden hour   /作詞:寿 美菜子  作曲・編曲:川口圭太

収録されている楽曲のほとんどを自分で作詞する。
これは同年代の声優の早見沙織の影響が大きい、と語っていた。同業者・同年代の声優が挑戦していることに果敢に挑む姿も、また寿美菜子らしさがある。そして「Curious」アルバムの作曲などには、これまで寿美菜子の楽曲を制作してきたイツメンもいれば、新しく楽曲提供を依頼したアーティストもいる。
「OMAJINAI」は寿美菜子にとっては新たな挑戦だったのだろう。
寿美菜子は楽曲提供をしたクボタカイの楽曲を聴いて「なんだこの最高の歌詞は!」と感動した、とのこと。そして美菜子自身が惚れ込んでしまい、楽曲を聴き漁ったり、ライブへ行ったりなどの推し活をしていたらしい。また、この楽曲のテーマである「OMAJINAI」=「おまじないは“気にしない”」は英国での教訓が詰まっている、とのことで。そのへんの楽曲制作の裏側は、音楽ナタリーのインタビュー記事を読み込むと、のアルバムを最大に楽しめるはず。

寿美菜子「Curious」インタビュー|いつも好奇心を胸に──約5年ぶりの新作「Curious」完成

いずれにせよ、英国から帰国してパワーアップした寿美菜子の作詞力とちょっと力が抜けた寿美菜子の歌唱表現が存分に楽しめるEPがこの「Curious」である。
そしてこのアルバムを購入した勢いで私は、ライブツアーに参加した。
LAWSON presents 寿美菜子 Zepp Live Tour 2023 “Golden hour”
2023年11月05日(日)@KT Zepp Yokohama
2023年11月12日(日)@Zepp Osaka Bayside

ライブステージのパフォーマンスも成長を感じたし、周囲のオーディエンスをこのライブ空間に巻き込んでいくぞ!という意志がはっきりと伝わるライブであった。また、歌唱表現も非常に上手くなっているという体感があった。ステージ上でのパフォーマンス、オーディエンスとの一体感、歌唱表現、生バンドとの生のライブセッション。どれを取っても、抜群の感性のライブを魅せてくれた。
「OMAJINAI」の独特のリズムに韻を踏んだ歌詞は遊びがあってにこやかになる。で、歌詞の速度もそこそこに早く、それを華麗に歌いこなすのも惚れ惚れする。そしてラップパートも鮮やかで、なんども聴いても飽きが来ないような楽曲に仕上がっている。ドラムスの軽快なリズムとキーボードのリズミカルな音色、間に入る管楽器の高音とフィンガースナップの音。
どれもが洗練されているように聴こえて、かつ、中毒性もある。
このような挑戦的な楽曲をまだまだ歌唱してくれる寿美菜子の今後の音楽活動も楽しみになる1曲でもあった。

EXTRA。以下、個人的な感想メモ。

・「I wish/来栖りん」

発売日:2023/05/24
作詞:Junxix.
作曲:Junxix.
編曲:kazuboy.
(TVアニメ『神無き世界のカミサマ活動』OP主題歌)

なぜか中毒性がある。うまく言語化できないけど、なんかリピートしたくなる。

来栖りん「I wish」Music Video

・「可愛くって意地悪しちゃう/久保ユリカ」

発売日:2023/05/24
作詞:烏屋茶房
作曲:ヒゲドライバー
編曲:ヒゲドライバー
(TVアニメ『勇者が死んだ!』ED主題歌)

CDのジャケットでニーソの足を抱える久保ユリカさん、とても良い。MVもとても良い。一見の価値あり。
めちゃキュートで可愛い。こんなハニートラップがあったらかかってしまうよね、という世界観。
そしてこの楽曲とアニメとの関係性は相当に”ヤッている”
このもっとも”ヤッている”話数が『勇者が死んだ』4話である。
物語の展開としては、魔力を上げるには姫様の体液が必要。それは体液には高濃度の魔力が含まれているから。汗、涙、尿。そんでもって、姫様役の久保ユリカちゃんの尿が必要となる展開になる。「わかりました。横になって目を閉じてください」→ブラックアウト→「もう、特別だよ」→「可愛くって意地悪しちゃう」のEDの流れる。この演出がシームレスに展開される。まさにこの話数で使われるための「もう、特別だよ!」というセリフから入る楽曲になっていた。このアニメも一見の価値はある、はず。

久保ユリカ「可愛くって意地悪しちゃう」Music Video

・「しゅきぴくっきんぐ/YUKI×AOI キメラプロジェクト & ICHIGO(CV:竹達彩奈)」

発売日:2023/05/24
作詞:悠木碧
作曲:俊龍
編曲:よる。
(原作を悠木碧が務める漫画『キメラプロジェクト:ゼロ』より)

みんな大好き俊龍作曲で、作詞は悠木碧。歌唱は竹達彩奈というトリプルコンボ。
竹達彩奈はキャラソンを収録する際には、直前で歌詞を覚えたら、あとは忘れてしまう、というスタンスで仕事をしている、とのこと。けれど、悠木碧が竹達彩奈のことを思いながら書いた歌詞は流石に脳内に残っていて、それくらい二人の関係性で創作された楽曲でもある。
まぁ、令和にもなって竹達彩奈の電波ソングを聴きたいなら、まずこれを聴け!という楽曲。

「しゅきぴくっきんぐ」ICHIGO(CV. 竹達彩奈)

・「JUNGLE FIRE feat. MOTSU/芹澤優」

発売日:2023/10/18
作詞:MOTSU
作曲:MOTSU
編曲:大久保薫
(TVアニメ『MFゴースト』OP主題歌)

2021年5月に芹澤 優 with DJ KOO & MOTSU 「EVERYBODY! EVERYBODY!/YOU YOU YOU」を発売した。
avexのレジェンドコンポーザと声優のコラボ企画。
ぶっちゃけ、この企画が成立して、かつ「EVERYBODY! EVERYBODY!」が世間的にも評価されたから生まれた楽曲が「JUNGLE FIRE feat. MOTSU」だろう。そしてそれがトントン拍子で『MFゴースト』のOP主題歌になる。令和のm.o.v.eが爆誕したと言ってもよい。ただ個人的に、m.o.v.eのアニメタイップ曲は『イニシャルD』よりも『一騎当千』の「Drivin' Through The Night」を一番良く聴いたし。なんなら『アソボット戦記五九』の「iWAKE YOUR LOVE!」や「BURNING DANCE」の方が印象強いかもしれない。どんな遍歴だよ。
それはそれとして、芹澤優ちゃんのライブで歌唱する際、サビ部分のダンスをオタクたちが踊っている姿を見るのはめちゃくちゃに楽しい。

芹澤 優『JUNGLE FIRE feat. MOTSU』-Music Video-【TVアニメ『MFゴースト』オープ二ングテーマ】



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