2022年声優曲kieru的BAEST10

■はじめに

個人用メモ。これは2022年の声優曲の記憶を保存しておくメモです。
①~⑩は発売順で並べました。
個人的な記憶と深く結びついた楽曲については、記録として言語化しておくことが重要であると考えています。これを言語化し、どこかのタイミングで当時を振り返るタイミングができたら、この記憶のメモを参照する。
この外部記憶装置に記しておくことで、将来の一人の声優オタク生活史/ヒューマンヒストリー研究の一助になるのだろう。

■2022年声優曲kieru的BAEST10

①ネムイケド/朝倉もも
②なんどだって約束!/Aqours
③ククタナ/harmoe
④Oath/ロクサーヌ(CV.三上枝織)
⑤Bad Temptation/安野希世乃
⑥Abracada-Boo/石原夏織
⑦Break My Tears/芹澤優
⑧扉を開けてベルを鳴らそう/あおい(井口裕香),ひなた(阿澄佳奈)
⑨どきどきアイデアをよろしく!/潟女DIY部!!(稲垣好、市ノ瀬加那、佐倉綾音、和氣あず未、高橋花林、大森日雅)
⑩Catcher/富田美憂

①ネムイケド/朝倉もも

発売日:2022/03/02
作詞:松坂康司
作曲:松坂康司
編曲:松坂康司
(ソロアーティストデビュー5周年をむかえた麻倉ももの10thシングル「彩色硝子(ヨミ:ステンドグラス)」に収録)

私を麻倉もものライブに向かわせた楽曲。
このネムイケドの楽曲を聴いた瞬間、これはどこかのタイミングで麻倉もものライブに参加して、生で聴く必要性がある楽曲だという直感があった。それくらいには衝撃を受けた曲であった。
アップテンポ&ポップな恋愛ナンバー。
日常生活を送っている中で、常に”眠いけど”という接頭語がつく。だが、それでも好きな人のためなら頑張れる。麻倉ももの気怠さ&ポジティブさが非常に私の心を掴んでいった。特に、サビの歌詞が素晴らしい。

”Sleepy ワタシ もっともっと自由な音域で歌いたい気分 ラララ好きだよ
 世界で一番 自分らしく歩きたい 眠いけど”

私はこのサビの歌詞と歌い方が非常に好きである。
この歌詞の主人公には好きな相手がいて、その人に対する”ポジティブな感情”や”恋心がある日常の気分”を”もっともっと自由な音域で歌いたい気分”と表現するセンス。化け物レベル。脱帽。
そしてこの歌詞をしなやかに軽やかに、鼻歌でも歌うような感覚で歌い上げる麻倉ももの音楽的センスにもうっとりする。
そうした音楽的体験が私を2022年の朝倉ももライブツアーに足を運ばせた。
○LAWSON presents 麻倉もも Live Tour 2022 “Piacere!”
・2022年10月09日(日) 福岡 福岡市民会館
・2022年10月28日(金) 東京 LINE CUBE SHIBUYA
・2022年11月06日(日) 東京 中野サンプラザホール

元々、私は麻倉もものライブに興味はあった。だが、ライブに参加するオタクの治安が悪そうだなという印象もあり、加えてそんなに恋愛をテーマにした楽曲に惹かれていなかった。そんな中で、2022年に発売された3枚目のアルバム「Apiacere」に収録されている「ネムイケド」を含む楽曲はどれも傑作揃いだった。そうした背景もあり、麻倉ももライブツアーに参加を決意することになる。
実際、生バンドでのライブは想像以上に満足度と確かな手応えを感じることが出来た。手応えとは声優オタクとしての”これまで以上に積極的に応援していっても良い”という手応えである。
「Apiacere」のアルバムの中で、生バンドで演奏される曲はどれも珠玉で「満開スケジュール」「eclatante(エクラタンテ)」「フラワーズ」「Love me, Choose me」「ふたりシグナル」「シロクジチュウム」などその全てがそれぞれに麻倉ももの恋愛ソングの世界観を彩っていた。個人的には「満開スケジュール」が直感的に好きだと感じでいたが、生のライブパフォーマンスでは「ふたりシグナル」も相当な楽しさがあった。
「Apiacere」のアルバム楽曲に対して全体的に好感を持てたこともあり、ツアーの地方公演/麻倉ももの凱旋公演にも参加することも決意。私にとっては初の福岡遠征をすることになったのだが、福岡公演が三連休の日曜日だったこともあり、長崎→福岡→西久留米という旅行プランの中にライブ遠征を組み込んだ。
どうやら「Apiacere」[初回生産限定盤type B](CD+MV Blu-ray+写真集)に付属している写真集は長崎で撮影されたらしく、麻倉ももオタクと土曜日にエンカウントしたりしたのも良い思い出。私は「麻倉もも Live 2020 “Agapanthus” 11/15公演」のBDが付属されたTypeAを購入したため、その写真集の聖地とは認識していなかった。これは勿体なかった。というか、個人的には長崎旅行は、TVアニメ「sola」の聖地巡礼していたので、麻倉もも写真集聖地巡礼をするどころではなかった、ともいえる。次に長崎へ行く機会があれば、麻倉もも写真集聖地巡礼もしていきたい。
また、福岡公演のMCで「高校時代まで一緒に過ごしていた家入レオちゃんもライブツアー中で、麻倉ももと同じ福岡市民会館でライブを予定している」というようなことを話していた。確かに、私は福岡市民会館でその家入レオのライブツアーポスターをみたりした。そのMCで「私はあんまり知り合いとか自分のライブに誘わないけど、誘ってみるね」という話でMCが締められたのが妙に印象的だった。話がそれるが、この福岡公演で「シロクジチュウム」を聴けたのは、人生におけるアドになった気がする。
麻倉もも福岡公演のMCのこともあり、ひょんなことから以下の麻倉もも×家入レオのツーマンライブにも参加することになる。
 2022年12月17日(土)
 麻倉もも / 家入レオ - エアトリ presents 毎日がクリスマス2022 @ 横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール

このライブでのMCや二人のやりとりがすごい声優体験になった。
麻倉ももと家入レオは中学から高校で地元福岡で同級生であり、家入レオはクラス全員に「将来は東京に出て、歌手になる」という宣言をしていた。麻倉ももは「声優になりたい」と漠然と思いを抱く一方で何も行動していない、ありきたりな女子高生だった。だが、家入レオは親の反対を押し切り、高校の途中から地元を離れ、東京の高校へと通い、音楽活動に身を投じていく。高校時代の別れの回で、家入レオは麻倉ももに対して「声優になる夢を叶えなよ」とといったようなことを言われて、ミュージックレインの事務所オーディションを受けることになり、声優の道につながっている。つまり、麻倉ももを声優の道の後押しをしたのが家入レオであった。
そして、家入レオは2012年のシングル「サブリナ」(TVアニメ「トリコ」のエンディングテーマ)でデビューすることになる。この楽曲は、高校時代から歌詞が作曲の原形が出来ており、家入レオはその原形を麻倉ももにみせたり、通学中のバスの中で音源を聴かせたりもしていたらしい。
そして時が経って、2022年の年末のライブで二人がツーマンライブをすることになる。ライブの最後のパートで、二人がステージに立ち、お互いの歌を二人で歌唱することになる。麻倉ももの「花に赤い糸」を二人で歌唱した。そしてこのライブの大トリはなんと、二人で「サブリナ」を歌唱したのである。
それぞれが大人なり、一方はシンガーソングライター家入レオ、他方は声優&アーティスト麻倉ももとして、二人の高校時代からの思い出の曲である「サブリナ」を歌唱する。この感動的なステージを観ることができて、個人的には言葉にはならないほどの満足感を味わうことができた。
「ネムイケド」の楽曲から遠くはなれてしまった。
だが、私がこのような声優体験に出会うことになったきっかけを作ったのが、間違いなく「ネムイケド」である。長崎福岡旅行やクリスマスライブなどの行動の原動力は全て「ネムイケド」から始まっている。

最後に、作詞作曲編曲の松坂康司氏について触れておく。
個人的には「実は私は」のイメージソングである「Starting Heart/白神葉子(芹澤優)/紫々戸獅穂(内田彩)」(作詞:橋本彩子、作曲:松坂康司)や「I'm with you/ラティナ (CV: 高尾奏音)」(作詞:渡部紫緒、作曲:松坂康司、編曲:佐藤清喜)も担当している。そりゃ、私が心を奪われるだけだ、という納得感もある。

以下、蛇足。
「彩色硝子」オンラインイベントで生まれた川柳「ネムイケド つべこべいわず 出勤です」も印象的。
印象的すぎて、どうやらミュージックレインの会社の入り口に飾られていた、というエピソードも含めて面白い。
□参照Twitter:https://twitter.com/Asakura_Staff/status/1510116697205747715?s=20&t=tVb9y-0IQ_PjwNjo8whBzA

#麻倉もも によるネムイケド川柳がミュージックレインの会社入り口に飾られました
https://twitter.com/Asakura_Staff/status/1517111316472680451?s=20&t=wYq5XJLm9dg2A5Gi9OBhNA

②なんどだって約束!/Aqours

発売日:2022/04/13
作詞:畑亜貴
作曲:TAKUYA, MEG, Kanata Okajima
編曲:本間昭光
(Aqours 6th LIVE テーマソングCD)

いつ聴いても、このときのAqoursの感情がフラッシュバックのように蘇ってくる。
私は、2022年6月25、26日に開催された「Aqours 6th LoveLive! ~KU-RU-KU-RU Rock 'n' Roll TOUR~ <WINDY STAGE>」@東京ドームに参加することになった。
2020年に結成5周年を祝う東京ドームを含めた全国ツアーが開催される予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で全ての公演が中止になってしまった。5周年という声優ユニットにとっては重要なドームライブツアーがずっと中止になっており、Aqoursとファンは会えない時間が続いた。その間にも、いくつかのAqours関連のライブが中止になっており、その背景はそれとなく知っていた。私はそれほどラブライブサンシャインやAqoursについて熱心に追っているファンではなかった。だが、東京ドームでのライブであれば、私くらいのファン層がライブに参加してもよいだろう、という感覚で東京ドーム2daysライブに参加することになった。
Aqoursを取り巻くライブ開催に関する背景と環境を踏まえると、この「なんどだって約束!」の歌詞の一つ一つがすごく心に響いてきた。

”いつか それは今だった 待ってた この日を待ってたよ”
”約束をもっと もっともっとしようよ 君とならがんばれる”
”ミライの約束をもっと もっともっとしようよ”
”楽しさつかまえる毎日 終わらせないからね”

諦めないこと、挑戦すること、なんどでも約束をすること。
この言葉をAqoursから歌によって発信される。ファンとしてはとても心強く、この東京ドームライブが無事に開催された喜びを噛みしめることができる。流石の畑亜貴作詞である。感服。
これらは普遍的なメッセージでもあるが、Aqoursが背負っている背景や状況で、そのメッセージ性は強まっていき、それを聴いたファンたちはみんなパワーをもらえる。このエンパワメントの歌唱ができるのは、今のAqoursだからこそ、という説得力もあり、ライブ中は涙を流しながら聴いてしまった。
また、この楽曲はライブでは浦の星交響楽団のオーケストラで演奏されて、それも抜群に良かった。
さらにさらに、東京ドームでの巨大スクリーンによるライブ演出も圧巻だった。この歌のサビでは、東京ドームに設置された超巨大スクリーンが縦に9分割されて、9人の歌唱がリアルタイムで流される。このオーケストラ演奏のスケールと超巨大スクリーンのスケールに圧倒されてしまった。全てが豪華。これこそ声優ユニットエンターテイメントの極地であり、一つの到達点であるとも感じた。

この超巨大スクリーンにリアルタイムで映像を配信する事ができるようになったのは、低遅延&大容量通信であるところの5G技術のおかげだろう。そうした最先端技術が声優ユニットライブで駆使されたこと、そうした偉業を生で感じることが出来たのも、新たな声優体験となった。

【試聴動画】Aqours 6th LIVE <WINDY STAGE> テーマソングCD「なんどだって約束!」
https://youtu.be/JAJU-vcMLhk

③ククタナ/harmoe

発売日:2022/06/22
作詞:やぎぬまかな
作曲:田中秀和
編曲:田中秀和
(harmoe 1stアルバム「It's a small world」に収録)

小泉萌香のパブリックな楽曲イメージが声優ユニットまで浸透。
知人の影響もあって、「harmoe」にハマった。「It’s a small world」の1stアルバムを購入し、2022年7月9日(土)に開催された「It’s a small world」発売記念イベント@全電通労働会館にも参加したりした。そうした流れもあり、2022年8月21日(日)の1st LIVE TOUR「This is harmoe world」@LINE CUBE SHIBUYAにも参加することになる。

harumoe基礎知識。ユニット名は岩田陽葵の「陽(はる)」と小泉萌香の「萌(もえ)」を合わせたものとなる。そんな二人が「音楽と物語はいっしょに歩く」というコンセプトで楽曲制作をしている。
こんなにも世界観をしっかりと構築し、コンセプチュアルな声優ユニットだからこそできる歌唱表現があり、そこがかなり成功しているようにも感じられた。
個人的に、小泉萌香の楽曲といえば「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」のレヴュー曲「wi(l)d-screen baroque/大場なな (小泉萌香)」(作詞:中村彼方、作曲・編曲:三好啓太)が印象的。いや、劇場版レヴュースタァライトを観たら、誰もがこの「wi(l)d-screen baroque」に魅了され、小泉萌香=「wi(l)d-screen baroque」というイメージを持つに違いない。
この楽曲は都会のコンクリートジャングルをイメージしている楽曲である。ジャングル感=動物たちの声を沢山いれたり、民族楽器を多用した楽曲作りをしている。「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の劇中歌アルバムVol.2発売記念オンラインスタッフトークショー」イベントで「オタクって民族楽器とか好きでしょ?」と楽曲制作チームが語ったいたのも印象的だった。それとオタクは民族楽器のリズムが好き。これは事実。
そう、オタクは民族楽器の楽曲が大好きで、小泉萌香=「wi(l)d-screen baroque」=ジャングル=民族楽器の多用というイメージが直列的に繋がり、この「ククタナ」という楽曲が1stアルバムに収録されたのだろう、ということを個人的には感じたりした。
「音楽と物語はいっしょに歩く」というコンセプトでいえば「ククタナ」は「ターザン」をイメージした楽曲である。ジャングル感が満載であり、民族楽器も多用されており、コーラスの量(ジャングルには様々な生き物がいる)の多くて、全部で40パートくらいのコーラスでいろいろな人の声が収録されている。こういう楽器やコーラスの多重化の豪華な楽曲制作も、レヴュースタァライトがあったからこそ、といった感触もある。
また「This is harmoe world」のライブにおける「ククタナ」のパフォーマンスに驚愕したのも印象的。harmoeの二人に加えて、ダンサーがものすごい数ステージ上に表れて、総勢30名近くになった。この大迫力のステージ演出を1stライブでやる。harumoeスタッフの強い意気込みを感じることが出来たし、ジャングル感=多人数でのステージパフォーマンスはとてつもなくマッチしていた。そしてその後に歌唱された「マイペースにマーメイド」も多人数のステージパフォーマンスになって、ライブツアーファイナルの豪華さを演出していた。
こうした声優ライブ体験を作ったのがまさに「ククタナ」であったように感じた。
その「ククタナ」の楽曲制作の背景には、小泉萌香のレヴュースタァライトの楽器のキャリアがあるようにも感じたし、その小泉萌香=「wi(l)d-screen baroque」というパブリックな楽曲イメージの延長線上で、声優ユニットの楽曲が制作された。そうした楽曲作りの妄想ができたのが、個人的には新鮮であった。
アルバム「It’s a small world」中では「harmony to the West」「HAPPY CANDY MARCH」「空想エスケープ」「セピアの虹」なども印象には残っている。2022年のBEST10を挙げる上で「harmony to the West」と「ククタナ」の中でかなり迷った結果、小泉萌香への期待を楽曲制作チームが込めていた、という妄想が捗ったということで「ククタナ」が特に印象に残ったのである。

【harmoe】『ククタナ』Lyric Video(1stアルバム収録曲)
https://youtu.be/Dgvnkt1SWcE

④Oath/ロクサーヌ(CV.三上枝織)

発売日:2022/07/27
作詞:陽茉莉 -himari-
作曲:fu mou
編曲:fu mou
(TVアニメ「異世界迷宮でハーレムを」オープニング主題歌)

ミドルテンポ×ロック×女性声優歌唱として抜群に耳馴染みが良い。
「異世界迷宮でハーレムを」は、三上枝織ヒロインのちょっとエッチなアニメである。この物語の世界では、三上枝織演じるロクサーヌがもっとも可愛いヒロインである。このもっとも可愛いヒロインであるロクサーヌを最も理解しているのが三上枝織である、という自負をしているのだろう。その覚悟を楽曲から感じ取ることができ、それが声優オタクとしては極上にご褒美となる。
私は、三上枝織が激しいロックナンバーで、こうした楽曲を歌唱する声優だとは思っていなかった。だが、妙に耳馴染みがよくて、ハマってしまった。例えば、このような疾走感のあるロック調のアニメソングは、専門のアニソンシンガーとかでも歌唱できるだろう。けれども、ロクサーヌ名義の三上枝織が歌唱している意味がある。それはロクサーヌがもっとも可愛いヒロインであり、それをアニメのOPからガツンと伝えるためである。その演出がまさに成功しているのだと感じた。
キャラ名義の歌をアニメオープニングに採用することが少なくなっきた中で、こうした声優楽曲が聴ける喜びを再認識させられた。

作曲、編曲のfu mouにも触れておく。
個人的には「ブブキ・ブランキ 星の巨人」のEDのテーマ「so beautiful ;- )/種臣静流(CV.小松未可子)」(作詞:タナカ零、作曲:fu_mou、編曲:fu_mou)が印象に残っている。また「劇場版 とある魔術の禁書目録 -エンデュミオンの奇蹟-」の挿入歌「アタリマエの距離/三澤紗千香」「Brand New Bright Step/三澤紗千香」(作詞、作曲、編曲:fu_mou)なども印象深い。
確かに、こうしたデジタルロックのサウンドが妙に耳馴染みがよいな、ということは思ったりした。

⑤Bad Temptation/安野希世乃

発売日:2022/07/27
作詞:堂島孝平
作曲:堂島孝平
編曲:堂島孝平
(安野希世乃歌手デビュー5周年記念1stフルアルバム「A PIECE OF CAKE」に収録)

安野希世乃×堂島孝平の楽曲。結局、やっぱり、好きなんだよなーと思わされた。
Temptation=誘惑。つまり、Bad Temptation=最悪な誘惑ということである。
歌詞のイメージからは、強気な女、強い言葉を放つ女性像で歌唱されている。
不甲斐ない男はすべてシャットアウト。本気の愛でトキメキたいのに、私の好みの香水とか嫌いな映画について知りなさいよね!みたいな勝ち気な女性イメージで歌唱する安野希世乃が堪らなく気持ちが良い。
歌詞から抜粋すると、以下のような強い言葉を使っている。

”あなたの世界ではわたしは測れない 規格外なの バカにしないで”
”誘うなら 本気にさせてよ”

この歌詞とロック調のギターサウンドが小気味良い。というか、ギターサウンドがエモ狂い思想なくらいに爽快。まさに堂島孝平の得意な領域のロックサウンド。

ここで改めて、安野希世乃×堂島孝平の楽曲を振り返ってみる。
・2016年09月28日 「涙目爆発音/ワルキューレ」(作詞、作曲: 堂島孝平、編曲: 北川勝利)(「Walkure Trap!」収録)
・2017年07月26日 「悲劇なんて大キライ/安野希世乃」(作詞、作曲、編曲、演奏:堂島孝平)(「涙。」収録)
・2018年11月07日 「Wonder Shot/安野希世乃」(作詞、作曲: 堂島孝平、編曲: 北川勝利)(「笑顔。」収録)
・2019年09月04日 「エイリアンボーイ/安野希世乃」(作詞、作曲: 堂島孝平、編曲: 生田真心)(「おかえり。」収録)
・2021年10月13日 「無限大DRIVE/ワルキューレ」(作詞、作曲、編曲:堂島孝平)(「Walkure Reborn!」収録)
・2021年10月13日 「つらみ現在進行形/ワルキューレ」(作詞:堂島孝平、作曲:櫻澤ヒカル、編曲:白戸佑輔)(「Walkure Reborn!」収録)

安野希世乃の音楽活動の歴史に、堂島孝平あり。こう並べてみても圧巻。
私が、オタクが好きな楽曲に堂島孝平が関わっている。特に、強い女を象徴するメッセージ性の強い歌詞やロックサウンドが彼の得意。また、「エイリアンボーイ」「Wonder Shot」「無限大DRIVE」はブラスバンドサウンド×ロックで仕上げてきている。「Bad Temptation」はブラスバンド成分はなしで、エモ狂いしそうなギターサウンドが特徴的だった。間奏のギターとかは、絶対に生のライブで聴いたら気持ち良すぎて、悶絶しそう。
「Bad Temptation」は、どちらかといえば「涙目爆発音」「悲劇なんて大キライ」「無限大DRIVE」にテイストに近いともいえるかもしれない。けれども、BPMはそれほど早くなく、安野希世乃が実にパワフルに歌い上げている。この速度感の楽曲でも、安野希世乃の「安い女じゃありませんよ!」感が堪らなく良い。
ちなみに、2022年11月19日(土)に開催された「ANIMAX MUSIX Part1」で歌唱した「世紀の祝祭」も「A PIECE OF CAKE」のアルバムの中では、非常にパワフルで楽曲ではあったし、ラテン調の楽曲は安野希世乃の感度が存分に発揮されていた。

安野希世乃 1stフルアルバム『A PIECE OF CAKE』クロスフェードビデオ
https://youtu.be/3XIlHs6EnoY?t=173

⑥Abracada-Boo/石原夏織

発売日:2022/08/03
作詞:藤林聖子
作曲:滝澤俊輔 (TRYTONELABO)
編曲:滝澤俊輔 (TRYTONELABO)
(TVアニメ「金装のヴェルメイユ」オープニング主題歌)

BPMが早くピアノサウンドが気持ちいダンスロックナンバー。
「Abracada-Boo」は”Abracadabra”(魔法)と”Boo”(可愛い)を掛け合わせた造語。
MVではかなりガッツリと踊っている。そしてオフショルで黒を基調とした衣装に、ポニーテールという出で立ちも今の石原夏織にとても似合っている。むしろ、似合いすぎている。
TVアニメ「金装のヴェルメイユ」のCM中に流れているMVの映像をみて、キレキレのダンスに大人びたメイクが魅力的だと感じたりした。特に、特にジャケット写真の凛々しいメイクが印象的で、個人的にはかなり好みのキービジュアルだった。あの石原夏織ちゃんがこんな大人びた表情のジャケットでCDを発売することになるとはそんなに想像できていなかった。ビジュアル的には、”Boo”(可愛い)というよりも、大人びた凛々しさのほうが上回っていた。なんというか、他の声優を例に出すと、寿美菜子とか茅原実里とかがパブリックイメージとして持つような大人の顔。そんな表情であるように感じられた。そうしたところに、何故か惹かれた。
だが、歌声は可愛さも存分に出ており、そのギャップも凄く良い。
ピアノサウンド、デジタルロック、ハイスピード。これもとても快楽的。
MVもかっこよくて、改めて石原夏織の歌手活動に注目していきたい、と思わされる楽曲であった。

作詞の藤林聖子と作曲、編曲の滝澤俊輔の組み合わせでいえば、個人的には牧野由依の「88秒フライト」(作詞:藤林聖子、作曲、編曲:滝澤俊輔)が印象に残っている。さらに牧野由依でいえば「Reset」(作詞:Manami、作曲、編曲:滝澤俊輔)の作曲も滝澤俊輔が担当している。牧野由依楽曲ということで、ピアノが特徴的であったり、ミドルテンポなクラシカルな要素の多い楽曲である。だが、石原夏織にはデジタルな音やダンスナンバーを提供している。逆に、石原夏織だからこそ、このような音楽性であることも理解できるし、そうした石原夏織が歌唱して映える楽曲であるということは間違いなさそうである。

石原夏織 "Abracada-Boo" Music Video
https://youtu.be/oWZcgeXOecE

⑦Break My Tears/芹澤優

発売日:2022/10/05
作詞:馬渕直純
作曲:馬渕直純
編曲:馬渕直純
(芹澤優1stアルバム「YOUr No.1」に収録)

芹澤優による熱いロックナンバー。生バンドでのライブでこそ映える。
正直、「YOUr No.1」のアルバムの音源だけではピンときていなかった。平時に音源を聴いていても、それほど圧倒的に私の心を鷲掴みするような感触もなかったりする。
けれども、この楽曲が真価を発揮したのが、生バンドでのライブであった。そのギャップが印象的だったため、ここに記録しておく意味が生まれたように思えた。そもそもこの楽曲は、生バンドでのライブを想定して制作されていたため、そうした感想になるのもよくわかる。ということにしておく。
ということで、私は2022年12月24日(土)に開催された「Yu Serizawa 3rd Live Tour 2022 YOUr No.1」@Zepp DiverCity(TOKYO)の昼夜公演に参加した。

この楽曲はセットリスト上では、衣装チェンジの後に歌唱される楽曲であった。
芹澤優の衣装チェンジ中、バンドメンバーによるバンドパフォーマンスが行われていて、場を繋げていた。私は、声優ライブ生バンド至上主義者である。声優ライブは生バンドが至高であり、バンドメンバーたちのインスト演奏も必ずライブにあって欲しい、とも思っている。「YOUr No.1」のライブもその私の期待に答えるかのように、インストバンド演奏があった。

ここで芹澤優ライブの神バンドのバンドメンバーを紹介しておく。
・バンマス/ベース:宮田“レフティ”リョウ(@LeftyMonsterP)
・ギター:香取真人(通称:カトリーヌ)(@masato910224)
・ドラムス:ICCHAN. (@Icchan_drummer)
・キーボード:北村真奈美/Σicom(通称:マボちゃん)(@shigmaicom)

このメンバーでのインストバンド演奏は只のバンド演奏ではない。MCでバンマス/ベースのレフティが観客たちを煽り、バンド演奏だからと座ってしまった観客たちを立たせて、拳を上げろ!と声をあげる。その熱さに呼応するかのように、バンドメンバーたちもガチガチのロックなサウンドをかき鳴らしていく。
そこから会場のテンションがMAXになった状態で芹澤優が登場し、「Break My Tears」が歌唱された。このエクスタシーが尋常ではないくらいにアドレナリンが出た。楽しかった。
前述した通り、この楽曲は生バンドが映えるように制作されている。それを完全に自分のものとして歌唱している芹澤優の姿が印象に残った。芹澤優は元をたどると、平野綾/涼宮ハルヒに憧れて、声優を目指したという背景がある。なんというか、私の目には、この楽曲が平野綾のロック楽曲に含まれる成分が感じられたりした。ライブ会場の一体感というか、熱気、照明、そして芹澤優のパフォーマンスにバンド演奏。それらは芹澤優が目指していたライブ世界の一つであるように感じられたし、そのような妄想もできるほどに圧巻のステージが演出されていた。その説得力を生み出しているのが芹澤優であり、その技術と熱量が芹澤優に込められているのである、ということを改めて気付かされた。
「Break My Tears」の次の曲である「BLUE ROSE」(作詞、作曲:神谷礼、編曲:大久保薫)はマイクスタンドをポールにみたててポールダンスのようなパフォーマンスをしながら、アダルトでエロティックに歌唱する芹澤優の姿も歌も大変印象には残った。けれども、バンド演奏から「Break My Tears」へ突入していく膨大な熱量が個人的には「あぁ、私が望んでいるある種の理想的な声優(ロック)ライブであるな」と思わされてしまったのである。
※なぜ、理想的な声優ロックライブであるかは補足的に後述することにする。

「Break My Tears」の作詞、作曲、編曲を担当した馬渕直純は、i☆Risの中でも「Re:Call」(作詞、作曲、編曲:馬渕直純)や「Endless Notes」(作詞、作曲:馬渕直純、編曲:大久保薫)を担当している。特に私は、TVアニメ「双星の陰陽師」は結構楽しんだアニメであり、その主題歌である「Re:Call」はi☆Ris楽曲の中でも好きな部類である。
2022年11月7日に開催した「i☆Ris 10th Anniversary Live~a Live~」@東京国際フォーラムAホールでも、生バンドで「Re:Call」が聴けたため、大変良い思い出になった。そして、このi☆Risライブで生バンドパートを演奏したのが、芹澤優のライブツアーを支えた神バンドのメンバーであった。
私はドラムスのICCHANの力強いドラムたたきをしているシルエットとレフティの独特なベース演奏のシルエットで、芹澤優の神バンドメンバーであることがわかった。

この神バンドのメンバーというのが、私の理想的な声優ロックライブに通じている。私は、何度か、声優現場以外のロックバンドライブにて、レフティ&カトリーヌ&ICCHAN.の演奏を目撃している。最初に観たその3人が揃ったライブがあまりにもロックバンドライブの成功体験として記憶に残っているのである。
そのロックバンドis「ASH DA HERO」。
このロックバンドには、以前まで芹澤優のバンドサポートをしていた、ギターのNarukaze / ASH DA HERO (@Narukaze_ADH)、ドラムスのWANI(WANIdrums ASH DA HERO (@drums_wani))も関係している。
その辺は別のnoteにまとめている(2013年~2019年12月までにかけての時系列)ので、興味があれば参照してほしい。

芹澤優と私とASH DA HEROと(1/3)
芹澤優と私とASH DA HEROと(2/3)
芹澤優と私とASH DA HEROと(3/3)

2020年以降、大きく「ASH DA HERO」の活動に変革があったため、それは各自に調べてほしい。
というわけで、私が以前から推していたバンドサポートメンバーが芹澤優のバンドサポートをしているのである。これほど幸せな声優ロックライブ体験は中々に経験ができない。
芹澤優のソロアーティスト活動は今後も継続してほしいという一心で、「Yu Serizawa 3rd Live Tour 2022 YOUr No.1」の夜公演の開始前には、芹澤優の顔が大きく印刷されたTシャツを購入したし、声優のタペストリーを人生で初めて購入するなどした。声優のライブ活動を支えるには物販でお金を落とすことが一番だし、seriko_is_no.1。

⑧扉を開けてベルを鳴らそう/あおい(井口裕香),ひなた(阿澄佳奈)

発売日:2022/10/12
作詞:塚田耕平
作曲:塚田耕平
編曲:塚田耕平
(TVアニメ「ヤマノススメ Next Summit」エンディング主題歌)

スローテンポではあるが、堂々としたブラスサウンド楽曲。
小中学校の合唱コンクールで歌唱&演奏されてもおかしくないくらいの心地よさがある。
ヤマノススメのアニメのEDが毎回、新作エピローグをアニメ描き下ろしで作られていた。しかもアニメーター吉成鋼氏の一人製作で毎回EDが変わるのである。その偉業とそのワクワク感も含めて、この「扉を開けてベルを鳴らそう」が彩りを添えていた。
ヤマノススメアニメ本編において、あおいとひなたの本作アニメにおける関係性が歌詞に反映されているため、それが心にじわじわと染み込んでくる。特に、あおいは将来の進路に悩み、不安に抱える毎日を過ごしている。ありきたりな女子学生、等身大の悩みを抱えている。そんなあおいの不安に寄り添い、一緒に新しい扉/未来を隣で歩いてくれるのひなたなのである。
アニメ本編でも進路に悩むあおい。周囲においていかれる(登山でも高山病で苦しみながら、他の登山仲間においていかれる。また、年下のここなちゃんは未来のことをしっかりと考えていて、奨学金を貰えるように勉学に励んでいる)シーンが印象的に描かれていた。変わりたいけれど、変わらない。期待と不安を抱えるあおい。
そうした状況も踏まえて、この楽曲を聴いてみると、とても勇気がもらえるように感じる。一緒に「ring a bell」とサビの歌詞を唱えてみると、将来への不安も和らぐような気さえする。爽やかな精神安定剤のような楽曲であり、それは山を登ったときに味わえる感覚と似ているようにも思えた。
良いアニメーションの主題歌は好きになる法則が爆発した、ともいえる。

作詞、作曲、編曲を担当した塚田耕平にも触れておく。
個人的には「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の「よろしく九九組」(作詞:中村彼方、作曲、編曲:塚田耕平)が印象深い。このブラスバンド音楽感は彼の得意領域なのだろうな、というのを感じたりした。

⑨どきどきアイデアをよろしく!/潟女DIY部!!(稲垣好、市ノ瀬加那、佐倉綾音、和氣あず未、高橋花林、大森日雅)

発売日:2022/11/16
作詞:佐高陵平
作曲:佐高陵平
編曲:佐高陵平
(TVアニメ「Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-」エンディング主題歌)

”タン タカトターン”から始まるインパクトのある歌詞と音楽。永遠にリピートできそう。
気に入ったアニメの主題歌は好きになる法則。しかも複数声優による声優キャラクターソング主題歌。最高で極上。そして歌詞もDIYアニメの”DIY”に焦点を当てた素晴らしいものに仕上がっている。

”旧石器時代から大先輩”
”欲しいものがあれば Yes!この手で Yes! 今すぐ I do it myself!"

まず旧石器時代に言及した声優アニメソング楽曲というのがロマン溢れる。
そもそも音楽のルーツとは、収穫した獲物に対して感謝の儀式/シャーマニズム信仰などと付随して、簡単な歌謡や舞踏がはじまった、日本でいうと、旧石器時代の後の縄文時代から音楽がはじまったと考えてもよいだろう。つまり、旧石器時代から受け継がれてきたDIYという文化とその後に発生した音楽という文化が、令和の時代にDIYというアニメと声優楽曲で混じり合って、伝えられているのである。そんな人類文化史に思いを馳せることができるのが、この「どきどきアイデアをよろしく!」なのである。
サビの歌詞もまた堪らなくよい。

”ありふれた毎日にアイディア ちょっぴり万能感 歌う鼻歌 はずれても笑い飛ばして 明日をもっと自由に作るのさ”

DIYも、音楽も、人生も。はずれても笑い飛ばして、自由に生きることが大切。
ちょっとしたアイディアと万能感で人類が、DIYも、歌も、人類史も繋がって、今がある。そうした壮大なロマンがこの楽曲には詰まっているように感じて、単なる奇抜な声優楽曲というわけではないことを味わうことができる。この声優楽曲には、そうした新感覚があった。

DIYのアニメのせるふ/稲垣好とぷりん/市ノ瀬加那の「続く話」も相当に良い。BEST10を選曲するにあたり、相当に迷いがあった。
だが、今後、将来的に、数年が経過して、どっちのほうが脳みそに残っているのか?と考えた結果、「どきどきアイデアをよろしく!」の方ではないか、と感じた。それと文化人類学的にも、この曲を選曲するべきというお告げがあった。高橋花林のアニメキャラクターが歌唱しているような臨場感ある歌唱表現が脳みそに焼き付く。これは人類の記憶にも残り続けるだろう。勿論、それぞれがキャラクターとして歌唱しているのだけれど、不思議なアンバランスさもありながらも、それが絶妙なバランスであり、聴き心地がよい。ブラスバンドサウンドをベースにしながら、デジタルなサウンドも含まれていて、いろんな楽器の音が入り混じり、楽曲的なワイワイ感も優れている。落ちサビ前の「でぃー、あい、わーい!」のところは遂に、口に出して歌ってしまう。

「続く話」にも補足的に触れておき、記憶に残しておきたい。
せるふ/稲垣好とぷりん/市ノ瀬加那の関係性にフォーカスが当てられた楽曲。DIYアニメ第一話では、ぷりんのツンデレというか、ツンツンツンツンツンくらいの感じでせるふとコミュニケーションをしていた。これ本当に最終回近くに、二人の友情が成立するのか?ということを個人的に、困惑/混乱したりしていた。しかしながら、このEDテーマを聴けば、二人の関係がわかり、安らぎが得られる。歌詞も秀逸で。二人が「ずっと大好きである」という言葉がしっかりと紡がれている。

”やがて 違う夢を見て たまにきみを寂しく思っても”
”きっと あの日と変わらないまま 心はそばにいる 隣にきみがいる”

そして兎に角、Aメロ/Bメロの稲垣好と市ノ瀬加那の掛け合いとハーモニーがこれまでの声優楽曲の中でも群を抜いて抜群の感度がある。だが、楽曲的には⑧で選曲した「扉を開けてベルを鳴らそう/あおい(井口裕香),ひなた(阿澄佳奈)」と同じジャンルでもある。様々に思いを巡らし、迷った挙げ句に、バランスを取って「どきどきアイデアをよろしく!」をBEST10に選出することになった。

オリジナルTVアニメ「Do It Yourself!! ーどぅー・いっと・ゆあせるふー」OPテーマ『どきどきアイデアをよろしく!』
https://youtu.be/8jOQmPx2Mjk

⑩Catcher/富田美憂

発売日:2022/11/16
作詞:椿山日南子
作曲:椿山日南子
編曲:椿山日南子
(富田美憂Concept ALBUM「Fizzy Night」に収録)

23歳で大人の恋愛楽曲に挑戦する富田美憂の美しい積極性。
コンセプトアルバムの「Fizzy Night」のテーマは「大人の恋愛」。5曲全てが大人の恋愛の楽曲である。
2021年6月30日に発売した1stアルバム「Prologue」は、19歳から21歳までの、子供から大人に切り替わる過程が表現した、という。インタヴュー記事などを読むと、2021年9月26日に開催された「富田美憂 1st LIVE ~Prologue~」@LINE CUBE SHIBUYA での視聴者の声で「ジレンマ」という大人の恋を歌唱した楽曲が「セクシーだった」「大人っぽい」という声が大きく、それのファンが意外性を感じたという方向に挑戦しようということになったらしい。そのため、22歳以降、大人っぽさを増したコンセプトアルバムを制作に挑戦しよう、という方針になったらしい。
オタクたちの感想コメントが次のコンセプトアルバム製作の背中を押す、決め手になる、というのがとても現代的な楽曲制作であると感じられた。
しかしながら「Prologue」アルバムには「翼と告白」や「片思いはじめました」の初恋みたいな、淡い恋心をテーマにした歌を歌唱していた富田美憂がこうしたコンセプトアルバムに挑戦するとは、そんなに想像できていなかった自分がいる。そこに対象の驚きと嬉しさはあった。確かに「ジレンマ」は富田美憂の見方が変わるような印象的な楽曲ではあった。
「Fizzy Night」1曲目の「Coming Up」はシティポップ&大人の恋愛という楽曲でこのコンセプトアルバム制作する前から温めていた楽曲だったらしい。つまりはいくつか楽曲のストックがある中で、コンセプトアルバムという形で世に出した、とも考えられる。
だが、23歳でこのようなコンセプトアルバムを制作するというのは、声優音楽業界的には早熟な気もする。だが、そこを差し引いても、素晴らしい出来栄えのアルバムなのだから、それを受け入れるのが素直である。

「Catcher」のジャジーな楽曲はとってもオシャレで。このオシャレな雰囲気にマッチした富田美憂の表情豊かな歌唱能力は抜群。富田美憂の挑戦する姿勢、可能性を拡充している。
歌詞も秀逸。

”心の奥を晒して 「あなただけに属したい」 そう口にすれば 求めた科白を ひとかけあげる”
”さぁ 至上の瞬間を望むなら 一番大切な心情 その為に捨てて”
”飢えている方がずっと 生きてる感じがして どきどきするの”

こんな歌詞が似合う23の声優も珍しい。だが、妙に癖になるし、「あなただけに属したい」という気持ちにさせてくれるのである。
アルバム名の「Fizzy Night」の"Fizzy"は炭酸の意。富田美憂がインタヴューで答えた感じだと、この炭酸感は、大人が飲コテコテのお酒ということではなく、スパーリングワインなどのしゅわしゅわした炭酸感/フレッシュさが含まれている、とのこと。また「泡沫(うたかた)の恋」という雰囲気もFizzyも込めたらしい。
「あなただけに属したい」という気持ちをファンに抱かされるのも、ある種の「泡沫の恋」であるし、泡のようにはじけて消えてしまうものである。そういう一瞬の儚さや哀愁も「Catcher」に感じられたりした。

また、富田美憂は椿山日南子の楽曲を、本人が出演していたアニメ「錆喰いビスコ」のエンディングテーマ「咆哮/ビスコ(鈴木崚汰)&ミロ(花江夏樹)」で注目していたらしい。「Fizzy Night」の楽曲コンペ中に「これだ!」と思って直感的に選曲した「Catcher」が椿山日南子の製作楽曲だったらしい。こうした音楽への感性や自ら好きな作家の楽曲を引き当てる富田美憂の音楽性には更に期待してよいのだと思う。
「Fizzy Night」の中では、「Coming Up」(作詞・作曲・編曲:涼木シンジ)も相当に個人的な趣味に合致する。だが「Catcher」の多彩さや上から目線の嗜虐的で、ファム・ファタール的な女性像の歌詞が個人的には心に刺さった。声優オタクにすべてを捨てさせる悪魔のような天使/富田美憂という概念が誕生するのである。

富田美憂 コンセプトアルバム「Fizzy Night」ダイジェスト試聴
https://youtu.be/zNaI-iYJFcQ?t=71

EXTRA。以下、個人的な感想メモ。

・「ワゴン/東山奈央」
発売日:2021/11/03
作詞:渡辺翔
作曲:渡辺翔
編曲:eba
(5thシングル「冷めない魔法」に収録)
2011年の楽曲ではあるが、生バンドのライブで聴いてとても良かった。これも声優生バンドのライブ映えする一曲で印象に残った。これが2021年内に生バンドのライブで聴けていれば、当時のBEST10に入っていたかもしれない。

東山奈央 5thシングル『冷めない魔法』クロスフェード動画
https://youtu.be/pv3KszDBpvc?t=83

・「遣らずの雨/楠木ともり」
発売日:2022/06/01
作詞:楠木ともり
作曲:楠木ともり
編曲:ラムシーニ
(4thEP「遣らずの雨」に収録)
楠木ともりのライブチケット倍率が高いという噂もあり、中々ライブへいくモチベーションは生まれていない。けれど、このパンクロックテイストの楽曲はかなり生のライブパフォーマンスで体感してみたいと感じた。そもそも楠木ともりは声優というよりも、シンガーソングライターの領域にいるのだろう。それくらいにパワフルな楽曲を精力的に制作している。驚愕。

楠木ともり「遣らずの雨」Music Video -Full ver.-
https://youtu.be/vFY9syzUzlM

・「Bang Bang/IIIX(スリーエックス)(fran/Lynn、kana/田中あいみ、miho/村川梨衣)
発売日:2022/06/29
作詞:Mayu Wakisaka
作曲:ハヤシベトモノリ(Plus-Tech Squeeze Box)
編曲:ハヤシベトモノリ(Plus-Tech Squeeze Box)
(IDOLY PRIDE 1st EP 「それを人は“青春”と呼んだ」に収録)
EDM&ダンスミュージック。この手の音楽はそんなに個人的な好みと合致はしないのだけれど、何故か魅了された。それとIDOLY PRIDEのアプリゲーム内におけるIIIXの3人の仲の悪い会話シナリオがめちゃくちゃ楽しいいので、そういった加点もあって、すごく良い曲に感じられた。

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