「鼻」を取り戻していくことにしたお話
コロナウイルスの影響で4月と5月はほぼ「無かったこと」にされつつあります。
その月の中に予定されていたイベントは中止、延期を余儀なくされ、卒業式・始業式も中止となった学校もあります。
特に実感が無いまま卒業し、新しい学生生活が始まったと言う学生は多いです。
そりゃ実感も無いですよね。奪われてしまったのですから。
コロナ禍は色んなものを奪っていきました。
日本では特に4、5月がピークだったでしょう。
この2ヶ月、不要不急の用事以外では外に出られず、その影響で仕事もままならない、外で待っているのは目に見えないウイルスに加えて「自粛ムード」という人間が作りだした空気。
運良く今まで感染することもなく、なんとか生きていける余裕もあり、ほとんど影響を受けることなく生活していました。
動画サイトやブログでは「おうち生活」を快適に過ごすために、ストレッチや節約料理レシピなんかが紹介され、退屈と節約をターゲットにした娯楽が増えましたね。
林も容易に家を出られない間は自室で消音セットを組んだり、グッズを考えるなどして、音楽活動に触れる時間を増やして続けているようにもしました。
緊急事態宣言が解除されてからは、少しずつしたいことをして、会いたい人に会いに行くことができるようになってきました。
ライブも控えているので、音楽にも少しずつ触れるようになり、運動のためほぼ毎日散歩するようにもなりました。
そして、2ヶ月の間にずっと眠っていた感覚を思い出しました。
久々に運動をした感覚はもちろんあります。
外の景色をゆっくり見た感覚ももちろんあります。
それよりももっと強く感じたものです。
それは、においでした。
周りに人がいない状態ではマスクをとって呼吸をした方が良いと勧められたのもあり、ひとけの無い通りではマスクを外して歩いていました。
そこが偶然、子供の頃によく家族と買い物に来ていた町でした。
とても懐かしいにおいに包まれた時「外ってこんなにおいがしていたんだな」と、おそらく人生で初めて外のにおいを堪能しました。
会いたい人に会えた時もそうです。おそらく35年間生きてきて初めて嗅覚がフル回転していたと思います。
コロナの時期は外出時は常にマスクをするようになりましたが、そうなる前は真逆の生活を送っていました。
体調が悪くならない限りマスクをしないタイプです。
そして体調が悪くなることも年に数回ある程度です。
マスクをして外を歩くなんて、もしかしたら人生で初めてに近いかもしれません。
そんな林が外に出る時にも常にマスクをしていた生活は、思っていた以上に嗅覚を奪っていました。
今まで無意識のうちに嗅覚に頼って生きていたのかもしれませんね。
今でこそ慣れてはきましたが、マスクをするとにおいを嗅ぐどころか呼吸すら苦しいこともあります。
どんなところへ行っても何をしていてもマスクのにおいを嗅いでいる感覚は、慣れるのに苦労しました。
家の中ではもちろんマスクをしていませんが、自分の家のにおいや自分自身のにおいというのは、基本的に感じないものです。におわないわけではなく、それに慣れているためです。
コロナが落ち着いてきて最初にとった行動は、たった2ヶ月ほどで退化していった「鼻」の活動を再開させたことでした。
外に出たのも運動をしたのも、もしかしたら体よりも先に鼻が外に出たがっていたのかなと、そう思えるようになってきました。
この先、コロナが更に猛威をふるうことになったり、また新たな天変地異で外に出ることが無くなった場合、人間の鼻は退化して無くなってしまうのではないでしょうかね。
嗅覚は無くなり、顔には最低限呼吸するためだけの穴がポコっと空いているだけの人間に変化していくかもしれませんね。
ついでに嗅覚と密接に関係した味覚も徐々に退化していくとかもありえそうです。
たった2ヶ月でそう感じたので、近未来を描いたSF映画に登場する未来人たちは、今の我々と同じ姿をしていないだろうなと思います。
そうならないために、できる限り外の空気は吸っておきたいです。
人のにおいを感じるのは今はまだ難しい時期ですので、今のうちに身近な人や大切な人のにおいを覚えておきたいですね。
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