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頭の中のヒト

私の頭の中にあるヒトが6年間ずっと住んでいる。
厄介だが、生きる糧になっていることも確かだ。

出会いは、20年も前に遡る。
合コンの帰り、電車を待つ私の前に突然現れた。
さっきバイバイしたはずなのに。
私の腕をギュっとつかんでそのヒトは、改札口を抜けて再び夜の街に連れ出した。
大きな仏像が鎮座する静かな居酒屋で一夜を過ごし、空が白け始めた頃、駅に向かうサラリーマン達を歩道橋から一緒に眺めた。
その後2回くらいあったのだけれど、私は合コンに来ていた別の人と付き合うことになった。
それからも彼とは友人関係は続いた。深夜長電話したり、朝まで友達を交えて飲んだり。
何年かすると、私は彼と別れ、狂ったように次から次へと付き合う人を変えた。何がしたいのか自分でもよくわからない時期だった。

時は流れ、私は結婚した。半ば両親が決めた人だった。
それを機に、彼を含めて男友達とは連絡をとるのを控えた。
子どもも生まれ、仕事と家庭以外考える余裕はなかったこともある。

そして約6年前、共通の友人に誘われ再会することとなった。
久しぶりに会ったその時、「ああ、私このヒトずっと好きだったんだ。」と思った。
好きだったのに、友人関係を壊したくないから、片想いだったら恥ずかしいからずっと言えなかった。彼も結婚して子どももいるし、今更告白したとしてもだからなんだというのだ。周りには好きがダダ漏れしていたらしいが、シラを切った。

再び私たちは前のようにとりとめのないやり取りを始めた。
そのヒトの笑顔を思い出すと、毎日胸が躍る。返事が来ないとソワソワする。
あのヒトだったらこういう時どう考えるだろう、どう思うだろうと勝手に考えている。
夫のことはどこかに行ってしまう。厄介だ。
でもそのヒトなしではもはや私はやっていけない。
いや、そのヒトなしでもぶっちゃけやっていけるのかも。
実はそのヒトは私の中で作り上げられているのだろうな。
だってもう4年も会っていないのだから。むしろもう会わない方がいいとも思えてきた。

続く

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