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昨日のお客様

予約サイトで、随分前から予約されていた。
たいていのお客様は、来る前に、食事の件やら、送迎やら、レンタカーの手配やら、到着時間やら…..連絡をしてくださる。
チェックインは16時からなのだけど、23時になっても連絡ひとつなかった。
ここのところ、休みなく働いていたせいで、僕らの目が重たかった。いつもなら、ノーショウだよ〜 どうする? 初めてじゃない〜 予約サイトに連絡してみる? などとざわついているはずなのに。

もう、眠いから🥱寝よっか?
もう、お風呂も面倒くさいな
そういうのも束の間、布団に潜り込んでいた
電気を消して、寝る体制に入った頃、静寂な空間に電話が鳴った。
今日お泊まりのお客様からだった。今、郷ノ浦港にいるので、これから来るというのだ。
慌てて着替えて、ロビーで到着を待つことに。

歳の頃は、40歳くらいなのか いや、ひょっとするともっと若いかも 昭和を匂わすワンピースに紙袋3つぶら下げて 到着なさった。
新年から続いている、全国旅行支援の手続きを済ませ、24時をまわっているので、素早く館内とお部屋の説明をして、お休みいただくことに。
館内にある洗濯機を2回転したいという申し出に、(当館では、洗濯機使用1回200円、乾燥機1回200円)800円かかる旨を伝えたら、乾燥機のみ使わせて欲しいとの事だった。
とにかく、大きな紙袋からまるでドラえもんの4次元ポケットのように、ワクチン接種証明書やら、財布やら、洗濯物の衣類など、ゴソゴソと出しはじめた。
早々に失礼して、やっと寝床に入った途端に、また電話が鳴った。
これから、もう1人、この宿に泊めてもらえないかという問い合わせだった。
とにかく、到着するまで、携帯の充電ができずに連絡が当館にも、もう1人お泊まり頂く予定の方にも、連絡がつかなかったのだと。その方とは、顔も見たことがなく、メールだけのやり取りで、しかも同じ船で来ていたはずと言う。たった今、この宿に泊まっているから、ここに来て欲しいというメールを送ったと言うのだ。
お客様は神様だけど、連絡が取れずにいつ来るかわからない方を待つわけにもいかないし、時間も25時近い。
私がその方の立場なら、時間も時間なので、どちらかの宿にチェックインしていると思いますよ〜
25時半まで連絡をお待ちしますが、よろしいでしょうか?
半ば強引に納得してもらい、25時半まで待つことにした。
結局、その方は現れなかった。

壱岐島は、小さい島ではあるが、移動となると車が必需品。私が住む八幡半島には、飲食店は当館のみ。コンビニや商店もない。1番近いコンビニだと、車で10分はかかる。

翌朝、そう言えば、昨夜、到着された時、朝から何も食べていないとおっしゃっていたので、塩むすび2つと香物と味噌汁を差し入れた。

お客様は、車の免許もないようなので、滞在中の3泊、どうなさるおつもりなのか、対応はメールのみ、姿を現さない。

この4日、ずっとお部屋に籠りきり。出発の日まで。

先ほど、お帰りになられたようだった。お声も聞けず、部屋に入ってみると、いらっしゃらなかった。

病んでるようだった。

幸せになってもらいたい。切に願うばかりだ。

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