「受戒」を学ぶ(2)
【仏の道:遠望・近見】 (94)
「受戒」を学ぶ(2)
[受戒の作法】
いはゆる応受菩薩戒、此入法之漸也、
これすなはち参学のしるべきところなり。
その応受菩薩戒の儀、
ひさしく仏祖の堂奥に参学するものかならず正伝す、
疎怠のともがらのうるところにあらず。
いわゆる禅苑清規の「菩薩戒を受けよ、これ、仏法に入る始めである」という言葉は、仏法を学ぶ者、全てが知っておくべきことである。その菩薩戒を受ける作法は、久しく仏祖の堂奥に学んだ者であれば、必ず正しく相伝しているものである。仏法を疎かにする者の得られるものではない。
その儀は、かならず祖師を焼香礼拝し、
応受菩薩戒を求請するなり。
すでに聴許せられて、沐浴清浄にして、
新浄の衣服を著し、あるいは衣服を浣洗して、
華を散じ、香をたき、礼拝恭敬して、その身に著す。
その作法は、始めに必ず祖師(受戒の師)に香を焚いて礼拝し、菩薩戒を受けたいとお願いする。許されたならば入浴して身体を清潔にし、新しい袈裟 又は洗い清めた袈裟に、花を散らして香を焚き、恭しく礼拝して身につける。
あまねく形像を礼拝し、三宝を礼拝し、
尊宿を礼拝し、諸障を除去し、
身心清浄なることをうべし。
その儀、ひさしく仏祖の堂奥に正伝せり。
そして、あらゆる仏像を礼拝し、三宝(仏と法と僧)を礼拝し、長老の僧を礼拝して、様々な障害を除き、身心を清浄にすべし。その作法は、久しく仏祖の堂奥に正しく相伝されて来たものである。
そののち、道場にして和尚 阿闍梨、
まさに受者ををしへて礼拝し、
長跪せしめて合掌し、この語をなさしむ、
その後、道場に於いて戒を授ける和尚(受戒の師)は、戒を受ける者を教えて礼拝 長跪(両膝を地に着けて上体を立てる)させ、合掌してこの語を唱えさせる。
仏に帰依(す、法に帰依す、僧に帰依す。
仏陀 両足尊に帰依す、達磨 離欲尊に帰依す、
僧伽 衆中尊に帰依す。
仏に帰依し竟わる、法に帰依し竟わる、僧に帰依し竟わる。
仏に帰依いたします、法に帰依いたします、僧に帰依いたします。人間の中の尊き仏に帰依いたします、欲を離れる尊き法に帰依いたします、人々の中の尊き僧に帰依いたします。仏に帰依し終りました、法に帰依し終りました、僧に帰依し終りました。
如来 至真無上正等覚は是れ我が大師なり。
我れ今 帰依したてまつる。
今より已後、更に邪魔外道に帰依せじ。
慈愍したもうが故に、慈愍したもうが故に。
(三たび説く。第三には慈愍故を三遍 畳ねる。)
まことの無上の悟りを得ている仏は、私の大いなる師であります。私は今 帰依いたします。今後、決して邪魔外道には帰依いたしません。どうか私を慈しみ憐れんで、この誓いをお受けください。(三回となえる。三回目には慈愍故を三遍となえる。)
【清浄戒】
善男子、既に邪を捨て正に帰す、
戒 已に周円せり。
応に三聚清浄戒を受くべし。
今、入信の善男子は既に邪を捨て正道に帰依して戒を円満した。次には三か条の清浄な戒を受けるべし。
第一 摂律儀戒。
汝 今身より仏身に至るまで、
此の戒 能く持つや否や。
答て云く、能く持つ。(三問三答)
第一に摂律儀戒、一切の悪を行わないという戒である。
あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができるか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)
第二 摂善法戒。
汝 今身より仏身に至るまで、
此の戒 能く持つや否や。
答て云く、能く持つ。(三問三答)
第二に摂善法戒、一切の善に努めるという戒である。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができるか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)
第三 饒益衆生戒。
汝 今身より仏身に至るまで、
此の戒 能く持つや否や。
答て云く、能く持つ。(三問三答)
第三に饒益衆生戒、一切の人々を利益するという戒である。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができるか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)
上来三聚清浄戒、一一犯すことを得ざれ。
汝 今身より仏身に至るまで、此の戒 能く持つや否や。
答て云く、能く持つ。(三問三答)
この三か条の清浄な戒は、どれも犯してはならぬ。あなたは今から仏になるまで、この戒をよく保つことができるか。
(答えて言う)よく保ちます。(三回尋ね、三回答える)
是の事是の如く持つべし。
(受者礼三拝して長跪合掌す)
これらの事を答えたように保つべし。(戒を受ける者は三拝して長跪し、合掌する)
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