「帰依三法」を学ぶ(6)

【仏の道:遠望・近見】 (151) 

「帰依三法」を学ぶ(6)

    希有経に曰く、
   「四天下及び六欲天を教化して、皆 四果を得せしむとも、
   一人の三帰を受くる功徳には如かず。」

  希有経には次のように説かれている。
「たとえ四天下(須弥山を中心とする東西南北の全地上世界)と六欲天(天上の欲楽世界に住む六種の天人)を教化して、皆に四果(一切の煩悩を断じた阿羅漢)を得させたとしても、それは一人の人が三帰戒(仏陀 仏法 僧団に帰依する戒)を受けた功徳には及ばない。」と。

   四天下とは、東西南北洲なり。
   そのなかに、北洲は三乗の化いたらざるところ、
   かしこの一切衆生を教化して、阿羅漢となさん、
   まことにはなはだ希有なりとすべし。


 四天下とは、須弥山の四方に位置する世界で、東西南北の洲のことである。その中でも北洲は、仏の三乗(悟りに至る三つの乗り物。声聞乗、縁覚乗、菩薩乗のこと。)の教えの達しない所であり、そのすべての人々を教化して阿羅漢(一切の煩悩を断じた聖者)にすることは、実に甚だ希有なことである。

   たとひその益ありとも、
   一人ををしへて三帰をうけしめん
   功徳にはおよぶべからず。


 しかし、たとえそのような利益があっても、一人を教えて三帰戒を受けさせた功徳には及ばない。

   また六天は、得道の衆生まれなりとするところなり。
   かれをして四果をえしむとも、
   一人の受三帰の功徳のおほくふかきにおよぶべからず。


 また六欲天は、仏道を悟る人々が希な所であり、その人に四果(阿羅漢)を得させたとしても、一人の三帰戒を受けた功徳の多さ深さには及ばない。

   増一阿含経に云く、
   「忉利天子有り、五衰の相 現じ、当に猪の中に生ぜんとす。
   愁憂の声、天帝に聞こゆ。

  また増一阿含経は次のように説いている。
 「ある忉利天子の身体に五つの衰弱の相が現れて、猪の中に生まれそうになり、その憂いの声が天帝(帝釈天)に聞こえた。

   天帝 之を聞きて、喚び来たりて告げて曰く、
   汝 三宝に帰依すべし。
   即時に教えの如くす。
   便ち猪に生ずることを免れたり。

 天帝はこの声を聞いて天子を呼び、「おまえは三宝に帰依しなさい。」と教えて言った。天子はすぐに教えに従い、猪に生まれることを免れることが出来た。

   仏 偈を説いて言はく、
   諸有仏に帰依すれば、三悪道に墜ちず、
   漏尽きて人天に処し、便ち当に涅槃に至るべし。
   三帰を受け已りなば、長者の家に生じ、
   還た出家することを得て、無学を成ぜん。」


 そこで仏(釈尊)は次の詩句を説かれた。
人々が仏に帰依すれば、三悪道(地獄 餓鬼 畜生)に落ちることなく、煩悩が尽きて人間界や天上界に生まれ、遂には涅槃(煩悩の滅)に達することであろう。三帰戒を受ければ長者の家に生まれ、また出家することを得て、更に学ぶべきことのない阿羅漢の悟りを成就することであろう。」と。

   おほよそ帰依三宝の功徳、はかりはかるべきにあらず無量無辺なり。

 このように、三宝に帰依する功徳は計り知れず、無量無辺なのである。


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