「法句経」を学ぶ(13)
【仏の道:遠望・近見】 (109)
「法句経」を学ぶ(13)
第十三 世俗の部
一六七 下劣の法を習ふべからず、放逸に住すべからず、邪見を習ふべから
ず、 世 俗を助長すべからず。
第13章 世の中
167 下劣なしかたになじむな。怠けてふわふわと暮らすな。邪な見解
いだくな。世俗のわずらいをふやすな。
一六八 發起せよ、放逸なる勿れ、妙行の法を行ぜよ、如法の行者は快く
寐ぬ、今 世にも亦他(世)にも。
168 奮起てよ。怠けてはならぬ。善い行いのことわりを実行せよ。ことわ
りに 従って行なう人は、この世でも、あの世でも、安楽に臥す。
一六九 妙行の法を行ぜよ、惡行の法を行ずる勿れ、如法の行者は快く寐
ぬ、今世 にも亦他(世)にも。
169 善い行ないのことわりを実行せよ。悪い行ないのことわりを
実行するな。こ とわりに従って行なう人は、この世でも、あの世
でも、安楽に臥す。
一七〇 (世は)泡沫の如しと觀よ、(世は)陽炎の如しと觀よ、斯く世間を
觀察 する人を死王は見ることなし。
170 世の中は泡沫のごとしと見よ。世の中はかげろうのごとしと見よ。
世の中をこのように観ずる人は、死王もかれを見ることがない。
一七一 來れ、雜色の王車に等しき此の世間を見よ、愚者は此中に沈溺す、
智者に 執著あることなし。
171 さあ、この世の中を見よ。王者の車のように美麗である。愚者は
そこに耽溺するが、心ある人はそれに執著しない。
一七二 人若し先に放逸なるも後に不放逸なれば能く此の世間を照す、
雲を出たる 月の如く。
172 また以前は怠りなまけていた人でも、のちに怠りなまけることが無い
なら、その人はこの世の中を照らす。
あたかも雲を離れた月のように。
一七三 人若し先に惡業を作るも(後に)善を以て此を滅せば能く此の世間を
照 す、雲を出たる月の如く。
173 以前には悪い行ないをした人でも、のちに善によってつぐなうなら
ば、その 人はこの世の中を照らす。──雲を離れた月のように。
一七四 此の世は黒暗なり、此の中にて能く見るもの稀なり、網を脱れて
天に到る 鳥の稀なるが如く。
174 この世の中は暗黒である。ここではっきりと(ことわりを)見分ける人
は少ない。網から脱れた鳥のように、天に至る人は少ない。
一七五 鵝鳥は日の道を行く、(人は)通力によりて虚空を行く、賢人は魔と
其軍 衆とを亡ぼし世間を離る。
175 白鳥は太陽の道を行き、神通力による者は虚空を行き、心ある人々
は、悪魔とその軍勢にうち勝って世界から連れ去られる。
一七六 一法を犯し、(且つ)妄語し、他世を信ぜざる人は惡として造らざる
な し。
176 唯一なることわりを逸脱し、偽りを語り、彼岸の世界を無視している
人は、 どんな悪でもなさないものは無い。
一七七 貪る人は天に往かず、愚者は決して施與を贊せず、賢人は施與を
隨喜し、 此に由つて他生に樂を受く。
177 物惜しみする人々は天の神々の世界におもむかない。愚かな人々は
分かちあ うことをたたえない。しかし心ある人は分かちあうことを
喜んで、そのゆえに来世 には幸せとなる。
一七八 地上を統治するよりも、また天に往くよりも、一切世界の王位
よりも預流 の果を勝れたりとす。
178 大地の唯一の支配者となるよりも、天に至るよりも、全世界の主権者
となるよりも、聖者の第一階梯(預流果)のほうがすぐれている。
【感想と考察】
第13章は、世間、浮世のありようをしっかり認識し、”世俗の徒”になるな、と説諭されている。そこは下劣な法が行われている世界である。虚飾に飾り立てられた世間に阿り、安易に放逸生活に耽溺する愚か者になってはならぬ。
奮起せよ。水疱・蜃気楼のように世間を観測出来る人は死王にまみえることはない。法に従い正しい道を歩む者はそんな世間に執着しない。たとえ一時的に放逸に走っても、それを乗り越えれば雲間を出た月のようにその人はこの世を照らす。
この世は暗黒である。下劣な法を行う魔王とその軍勢に打ち勝って、この浮世から離脱する時、人は、この世・あの世を問わず安楽に住する。妄想を語り、来世を嘲る者はどんな悪でも行う。だが賢者は施しを喜びあの世で安楽を得る。だが、それより今、現在、涅槃への第一歩を踏み締めていることこそ素晴らしい。
目覚めよ。邪見に従い放逸な生活に身を落として”世俗の徒”になってはならぬ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?