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公開している楽曲の二次使用について

ちょっと、今日は、日記というよりも業務連絡になってしまいますが、
一度きちんと書いておいた方がいいと思うので書きます。

私は、YouTubeにチャンネルを持っていて、そこで私がアコーディオンで曲を弾いた演奏動画を公開しています。
そして、その音声部分を、stand.fm でも公開しています。

あ、その前に。
私は、アコーディオン演奏とその周辺の音楽のことを生業(なりわい)としているプロの音楽家です。
ここが、ぱっと見ではわからない~インターネットではなおさら、よほど、ちゃんとプロフィールを確認しないと、無名の場合はわからない。
無名といっても、私は札幌を中心に北海道内で自主ライブやイベントなどでの営業の演奏などしていたので、一応ローカルな業界では、アコーディオン奏者としては知られていて、プロモーターさん経由で仕事をいただくこともあります。

動画や音声の公開は、去年から開始したんですけど、おかげさまで、地域を限定せずに、いろんな方に聴いていただけています。
これはとてもうれしいです。
嬉しいんですけど、ちょっと困ってしまうお申し出を受けるようになりました。
それは、タイトルの通り
「kibana さんのアコーディオンの動画(音声)を伴奏にして、歌いたいんですけど(音声配信したい)」
「音声収録のBGMに、(公開している)曲をお借りしてもいいですか」
「〇〇(曲名)を歌いたいので、伴奏してください」
という、「二次使用(そして公開)」のお申し出です。

最近、音声配信を始めたリアルなお友達の場合もあり、スタエフで知り合った方からの場合もあります。

こういうお声がけをいただけるのは、私の演奏を気に入って頂いているんだから、光栄なことなんですけど、ちょっと返答に困ります。
なぜかというと、基本的に
 演奏曲の二次使用はお断りしたい
からです。
なので、せっかく仲良くなった方からのお申し出を断るのは心苦しく、
リアルな友人は、ピアノ弾き語りをする方なので
「自分の伴奏で歌った方がいいですよ」
とは言ったものの、ごまかしてる感がぬぐえず、一度ちゃんと説明した方がいいなと思った次第です。
でも、長くなるしなあ、そして根本的な認識が違うとわかっていただけない、そしてその方が気分を害することにもなりかねないので、ためらってました。

前置きが長くなりました。

なぜ、演奏曲の二次使用をお断りしているかというと
「相手の方に、プロに演奏を頼む(演奏した曲を使うことも同じ)という認識がない」ことと
「私の計り知れない、どんな使われ方をされるかもしれない」
の二つの理由からからです。

ひとつめ。
八百屋さんに行って、店頭のダイコンを手に取って「これ、もらっていくね」と言って、代金を払わずに持ち去る人はいません。
美容師の知り合いに「髪切ってね」と頼んで、料金を払わない人はいません。
たとえ、友達でも、
「それを仕事にして、それで生活費をまかなっている」
ひとに、そんなことはしないし、たとえ、それで対価を得ていない(家庭菜園など)でも、その手間ひまと原価と費やした時間を思えば、許可なく畑からダイコンを持ち去ることはしないでしょう。
自分がインスタにアップする料理に、ダイコンを使う、その際に
「〇〇青果店のダイコンで~す、ってテロップ入れるからね」
といって、〇〇青果店から、タダでダイコンを持ち去ることもしないよね。

これが、芸術の分野、目に見えない、形のないものに関しては、堂々と行われてるんです。

本来、プロの演奏家に演奏を頼んだり、演奏したものを使用して何かをする際には、対価が発生します。
だって、私たちはそれで生活費を捻出してるわけですから。
まず、そういう認識のない人が多い。

なんなら、店で売られているCDの曲も、平気で音声配信で流す。

CDには、「私的に楽しむ分には、許諾等は不要」と書いてあるんだけど、この「私的」というのを、勘違いしている人が多いんです。

「自分が楽しみで音声配信していて、それで稼いでるわけじゃないから」

これは、「私的(プライベート)」とはいいません。
プライベートは、自分と家族、親しい友人数人の範囲のことで、非営利ということではない。
音声配信を含め、誰でも見聞きできる場に公開することは「公的(パブリック)」なんです。

だから、自分の楽しみの音声配信で、フォロワーが10人でも、「公的」
そして、配信でCDを使うことは、事実上ご法度です。
CD制作会社、関係者に許可をもらった場合はOKですけど、たいていそんなことはせずに無断で使っているから、発覚したら罰せられるレベルです。

これとは別に、他人が作った曲を自分で演奏する場合、BGMとして使用する場合も「音楽著作権」があり、届け出が必要で、使用料が発生します。

なぜか。

曲という作品を世に出すまでにかかる、手間ひまと費用と時間、そして、それを仕事にしている人の「正当な報酬」をフイにする行為だからです。
ちょっと考えれば、八百屋さんのダイコンと同じことなのに、これを考えていない人が多い。

なので、プロの職業音楽家に「演奏した曲を使わせてね」と依頼するものの、どうも使用料を払うことまでは考えていないなあ~という事態となる。

私がスタエフを始めたばかりの頃、この点をクリアして依頼してきた方がいらっしゃいました。
「〇〇を歌って配信したいので、伴奏してください、有償で」
というので、お引き受けしました。
プロが、自分の名前で伴奏を引き受けるということは、それを耳にした方に対して最善のクオリティを提供したいと思う。
だから、ちょいちょいと練習して、ちゃちゃっと録音。。。ということはしない。
せっかく、歌う方がわかっているので、その方のキィに合わせようと、ラフに録音したデータを送り、
「キィが合っているかどうか確認してください、それに合わせて、ちゃんとした音質のものを作ります」と言い添えました。
ところが、ここから先が、わかってなかったようで、依頼者さんは、歌のアドバイスをもらっているというお友達にそのデータを送り、そのお友達がそのラフな演奏をバックに歌ったものを音声配信で流す~ということをされてしまいました。
「えー、あれが世に出るの??」
プロとしては、困ってしまうクオリティなんです。音質も、演奏の練度も。
だから、ひとこと言い添えたんだけど、伝わっていなかった。
というか、素人の方は
「あれで、充分ですよお~」
という認識なんだ、ということに気づいていなかった私のミス。
とりあえず、そのお友達という方(と、データを送った依頼者)が、許可なく「お友達の方の配信で」使ったことに抗議をし、許可なく他人にデータを渡したことを依頼者に抗議し、このお話はなかったことにしてもらいました。

この一連の出来事で、音声配信をしている方と、私の「認識のズレ」は、はっきりと表に出ていないのでわからない、だから、うかつには引き受けられないなと思ったんです。
「プロに頼む時は、有償」というところまでは、わかって頂いてた方ですらこうなので、無償で伴奏してもらおうと思う人には、そこから。。。。
考えただけで、むずかしいなあ~と思うんです。

もうひとつは、音質のモンダイです。

理由の2番目の「どんな使われ方をされるかわからない」ということには、上の「他者にデータが渡されてしまう」ことも含まれます。
これは「CDのコピーが配布される」ことと同じで、本来なら、それぞれの人から代金をいただけるものが、コピーが出回ることで、それがなくなる。
正当な報酬をいただけなくなるということ。

そして、「どんな使われ方」というのは、音質のモンダイです。

私の曲を伴奏として流す~その際に、どんな再生機器を使うんだろうということを、私には管理できない。
ということは、スマホのスピーカー(イヤホンは高音質だけど、直で聴くととても音質が悪い)だったり、昔のPCのスピーカーだったりすると、それに声を重ねて録音した時に、伴奏の音がヒドイということになります。
それを公開されて「伴奏はkibanaさんでした~」は、ご勘弁願いたい。

ピアノやギターのようなメジャーな楽器は、再生状態にかかわらず、その音色を想定することができる。ヒドイ音質でも、「これは録音状態が悪いんだな」ってわかる。(演奏家は、いい音質で自分の演奏は聴いてほしいと願っているはずですけど)
でも、アコーディオンは、そんなに耳なじみがないので、ヒドイ音質の演奏を聴いても、再生機器のせいなのか、録音状態のせいなのか、演奏者のウデのせいなのか、わからない。
でも「アコーディオンって、なんか、変な音ね」という印象が残る。
「kibana さんて、下手ね」って思われるかもしれない@@

今は録音データはデジタルだから、ミキサーなどで、私の演奏データをご自分の声とミキシングして、バランスやノイズや音質なども調整してくれるなら話は別ですが、依頼してきた方々は、おそらく、そんなことは想定していないと思うんです。

スマホで私の演奏を流して、それをバックに歌って、ラジカセで録音して、さらにそれをスマホで再録音。
これを、データのやりとりなしに、直でやれば、もう、音質は劣化の一途。

でも、そこまで確認できないし、なんなら、その仕組みや方法を解説しなくてはならないかもしれない。挙句に
「いやあ、そこまでしなくても、私はこれで充分よ~」
と言われておしまいになりそう。

はい、こむずかしくて、こうるさいことを言ってるとお思いでしょうが、
みなさんも、ご自分が専門的になさっている仕事に関しては、ちゃんとしたこだわりと、最低これくらいは。。。のラインと矜持をお持ちだと思うんです。
でも、音楽などの芸術は、趣味との境目があいまいで、音声配信で歌っている方は、たいてい趣味の方なので(プロの方は、まず、こんな依頼の仕方はしないし、その後の心配も不要)ここまで考えないと、先にあげたトラブルになる。

そして、そこまで時間と手間をかけなきゃいけないのかしら?わたし。。
と思ってしまいます。

頼む方は「使わせてね」「はい、いいですよ」で済むと思っているから、そんな配慮はしていないと思いますが、先月から昨日まで、この手のお申し出がけっこう続き、先のトラブルを思い出した私は、むげに断れないし、でも説明は長くなりそうだし、伝わるかどうか不安だし。。。という眠れぬ夜を過ごしてきたわけです。
そして、仮に数々の懸念事項をクリアしたとしても、申し訳ないけど、安心はできない。この先どんな依頼が来るかわからない。。。。おひとり引き受けてしまうと、その先、断れない。。。

ぐるぐる考えた末の結論が

演奏曲の二次使用はお断りしたい

という次第です。

わかっていただけたかなあ。

決して、ご依頼者さんを信頼していないわけじゃないんですよ。
いや、人としては大好きで仲良くしたい方たちなんですけど、「音楽に関しては趣味としての認識しかない」という一点においては、申し訳ないけど、「知らずにやっちゃうこと」があるかもしれないと思うわけです。

気分を害されたらごめんなさい。

kibana って偉そうだなあ~って思われてもしょうがないです。

でもね、私は、こんだけ音楽を、自分の演奏を、アコーディオンを大事に思っているということは、わかってくださいね。

また明日。

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