【とよおかこども音楽クラブ】日本相撲聞芸術作曲家協議会・鶴見幸代による2023年5月の滞在日記（後編）

KIACコミュニティプログラム2023：日本相撲聞芸術作曲家協議会（JACSHA）鶴見幸代による2023年5月3日〜6日の滞在制作日記（後編）です。スタッフ橋本も同行しました。

（後編）出石神社の幟回しをリサーチして、みんなで作曲！

初節句を祝う出石神社の行事「幟回し(のぼりまわし)」へ。
感染症対策として、声を出す囃子唄 を録音したものを、幟とタケボラの円の真ん中に置かれたBluetoothスピーカーから再生する工夫をして、この数年を途切れなく続けてこられた行事。それがかえって儀式感が深まる印象がありました。

幟回しの様子。真ん中にスピーカーがあり、そこから歌が聞こえてくる。

囃子唄とタケボラの音楽の雰囲気に魅せられて、城崎国際アートセンター（以下KIAC）に帰ってきてから、一緒に見に行った「とよおかこども音楽クラブ」メンバーで中学生のれんちゃんとKIAC橋本さんと、幟で地面を叩くリズムを傘で、タケボラをお酒の瓶で代用し、再現演奏に挑戦。

そして、囃子唄の不思議な歌詞を頑張って解釈し、新しくれんちゃんの人生計画に基づいた歌詞を作って、新作を完成&演奏。

新作について：
幟回しの移動を追いかけた約3時間（歩行距離約5キロ）、断続的に聞き続けた囃子唄とタケボラの音楽の（1回が1分20秒くらい）、わらべうたやあそび唄に感じる、どこか不思議で、薄暗く不気味な雰囲気に魅せられて、KIACに帰ってきてから新作づくりに挑戦。

出石幟回しについて書かれた資料「豊岡市の祭礼・年中行事等調査報告書」に、囃子唄の歌詞 が掲載されている。3番分を書き下すと下記の通り。

1
ヨーイヨーイバーヤーナ
イーケノハータノクイチロガ
セートーキッテハーニャータ
ハダカデドーチューナルモノカ
ナリャコソココマデシテキタゾ
ヨーイヨーイバーヤーナ
サンベンマワッテショウブシロ

2
ヨーイヨーイバーヤーナ
イーケノハータノクイチロガ
セートーキッテハーニャータ
ハダカデドーチューナルモノカ
ナリャコソココマデシテキタゾ
ヨーイヨーイバーヤーナ
モヒトツマワッテショウブシロ

3
ヨーイヨーイバーヤーナ
イーケノハータノクイチロガ
セートーキッテハーニャータ
ハダカデドーチューナルモノカ
ナリャコソココマデシテキタゾ
ヨーイヨーイバーヤーナ
ヨーイヨーイバアクレー

これまでの人生で、わらべ歌の歌詞を積極的に解釈をしたことはほぼなかった気がするが、せっかくなのでどういう内容なのかの解釈を試みた。一見呪文のように見えるけれど、音楽に乗っかると、七五調のノリになるので、なんとなく意味が見えてくる。
「バーヤーナ」「ハーニャータ」「バアクレー」の、エキゾチックな印象のある三大謎単語が、なんのことなのか全然わからないけれど、こんなことなのではないかと解釈した。
バーヤーナという人に、主人公のクイチロが勝負を申し込む。一回戦では負けて悔しかったが、二回戦では勝って引き分け。
歌詞を訳してみるとこんな感じ？

こんにちは！バーヤーナ！
イケノハタからきたクイチロです。
先頭きってやってきました。
裸ではるばるここまでやってきました。
バーヤーナ、私と勝負してください。

そこで、れんちゃんが勝負したいことを考え、オリジナル歌詞の形式に当てはめて、新しい歌詞を創作。中学校の生徒会長を務めるれんちゃんは、大人の圧に負けたくない、日本の教育を変えた い、今は髪型などの校則を変えたい、4,50歳まではバリバリ働き、スターに会って勉強して、50歳になって城崎に戻って再び教育改革に取り組みたい、という熱い思いがこもった人生計画の歌詞となりました。

要ブラッシュアップではあるものの、とりあえずこの時にできた歌詞は下記：
1
ヨーイヨーイバーヤーナ
城崎◎◎のれんちゃんが
生徒会長ハーニャータ
大人の圧にやられるか
個性を伸ばす教育を
ヨーイヨーイバーヤーナ
今すぐにでも変えたいが
3べん回って勝負しろ

2
ヨーイヨーイバーヤーナ
遠くに行ったれんちゃんが
バリバリ働いてハーニャータ
スターに会って勉強し
⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎ ⚪︎（←もう一行作りたい）
ヨーイヨーイバーヤーナ
4,50歳まで働いて
も一つ回って勝負しろ

3
ヨーイヨーイバーヤーナ
城崎戻ったれんちゃんが
大人になってハーニャータ
再び教育改革を
ヨーイヨーイバーヤーナ
ヨーイヨーイバアクレー

所感：れんちゃんとは、豊岡の行事と音について深めていくはずが、熱い思いと壮大な人生計画 があることに驚き、新しい芸能を創作することって面白いなと改めて実感。


文：日本相撲聞芸術作曲家協議会　鶴見幸代
編集：城崎国際アートセンター　橋本

おわり