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バナナマンを侮りすぎていた

赤えんぴつの武道館ライブに行ってきた。

結成30年にして初ライブ、その会場が日本武道館という異色のアーティスト、赤えんぴつ。

そのからくりは、こう。

バナナマン扮するフォークデュオが赤えんぴつである。

バナナマンがほぼ毎年開催しているコントライブ、その中の1つのネタが「赤えんぴつ」だ。ボーカルのおーちゃん(設楽)と、ギター/コーラスのひーとん(日村)の2人が路上ライブを行うというキャラコント。2001年の初披露以来、毎年新曲を作って1,2曲演奏というのんびりストロングスタイルを20年以上貫いている。

そんなわけで、コントライブには20年以上出続けているが音楽ライブに一度も出演せず、バナナマンの人気とともに知名度だけが上昇して武道館公演を決めたアーティスト、それが赤えんぴつだ。


武道館公演が決まったとき、バナナマンファンなら誰もがこう思っただろう。

(あ、赤えんぴつライブなのね、バナナマンライブじゃなくて…)

様々なコントを披露するのではなく、キャラコント「赤えんぴつ」一本勝負で武道館。

(大丈夫かよ…)


設楽日村の一挙一動に一喜一憂するようなミーハーファンの私ですら、場が持つか心配してしまう。赤えんぴつのコントは毎年15分程度で、爆笑ではなくンフフフと笑うタイプのネタ。それを武道館で、少なくとも2時間…。

本人たちも、チューニングが合っていない、曲頭でタイミングよく歌が入れない、ギター弾いてて手が痛すぎるなどとほざいていた。軽音部の部室ではないのだ。アーティストなら誰もが羨む武道館2days公演をする音楽家とは到底思えない発言を繰り返していやがった。

そんなわけでミーハーファンの私は、音楽云々より、ただバナナマンを生で観たいという不純な気持ちで応募し、初日の公演に運良く当選した。

音楽は齧るどころかつついたくらい、なのにこの世のほとんどの音楽に対して斜に構えるキモい私は、完全に赤えんぴつを見くびっていた。素人の初ライブだろうと。息子の発表会を観に行く親のような、そして好きな球団をヤジりまくる野球ファンのオヤジと同じような心持ちで武道館に向かった。





あのーーーーーーーですね、

馬鹿みたいに胸打たれた。



下積み時代が長くても30年間続けたバナナマンだからこそ、音楽素人ながら20年間毎年曲を作り続けた赤えんぴつだからこそ、成し得たライブだった。


まず、音楽ライブとして楽しかった。

ギター1本と歌のオリジナルスタイルを貫く曲もあり、バンドメンバーの最高アレンジでパワーアップした曲もあり。赤えんぴつ元来の熱量の高さにプロの技術と音圧が加わり、とても熱いライブだった。


ひーとん(日村さん)、ギターソロ弾いてたよね…??バナナマンのネタ以外でギター弾かないのに???1ヶ月間バラエティの撮影を控えて毎日ギターの練習をしたらしい。本当に努力ができる器用な人だ。

おーちゃん(設楽さん)、スターの魂が憑依してたよね…??2時間半まっすぐ愛を叫びつづけられる50歳っています?「キスしたい」って真顔で歌う50歳、どういう気持ちなの?(設楽さんの奥さん談)

赤えんぴつの曲はど真ん中ストレートだ。

あ一 あー あー だけど 君が 好きなんだ
あ一 あ一 キミじゃ なけりゃ 僕は ダメなんだ
僕がいないとさみしそうな顔をする 君が好きなんだ

だけど好きなんだ/赤えんぴつ

オレはオマエにイカレポンチ

イカレポンチ/赤えんぴつ


設楽さん曰く、歌うことは演じることらしい。小っ恥ずかしいくらいまっすぐなおーちゃんを演じることで、自分では恥ずかしくて書けないようなストレートな歌詞が書けて、全力で歌えるんだよと語っていた。

努力家で演技派のバナナマン。
だからこそ、50歳のキャリアで得た大勢のファンで武道館を埋め尽くし、50歳でも飾らずまっすぐな歌を照れずに全力で届けられた。

いや普通にやべえだろ。30年キャリアのミュージシャンでも難しいだろ。すげえよ赤えんぴつ。

さらに、ホリプロ史上初の武道館2daysらしい。やばすぎ。語彙力なくなるわ。




そしてそして、出演者が豪華だった。

幕間に星野源と森山直太朗
曲前のドラマに中村倫也と黒木華(最高だった)。
2日目の公演にはトータス松本、三浦大知、Chelmico、乃木坂46

バナナマンの長い芸能生活で築いた関係性。バンドメンバーは過去にバナナマンがMCをしていた音楽番組からの繋がり。

バナナマンのお二方の30年が、お人柄が、この豪華なキャスティングに直結しているのだと思うと、とんでもなくぐっときた。

BOØWY世代の設楽さんが、高校で組んだコピーバンドを続けて有名になっていたとしても、たとえロックスターになっていたとしても、このライブはできなかっただろう。

 

なんだあ…最高かよ。
余韻ひたひた、ひったひたである。



アカペラから入る曲でおーちゃん、1フレーズずつ噛み締めてて嬉しそうだったなあ。

武道館に反響する自分の声を、満面の笑みで聴いていた。

5年前、設楽さんは武道館でなにかやりたいと日村さんと盟友で作家のオークラさんに打ち明けたそう。普段はでかい夢を語るのは苦手らしい。だけど、言わないと実現しないから、と2人には伝えたと。


…なんだそれ、夢叶えてんじゃねえかよ。

「夢が叶ったぞおおおおおお!!!」
と嬉しそうに叫んでいたのは、やっぱり演技じゃなかったんだ。演じているおーちゃんの夢でもあり、設楽さん本人の夢でもあったんだ。

…なんだそれ、かっこよすぎるだろ(クソデカため息)。



素人なわけがないか。
30年積み重ねてきて頂点を獲った人たちだ。

積み重ね、大事だなぁ。



とにかく、赤えんぴつの、バナナマンの、歴史的瞬間に立ち会うことができて幸せでした。

今日も頑張るぞ。

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