宝塚素人が宝塚RRRを配信で観た

ゆるめのRRRファンが宝塚RRRを観た感想です。

一言で言えば本当にRRR × TAKA"R"AZUKA でした!
宝塚化に成功している、とヅカオタの方が言っていたのですが、本当にそうだなーと思いました。舞台化ではないんですよね。パンフレットでも演出家の先生が宝塚化、と強調しておられましたが本当にその通りでした。

一度だけ宝塚を観たことがあるのですが、その際に持った感想が、大衆演劇に近いのかなと。スターを魅せるためのシーンがふんだんにあり、群舞必須、歌と踊りと喜怒哀楽とを織り込まなければいけない。そういったお約束を売り物としている制限の中でRRRを宝塚の演目として落とし込んでお出ししました、という舞台だったと思います。RRRの舞台化として観たい人には安直におすすめできないかも。

全体の感想

原作でここぞ!というシーンでも予算や再現不可能なもの以外でも敢えてやっていないものがかなり多く、冒頭のビームやらラーマのバックグラウンドを語るシーンがかなり削除されていました。
主にブロマンスのシーンを拾い、それ以外の要素は結構あっさり削除しています。原作のおよそ半分くらいの時間で延々一人のシーンで時間を使う訳にはいかないでしょう。きっと舞台的に間延びもするでしょうし。くどすぎる程の人物達のバックストーリーはあっさりと、ショー映えするブロマンスのシーンを拾って繋ぎ、多くの人物を魅力的に魅せるべく、わちゃわちゃしたシーンを多く追加して宝塚としての演目として成立させています。ここに宝塚の演目として昇華する、という割り切りを感じました。
原作ファンなら賛否両論分かれるかもしれませんが、宝塚としては本当に正しいと思います。そして原作のシーンをこのように盛り込んだ!というようなドヤ感もなく、RRRへのリスペクトを強火ファンのように振りかざすエゴのようなものを感じさせなかったのに好感を持ちました。職人芸。

昨今の原作を他メディアで展開する際、原作リスペクトの態度が原作に忠実であること一辺倒になる風潮が生まれたら怖いなーと思っているので、このように原作者と意思疎通をはかった上で、脚本家や演出家の個性がうまく発揮されるといいよな……とぼんやり感じさせられもしました。難しい問題だな……。

ビジュアルについて

バーフバリやRRRでは男性俳優が限界まで肉体を鍛え上げ、豊かな肉体の説得力を持ってインド神話の神々や英雄譚をまとい、唯一無二の人物達として描かれるのですが、宝塚特有のネオ男性を舞台上に顕現させるための化粧や衣装などがその部分と通ずる部分があって相性が良かったのではと思います。
また、RRRよりも女性陣の衣装が凝っていたのは素直に見た目に楽しく、良かったです。舞台上のドレスは照明を浴びてきらめいてこそドレスでしょう、という説得力。
そして様々なシーンを大人数で歌い踊ってくれるので、観ていて楽しい。エンターテインメント性を大事にしてくれる姿勢に心を預けられる。こういうのを信頼できるっていうんだろうな。大劇場での高さと大道具を活かせる舞台を観たので、それもよかったなと思います。

ナートゥ

みんな大好きナートゥ。
ナートゥは劇団員の方はどなたも苦もなく踊られているように見えて面白かったです。そりゃ110年の伝統を持つ歌と踊りの戦闘集団だものね……と思わされます。
あと観客の方々の手拍子の凄まじいキレが配信でもわかるくらいにエグい。統率、の二文字。
原作のビームとラーマのダンスを汲み取られていて、リスペクトを感じました。ビームの方がよく音を拾ってキビキビ踊るんですよね。ラーマの方は体格が大きく長い手足を持て余すように踊るので目を惹かれるのですが、その差を演じ分けられていて、感心させられました。また、あの足が絶妙にテレーンとスローになるところをさっと踊って表現されるので、そこも心憎いというかファニーで心くすぐってくれてよかったですね。
あと、宝塚ビームが、フィッティングばっちりな豪奢なスーツをさも着慣れていないように見せているのすごいなと思いました。技。

ジェニーとジェイク

事前にジェニーとジェイクが婚約者同士として描かれていて、原作よりもジェニーがもっと自然に思えると聞いていて、実際そうだった……んですが、それって宝塚の舞台だったからかも、とも思いました。
ちょっと頭の中で思い浮かべたのですが、原作のジェニーとジェイクが二人並んでああいう風に立ち回られると一気に陳腐化しそうなリスクがあるなと。
舞台なのと同じ人種だけで演じられているので、ある種ジブリのアニメみたいに均一化されているからこそ無邪気に仲間になるのをすんなり観られるのかもしれません。宝塚、という割り切りがここに生きているかも。

それはそれとしてジェニーの肉付けは良かったですし、原作のエンドロールのダンスで、ジェニーがいるのが浮いているように感じられたのが、宝塚では解消されていて、ちゃんと彼女の人物像が重要な役割を担える程度の厚みを与えられたからこんなに馴染むんだよな……と思わされます。
RRRとバーフバリの対比でこういう感想を持っていたので。
https://x.com/kijihajime/status/1588891843928166400?s=46&t=9rYGPvh4BRhm2iN8rRQLZQ

ラストについて

ラストに提督を撃つのが原作と違ってラーマだったのは、ビームが銃のない革命ができるのを見せた男というところがブレるからかなと思いました。実際原作ではビームがラーマに銃のない革命をその姿で教えたのと矛盾するんですよね。しかし原作のラストが印象深いだけに難しいところです。
原作通りではなく道理を採った勇気すごいなーと思いました。

原作は武装蜂起やゲリラ活動をした実際の人物達を主人公に据えていて、ラストはもはや銃だけではなく銃より強い矢と槍と爆薬で勝ちに行っており……。
原作の続編あるかもね、というふんわりしたニュースから一年くらい経っていますが、続編が撮られたとて、銃のない革命の伏線が回収されるかは想像しづらいところです。そもそもアクション映画で、監督も監督だしな……。
ちなみにインド革命といえば国際的にも有名なのはガンジーですが、RRRはエンディングであまたのインド革命闘士を出していても、ガンジーを出していません。非暴力で革命を実践した人だからこの映画にアンマッチだったからだと思われます。

感想は熱いうちに打て、というわけでとっちらかった感想ですが、ひとまずおしまい!

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