一昔前の京浜急行の車掌の放送【優等列車・基本】

近年、一昔前では考えられないくらいシミュレーターが充実してきています。また、自宅運転台なども広がりその再現度は目を見張るものがあります。

そんな中、どうしても気になるのが放送です。
それっぽくは出来ているのですが、放送には実は細かい意味があり、考えながら放送を行っています。ですから、その意味合いを理解することでよりリアルな放送が出来るようになると思います。
2000年代~2010年代前半頃の放送を、内容とどうしてこのような放送をするのかの2つに分けて紹介します。京急の例ですが、他社線や車掌を目指す方、放送を研究する方にも参考になれば幸いです。


放送するときにされる指導

  • マイクロホンと正対して通常の会話程度の声で放送する。口とマイクロホンとは10cm程度離す。

  • ワイヤレスマイクは中指~小指で本体上部を握り人差し指はマイク上部の収音する部分の上面あたりにかける。スイッチは下向きにし親指で押して放送する。人差し指と唇が軽く当たるか当たらない距離感で放送する。

  • 語尾は伸ばさない。(×品川行でーす。)変な節はつけない。

  • 専門用語は使わない。

  • 7は「なな」と読む。(七時十七分→ななじじゅうななふん)

そのほかアナウンス講師の元、軽く鼻濁音の練習もさせられました。
「が」を「ンな」、「ぎ」を「ンに」と発音する感じです。
超エリートは意識してたのかも…?

通常放送文

優等列車の放送は通過駅がある列車で行われる放送です。
優等種別を持っていてもその駅から先は各駅しか止まらない列車は普通列車の放送に準拠します。
 例)下りエアポート急行の能見台から先・下り快特の堀ノ内から先
また、発車時・到着時の放送も末端の各駅に停車する区間では普通列車の放送に準拠します。
平日・土曜の始発~10時までと平日の上り17時~21時まで・下り17時~23時までは後述の簡略放送を行っていました。(2015年頃まで)

【始発駅停車中】

ご案内いたします。この電車は○時○分発<種 別><行 先>行です。
次は<駅 名>に止まります。(途中<駅 名>までは各駅に止まります。)
発車まで○分ほどお待ちください。(まもなく発車いたします。)

目的は誤乗防止のために行います。また発車までの時間の案内は飲み物を買いに行ったり、乗車車両を変えたりするお客さまに「何分までには乗っとき!」とする注意喚起の意味があります。

【行先の案内放送】

ご乗車ありがとうございます。
(種 別)(行  先1)(行  先2)行です。

始発駅と下り品川・横浜発車後、上り久里浜・文庫発車後に行います。
まんまの意味合いです。
2015年頃(たぶん)から「京急をご利用くださいまして」に言い回しが変わりました。行先1・2は編成両数の長い方から案内します。
併合している場合は以下の案内もします。

この電車の[前・後]8両は<種 別><行  先>行、[前・後]4両は<途 中 駅>止まりです。
この電車の[前・後]8両が<種 別><行  先>行、[前・後]4両が<種 別><行  先>行です。後ろ4両<行  先>行きは、<分割駅名>で切り放し普通電車になります。

【発車後の放送】

次は<駅 名>です。
(<路線名> or <方面>をご利用のお客さまはお乗り換えです。)
<駅 名>の次は<駅 名>に止まります。
途中駅の<駅 名>、<駅 名>…<駅 名>においでのお客さまはお乗り換えです。

乗り換えの準備を促す目的で放送するので途中駅への細かな乗り換え案内はしません。
放送文案は実勢に反し「お乗り換えください。」となっており、そう放送する人も結構いました。

【到着時の放送】

まもなく<駅 名><駅 名>です。
(<路線名>をご利用のお客さまはお乗り換えです。)
(<方面>方面へおいでのお客さまは[下の階のホーム・上の階のホーム・反対側のホーム・右側・左側]○番線から〇時○分発<行 先>行をご利用ください。)
<駅名>の次は<駅名>に止まります。
途中駅へおいでのお客さまはこのあと○両で参ります普通電車をご利用ください。
([左・右]側(○番線)に停車中の普通電車をご利用ください。)
(出口は[左・右]側です。)
(電車とホームとの間が空いております。お降りの際は足元にご注意ください。)

支度が終わったお客さまが、このあとすぐに乗り換える動作をするので詳細な案内をします。ドアの開閉方向の案内から分かる通り進行方向に対して放送しているので「右側2番線」というように案内します。(向かい側○番線ではない)
出口は前の停車駅と開扉方向が変わるときのみ案内します。
※一部の曲線駅では足元の注意喚起放送を行います。
(※後年追加された駅も多いが目安は足下灯設置駅 平和島1/2/3・鶴見2・日ノ出町上下・追浜上下・横須賀中央下)

【ホームの放送】

(足元にご注意ください。)
(〇番線は)<種別><行 先1><行 先2>行です。
([前・後]8両が<行 先>行、[前・後]4両が<行 先>です。)
([前・後]4両は途中の<行 先>止まりです。)
次は<駅 名>に止まります。
発車です。ドアを閉めます。

番線案内は基本的には行いませんが、退避などで2列車が停車している際に区別の必要があるときのみ行います。
停車時分や乗降人数を考慮して放送します。停車時分が短小の時は

次は<駅 名>に止まります。<種別><行先>行ドアを閉めます。

などとして行先案内の「です。」と「発車です。」の分の時間を短縮したりしていました。

降り乗り続いてお願いします。
空いているドアをご利用ください。

言う人の多いほぼ意味の無い放送です。無能な感じを再現するのには使えます。
乗り降りが普通の日本語ですが、降りる人が先なので「降り乗り」が使われます。

ちなみに直すなら
前者は「降りる方先でお願いします。」「車内奥まで(座席の前まで)お進みください。」
後者は「右のドアをご利用ください。」
などとより直接的に考える余地を与えずに指示をするような放送が効果的です。車内の奥へ進ませる案内はワイヤレスではなく車内放送を活用するほうが賢いです。

簡略放送文

朝は
【平日・土曜】
始発~10時まで

夕方は
【平日】
上り17時~21時まで
下り17時~23時まで

行われていました。

こういった、「静かに快適に乗って頂く」取り組みは最近では見かけなくなりましたね。無駄な自己満多言語放送だったり、マナー放送やPR放送が増えたり、うるさくしつこくなるばかりです。

【始発駅停車中】

ご案内いたします。この電車は○時○分発<種 別><行 先>行です。次は<駅 名>に止まります。(途中<駅 名>までは各駅に止まります。)発車まで○分ほどお待ちください。(まもなく発車いたします。)

通常放送と同一です。

【行先の案内放送】

(おはようございます。)ご乗車ありがとうございます。
<種 別><行 先1>行です。
([前・後]4両は<駅 名>で切り放し普通電車になります。)
([前・後]4両は<駅 名>止まりです。)

最小限の放送しか行いませんね。見習いのときは回数も少なく泣かされました。分割する増結車の行先の案内は特にありません。

【発車後の案内放送】

次は<駅 名>です。
(<方面>をご利用のお客さまはお乗り換えです。)
<駅 名>の次は<駅 名>に停まります。

方面の案内は京急蒲田駅の空港線のみ行います。
大師線・逗子線・浦賀方面は行いません。

【到着時の放送】

まもなく<駅 名>です。
(<路線名> or <方面>をご利用のお客さまはお乗り換えです。)
<駅 名>の次は<駅 名>に止まります。
この後の普通電車は○両で参ります。

途中駅の案内がないのが特徴的です。駅名も発車時同様に1度しか放送をしません。

【ホームの放送】

通常放送と一緒ですので割愛します。
出来るだけ簡略に済むように心がけて行います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?