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新・雑貨論

「以前、美術家の村上隆氏が、雑貨についてつづった私のエッセイを読んでこんな仮説をとなえた。SNS上に記されたラフな短文を私なりに補足してまとめると、それはまず、インターネットがひとびとの生活に入りこんでいき激変する商いのなかで、みずからの憂鬱をかみしめる著者の筆致が村上春樹氏の初期作品の主人公とつうじているという雑感からはじまる。おそらく隆氏は、バブル崩壊後の日本の工芸史をどのように現代美術の世界に位置づけるか、ということに強い関心をもっており、1974年に25歳の春樹氏がジャズ喫茶<ピーターキャット>をひらき、また現代陶芸を語るうえで欠かすことのできない立役者、桃居の広瀬一郎氏も82年に青山でバーをはじめたことに注目する。ちなみにふたりはほぼ同世代だ。つぎに彼らより10歳ほど若い生活工芸系の作家たちの美学にジャズが深い影響をあたえてきたことを指摘しながら、その山すそにあらわれた、さらに下の世代の器屋、骨董屋、そして私のような雑貨屋などまでも含めた店主たちをつらぬく、洒脱な都市生活者たちの系譜というものを幻視する。彼らはみなジャズや村上春樹といった記号で語りうるような、おなじ種族の人間であり、この30年以上つづいた円環はいま閉じつつあるのではないか、という結語で終わる。創作において、お洒落である、という薄弱な身ぶりに堕することをつねに警戒し、一定の距離をたもってきた現代美術家による、愛憎をともなった手荒なカテゴライズともいえるかもしれないが、私自身は身につまされるものがあった。」(雑貨の終わり ふたりの村上より抜粋)

新・雑貨論 著者の三品輝起氏出演




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