涙色の画家は透き通るダイヤのように
リーマンショックで世界が止まり、将来不安が蔓延した2008年。
そのとき一人の美大生が小さなアパートで孤独と不安に震えながら
自画像を描いた。それは美術家としての未来の自画像。
作品タイトルは、「涙色の画家は透き通るダイヤのように」。
2021年、今度は世界中がパンデミックに揺れるなかで、奇跡的に
開催されたアートフェア東京。
その会場に1枚のミクストメディア版画作品が展示された。
原画は、杉田陽平2008年作の未来の自画像。
その版画に13年の歳月を経て、美術家が現在の色を重ねていく。
過去の自分、現在の自分、そして未来の自分。
一人でもがき苦しみ、試行錯誤し、一喜一憂する日々。
それでも自らのハードルを上げ続けるその姿勢には感動すら覚える。
10年後の将来、この6歳の少女は高校生になっているだろう。
そのとき世界はどうなっているのだろうか。誰にもわからない。
でも杉田陽平は、この自画像に23年後の色を重ねてくれるだろう。
作品というモノを通じて、同じ時代を共に生きるヨロコビ。
息苦しい生活が1年にも及ぶなか、日本全国から多くの方がご来場。
杉田陽平の作品世界に包まれて、皆ひとときの幸福を味わっていた。
作家とともに会場に立ち続けながら、アートのもつチカラを再認識した
アートフェア東京2021だった。
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