ノンケ女性はゲイバーに来ないでください

先日、通っていた某ゲイバーのママがTikTok配信をしていて、そこにノンケ女性が「女性でも行っていいですか~? 女性が嫌いなゲイもいるって聞いたから~」という白々しい書き込みをし、それに対して店主が歓迎する姿勢を示したところ、あたしが歓迎できない旨を客の立場から意見表明し、それに対してただ「すごいね。でも僕は性別ではなく人柄で判断します」と言われたゲイ客が垂れ流す戯言です。

ゲイバーに来る女性客(ビアンを除く)問題は常に論争の的になると思ってる。胸にモヤモヤが渦巻いてスマホを閉じた。女性客を入れるかどうかは店主が判断することであって、女性歓迎の店に行くかどうかは客が判断することなんだけど、そう単純に割り切れるほど人間って簡単にはできていない。

こういう気持ちにさせられるから来ないでほしいっていうのもある。「女性でも入っていいですか?」っていうのは機微な主題であって、政治や宗教と同じ論争を巻き起こしがちであるという認識が広まったらいいのにと思う。基本的に「ゲイ客には」歓迎されないと、あたいは改めて申し上げる。

これについてはあたし自身も考えがまだまとまっておらず、一部の店ママ経験者には疑義を提示されたことも何度かあるが、同意してくれた店ママもいる。疑義を提示した店ママ経験者はやはり最初から女性を歓迎しており、同意してくれた店ママは最初からゲイオンリーを貫いてこられたので、答えは出ない。

女性を憎んでいるわけではないし、女性と対立したいわけでもない。むしろ我々ゲイは女性と同じく、ノンケの男性から一段低い存在だと見られがちであるので、そういう意味では女性とは助け合えると思ってる。だけど、客としては、ゲイバーには癒やされに行っているのであって、そこに女性は必要ない。

女性客はいわゆるクイーンさんのいる観光バーではない、本当のゲイバーに物見遊山で来たいだけなのだろうが、実際に女性が大量に押し寄せて行かなくなった某台湾バーもある。つらい。馴染みの店から足が遠のくのは、客だって身を切られる思いだ。でも店内で女性に不快な思いを抱いたのは少なくない。

ちょっとした会話で自分の意見を譲らなかったりとか、傍若無人に振る舞ったりとか、ゲイバーをまるでボーイズバーだかホストクラブだかと勘違いしている女性も少なくない。私が女性で不愉快な思いを一度もしなかったのはマー様のお店が唯一です。

外の世界にはたくさんの女性がいるのだから、ゲイバーくらい夢を見させてくれないだろうか。そう願ってしまう私は、愚かで間違っているのだろうか。その人の人柄や人間性が重要なのは当たり前のことだが、そういうお題目は外の世界で十分なのだ。

もし行きつけのゲイバーで女性が押し寄せるようになったら、私はまた別の店を開拓しなければならない。またその店のママと関係性を一から構築していかなければならない。しんどすぎる。女たちに言いたい。ゲイバーは男子トイレであって、本来女性の立ち入りが許される場所ではない。

店主は、女性客の売上がなくては経営を維持できないという深刻な背景を抱えている場合も多いので、批判することも難しい。店は店主のものであるので、客の声なんて掻き消されるのが常。でも私は客なので、嫌になったら行かないという伝家の宝刀を行使する権利を持っていることは忘れたくない。

店と客の利益は互いにしばしば対立するものであるが、それ故に、店と客は互いに隷属しない。

誤解しないでほしいのは、私は本当に決して女性が憎いわけではないので、先日ノンケの女性が店子を務める二丁目の某店ではとても楽しい時間を過ごすことができた。

ただ何が悲しいかって、ゲイバーでゲイ客であるあたしが尊重されず、しばしば女性が擁護されるという現実が実際に起こり得るということなの。もうそういうのは外の世界で十分あたしは日々経験しているのに、ゲイバーでもそんな取り扱いを受けるのだったら、あたいはもう本当によく考えないといけない。

付け加えて言えば、あたいの親友は女性です。だから女性のことを嫌悪しているわけではないのよ。でも、男湯に女性は入らないでしょう? ゲイだって女湯には入らないでしょう? どうしてそれが分かってもらえないんだろうっていつも悲しい気持ちになる。

おじょんさんのお店には行ったことないけど、女性出禁のお店には、その店主の考えが反映されている。私はこの考えを支持する。そして女性を歓迎し、それを厭う私のような客を批判するママさん方に申し上げたい。あなたのお店にお金を遣ってきたのは誰ですか?

今回のことは私だけが悪いんだろうかという疑問符が消えない。しかし向こうから歩み寄ってくれることはおそらくないだろう。なぜならば向こうには向こうの論理があって、それは案外間違っていないからだ。

ノートPCを店内に持ち込んでテレワークをさせてもらうことも何度もあって、本当に自由にやらせてもらえた。こんな関係がずっと続いていくものだと思っていた。

私の居場所はまたこうやって、女たちに奪われていく。

ゲイバーの客による組合とか連合みたいなものがあったらいいのに。そしたらそこで女性不歓迎の共同声明を出せる。そうすれば女性は、店主が歓迎していても客は歓迎していないと理解できるし、店主に「女性が入ってもいいかどうか」を聞いて客が不快に思う必要もなくなる。

「ゲイバーは誰のものか」という問いに対して第一義的な答えは、店主のものです。しかし店主だけではゲイバーは成立せず、必ず客(お金を払う存在)がいなければならない。そして女性に対してそれほど忌避感を抱かない客がいることも事実であって、店も客もお互いを選べることも事実なのです。

「いちいち騒ぐな」とか「黙ってろ」とか、「行かなきゃいいじゃん」っていう短絡的なご批判を受けることは重々に承知の上で申し上げている。ゲイバーは飲食物を取り扱っているように見せているが、実のところは人の心を取り扱っている。「納得できない」という私の感情を、私はごまかせなかった。

私の予想だけど、おそらく今後、先方は何事もなかったかのように各種SNSを更新し続け、営業に邁進されると思うのです。だって私一人を切っても経営上の痛手はほとんどないですし、逆説的には、私に向き合うコストは心労的にも甚大なのに、それに見合う利益はほぼないから。だったら切ったほうが早くない?

あたしの記録に残っているだけでも、4月26日から9月25日まで22回(1回の最低料金は3,500円)しか通っておらず、最低で77,000円(実際には80,000円ちょい)しか遣っていない客なんて、本当に切って捨てて全然よくない? よくなくない? よくなくなくない?

ここまで考えを煮詰めてきて、もちろんすでに「答えは出ない」と書いているわけで、相手方の考え方が決して間違っているわけではないということも理解したうえで、それでも納得できない感情を抱えてしまったあたいは、どうすればいいのかを考えたんだけど、やっぱり答えは出ない。

あたいは、経営上、女性客をも取り込みたいという店主の思いは痛いほどに理解できるし、あたいがこれからやろうとしている個人事業の客層もおそらく女性がメインとなるだろうから、女性に門戸を閉ざしてほしいというあたいの根源的な願いはぶっちゃけてすでにもう矛盾している。

しかし繰り返すが、この問題は理屈ではなく感情に根ざしているので、あたしのなかでは立派に成立しているのです。しているというか、してしまっている。

あたしはただ「すごいね」っていうコメントではなく、「そうだよね、そういう考え方もあるし、そういう店も少なくないよね」っていう、寄り添う姿勢がほしかっただけなのかもしれない。とはいえ、急場の一瞬の判断が必要な生配信の場面にそこまで求めるのが正義なのか? お金も払っていないのに?

だからもう、この問題に関して、あたしは毎度心が複雑骨折してしまうわけで。結局あたしの視点から語らせていただく無作法をお許しいただきたいのだが、あたしは納得いかなかったし、不愉快だったし、何より悲しかった。そういう感情を抱いてしまったのは事実なんです。

なので、あとは、人の心を取り扱うご商売をされておられる側が、私の求めるケアを行うにあたって、その労力に足るだけの利益を私が今後も払い続ける客でいてくれるのかどうかを天秤にかけて、経営判断をするしかないでしょう。そしておそらく「見合わない」という結論が出たのではないかと思うのです。

あたしは半年で最大でも80,000円しか遣わない(遣えない)客です。そんな客のいちゃもんなんて相手にしていられないでしょう。私はそうやって、経営的視点から、あたしの心を落ち着かせることしかできない。あたしが適当にあしらわれたのは、あたしの払いがよくなかったからなんだよって。

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