「ことばのこてん」のこれからについて
先月末、「ことばのこてん」は著作権法を理由に一部の方からご指摘を受けました。このnoteは 「ことばのこてん」が多くの方にご迷惑をかけるに至った経緯と、僕の本意、そして今後の方向性を示すものです。今回問題になった該当の著作者の方々にはあらためて、多大なご迷惑をおかけいたしましたことを心からお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした。(参考url:https://twitter.com/ketoka3/status/1032042431347286016)
今回問題となった「ことばのこてん」という僕がつくったプロジェクトは、名前の通り、ことばを扱うものです。ことばは万人がつかうことができる記号です。こうやって声明文を書いている僕が利用しているメディアもことばですし、日常会話も多くはことばを通じて介されます。かりに言語化せずとも人間の思考のベースは言語なので、やはりそこでもことばが関わってきます。そんな誰でも使うことができるとても身近な記号であることばの中にも、いくつかそのレトリックの高さによって、芸術として扱われているものがあります。キャッチコピーや、小説の一行、歌詞の一節。そして今回問題になった短歌や俳句です。創作に命をかける方々、いわゆるアーティストとやプロのことばには、読み手の心を動かす美しさがあります。そして僕もそういったことばが好きな人間の一人です。
しかし僕は表現者ではありません。僕のことばなどアーティストやプロの方に比べれば本当に無力です。創作という点で、僕は本当に彼らの足元にも及びません。そんな僕が「ことばのこてん」という、ことばを使ったプロジェクトを行う際にとったアプローチは、ことばを創作(表現)する側ではなく、受容(理解)する側にまわる、というものでした。僕は 「表現の対義語は理解である」という認識のもと、言葉を味わう際の読み手の恣意性に着目しました。小中高の国語の授業のような書き手中心主義的な理解へのアプローチを、読み手中心主義のことばを味わう側にずらすことで、ことばを味わう悦びを引き出すことが狙いでした。そしてそれを伝えるための手段として僕は「ことばのこてん」を作りました。
「ことばのこてん」とは、世の中に溢れているあらゆる種類のことばを選び出し、そこからことばの持つ「誤読の自由」という性質を抽出することで、僕が理想だと考える多様性を表現しようとした実験的な試みです。(具体的なコンテンツに関しては、こちらのページを読んでいただけるとわかるかと思います。:https://camp-fire.jp/projects/view/86606)昨年の10月に初めて開催した第1回「ことばのこてん」は、あらかじめ僕と信頼関係のある人たちだけで楽しむ極めて内輪的なイベントでした。それが回数を重ねるうちに少しづつその半径を大きくし、ある時期からは全く僕と全く関わりのないところからも人が訪れるような、外部の人も巻き込んだものへと成長しました。今思えば、「ことばのこてん」を内輪ではなく、しっかり外部にも拡大していくのであれば、その時点で著作権に関して細心の注意と作者に対して最大の経緯を払うことができているかどうかをきちんと確認しておくべきだったのだと思います。
著作権に関しては、当初から課題として認識してはいました。ただ、著作権法に限らず、僕は法律の分野に関しては全くと言っていいほどの無知でした。当時の僕が結果としてとった手段は、インターネットに掲載されている断片的な情報を元に、自分で判断することでした。「出典を明記すれば、利用しても構わない。世の中の多くの本がそうしているように、「引用」に許可は必要ないはずだ。」それが僕の判断でした。今思えば本当に軽率な判断だったと思います。無知は罪、本当にその通りだと思います。
今回の件を受けて、事後的に知ったことですが、著作権に関する法律には例外と違法の判別がきちんと存在しますが、それは、ささっと検索しただけでわかるほど単純なものではありませんでした。そして仮にその判別がつかずとも、その法律に照らし合わせた判断が自分では出来ないことは、分かっていたはずでした。あの時もし、専門家の人に聞くなりして、きちんと法的問題に対処していれば、このようなことにはならなかったはずです。そうすれば、現状の「ことばのこてん」とは全く違うコンテンツになっていた可能性もありますが、それでも、僕が最も尊敬していたことばを生み出す方々を傷つけるくらいならと思うと悔やんでも悔やみきれない気持ちでいっぱいです。ご迷惑をおかけした関係者の方々には心からの謝罪の意を表します。
今後の方向性に関してですが、前提として、これからも続けていこうと思います。直近で言うと、台風21号の影響でやむなく延期となってしまった「ことばのこてん」in名古屋を12月に開催する予定です。詳細は決定し次第、発表いたします。香川に関しても同様に決まり次第お知らせします。 また、ツアー終了後の「ことばのこてん」に関しては、続けていくつもりではありますが、内容を大きく変えようと思います。今回の件を受けて、コンテンツは一度白紙に戻し、「誤読の自由」を表現するための方法を、もう一度練り直そうと思います。今後は、どんな形になるにせよ、弁護士など専門家とも相談をして著作権法を含め法律上問題がないかを確認しつつ、関係者の方々にご迷惑をおかけしないよう十分に配慮しながら進めていく所存です。
騒動から1ヶ月の間、いろいろな人にいろいろなことを言われました。多くのお叱りを受けました。離れていった仲間もいました。「もうやめたら?」とも言われました。自分が行動することで、多くの人を傷つけたことは間違いありませんし、僕が誤らなければ、悲しまなかった人がいることも間違いありません。それでも、僕は、「ことばのこてん」を続けたいです。誰も傷つけることなく、ことばのもつ誤読の自由を通じて、理想の多様性を体現する方法があると僕は考えています。マイナスからのリスタートにはなりますが、これからは信頼回復に努めつつ、多くの人に愛される「ことばのこてん」になれるよう尽力いたします。
まだまだ未熟な22歳ではありますが、今後の活動を暖かく見守っていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
「ことばのこてん」代表 高橋健
2018年9月30日
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