医者が教える食事術【bookノートC】

世間の俗説や流行によって、健康に気をつけているつもりの人でも、かえって体に悪いことをしていることがある。

人間の病気や不調の9割以上は血糖値の問題。

血糖値さえコントロールすれば、糖質によって引き起こされる「肥満・老化・病気」という悪循環を断ち切ることができる。

正しい知識による食事は、病気や不調から身を守るだけでなく、普段の生活のパフォーマンスを上げるためにも欠かせない。

現代社会では見えない糖質があふれ、糖質中毒に陥りやすい。

体の不調は、血糖値の急激なアップダウンによって引き起こされる。

糖質制限を心がけ、食べる順番や満腹度、化学物質の有無などに気を配れば、健康は維持できる。

コーヒー飲料や健康ドリンクなどの清涼飲料水には、とても多くの砂糖が含まれている。

健康な人間の血液中に存在するブドウ糖は4グラム前後だ。

だが清涼飲料水のなかには、それをはるかに上回る糖質が含まれている。

大量の糖質が液体として急に体内へとりこまれると、体が変化に対応できず、血糖値は急上昇してしまう。

血糖値が高い状態は肥満につながる。

さらには脳疾患や心疾患、がんなどの病気を招きかねない。

健康のカギは、血糖値のコントロールにある。

血糖値を引き上げるのは糖質だ。糖質はごはんやパン、お菓子などに含まれる。

なかでも清涼飲料水などの液体で摂取した場合、胃での消化に時間がかからず、血糖値が一気に上がってしまうので危険だ。

血糖値が上がると脳内物質が分泌され、一時的に「至福点」 (ハイな状態) に達する。

しかし体内の変化を察した膵臓が大量のインスリンを放出すると、今度は血糖値が急激に下がり、イライラなどの不快な症状が出る。

こうした血糖値の急激な低下による不快な症状を「反応性低血糖」という。

疲れやすさ、眠気、集中力が続かないなど、さまざまな症状がこれに当てはまる。

そしてハイな状態に戻るために糖質を繰り返し摂取すると、体は「糖質中毒」に陥ってしまう。

清涼飲料水などをつくる食品メーカーは、どのくらいの糖質を入れれば至福点に達するかを計算して製品をつくっている。

私たちは太古の昔から、飢えないための脳のプログラムを引き継いでいる。

糖質をとるのは、食べ物が摂取できない場合に備えてエネルギーを蓄えるためだ。

しかし飢えることが少ない現代で、体の求めに従って糖質を取りつづけても、糖質中毒になるのがオチである。

そうした事態を防ぐには、私たちに本来そなわっている消化・吸収の仕組みどおりに、食べ物を選ぶことが肝要である。

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狩猟採集によって食べ物を得ていた縄文時代は、約1万2000年以上の長きにわたって続いた。

これは水稲耕作をはじめてからの時代よりも長い。

いまの日本人は縄文人のDNAを強く受け継いでいるという。

私たちの体がこの頃の人々の消化・吸収システムや脳のシステムと大差ないのであれば、縄文人のころになかったものは口にするべきでないといえる。

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肥満の原因は「糖質 (炭水化物) 」である。

カロリーを減らすことは、肥満とは関係ない。

脂肪のカロリーは高いが、食べすぎても便でほとんど体外に排出される。

その一方で糖質は体内で100%吸収され、分解・合成されたあと脂肪となり、体内に残ってしまう。

スポーツジムに通う人には、パウダー状のプロテインやアミノ酸を摂取している人も多い。

しかしこうした人工的な商品には、自然な食品と比べて大量のタンパク質が含まれている。

大量のタンパク質の摂取は、毒素をろ過する腎臓や、骨に悪い影響を与えるので、控えたほうがいい。

またWHOによって発がん性があると指摘されているハムやベーコンなどの加工肉も、食べないほうが安全だろう。

食べたほうがよいもの

①血糖値の上昇をおさえるオリーブオイル

②体にいい成分を多く含むナッツ類

③血糖値を下げるワイン

④悪玉物質や尿酸値を下げる効果がある大豆

大豆は良質の植物性タンパク質を多く含むため、毎日とることを推奨したい。

ただしいずれの食品の場合も、無添加など品質にはこだわるべきである。

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糖質は体内にとりこまれるとブドウ糖に分解されるが、大量に摂取すると血液中に余ってしまう。

あまったブドウ糖はインスリンの働きによって中性脂肪に変わる。

脂肪は体内のエネルギー貯蔵に適した性質をもっているため、運動してもなかなか消費されない。

やせるために必要なのは、ごはんやパン、イモ類などの摂取量を減らし、日々の「糖質量」を制限することだ。

とくに食後に活動がない夕食時は、糖質をできるかぎり減らすとよい。

肥満の解消にもっとも大事なのは運動ではなく、食事である。

ただし一言で「糖質」といっても、その悪性度は食事によって異なる。

白いごはんを抜くのがつらければ、せめて生きるうえで必要のない糖質は摂取しないように心がけたい。

もっとも悪性度が高いのは、缶コーヒーや清涼飲料水など、液体の糖質だ。

次に砂糖の入ったお菓子、果物、白米、イモ類と続く。

いずれにせよ自然の形に近い食材をよく噛んで食べ、食べすぎないようにするのが望ましい。

血糖値を常に70~140の間で維持すれば、確実に体重は減っていく。

血糖値を急激に上げないようにするには、「野菜→タンパク質→糖質」の順で食べるといい。

また同じ量を食べるのなら、数回に分けて食べるようにするべきだ。

そうすると血糖値が大きく上がらず、インスリンの活動も抑えられるので太らなくなる。

血糖値が安定すると、その日のパフォーマンスもアップする。

「腹ペコ→ドカ食い」をなくせば、血糖値の急激なアップダウンによる体調不良も防げるだろう。

糖質を減らす代わりにとったほうがいいのは、満足度を上げるタンパク質、海藻やキノコ、オリーブオイルなどである。

アルコールはダメと思われがちだが、けっしてそんなことはない。

とくに辛口の白ワインは血糖値を抑える効果があるという。

積極的に飲むことをおすすめしたい。

糖質を取るべきは朝だ。

その後の活動によって、消費されやすいからである。

血糖値の急激な上昇を防ぐため、サラダやヨーグルトなどの後に食べるとよいだろう。

果物も朝にとるのが望ましい。

ただしジュースにはしないこと。

たくさんの果物を使うと糖質をとりすぎてしまうし、食物繊維が取り除かれてしまうおそれがある。


昼食の定番であるラーメン、牛丼などの「単品もの」は、血糖値を一気に上げてしまうため、食後に眠くなりやすい。

できればサラダのついたセットメニューにしよう。

菓子パンは血糖値を急激に上げてしまうので避けるべきだ。

なお昼食には最低30分ほどかけたほうがいい。

ゆっくり噛んで食べると満腹中枢が刺激されるため、適切な量で食事を止めることができる。

食後はすぐに運動しよう。

食事を終えてからオフィスに戻るまで速足で歩けば、食後の血糖値の上昇を抑えられる。

夕食は消化の時間を考えると、寝る4時間前までに終えるのが理想である。

肥満の人は、夜に糖質をたくさんとっているケースが多い。

夜はおかず中心にし、主食をとらないよう心がけたい。

居酒屋での食事のように、焼き鳥や枝豆などのタンパク質に加えて、焼酎やワインを飲むのがおすすめだ。

なお日本人が過剰摂取しがちな塩分もなるべく控えるべきである。

塩分を控えると食材本来の味がわかるようになり、添加物などが入っているかどうかも察知できるようになる。

生きるために必要不可欠な栄養素である「ブドウ糖」と「酸素」は、同時に体内で「糖化」や「酸化」を引き起こす原因にもなる。

私たちの体はほぼ水とタンパク質と脂質でできているが、あまったブドウ糖が体内でタンパク質や脂質に結びつくと、「AGE」という悪玉物質を生み出す。

AGEは病気や老化の原因だ。

糖尿病患者がそのほかの病気を併発しやすいのは、AGEのつくられやすい状態が、あらゆる病気を招くためである。

AGEが溜まるのを防ぐためにも、高血糖の状態は避けなければならない。

高熱での調理など、AGEが高くなる調理法を避ければ、体外からのAGEの摂取は低くできる。

紫外線やタバコもAGEを増やしてしまうので、できるだけ避けるようにしよう。

病気にならない体を維持するには、免疫力を下げないことが大事である。

花粉症やぜんそくをはじめ、がんも免疫力の低下が引き起こす病気だ。

これらを予防するためには、精製された大量の砂糖、化学物質や農薬の使われた食べ物など、もともと自然界に存在しない食べ物はなるべく避けるべきである。

また満腹状態よりも飢餓状態のほうが、長寿遺伝子は活性化するというデータもある。

食事は腹七分目で終えるべきだ。

よく噛んで食べることも、消化器官や歯などによい影響をもたらす。

やわらかいものに頼らず、体がもつ免疫力を引き出すような食事が望ましい。

長寿の秘訣を知るには、100歳を超えて生きている人たちに直接学ぶのが近道である。

それは豆類や野菜をたくさん食べるといった食事面はもちろんのこと、坂道の上り下りや積極的な労働、生きがいも含まれる。

医療リテラシーなど、健康への意識の高さも重要だ。

健康を維持しなければ、いい仕事は続かない。

健康な体を維持するためにも、まずは食生活から見直してみてはいかがだろうか。

医者が教える食事術 最強の教科書
牧田善二 著
ダイヤモンド社

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