強いカラダ・ココロ・アタマをつくる【bookノートC】

心身の疲れはどこからやってくるのだろうか。

疲れの原因は、実は脳にある。

自律神経には体の動きを活動的にする交感神経と、

逆にリラックスさせる副交感神経の2つがあるが、

そのバランスが崩れることで疲れが生じるのだ。

仕事や勉強に集中すると交感神経が優位になり、

呼吸数や心拍数、体温、血圧が上昇するが、

その状態が長く続くと取り込む酸素の量が減り、

血中酸素濃度や血糖値が低下する。

部分的に体温が低下するため、コリも起こる。

それを防ぐためには、副交感神経にスイッチを入れることが必要となるが、

ただボーっとするのではあまり効果がない。

体を動かして血行を良くすること、

深呼吸でたくさんの酸素を取り込むことを心がけるとよい。

現代病ともいえる、眼精疲労に注目してみよう。

目の水晶体というレンズの厚みを調整する毛様体筋は、

自律神経によってコントロールされている。

交感神経が優位のときは、毛様体筋が緩みレンズが薄くなるので遠くにピントが合う。

副交感神経が優位のときはその逆で近くにピントが合う。

この仕組みはそもそも人間が原始的な生活をしていた頃は非常に合理的だった。

日中は獲物や外敵に対応するために遠くにピントが合い、

夜はその必要がないのでゆっくり休みながら近くにピントが合うというサイクルだったからだ。

しかし、現代では日中、長時間のデスクワークやスマホ利用によって、

緊張を強いられて交感神経が優位になるはずなのに、

近くに焦点を当てようと副交感神経も優位になる。

そのため自律神経が疲弊し、眼精疲労の原因となる。

眼精疲労を放置すると血圧が異常に上がり、

血流も滞って全身に不調をきたす可能性がある。

目のケアは全身のコンディショニングにとって重要なファクターだ。

こまめに目を休め、目によいと言われるビタミンAを多く含む食品を摂取しよう。

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疲れにくい体を保つには、食生活は大切である。

糖質代謝に使われる栄養素ビタミンB1(チアミン)は、

疲労回復に効果があると注目されている。

糖質を取りすぎるとビタミンB1が不足し、

そのため糖質がエネルギーになりにくくなり疲れやすくなってしまう。

エネルギー源を補ってもビタミンB1が不足していたら無意味というわけだ。

ビタミンB1は豚肉や胚芽米、そば、納豆、豆腐などに豊富に含まれている。

水溶性で体に蓄えておくことができないので、

食事によってコンスタントに摂取することが必要だ。

アメリカ西海岸やセレブリティの間で流行りの「ローフード」は、

文字通り生の食品をとり入れようという考え方だ。

なぜ生がいいのか。

それは、食べ物に含まれる酵素を上手に利用できるからだ。

体内で生成される酵素は、

食べ物の消化吸収を促す消化酵素や、

運動や老廃物の排出、

新陳代謝を促す代謝酵素の2種類があるが、

1日で分泌できる量には限りがある。

にもかかわらず加熱したものを大量に食べてしまうと、

消化酵素が大量に使われ、

代謝酵素の働きも妨げられて、

疲れやだるさを引き起こしてしまう。

生の野菜やフルーツは、それ自体に含まれている食物酵素によってある程度自己消化されるので、

消化酵素の消費を抑えられる。

ただ、ローフードを食事のメインにしてしまうと、

肉や魚、卵などに含まれるたんぱく質が不足しがちだ。

また、加熱することで増える栄養素も存在する。

それらを意識して、ローフードをバランスよく組み合わせることが肝心だ。

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見た目のコンディショニングにも気を配りたいものだ。

下半身には全身のおよそ60%もの筋肉が集まっており、

その多くは大きくて強い筋肉である。

老い知らずの健康的な体を保つには全身の主要な筋肉を鍛えることが大切だが、鍛える順番としては下半身が先だ。

なぜなら、大きい筋肉を鍛えるには高負荷が必要だが、

先に上半身や体幹を鍛えてしまっては、

下半身のための高負荷に耐えられなくなる可能性が生じるからだ。

ほとんど歩かないという人は、まずは、

仕事の合間に散歩する、

大股で歩く、

階段を使う、

というように、足を動かすクセをつけよう。

スーツの似合う逞しい上半身をつくるには、

胸の「大胸筋」と背中の「広背筋」、

太い腕をつくる「上腕二頭筋」と「上腕三頭筋」がポイントだ。

特に「大胸筋」「広背筋」は上半身の筋肉で最もボリュームがあり、

この2つを優先的に鍛えれば上半身の最低限の筋力を維持できる。

大胸筋と上腕二頭筋を同時に鍛える基本的なエクササイズは腕立て伏せだ。

懸垂をすれば、太い腕と逆三角形の背中をつくりあげることができる。

また、長時間のデスクワークによる腰痛が気になるなら、

腰をコルセットのように囲む、体幹部の「腹横筋」を鍛えよう。

背筋を伸ばしてお尻の穴を引き締めるようにして立ち、

おへそを背中につけるようなイメージで凹ませ、

腹横筋を強く収縮させて鍛える「ドローイン」というエクササイズが良い。

このエクササイズを続けることで、腰痛予防はもちろん、

姿勢の改善や腹まわりの脂肪を落とす効果も期待できる。

自分に自信がある、と堂々と言える人は少ない。

けれど、自信を持つのは良いことのようだ。

「自己の能力を過大評価する人は競合においてしばしば有利に働き、結果として集団のなかで優位になっていく」という傾向がみられるらしい。

さらに、自分に適度に自信があり考え方が前向きな状態は、脳機能をも高めるといわれている。

日々胸を張って過ごすことで、いつの間にか仕事のパフォーマンスも向上することだろう。

加えてコンディショニングに有効なのは、イメージトレーニングだ。

なりたい自分や乗り越えたい課題を思い描くことで、夢を現実にすることができる。

ハーバード大学のパスカル・レオーネ博士らの研究では、さまざまな年代の被験者を、

・ピアノを毎日練習する

・ピアノの前に座って弾いているところをイメージする

・何の練習もしない

という3つのグループに分け、上達の度合いを測定した。

2時間練習することとイメージトレーニングを組み合わせたグループは、合計10時間毎日練習したグループと同様の上達がみられたという。

イメージトレーニングで、脳内の指の動きを司る部分が活性化したのだ。

こうした効果をぜひ活用したい。

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大脳の疲れは、眠ることでしか取り除けない。

起床後、時間の経過とともに少しずつ睡眠物質が蓄積され、

その度合がピークに達すると、

大脳を休ませようと日中眠気が襲ってくる。

眠気を取り除こうとコーヒーやカフェイン入りの栄養ドリンクに頼るのではなく、

眠気が強くなる前に仮眠を取って睡眠物質を減らしてしまうことが望ましい。

そうすれば、午後も業務に集中することができる。

仮眠のベストタイムは15分~30分。

照明は明るいまま、

椅子に腰かけたままの姿勢で、

あえて浅い眠りを保つことが重要だ。

深い眠りに移る前に起きることで、気持ちよく目覚められる。

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ストレスフルな時代を上手く生き抜くため、

多すぎる情報や自我、

雑念を取り除いて心の中を空っぽにする時間も重要だ。

このことは海外で「マインドフルネス」と呼ばれ、注目を集めている。

マインドフルネスの訓練法の代表的なものに「メディテーション(瞑想)」がある。

床にあぐらをかき、

背筋を伸ばして目を閉じ、

ゆったりとした腹式呼吸を繰り返すというものだ。

瞑想には注意力や集中力を高める効果があり、

瞑想の訓練後にテレビ画面に高速表示される文字列を読み取るという調査では、正解率が上昇したという報告もある。

毎日少しの時間でもいいので、実践してみてほしい。

不安や緊張にさいなまれていると、負の感情から他のことを考えられなくなったり、目の前のことに集中しきれずパフォーマンスの質が落ちたりしてしまう。

そればかりか、うつ病にかかってしまう可能性もある。

そんなときには、リラックス法の「筋弛緩法」がおすすめだ。

硬くなった筋肉をあえて一度最大限に緊張させ、

そのあとに全身の力を抜いて筋肉を緩める、

というものだ。

心と体はつながっているので、筋肉をほぐすことで心も落ち着かせることができる。

ハワイの伝統的なセラピー「ホ・オポノポノ」は、言葉の暗示を自分にかけることで心を落ち着かせるというものだ。

心だけでなく呼吸も安定させ、副交感神経の作用を高めることができる。

心の中で「気持ちが落ち着いている」などと言葉を唱え、不安や緊張を少しずつほぐしていこう。

自分にとって良くないことが起こった場合に、「結局こうなんだよ」と悪い方向に決めつけてしまってはいないだろうか。

マイナスな受け止め方を繰り返すと、些細なことでも心が傷つき、自己肯定感や幸福感が低下していってしまう。

そのようなゆがんだ思考のクセを直すカウンセリング理論のひとつに「ABCDE理論」がある。

・出来事

・受け止め方

・感情や行動の結果

・反論

・反論によってもたらされる影響

の5つを表す英語の頭文字をとって名付けられたものだ。

出来事に対する受け止め方が合理的思考かそうでないかを客観的に判断し、

非合理的であれば反論して受け止め方を問いただす、

という、いわば「思考の偏りを客観的に点検し矯正するプロセス」である。

例えば「上司がいつも部下である自分に仕事を押し付けている」と感じたら、

ひと呼吸おいて「本当にそうなのか」と検証し、

その受け止め方に非合理性がないかどうかチェックしよう。

負の感情が芽生えたら、ABCDE理論で「ストレスの見える化」をおこなうことを習慣化する。

そうすれば合理的で客観的な思考が身につき、折れにくい心がつくられていくはずだ。

「強いカラダ・ココロ・アタマをつくる はたらく人のコンディショニング事典 」
若崎一郎 松村和夏 著 渡部卓(監修)
クロスメディア・パブリッシング

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