ずるい考え方【bookノートB】

「ラテラルシンキング」という言葉をご存知だろうか。

それは、どんな前提条件にも支配されない自由な思考法である。

本書で使われている「ずるい」は、思いもよらない発想で周囲を驚かせ、課題を鮮やかに解決することに対する褒め言葉である。

常識や思い込みは、ラテラルシンキングの天敵である。

問題の前提を疑い、問題解決につながる選択肢はすべて正解だととらえることが、自由自在な発想につながる。

ラテラルシンキング的な発想をするには、

固定観念を打ち破る「疑う力」、

物事の本質を見抜く「抽象化する力」、

偶然の発見を見逃さない「セレンディピティ」、

の3つが重要となる。


日常の何気ない出来事から偶然見つけたものを、別の何かと結びつけることにより、新しい価値が生まれる。

また、すぐには必要のないもの (ムダ) の蓄積が、考えの幅を広げてくれる。

ラテラルシンキングの特徴は一般的には「どんな前提条件にも支配されない、発想の枠を広げる思考法」と理解されている。

これとよく対比されるロジカルシンキングとは、物事を順番に積み上げながら筋道立てて正解を導く「論理的な思考」を指す。

常識や経験から妥当だと思われる「正解」を導くためにロジックを掘り下げていくので、垂直思考と呼ばれることもある。

これに対し、ラテラルシンキングは、解決策を導くための順番や過程を問わない。

ラテラルは「水平」という意味を持ち、ラテラルシンキングは、水平方向に視点を広げる思考法なのである。

問題の解決につながる選択肢はすべて正解であるため、常識から離れて、自由自在に発想すればよい。

ラテラルシンキングによって生まれる具体的な効果は、次の4点である。

① あらゆる前提から自由になれる。

② 異質なもの同士を組み合わせたり、既存の価値を逆転させたりして、まったく新しいものが生まれる。

③ 問題を解決する「最短ルート」を見つけやすくなる。

④結果的に、お金や時間、手間を大幅に節約できる場合がある。

問題解決において、ロジカルシンキングで問われるのは「過程」であるのに対し、

ラテラルシンキングで問われるのは「結果」である。

両者は相互補完の関係にあり、

思考の順番としては、最初にラテラルシンキングで選択肢を広げ、

実行段階でその選択肢に問題がないかどうかをロジカルシンキングで考察するのが望ましい。

ロジカルシンキング一辺倒になると、発想が貧しくなるだけでなく、本来なら共存できるはずの他の考えをすべて否定することになるため、窮屈で排他的になるおそれがある。

常識や思い込み、先入観などが固まった固定観念も、人々が自分で考える機会を奪いかねない。

ラテラルシンキングは、身近な場面でいくつも応用されている。

例えば、交通機関の自動改札機の開発者は、運賃の計算に時間がかかるという問題を抱えていた。

もし、ロジカルシンキングの発想に立てば、コンピュータの処理速度を上げるか、自動改札機を増やすことを検討するだろう。

しかし、開発者は、自動改札機を長くすることにより、乗客が長い改札を通過する分だけ計算時間を稼いだのだ。

このように、視点をちょっとずらしただけで生まれたアイデアが立派な解決策となる。

ラテラルシンキングを実践するには、そのために必要な環境を頭の中に整えなければならない。

環境整備に欠かせない「疑う力」「抽象化する力」「セレンディピティ」の3つをそれぞれ紹介していきたい。

1つ目の「疑う力」は、ラテラルシンキングの天敵とも呼べる固定観念にとらわれないためのものである。

あらゆることを「疑ってみる」ことで、新しい発想が生まれる。

固定観念を打ち破るには、自分とは異なる世界の人と積極的に対話すべきだ。

例えば、外国人は宗教や生活習慣がまったく異なるため、常識を鮮やかに覆してくれる。

また、世代の違う人や異業種の人の考え方や価値観からも、大きな発見を得られるだろう。

2つ目は、物事の本質を見抜く「抽象化する力」である。

この力を用いて本質を見抜く際の手順は、対象の特定→抽象化→具体化の順番で考える。

本質を見分けるには、「○○するもの」の「○○」に何が入るかを考えてみるとよい。

新聞を例にとると、その本質は「情報を伝えるもの」や「広告を載せるもの」である。

しかし、別の見方をすると、「包むもの (陶器、焼きイモなど) 」「敷くもの (果物の皮をむくときなど) 」「型崩れを防ぐもの (カバン、靴など) 」のように、様々な使い道が思いつく。

このように、新聞を「物体」としてとらえるか、「情報」としてとらえるかで、対象の本質は変化するのだ。

普段から、あらゆるものに対して「何をするものか?」「他の用途はないか?」と考え、この「抽象化」を行えば、発想の引き出しが確実に増えていく。

3つ目は、物事の本質を見抜く「抽象化する力」である。

この力を用いて本質を見抜く際の手順は、対象の特定→抽象化→具体化の順番で考える。

普段から、あらゆるものに対して「何をするものか?」「他の用途はないか?」と考え、この「抽象化」を行えば、発想の引き出しが確実に増えていく。

3つ目は、日常の何気ない風景から「貴重な宝物」を発見する「セレンディピティ」である。

日本語であえて定義すれば、「何かを探しているときに、それとは別の価値あるものを偶然見つける力」だ。

偶然からインスピレーションを得るためには、感性のレーダーをあらゆる方向に張り巡らせて常に何かに驚き、感動することが肝要だ。

「努力=善」「楽=悪」という図式こそが、人々の心を縛っている先入観だ。

いかに工夫をして楽に目標を達成するかという発想がラテラルシンキングの真髄である。

世の中には強い者と弱い者が存在する。

弱者は強者の力を利用しながら共存する道を探すことにより、生き残る可能性を高められる。

新たな発想は、「特定の用途以外の使い方はできない」という強い先入観から自由になったときに生まれる。

意外性のある組み合わせを見つけるには、日頃から組み合わせるストックを増やすことを心がけるとよい。

ラテラルシンキングにおいて、「ムダ」は必要不可欠なものだ。

ラテラルシンキングでは、偶然起きたことや目にしたものを、別の何かと結びつけて新たな価値を見出すセレンディピティが必要になる。

この力はただちに必要でないもの (=ムダ) のストックがあって初めて発揮されるものだからだ。

人材は「必要な人」「いらない人」と分けられることが多い。

しかし、優秀な人材だけで少数精鋭の組織をつくっても、うまくいかないだろう。

優秀な人以外を排除すると、全体のバランスが悪くなり、かえって良い結果が出なくなるからだ。

あまり働かない人がムードメーカーとして、組織の潤滑油になっているケースもある。

組織の人数に比例して、物事を見る視点も増える。

そこから生まれたアイデアが組織の命運を左右する場合もある。

世の中には不利な条件や制約がある。

しかし、「マイナスをプラスに変える」という発想の転換によって、デメリットをメリットに置き換える知恵が働くようになる。

「ずるい考え方」木村尚義 著
あさ出版

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