パラダイス
そこでは私はミント色の四角い椅子に座っていた。
そういう椅子がきちんと並んで、ゆるやかな楕円を描きながら、音もなく、すんすんと進んでおり、椅子は座ってみるとわかるけど、スエードというか、短い柔らかい毛に包まれている。
上を見上げると、黄色の同じような四角いものが、並んで、すんすんと進んでいる。
周りを見渡すとあちらに薄桃色、あちらに薄水色と、色んな箱がすんすん進んでいる。
きっとはじまりもおわりも無く、上下左右さえなさそうだった。
その証拠にほら、くるっと椅子の反対側に移動すると、別に普通に座れる。髪の毛も逆さまにならない。
ひょっとして、と思って私は椅子からひょいと降りてみると、別段床がある訳でもないのに、立つことが出来る。
泳ぐことだってできるし、なんなら「あっち」って思えば、すーっと行ける。
だから私は暫く箱に並んで一緒にすんすんと進んでみた。
すんすんすんすん。
なあんにも変わらない光景だった。
なあんにも。
絵じゃないかなと思った。
というより、絵なんだこれは。
絵。
(おわり)
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