★ボンバーマン寿司

ボンバーマンが営んでいる寿司屋があるという噂を聞きつけたので行ってみることにした。

その寿司屋は幡ヶ谷駅から15分ほど歩いた住宅地の路地裏にあった。

店の前には『盆波満』と書かれた看板がかけられており、いかにも高級そうな雰囲気を醸し出していたが、僕はこの日のために、お金を準備してきたので臆することなく戸を開けた。

中に入ると静寂で、お店を間違えたかなと思ったが、一時をおいて暖簾の奥からボンバーマンが出てきた。

ボンバーマンは僕と目が合うと「お一人ですか?カウンターにどうぞ」と言った。

正しく説明すると、ボンバーマンは何の言葉も発していないのだが、ボンバーマンの身振り手振りは素晴らしく「お一人ですか?カウンターにどうぞ」と言ったのがよくわかった。


カウンターに座って、奥の座敷に目をやるとランドセルとその横に 子ボンバーマン がいてオレンジュースを飲みながら漢字ドリルのようなものをやっていた。驚いてボンバーマンと目を合わせると、ボンバーマンは僕に温かいおしぼりを渡しながら「甥っ子なんですよ。今日は寒いですね」と言って肩をすぼめた。テレビでは笑点が放映されていて、店内には清水翔太の『My Boo』がリピート再生されていた。

その光景は高級な寿司屋には似つかわしくなかったが、ボンバーマンは何も気にしないように、時々清水翔太の『My Boo』に合わせて口笛を吹いていた。

それから僕はおまかせで握りを頼んだ。ボンバーマンが握る寿司は今まで食べたどんな寿司よりも美味しく、また斬新で、僕にですらボンバーマンがかなりの腕前であることがよく分かった。

あの手でどうやって握っているのか覗いてみたが、ボンバーマンが手を止めて「企業秘密ですから」といったように首を2回横に振った。

ひとしきり寿司を楽しんだあと、子ボンバーマンの様子を眺めながら茶を啜っていると突然ボンバーマンが「ではそろそろ失礼して」と僕の顔の前に人差し指を一本立てた。

その瞬間、店内の照明が落とされ、笑点もリピート再生されていた清水翔太の『My Boo』も止められた。


僕が何が起こったのか戸惑っているうちに、また照明がつき、音楽は戦闘モードに変わっていた。

カウンターには爆弾が置かれていて、僕が驚き、後ろにのけぞると、後ろにはさっきまで座敷にいたはずの子ボンバーマンが立っていた。挟み撃ちにされた!と思いギリギリのところで爆発をかわしてテーブル席の方へ逃げた。

テーブルの席にはたまたまスピードアップのアイテムがあったので僕はそれを手に入れ少しだけ有利になった。

そこからはまさに死闘であった。ボンバーマンの爆弾をかわしながら、子ボンバーマンを座敷の奥に追いやり、座布団と爆弾の間に挟み込んで倒すことに成功した。時間が経つにつれて寿司屋の壁はだんだんと狭まっていき、自分の陣地は少なくなっていった。

なんかめんどくさくなってきたので、ボンバーマンは普通に醤油差しで後頭部を殴って倒した。

外に出て、グーグルマップを見ると1件だけの口コミが残されていて「★4.7 しみしょうのファンにおすすめ☺️」と書かれていた。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?