生まれ変わったら何になりたい?

さくらもちやカスタネットや人間がこの世に誕生してから、何度となく繰り返されてきた質問

生まれ変わったら何になりたい?

さて、そろそろおれも考えてみるかとカーテンを開ける。隣の家の住民はいつもオペラの練習(オペラじゃないかもしれない)をしていてやかましい。もういいだろ。充分うまいよ。かんべんしてくれ。

頭の中で隣の家のオペラ歌手に×をつける。

まず、人間になりたいか?ということを考える。もちろん。人間になりたくないわけないだろ。ひっかけようとすんな。高校生のおれだったら人間になんてなりたくないって言ってたに違いない。ペンギンとか言ってただろうな。

でもやっぱり人間がいい。キモいけど。でも人間がいい。次に、男か女かあるいはそれ以外かということを考える。

近くのお茶屋さんの前を横切ると、また店のおばさんは爪を切ってる。おれが見かけるときいつも爪切ってるな。もういいだろ。充分切れてるよ爪。ていうかそんだけ切ってたらもうないだろ。かんべんしてくれ。

頭の中でお茶屋のおばさんに×をつける。

たしかに女性になってみたい願望はある。いまそうなりたいとかじゃなくて、ただ生まれ変わるなら化粧とかネイルとかしてみたい。好奇心に近いかもしれない。まぁそれ以上に大変なこと山ほどあるだろうけれど。

次に、どんな女性になりたいかを考える。

近くのタバコ屋に寄るとタバコ屋のおじさんはまた麺をすすってる。もういいだろ。すすらなくて。もう充分すすれてるよ。ていうかそれだけすすってたらもうないだろ。かんべんしてくれ。

頭の中でタバコ屋のおじさんに×をつける。

もっと正直に言えばこの思考のまま(性別の意識を含まずに)女性になってみたい。制作に対する反応や評価は何か違ってくるのかとか普段の会話の流れを探りたい。でもなぁ、、、
そういうことでもないんだろうな。

気づけばあたりは暗くなってきて、家に戻る。
鏡を見るとおれがいる。おれだと思う。たしかにおれ。
おれは何から生まれ変わってきたんだろ?おれが今日存在していた意味は?おれは今日なにをした?何もしてない。
オペラの練習もしてないし、爪も切ってないし、麺も啜ってない。

おれ????????

頭の中でおれに×をつける。

自分の存在があやふやに溶けて行くことがよくある。自分がどこまで続いているかわからない。SNSで曝け出す部分は一面に過ぎないのにそれが全てになってしまう。自分の好きなことをすれば良い。それはそうなんだけど。それだけじゃダメなんだ。まぁいいけど、、で済ませれることまぁいいけど、、で済ませたくない。ただつらく悲しいことが続いてる。言葉にできないくらい悲しくて自分の存在を殺したくなる。

神にdmを送る。

おれ:おれは今日でおしまいです。さようなら。だから生まれ変わらせてください。(隣の家のオペラ歌手とお茶屋のおばちゃんとタバコ屋のおじさん以外で!)

神:👍


そうして、自分がわからなくなるくらい自分をボコボコにして殺した。もう鏡をみてもおれだと思わなかった。明日になったら生まれ変わってる。ありがとう。


朝起きて鏡を見るとまたおれだった。おれ????また????でも昨日の自分とはたしかに違ってる。何が違うかは分からないけれど生まれ変わったという確かな手答えがある。でも生まれ変わってもおれにしかなれなかった。またおれだと思った。あんなにボコボコにしたのに。何度突き放しても自分が戻ってくる。でも今日は過去と結びついてない新しい1日なんだ。また新しくおれを始めれる。それが分かるとなんだか楽な気持ちになってきた!!!!よし!!!

始まりの朝!!!!清潔な朝!!!!!!歓喜の朝!!!!
やったー!!!!!サイコー!!!!
プリティー!!!!!!!!

テンションがぶち上がったおれは思わずカーテンを開ける。耳に飛び込んできたのは、またオペラの練習だった。

かんべんしてくれ。



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