COVID-19情報:2023.05.26

皆様

本日のCOVID-19情報を共有します。

本日の論文は、JAMAより1編、Lanncet系列より3編です。特にJAMAの論文が注目に値します。

JAMA論文は、自己申告による症状を用いてPASC(Postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection)の定義を作成し、コホート、ワクチン接種の有無、感染回数におけるPASCの頻度について説明することを目的とした米国初の研究です。PASCスコアに寄与する症状は、労作後倦怠感、疲労、ブレインフォグ、めまい、胃腸症状、動悸、性欲や能力の変化、匂いや味の喪失や変化、口渇、慢性咳嗽、胸痛、異常運動でした。2021年12月1日以降に初感染し、感染後30日以内に登録された2231人のうち、224人(10% [95% CI, 8.8%-11%] )が6カ月時点でPASC陽性でした。この論文は要注目です。

Lancet系の1編目は、院外心停止(OHCA: Out-of-hospital cardiac arrest)のアウトカムに対する間接的な影響を評価することを目的とした日本発の研究です。COVID-19は、OHCA患者における神経学的転帰の悪化およびPAD使用の減少に関連しているとの結論が得られました。
2編目は、イングランドの3つの全国的な出産調査のデータを用いて、パンデミック前とパンデミック中の産後うつ病の有病率とリスクファクターを比較した研究です。COVID-19が産後の女性のメンタルヘルスに重要な悪影響を及ぼし、産後うつ病の有病率の増加という既存の傾向を加速させた可能性を示しています。産後うつ病の危険因子は、パンデミック前とパンデミック中に一貫していました。
3編目は、COVID-19開始後の抗菌薬処方パターンの変化を評価することを目的とした英国の研究です。プライマリケアにおける抗生物質処方の即時削減と広域抗生物質処方の割合の増加が観察されました。トレンドはパンデミック前のレベルに回復しましたが、AMRに対するCOVID-19パンデミックの影響については、さらなる調査が必要であるとのことです。

報道に関しては、ファイザーのパクスロビドを米FDAが承認したようですが、これを全米の薬局で無料で配布しているようです。この記事からは、米国の状況がよく分かりますので、一読をおすすめします。
他に興味深いのは「なぜ初夏にインフルエンザ流行?コロナとの関連は?専門家に聞いた - 毎日新聞」です。本日の首都圏での小児科外来でも高熱の受診者は、多くがインフルエンザA型でした(一方で、臨床医間のネットワーク情報ではコロナ感染者も増加傾向にあるようです)。コロナでの行動制限を経て、国民の免疫が下がっている可能性についての言及は合点が行きます。
また、ワクチン接種を強力に推し進めた菅前総理のインタビューが掲載されています。

高橋謙造

1)論文関連      
JAMA
Development of a Definition of Postacute Sequelae of SARS-CoV-2 Infection

*自己申告による症状を用いてPASC(Postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection)の定義を作成し、コホート、ワクチン接種の有無、感染回数におけるPASCの頻度について説明することを目的とした米国発の研究です。
33州、ワシントンDC、プエルトリコにある85の登録施設(病院、保健所、地域組織)において、SARS-CoV-2感染の有無にかかわらず成人を対象とした前向き観察コホート研究。2023年4月10日以前にRECOVER成人コホートに登録された参加者は、急性症状の発症または検査日から6カ月以上経過後に症状調査を完了しました。セレクションは、人口ベース、ボランティア、コンビニエンスサンプルで行われた。
主要アウトカムとしては、PASCと44人の参加者が報告した症状(重症度の閾値あり)です。
合計9764人の参加者(SARS-CoV-2感染者89%、女性71%、ヒスパニック/ラテン系16%、非ヒスパニック系黒人15%、年齢中央値47歳[IQR、35-60])が選択基準を満たしました。37の症状について、調整オッズ比が1.5以上(感染者と非感染者)でした。PASCスコアに寄与する症状は、労作後倦怠感、疲労、ブレインフォグ、めまい、胃腸症状、動悸、性欲や能力の変化、匂いや味の喪失や変化、口渇、慢性咳嗽、胸痛、異常運動でした。2021年12月1日以降に初感染し、感染後30日以内に登録された2231人のうち、224人(10% [95% CI, 8.8%-11%] )が6カ月時点でPASC陽性でした。
前向きコホート研究において、症状に基づいてPASCの定義が作成されました。他の研究のための枠組みを提供する最初のステップとして、PASCの実用的な定義をサポートするために、他の臨床的特徴をさらに取り入れる反復的な改良が必要であるとのことです。

LANCET
Changes in neurological outcomes of out-of-hospital cardiac arrest during the COVID-19 pandemic in Japan: a population-based nationwide observational study

https://www.thelancet.com/journals/lanwpc/article/PIIS2666-6065(23)00089-5/fulltext

*院外心停止(OHCA: Out-of-hospital cardiac arrest)のアウトカムに対する間接的な影響を評価することを目的とした日本発の研究です。
2017年から2020年にかけてのOHCA患者506,935人の前向き全国レジストリを分析しました。
主要アウトカムは、30日後の好ましい神経学的転帰(Cerebral Performance Category 1または2)でした。副次的アウトカムは、パブリックアクセス除細動(PAD)およびバイスタンダー主導の胸骨圧迫でした。
非常事態宣言(2020年4月7日~5月25日)前後のこれらのアウトカムの傾向の変化を評価するため、中断時系列(ITS: Interrupted time series) Analysisを実施しました。また、感染拡大状況によって層別化したサブグループ分析を実施しました。
バイスタンダーが目撃したOHCAで、初期にショック可能な心拍を有する患者21,868人を確認した。ITS解析の結果、前年度の同時期と比較して、非常事態宣言後には、日本全国でPADの使用率が大幅に低下し(相対リスク[RR], 0.60; 95%信頼区間 [CI], 0.49-0.72; p < 0.0001) 、神経学的に好ましい結果が減少しました( RR, 0.79; 95% CI, 0.68-0.91; p = 0.0032 )。好ましい神経学的転帰の低下は、COVID-19が広がっている地域では広がっていない地域よりも顕著でした(RR, 0.70; 95% CI, 0.58-0.86 vs. RR, 0.87; 95% CI, 0.72-1.03; p for effect modification = 0.019)。
COVID-19は、OHCA患者における神経学的転帰の悪化およびPAD使用の減少に関連しているとの結論です。

The impact of the Covid-19 pandemic on postnatal depression: analysis of three population-based national maternity surveys in England (2014–2020)

https://www.thelancet.com/journals/lanepe/article/PIIS2666-7762(23)00073-X/fulltext

*イングランドの3つの全国的な出産調査のデータを用いて、パンデミック前とパンデミック中の産後うつ病の有病率とリスクファクターを比較した研究です。COVID-19パンデミック前とパンデミック中の産後うつ病を、時間を超えて比較可能なデータで評価した研究はほとんどありません。
2014年(n=4571)、2018年(n=4509)、2020年(n=4611)に実施された人口ベースの調査を用いて分析を行った。産後うつ病(EPDSスコア≧13)の加重有病率推定値は、調査間で比較しました。社会人口学的要因、妊娠・出産関連要因、生物心理社会的要因と産後うつ病との関連について、修正ポアソン回帰を用いて調整リスク比(aRR)を推定しました。
産後うつの有病率は、2014年の10.3%から2018年には16.0%(差=+5.7%(95%CI:4.0-7.4)、RR=1.55(95%CI:1.36-1.77))、2020年には23.9%に上昇しました(差=+7.9%(95%CI:5.9-9.9)、RR=1.49(95%CI:1.34-1.66))。長期的な精神衛生上の問題を抱えていること(aRR範囲=1.48-2.02)、出産前の不安障害(aRR範囲=1.73-2.12)、出産前のうつ病(aRR範囲=1.44-2.24)は産後うつのリスク上昇と関連していましたが、出産に対する満足度(aRR範囲=0.89-0.92)とソーシャルサポート(aRR範囲=0.73-0.78)は流行前・流行期のリスク低下と関連付いていました。
この解析は、COVID-19が産後の女性のメンタルヘルスに重要な悪影響を及ぼし、産後うつ病の有病率の増加という既存の傾向を加速させた可能性を示しています。産後うつ病の危険因子は、パンデミック前とパンデミック中に一貫していました。リスクのある女性を支援するためには、適時の特定、介入、フォローアップが重要であり、パンデミックのようなリスクが高まる時期に女性を支援するメカニズムを強化することが不可欠であるとのことです。

Impact of COVID-19 on broad-spectrum antibiotic prescribing for common infections in primary care in England: a time-series analyses using OpenSAFELY and effects of predictors including deprivation

https://www.thelancet.com/journals/lanepe/article/PIIS2666-7762(23)00072-8/fulltext

*COVID-19開始後の抗菌薬処方パターンの変化を評価することを目的とした英国の研究です。COVID-19のパンデミックは医療システムに影響を与え、抗菌薬耐性を低減するための特別なプレッシャーとなったという背景があります。
NHS Englandの承認を得て、OpenSAFELYプラットフォームを使用してプライマリケアにおけるTPP SystmOne電子カルテ(EHR)システムにアクセスし、2019年から2021年にかけて抗生物質を処方した患者を選択しました。COVID-19が広域抗生物質の処方に与える影響を評価するため、処方率およびその予測因子を評価し、二項ロジスティック回帰モデルを当てはめて中断時系列分析を使用しました。
調査期間中、3,200万件以上の抗生物質処方箋が抽出され、8.7%が広域スペクトルでした。パンデミックの直接的な影響として、広域抗生物質処方の増加(オッズ比 [OR] 1.37; 95%信頼区間 [CI] 1.36-1.38) が示され、その後、1ヶ月あたりの広域抗生物質処方確率が1.1-1.2%減少して徐々に回復することがわかりました。同じパターンは、年齢、性別、地域、民族、社会経済的困窮度五分位で定義されたサブグループ内でも見られました。より恵まれない患者ほど、広域スペクトルの抗生物質を受け取る傾向があり、この差は時間の経過とともに安定していました。広域スペクトルの処方が最も顕著に増加したのは、下気道感染症(OR 2.33; 95% CI 2.1-2.50) と中耳炎(OR 1.96; 95% CI 1.80-2.13 )でした。
プライマリケアにおける抗生物質処方の即時削減と広域抗生物質処方の割合の増加が観察されました。トレンドはパンデミック前のレベルに回復しましたが、AMRに対するCOVID-19パンデミックの影響については、さらなる調査が必要であるとのことです。

2) 治療薬、 ワクチン関連       
国内     

海外     

治療薬      
ファイザーのコロナ経口薬「パクスロビド」、FDAが承認
https://jp.reuters.com/article/pfizer-fda-idJPKBN2XH02R
*「パクスロビドはFDAが2021年遅くに緊急使用を認めた。
米当局者は、通常の市場での販売に移行する前に、ファイザーから調達したパクスロビドの在庫の大半を消化する計画を明らかにしてきた。現在、同薬は米国内の薬局で無料で入手できる。
連邦政府のデータによると、5月21日時点で約1400万コースが配布され、このうち900万コース強が投与された。
ファイザー広報担当はパクスロビドの新価格を発表する計画はないと述べた。同社は声明で、米政府が今後も配布を監督し、対象となる人は引き続き無料で入手できると説明した。完全承認によって同社はパクスロビドの販売促進活動を拡大できる。」

3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株     

Long COVID

国内        
なぜ初夏にインフルエンザ流行?コロナとの関連は?専門家に聞いた - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230526/k00/00m/040/348000c
*「―インフルは冬場に流行する印象があります。なぜ今、流行するのでしょうか。
 ◆この時期にインフルが流行することは、これまでにもありました。インフルエンザウイルスは気温が低く乾燥した環境で長時間、感染力を保つと言われています。これから冬を迎える南半球のオーストラリアなどでは、今から8月にかけて流行期を迎えます。
 海外からの訪日観光客によってウイルスが持ち込まれれば、夏でも国内で集団感染が起きる可能性があります。
 ――今回の集団感染の特徴は何でしょうか。
 ◆大分の高校で、数百人単位の集団感染が起きたことには驚きました。これまで夏場に流行したインフルはどれも小規模で、保育園や小学校など年齢層も低かったのです。
 それが、基礎的な免疫力がある高校生にも大規模に流行しているということは、国民のインフルに対する免疫が落ちている証拠と考えることもできます。
、、、、、、、
◆日本では新型コロナ禍の約3年間、マスクの着用やソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保など、感染症対策を徹底してきました。新型コロナもインフルも、呼吸器にウイルスが入りこんで起こる感染症で、新型コロナ対策を徹底すればインフルも収まっていくでしょう。
 一方、新型コロナの流行前まではインフルは毎年流行し、多くの人は免疫を獲得しています。インフルエンザウイルスに大きな変異が見られないにもかかわらず、流行期ではない夏場にこれだけ大きな流行を起こすということは、ウイルスの力が強くなったのではなく、我々の免疫力が弱まっていることが要因です。」

デルタ株流行の渦中 菅前首相が収束を確信した根拠とは/上 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230525/k00/00m/010/401000c
*「――尾身さんは毎日新聞のインタビューで、政府の国民への発信の仕方に課題があったとして次に向けて見直しが必要と答えました。この指摘を、菅前首相としてどう感じますか。
 ◆課題はありました。(流行がいつまで続くのかなど)全体像が見えない中での発信は非常に難しいと思いましたね。(退陣判断直前の21年夏は)ワクチン接種が進み、それまでなかった(抗体カクテル療法「ロナプリーブ」という)いい薬もできて、間違いなく明かりが見えた時期でした。」

沖縄コロナ、5類引き下げ後も相談1日100件 /沖縄 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230526/rky/00m/040/006000c
*「新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に引き下げられた後も、沖縄県の発熱コールセンターには日々、平均百件程度の相談が寄せられている。「かかりつけ医がいない」「予約が埋まっている」などの理由で受診できる医療機関を探す問い合わせが多く、県はホームページ(HP)に掲載している外来対応医療機関を案内している。
 相談内容については、5類移行により終了した、自己検査後の陽性者登録や宿泊療養施設の利用に関する問い合わせも続いているため、感染症総務課の担当者は「周知を広げていくことが必要」と語った。」

沖縄コロナ、前週の1.8倍 感染拡大で知事が注意呼びかけ /沖縄 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230526/rky/00m/040/002000c

コロナの重症化は、子どもでもあります〈森戸やすみのメディカル・トーク〉
https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/health/70269/

海外       

4)対策関連
国内      

海外       

5)社会・経済関連     
コロナ禍の「正しい感染対策」はいったいどこにあったのだろうか?
https://www.asahi.com/articles/ASR5K5RLLR5JULLI002.html


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