COVID-19情報:2023.05.08

皆様

本日のCOVID-19情報を共有します。

本日の論文は、BMJより1編、CID(Clinical Infectious Diseases)より2編です。
BMJ論文は、閉経前または閉経後の女性において、SARS-CoV-2ワクチン接種後に何らかの月経障害や出血が生じるリスクを評価することを目的としたスウェーデン国全国規模の登録データベースのコホート研究です。閉経後の女性における出血について、SARS-CoV-2ワクチン接種と医療接触との間に弱く一貫性のない関連が観察され、閉経前の女性における月経障害または出血との関連については、さらに少ないエビデンスしか記録されませんでした。
CIDの1編目は、ニルマトルビル-リトナビルがハイリスク外来患者におけるCOVID-19関連入院のリスクを低減するかどうかを評価することを目的とした研究です。ニルマトルビル-リトナビルは,不完全接種の高リスク外来患者および完全接種の高リスク外来患者のいくつかのサブグループにおいて,COVID-19関連入院のリスクを低減することが明らかになりました。
2編目は、米国における、集団レベルでの免疫について検討した研究です。2022年11月のSARS-CoV-2感染および重症化に対する有効な防御力は、2021年12月に比べて大幅に高くなりました。この高いレベルの防御力にもかかわらず、より伝播性の高い、あるいは免疫回避性の高い(亜)変異株、行動の変化、あるいは免疫力の継続的な低下により、新たなSARS-CoV-2の波が発生する可能性があるとのことです。

本日の報道には、政府コロナ対策分科会の谷口先生(M3の会員限定記事です)、経済系委員の大竹先生、同じく大阪大学の忽那先生の発言があります。
5類移行による社会の反応も記事が
また、ホリエモン発言に対するレスポンスとしての西浦氏の「うるせーばか」発言が記事になっていました。学者としての品位に欠けます。残念です。

高橋謙造

1)論文関連      
BMJ
Association between SARS-CoV-2 vaccination and healthcare contacts for menstrual disturbance and bleeding in women before and after menopause: nationwide, register based cohort study

*閉経前または閉経後の女性において、SARS-CoV-2ワクチン接種後に何らかの月経障害や出血が生じるリスクを評価することを目的としたスウェーデン国全国規模の登録データベースのコホート研究です。
2020年12月27日から2022年2月28日までのスウェーデンにおけるすべての入院患者および専門外来診療。スウェーデン女性人口の40%のプライマリケアをカバーするサブセットも含みました。
12~74歳のスウェーデン人女性946名448名を対象とし、妊娠中の女性、老人ホームに住む女性、および何らかの月経または出血障害、乳がん、女性生殖器のがん、または2015年1月1日から2020年12月26日の間に子宮摘出術を受けた既往のある女性は除外しました。
SARS-CoV-2ワクチン接種、2つのタイムウィンドウ(対照期間とされる1~7日、8~90日)におけるワクチン製品(BNT162b2、mRNA-1273、ChAdOx1 nCoV-19 (AZD1222))および用量(未接種および初回、第2、第3投与)別に分類し。主要アウトカム評価項目は、閉経前後の月経障害や出血(国際統計疾病分類および関連保健問題第10版コードN91、N92、N93、N95で診断)による医療接触(入院・受診)です。
2,946,448人の女性のうち2,580,007人(87.6%)が少なくとも1回のSARS-CoV-2ワクチン接種を受け、ワクチン接種を受けた女性のうち1,652,472人(64.0%, 2,580,007人中)がフォローアップ終了までに3回接種を受けました。閉経後の女性における出血のリスクは、3回目の接種後、1~7日のリスクウィンドウ(ハザード比1.28(95%信頼区間1.01~1.62))および8~90日のリスクウィンドウ(1.25(1.04~1.50))で最も高いことが確認されました。共変量による調整の影響は緩やかでした。閉経後出血のリスクは、BNT162b2およびmRNA-1273では3回目の投与後、8-90日後に23-33%のリスク増加が示唆されましたが、ChAdOx1 nCoV-19との関連はあまり明確ではありませんでした。閉経前の女性における月経障害や出血については、共変量を調整することで、粗分析で指摘された弱い関連はほぼ完全に取り除かれました。
閉経後の女性における出血について、SARS-CoV-2ワクチン接種と医療接触との間に弱く一貫性のない関連が観察され、閉経前の女性における月経障害または出血との関連については、さらに少ないエビデンスしか記録されませんでした。これらの結果は、SARS-CoV-2ワクチン接種と月経障害または出血に関する医療接触との間の因果関係を実質的に支持するものではありません。

CID
Real-World Effectiveness of Nirmatrelvir/Ritonavir on Covid-19-Associated Hospitalization Prevention: A Population-Based Cohort Study in the Province of Québec, Canada

*ニルマトルビル-リトナビルがハイリスク外来患者におけるCOVID-19関連入院のリスクを低減するかどうかを評価することを目的とした研究です。背景としては、ニルマトルビル-リトナビルが、オミクロン以前にCOVID-19の入院と死亡を減らすことは示されていましたが、最新のリアルワールド・エビデンス研究が必要であると言う点があります。
本試験は、2022年3月15日から10月15日までのSARS-CoV-2感染外来患者を対象に、ケベックの診療所・行政データベースからのデータを用いたレトロスペクティブ・コホート研究です。ニルマトルビル-リトナビルによる治療を受けた外来患者と、ニルマトルビル-リトナビルを投与されていない感染者を、傾向スコアマッチングを用いて比較しました。COVID-19に関連した入院が指標日から30日以内に発生する相対的リスクをポアソン回帰を用いて評価しています。
治療を受けた計8,402人の外来患者を対照群とマッチングさせました。ワクチン接種状況にかかわらず、ニルマトルビル-リトナビル投与は、入院の相対リスクを69%減少させることと関連していました(RR:0.31 [95%CI: 0.28; 0.36], NNT=13)。この効果は、一次接種が不完全な外来患者においてより顕著であり(RR: 0.04 [95%CI: 0.03; 0.06], NNT=8)、一次接種が完了した患者では有益性は認められませんでした(RR: 0.93 [95%CI: 0.78; 1.08] )。1次ワクチン接種コースを有する高リスク外来患者におけるサブグループ解析では、ニルマトルビル-リトナビル投与は、重度の免疫不全外来患者における入院の相対リスクの有意な減少に関連しており(RR:0. 66 [95%CI: 0.50; 0.89], NNT=16)、70歳以上の高リスク外来患者(RR: 0.50 [95%CI: 0.34; 0.74], NNT=10)では、ワクチンの最終投与が少なくとも6カ月前である場合、ニルマトルビル/リトナビルの投与は入院の相対リスクを有意に低下させることが示されました。
ニルマトルビル-リトナビルは,不完全接種の高リスク外来患者および完全接種の高リスク外来患者のいくつかのサブグループにおいて,COVID-19関連入院のリスクを低減することが明らかになりました。

Changes in population immunity against infection and severe disease from SARS-CoV-2 Omicron variants in the United States between December 2021 and November 2022

*米国における、集団レベルでの免疫について検討した研究です。
背景としては、2021年12月~2022年2月に米国人口のかなりの割合がSARS-CoV-2に感染しましたが、その後の人口免疫の進化は、時間の経過とともに低下する防御力と追加感染やワクチン接種による免疫獲得や回復の競合的影響を反映しています。
COVID-19の報告データ(診断、入院)、ワクチン接種、ワクチン免疫と感染症獲得免疫の衰退パターンからなるベイズ型エビデンス統合モデルを用いて、米国におけるSARS-CoV-2オミクロン株の感染と重症化に対する集団免疫を、場所(国、州、郡)と週ごとに推定しました。
2022年11月9日までに、米国人口の97%(95%~99%)がSARS-CoV-2への免疫学的な事前曝露があると推定されました。2021年12月1日から2022年11月9日の間に、新たなオミクロン感染に対する防御率は全国で22%(21%~23%)から63%(51%~75%)に、重症化につながるオミクロン感染に対する防御率は61%(59%~64%)から89%(83%~92%)に向上しました。1回目のブースター接種率を全州の55%(現在の米国の接種率:34%)、2回目のブースター接種率を22%(現在の米国の接種率:11%)に引き上げると、感染に対する防御力が4.5%ポイント(2.4-7.2)、重症化に対する防御力が1.1%ポイント(1.0-1.5)増加しました。
2022年11月のSARS-CoV-2感染および重症化に対する有効な防御力は、2021年12月に比べて大幅に高くなりました。この高いレベルの防御力にもかかわらず、より伝播性の高い、あるいは免疫回避性の高い(亜)変異株、行動の変化、あるいは免疫力の継続的な低下により、新たなSARS-CoV-2の波が発生する可能性があるとのことです。

2) 治療薬、 ワクチン関連       
国内     
今年度のワクチン接種開始 高齢者ら年2回―新型コロナ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023050800101&g=soc
*「接種期間は8月までで、オミクロン株対応ワクチンを使用。健康な12歳以上は年末年始の感染拡大に備え、9~12月に1回の接種を予定している。これまで新型コロナのワクチンを1度も打ったことがない11歳以下や、オミクロン株対応ワクチン未接種の12歳以上も打つことができる。」

高齢者らのコロナワクチン接種開始 年2回 全額公費負担は継続
https://www.asahi.com/articles/ASR5852SFR58UTFL00D.html

海外     

治療薬      

3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株     

Long COVID
後遺症、5類移行後も警戒 4人に1人「ブレーンフォグ」―治療に平均195日・新型コロナ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023050700227&g=soc

国内        
丸の内の人流7割回復 コロナ5類、出社回帰で対面重視:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC011B50R00C23A5000000/

コロナ5類移行で官房長官が「日夜対応に対応にあたった皆様に感謝」
https://www.asahi.com/articles/ASR58449MR58UTFK005.html

PCR検査センター閉鎖、デパートでアクリル板撤去…新型コロナ「5類」に移行 #ldnews
https://news.livedoor.com/lite/article_detail/24192221/

海外       
米CDC所長6月末退任へ コロナ緊急対応にめど:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0600W0W3A500C2000000/
*CDC所長6月末に退任、米コロナ対策を指揮 緊急事態終了に伴い
https://jp.reuters.com/article/usa-cdc-walensky-idJPKBN2WW1KK
*「米疾病対策センター(CDC)は5日、新型コロナウイルス対策を指揮したロシェル・ワレンスキー所長が6月末で退任すると発表した。新型コロナを巡っては世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言終了に続き、国内でも今月11日で緊急対応が終わる予定となっており、区切りの時期と判断した。」

中国、ゼロコロナ終了でも違反に厳罰 公平性に疑問の声:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM283ED0Y3A420C2000000/

4)対策関連
国内      
「HER-SYSはサーベイランス原則をことごとく無視」谷口氏が苦言感染症学会で講演、「日本は明治以来、届出一本槍」 
https://www.m3.com/news/iryoishin/1137222?pageFrom=tb&portalId=simpleRedirect&fbclid=IwAR0jHb70MDSFboBd66EQu3Z2uqtaP_cJl44928dymzkrA23rXoehZO-NP6E
*会員制サイトなので、読めない方もいらっしゃると思いますので、一部を抜粋します。
*「「現場で何が起きているのかを把握するためにはサーベイランスが重要だが、サーベイランスには明確な目的が必要だ」と指摘。「サーベイランスとは現場に負荷をかけて届出させることではない。しかし、HER-SYSはサーベイランスの原則をことごとく無視しており、上手くいかなかった」と振り返った。
 谷口氏は「日本の感染症法にはサーベイランスの概念がなく、明治時代以来、届出一本槍の状態が続いている」と苦言を呈している。
 感染症法に基づく発生届には、患者への医療的対応に必要な情報のほか、サーベイランスにも活用できる情報など、さまざまな個人情報が記載されている。
 谷口氏は「発生届とサーベイランスはイコールではない」との前提を強調した上で、「住所・氏名を特定しての届出は個人への医療対応を行うためのものであり、サーベイランスに個人情報は必要ない。この2つが区別されていなかったことが新型コロナ対応の現場の混乱の原因だ」とした。
 今後に向けては「単一のサーベイランスで全てを網羅することは難しい」とも述べ、複数のサーベイランスを組み合わせることで負荷が1カ所に集中しない体制を構築することが理想的であるとしている。」

「強すぎる」科学信仰 コロナ対策、行動経済学者・大竹文雄氏の懸念
https://www.asahi.com/articles/ASR535QRZR51UTFL015.html
*「――昨年3月、別の感染症系の専門家たちが、オミクロンはインフルよりも致死率が高いという暫定的な見解を示しました。
 私にとって「相当程度」高いのかどうかが論点でした。わずかな差について「相当程度」というのは無理があると思っていました。
 ――この時期、経済系と感染症系の専門家の間で意見の一致が難しくなったと聞きます。どう対応したのですか。
 それ以前から、行動制限を重視する委員と、行動制限より医療提供体制の充実を主張する委員との間で、意見の違いはありました。
 それでも、尾身(茂)先生が専門家の意見を一つの案にまとめ、分科会として政府に提言していました。
 提言は数枚の資料で、情報量は少なく、政策提言に近いものでした。分科会の影響力を高めるため、行動制限を重視する意見を中心に全員一致させる「ワンボイス」をめざしていたのだと思います。
、、、、、、、、
 ――ただ政府は、選択肢ではなく、一本化して提言するよう事前に求めてきたそうですね。
 そうです。政府は、国民に対し「専門家が決めたことだから」と言える形にしたかったのでしょう。
 背景として、多くの国民に「科学的なエビデンスに基づいた判断が望ましく、価値観に基づく政治判断はよくない」という思い込みがあるように思います。
 しかし、コロナ対応では、感染対策と社会経済どちらが優先か、という「トレードオフ」があるので、科学だけでは決められない問題でした。
 ――なぜ、科学だけでは決められないのですか。
 どちらを重視するかは、価値観に依存するからです。
 トレードオフがある問題に対して、科学者の意見だけで決めるというのは、科学者の価値観を人々が受け入れる、ということを意味します。
 どんな社会的影響があっても、感染者数を減らすべきだという共通の価値観があれば、感染者数を減らすための専門家の提言に従えばいいかもしれません。
 しかし、異なる価値観がある時に、一部の科学者の価値観だけで物事を決めるべきではありません。」
*大竹先生が指摘しているのは、専門家間、官僚等の科学信仰の強さのようです。

コロナ5類移行後 「メリハリのある対策を」 大阪大の忽那賢志教授
https://www.asahi.com/articles/ASR556423R51UTFL01G.html
*「新型コロナの重症化率は3年余でゆっくり下がってきた。その結果、5類移行という一つの節目を迎えたといえる。だがウイルスはなくなるわけではなく、5月8日に一気に脅威でなくなるわけではない。高齢者や病気のある人にとっては引き続き、恐ろしい病気といえる。
 自然感染した人の割合が比較的低い日本では、感染者は増えたり減ったりを繰り返すと予測される。季節性がなく、年に何度も流行するコロナは、現時点ではインフルエンザ相当の感染症とは言えないだろう。
、、、、、、、
高齢者は年に2回程度のワクチン接種をするなど、自分の身を自分で守っていくことが重要だ。年齢や流行の有無にかかわらず、手洗いをするとか具合が悪ければ休むといった基本的な予防策を続け、習慣としてほしい。」

ハイリスクの高齢者どう守る 施設などで対策カギに コロナ5類移行
https://www.asahi.com/articles/ASR555Q79R51UTFL01F.html

感染症法上の5類とは コロナ、インフルと同等の扱い:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA071CB0X00C23A5000000/

コロナ5類、対策本部縮小 手指消毒など継続:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE027VS0S3A500C2000000/

「コロナと共生」本格化 5類移行で戻る日常、続く警戒:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA072I20X00C23A5000000/

新型コロナ5類移行 介護・医療施設、面会制限緩和も:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE244O50U3A420C2000000/

東京都、コロナ相談の電話窓口開設 24時間受け付け:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC080T90Y3A500C2000000/
*コロナ電話窓口、東京都が「相談センター」に一本化…発熱した人への医療機関の案内は継続
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230508-OYT1T50080/

成田空港で飛沫防止フィルムの撤去始まる 新型コロナ5類移行 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20230508/k00/00m/040/090000c

海外       

5)社会・経済関連     
堀江貴文氏に〝8割おじさん〟西浦教授が「うるせーばか」 尾身会長発言めぐり場外戦
https://news.livedoor.com/lite/article_detail/24171855/
*この発言は残念です。国立京都大学の教授ともあろうお方が、一介の民間人をばか呼ばわりとは。品位がありません。

「アフターコロナ」高まる期待 経済押し上げ4.2兆円:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA286E90Y3A420C2000000/

マスク着脱増でミニ化粧品に脚光 コロナ5類きょうから:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC25D9J0V20C23A4000000/

転職希望、コロナで増える 「20代がこのままじゃ不安」:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2767Q0X20C23A4000000/

コロナ5類移行 大阪・道頓堀の人出を比較すると… - 毎日新聞
https://mainichi.jp/graphs/20230508/mpj/00m/040/062000f/20230508mpj00m040054000p

中居正広、マスクの効果議論に「まだそんなこと言ってるの?」発言「発言は慎重に」「見直した」ネットでわかれる賛否 #ldnews
https://news.livedoor.com/lite/article_detail/24191689/

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