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ルーティンとは?

ルーティンとは、「決まった動作」や「日課」という意味の言葉。「寝る前にストレッチをするのがルーティンだ」「プレゼンの前には3回深呼吸することをルーティンにしている」といった使い方がされます(※ルーチンとルーティンは、カタカナ表記が違うだけで同じ意味の英単語です)。

ルーティンといえば、元プロ野球選手のイチロー氏を思い出す人が多いかもしれません。イチロー選手は試合で、「バッターボックスには必ず右足から入る」「バットを立て、バックスクリーン方向に構える(いわゆるイチローポーズ)」など細かなルーティンを実行することで、メンタルを安定させ、優れた成果を残しました。

ルーティンに関連して、「ルーティンワーク」や「モーニングルーティン」という言葉もあります。ルーティンワークとは、「毎日繰り返し行なう決まりきったタスク(メールチェックや日報作成など)」。モーニングルーティン(朝のルーティン)とは「毎朝起床後に行なう一連の行動」です。睡眠前に行なう夜の習慣は「ナイトルーティン」と呼ばれます。

ルーティンの効果


ルーティンを利用すれば、仕事や勉強のパフォーマンスを高めることができます。メンタルコーチ・大平信孝氏らの著書『ダラダラ気分を一瞬で変える 小さな習慣』(サンクチュアリ出版、2016年)によると、ルーティンには以下のような効果が期待できるそうです。

やる気のスイッチが入る


ルーティンは、仕事や勉強などに取りかかるための「スイッチ」として活用できます。「コーヒーを飲むと仕事モードになる」「ミントタブレットを食べるとリフレッシュできる」なども、無意識にやっているルーティンの例です。飲食物だけでなく、「これをすればやる気スイッチが入る」という特定の行動や動作があると、仕事や勉強をスムーズに始めやすくなります。

気分を切り替えられる


気分を切り替えたいときにも、ルーティンは役に立ちます。たとえば、「気持ちが乱れたら、手を洗ってリフレッシュする」というルーティンを決めておくと、落ち込んだりイライラしたりといった気分からすばやく立ち直れるはずです。

「緊張をほぐしたいときは、人という字を3回手のひらに書いて飲み込む」というおまじないを聞いたことがあるのではないでしょうか。これも、決まった行動を通して気分を切り替える、ルーティンの一種ととらえられるでしょう。

集中力を高められる


集中力を向上させる目的でも、ルーティンは活用できます。山口県立大学が2017年に発表した論文によると、非アスリートの学生13人にさまざまなタスクをやらせつつ脳波を測定したところ、ルーティンを行なうことで「ダーツ」および「記憶作業」中の集中力が増していたそうです。この実験結果によって、同論文は、ルーティンによって仕事中のミスが減り、作業の質や精度が高まる効果が期待できると結論づけました。

ちなみに、ここまで紹介してきた「特定の動作によって特定の精神状態を引き出すテクニック」は、心理学で「アンカリング」と呼ばれます。アンカリングの詳細は、「NLPにおけるアンカリングとは? 意味とやり方を知れば誰にでもできる!」をご覧ください。

努力を習慣化できる


日常にルーティンを組み込むことで、勉強などの努力を自然と習慣化できます。たとえば、「通勤時間は英語のリスニング教材を聴こう」というルーティンを決めておくと、毎日リスニングのトレーニングを続けられるはずです。ほかにも、

ランチ中はオーディオブックを聴く
入浴中、その日覚えた英単語を頭のなかで復習する
ベッドに入ったら本を開く
など、さまざまなルーティンが考えられます。日々のルーティンを手帳やアプリなどに記録しておき、毎日確実に消化できるよう管理しましょう。

スポーツ選手のルーティン


先述したイチロー選手のほかに、ルーティンを活用しているスポーツ選手を2人ご紹介します。参考にしてみてください。

五郎丸歩


2015年、ラグビーで活躍する五郎丸歩選手のルーティンが「五郎丸ポーズ」として流行しました。両手を組み合わせ、人差し指を立てるしぐさは、フリーキックに集中するために開発されたルーティンの一部です。

五郎丸選手のメンタルコーチを務めたスポーツ心理学者の荒木香織氏によると、フリーキック前のルーティンには、ほかに「ボールを縦に2回転させてからセットする」「右手を前に出しながらゴールポストを確認する」など多くの手順があるそう。一連の動作を完了することで、集中力アップにつながったとのことです。

瀬戸大也


水泳選手である瀬戸大也氏は、「レースの日だけコーヒーを飲む」「試合の日はチゲ鍋を食べる」「レース直前は音楽を聴く」など複数のルーティンを決めて実践し、精神的なコンディションを万全にして試合に臨んでいるのだそう。私たちビジネスパーソンも、「プレゼンの朝には○○を食べる」「営業先に行く直前に××をする」と決めれば、瀬戸選手のようにルーティンを活かせるはずです。

ルーティン化のコツ


ルーティンは、トレーニングすれば誰でも身につけられます。人材育成コンサルタント・千代鶴直愛氏の解説を参考に、自分のメンタルをコントロールするルーティンの身につけ方・使い方をご説明しましょう。

1. 過去の成功イメージを思い出す


まずは、ルーティンによって引き出したい「過去の成功イメージ」を設定します。プレゼンテーション時の緊張を解くルーティンをつくりたいのであれば「緊張せず堂々と発表できたときの記憶」を、仕事に集中するためのルーティンなら「仕事に集中できたときの記憶」を思い描きましょう。

過去の成功イメージを、特定の動作や行動と結びつけることで、成功時の心理状態をいつでも引き出せるようになります。ラグビーの五郎丸選手なら、“五郎丸ポーズ” を含む一連の動作を行なうことで「ゴールキックがうまくいったときの自分の姿」を鮮明にイメージできるよう、トレーニングしたはずです。

「緊張を解くためのルーティン」を設定するなら、以下のような成功体験を想起するといいでしょう。

これまでうまくできたプレゼンの記憶
学生時代、コンクールや試合でプレッシャーに打ち勝った体験
その他、発表や本番を成功させた体験
「あのときの自分はできたじゃないか」と励みになるような記憶であれば、小学校でのクラス発表会など、どんなに小さい成功体験でもかまいません。

2. 成功イメージを表現するフレーズをつくる


描いた成功イメージを、簡単な言葉で表現しましょう。サッカーの槙野選手が実践している「『俺ならできる』と試合前に自分に言い聞かせる」というルーティンのように、決まったフレーズを唱えることで成功イメージを引き出すのです。

緊張を解くためのルーティンなら、以下のようなフレーズが考えられるでしょう。

私ならすばらしいプレゼンができる
私なら堂々と振る舞える
みんなが聴き入るようなプレゼンができる
千代鶴氏によると、「自分にとってしっくりくる言葉」を選ぶのがコツなのだそう。「私は世界一のプレゼンができる」などというフレーズを設定してしまうと、「さすがに世界一は言いすぎだろう」と否定したくなり、成功イメージを引き出せませんからね。

3. ジェスチャーを決める


次に、ルーティンとして使うジェスチャーを設定しましょう。このジェスチャーがスイッチとなり、過去の成功イメージが想起されることになります。

ジェスチャーはなんでもかまいませんが、以下の3つのポイントを満たすのが望ましいでしょう。

日常ではやらない動作である
シチュエーションを選ばない
簡単にできる
槙野選手の「左手を見ながら語りかける」というルーティンは、道具がいらず、いつでも簡単にできます。それに「左手を見る」というのは普段あまりやらない動きなので、理想的なルーティン動作だといえるでしょう。

千代鶴氏は以下のような例を紹介しています。

左手の親指の先と中指の先を合わせる
左手の親指の爪を見つめる
左手の親指を包んでグーをつくる
自分にとって違和感がなく、なるべくシンプルな動きを設定するのがオススメです。

4. 成功イメージ・フレーズ・ジェスチャーを関連づける


最後に、1~3で設定した「成功イメージ」「フレーズ」「ジェスチャー」を関連づけていきましょう。「そのフレーズを唱えながらジェスチャーを行なうと、勝手に成功イメージが浮かぶ」という状態を目指します。

関連づけの際は、成功イメージに集中できるよう、静かで誰にも邪魔されない環境を用意してください。千代鶴氏は「夜中の自室」を推奨しています。

設定した動作を行ない、フレーズを唱えながら成功イメージを思い浮かべましょう。見えていたものや聞こえていたもの、感じたことなどをなるべく具体的に、鮮明にイメージするのがポイントです。

このような練習を何度も繰り返し、動作とフレーズによってスムーズに成功イメージを導けるようになれば、ひとまずルーティンは完成です。あとは実践を繰り返しながら、ルーティンを活用することに慣れていきましょう。

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ルーティンをもっておくと、自分のメンタルを自由にコントロールしやすくなります。特に、緊張に弱い方や気分のアップダウンが激しい方は、本記事の内容を参考に、自分なりのルーティンを身につけてみてくださいね。

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